TOP > 使っているオーディオ > YAMAHA CDX-1000

YAMAHA CDX−1000 1987年 定価89,800円


YAMAHAのCDX-1000は1987年11月に発売されたCDプレイヤーです。CDX-1000はCDX-800(69,800円)と兄弟機で、フロントパネルだけではなく中味の基板・回路・メカなど、かなりのものがと共通となっています。

1987年のCDプレーヤーは「898」(89,800円)や「698」(69,800円)、「598」(59,800円)などの価格帯が激戦区でした。特に「898」のラインにはSONY CDP-337ESD、KENWOOD DP-1100SGTechnics SL-P990など各メーカーとも強力なモデルを投入していました。
この年はヤマハにとっては創業100周年という記念の年でもあり、他のメーカーに負けることはできず、上級機用に開発された技術を惜しげもなく下級機にも搭載しました。

CDX-1000に搭載されたのは、前年に発売された100周年記念モデル、CDX-10000(400,000円)や上級機のCDX-2000(180,000円)に使われた、18bit・8倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターと18bit動作の左右独立D/Aコンバーターという、当時としては最先端となる「ハイビットシステム」です。

その他にもデジタルノイズ低減するための「カレント・アイソレーション」や、安定した電源の供給とノイズ低減を実現した「シャントレギュレーター電源」などの新しい技術が搭載されました。

シャーシは樹脂と鉄・アルミの組み合わせにより、磁気歪み対策と内部損失により振動係数を変化させることで、振動を減衰させる構造となっています。回路基板にもVMスタビライザーを取り付けるなど十分な振動対策がとられています。


(ハイビット・ダイレクトスイッチ)
CDX-1000の特徴のひとつに、ローパスフィルターを通さずに、DACの音をそのまま出力できる「ハイビット・ダイレクトスイッチ」があります。普通のCDプレーヤーは、DACからの信号をローパスフィルターを通して出力していますが、このローパスフィルターで、どうしても音が変わってしまいます。

音質面からするとローパスフィルターは無いのが理想ですが、CDプレーヤーは内部のデジタル回路でデジタルノイズが発生してしまうので、これを除去するにはデジタルフィルターとローパスフィルターは必須です。CDX-1000ではグリッチレスDACと、優秀なデジタルフィルターの組み合わせにより、DACからのダイレクト出力を可能としています。

現在のSACDプレーヤーではデジタルフィルターが高性能になっている一方で、多機能化によりマイコンやシグナルプロセッサーから出るデジタルノイズがとても増えており、やはりローパスフィルターは欠かせないものとなっています。
そういう意味からすると、DACの音をローパスフィルターで、「色づけ」されずに聴けるCDX-1000は貴重な存在かもしれません。


(音質について)
音はまさに「YAMAHAビューティ」で高音は美しく繊細。この頃のYAMAHAの製品には「ピアノメーカーだけあってピアノの音がきれい」という、都市伝説的な話がありましたが、このプレーヤーでキース・ジャレットの「ケルンコンサート」を聞くと目がウルウルするほど良いです。

ただソースにもよりますが、ピアノやバイオリンの音で違和感を感じることもあります。また低音がプアにに聞こえる場合もあります。中音はなかなか良くボーカル物も良い感じです。ジャズ、クラッシック、ロックとオールラウンドで聞けますが、ロックやディスコ、打ち込みなどのにぎやかな曲には不向きという感じです。
YAMAHAらしい音質へのこだわりを十分に感じられるCDプレーヤーです。

後継機は翌年発売のCDX-1020ですが、高音にポイントを置くのをやめて中音域重視のサウンドになっています。ある意味YAMAHAらしさが無くなった訳ですが、そのせいかセールスは好調とは言えなかったようです。現在の中古ショップやオークションに出てくる数を見ても、CDX-1000に比べると1/3〜1/4ぐらいしかありません。


(フロントパネル)
フロントパネルにはたくさんのボタンが並び、後のYAMAHAのCDプレーヤーと比べるとゴチャゴチャした感じです。
ディスプレィの右側にプレイ、ストップ、ポーズなどの操作ボタン。ディスプレィの下には10キー、スキップ、サーチやプログラム関係のボタンにヘッドフォン・可変出力兼用のボリューム。トレイの下にはハイビット・ダイレクトスイッチやディスプレィ表示の切替ボタンなどがあります。

一部の操作ボタンは押しやすいようにスラントさせてあるのですが、良く使うボタンの大きさや配置もほめられたものではありません。ディスプレイも画面自体は狭くはないのですが、いらない表示が多いので、ちょっと見にくいです。



(シャーシと内部について)
シャーシは鋼板とプラスチック(樹脂)による複合シャーシで、リアパネル以外はすべて2重構造となっています。叩いてもほとんど鳴りません。

底板は2.8mm厚(重さ2.1kg)の銅メッキ鋼板と樹脂の2重底。天板(重さ2.5kg)もアルミと鉄の2重構造。サイドパネルもアルミと樹脂で2重、フロントもアルミと樹脂の2重構造です。インシュレーターはシャーシと一体成型でアルミのカバーが付いています。

プラスチック製というと「安物」というイメージになってしまいますが、非磁性体(磁気歪対策)と内部損失というメリットのために採用されたものです。

内部は左側にメカと電源トランス。右側の基板は手前がデジタル回路。奥の左側が電源回路、右側がオーディオ回路。電源回路の上にはカバーのついたデジタル出力用の回路があります。
このオーディオ回路の下には、振動で回路が発振しないように、振動を抑えるVMスタビライザが取り付けられています。

また、基板の上はケーブルがあちこちに走っていますが、これは音質を考慮してのようです。フラットケーブルの使用をやめて、基板上では引き回しが必要となるところを、ケーブルによりショートカットしている感じです。

底板 天板


(電源回路)
電源トランスはシールドケースに入った別巻線の大型のものです。
シャントレギュレータ方式の電源回路は、電源に直列に定電流回路を挿入し、アンプ部などの近くには電圧を安定化させるトランジスタを並列に配置し、ノイズのカットとアースのクリーン化を実現しています。

写真の黒いコンデンサはELNA DUOREX 4700μFが2本。他にはルビコンのコンデンサなども使われています。電源コードは極性表示付きのOFCのコードです。
トランス 電源回路


(サーボ・信号処理回路)
サーボ回路は「早い」と「遅い」の2つの応答スピードを、自動的に切り替える「2wayコンピューターサーボ」を搭載しています。これはCDの演奏時はキズや扁心に重点を置いた「ゆっくり」とした応答スピードとし、従来よりもトレース能力を向上。選曲やサーチの時には、サーボの応答スピードを早くして、高速アクセスを可能にしています。

使われているチップは、サーボ制御とEFM誤り訂正などの信号処理が1チップに入っているYAMAHA製の「YM3616」、信号処理に必要なRAMがSONY製の8bitハイスピード・CMOSスタティックRAM「CXK5816PS-12L」。デジタル出力用はYAMAHA製の「YM3613B」などです。

サーボ回路の調整用ボリュームは、トラッキング・ゲイン、トラッキング・オフセット、キック・ゲイン、フォーカス・ゲイン、フォーカス・オフセットです。

サーボ回路 YAMAHA YM3616
YAMAHA YM3613B SONY CXK5816PS-12L


(オーデイオ回路)
D/Aコンバーターは、バーブラウンのグリッチレスDAC「PCM56P」のJランクを、左右独立で搭載しています。PCM56Pは本来16bitDACですが、CDX-1000ではダイナミック・フローティング(下記参照)という動作をさせて18bitDACとして駆動しています。

デジタルフィルターは18bit・8倍オーバーサンプリングの「YM3414」で、225次の第1フィルター、41次の第2フィルター、21次の第3フィルターを持っており、そのおかげでローパスフィルターを通さない「ピュアDACダイレクト出力」も可能となっています。またCDの16bitデータの補間を行い、18bitデータにして出力しています。※

当時の雑誌によると、当初ヤマハの開発陣は最新の18bitDACである、バーブラウン「PCM64P」を使おうとしましたが、PCM64Pはグリッチノイズがとても多かったため、ピュアDACダイレクト出力(ハイビット・ダイレクトスイッチ)に適さなかったそうです。そこで、グリッチノイズの少ない「PCM56P」を使った18bitDACになったと書かれています。
実際に他のメーカーを見ても、PCM64Pを搭載したCDプレーヤーはわずかしかありません。バーブラウンから見れば失敗作ともいえるDACです。後にバーブラウンは、PCM56Pを元にグリッチレスタイプの18bitDAC「PCM-58P」を開発。多くの機種に搭載され大ヒットDACとなります。

ローパスフィルタは3次のニューアクティブ型。8倍のデジタルフィルターのおかげで低次のものとなっています。このローパスフィルターとラインアンプは、放射ノイズの影響から守るために樹脂製のカーバーで覆われています。

デジタル回路とオーディオ回路の間には光伝送に代わり、新開発のカレント・アイソレーションを採用しています。これはオーディオ信号を電流信号に変換しての伝送とフィードバック回路により、デジタルノイズやリップルがオーディオ回路に混入しないようになっています。

ダイナミック・フローティング

16bitDACを18bit動作させるために考え出された方法で、信号レベルの大小によって上位か下位からの16bitを選択し、DACに送り込むという仕組みです。

YAMAHAの方式では信号が大きい(頻度は少ない)時は上位の16bitをDACに送り、信号の小さい(通常時)は下位の16bitを送るようになっていました。

この仕組みが初めて搭載されたCDX-2200やCDX-10000では、フローティング機能が組み込まれたデジタルボリュームコントローラーで処理を行っていましたが、CDX-1000では新たに開発された専用チップ「YM3023」で処理をしています。
※同じ1987年に発売されたLo-DのDA-703Dは、片チャンネル当たり16bitDACを2個使い、片方を8bit分上位にシフトして擬似的な24bitDACとしました。しかし搭載しているデジタルフィルターは16bitの出力しかしないので、DACを通してもどう頑張っても24bitなどにはなりませんし、データ上も16bitのままです。そのため18bit程度の分解能(聴感上)しかないと言われていました。

オーディオ回路 カバーの中の回路

DAC バーブラウンPCM56P デジタルフィルター YM3414

ELNAのオーディオ用コンデンサ
4桁の数字は製造年・月・週
ハイビット・ダイレクトアウトスイッチ


(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップ・ドライブメカのチャッキングアームを採用したものです。メカベースは頑丈な鋼板製。このベースはゴムのパーツによる3点支持でフローティングされています。

ピックアップは追随性の良い3ビームのオリンパス製「TAOHS-JP3」。ピックアップのスライド機構はギヤ式ですが、モーターとギヤの間をゴムベルトで伝達することで、モーターの振動がピックアップに伝わるのを防ぎ、安定した読み取りを実現しています。


(メカのメンテナンス・修理)
この時期のYAMAHAのメカはメンテナンス性が良く、他のメーカーに比べれば、クリーニングやゴムベルトの交換は簡単です。

トレイの開閉用のベルトは、トレイの隣にある大きな丸いギヤ(ネジを外せば簡単に取れます)の下にプーリーがあり、簡単に交換できます。スライド機構用のベルトは、チャッキングアームの稼働部のにあるネジを外し、アームを取り外せばトレイとの隙間から交換ができます。
トレイの開閉用のベルトのサイズは直径3cm。スライド機構用のベルトは、それより若干サイズが小さい物が使われていますが、テンションが高めのものであれば、3cmでも大丈夫のようです。

トレイをオープンしても、すぐ引っ込んでしまったり、ディスクがセットされてもモーターが回らない時は、大きな丸いギヤの隣にあるスイッチを、アルコール綿棒でクリーニングしてやります。

ピックアップのレーザーの出力調整ボリュームは、ピックアップの裏側にあります。底板を外せば調整が可能です。

ピックアップユニット

右下のプーリー、ベルトは
ピックアップのスライド用
トレイ


(出力端子・リモコン)
出力端子のアナログは1系統だけで、ヘッドフォンボリュームでコントロールする可変出力です。デジタルは光と同軸の2系統となっています。
デジタル出力はデジタルフィルターを通さずに出力されるため、たくさんのノイズが含まれていますが、CDX-1000では大きなフェライトコア(ノイズフィルター)を通すことで、ノイズを削減してから出力しています。
専用リモコンの型番はRS-CDX1000です。
出力端子 リモコン RS-CDX1000


YAMAHA CDX-1000のスペック

周波数特性 2Hz〜20kHz±0.1dB
ディエンファシス偏差 ±0.3dB
高調波歪率 0.003%以下
ダイナミックレンジ 100dB以上
S/N比 118dB
チャンネルセパレーション 100dB以上
消費電力 20W
サイズ 幅435×高さ107×奥行347mm
重量 9.0kg


















YAMAHA・ヤマハ CDX-1000 B級オーディオ・ファン