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KENWOOD DP-1100SG

     1987年 定価89,800円



KENWOODのDP-1100SGは1987年に発売されたCDプレイヤーです。

1980~90年代にかけてKENWOODは優れたCDプレーヤーを数多く作り出してきましたが、現在の評価は意外と低く中古ショップやオークションで販売されるもので、フルコンポサイズでキチンとした値段がつくのはDP-7090と、このDP-1100SGくらいかもしれません。

1987年は「898」(89,800円)のプライスゾーンが激戦区で、各社とも最新のD/Aコンバータやデジタルフィルターを搭載したり、強力な防振対策を行ったCDプレーヤーを発売していました。

DP-1100SGは型番でいうとDP-1100Dの後継機ですが、内容的には上級機のD-3300P(定価16万円)をベースに、防振対策や電源回路などの強化を行ったものです。このため価格はDP-3300Pよりも約7万円も安いのに、内容はそれ以上というモデルとなりました。
1987年の「898」クラスのプレーヤーの比較


DP-1100SGのシャーシは肉厚鋼板を採用。ストラット・エアー・サスペンションや各種インシュレーターなどによる「NEWマルチ・インシュレーション・システム」と呼ばれる強力な防振機構を備えています。防振機構や能力だけを見れば、現在の30万円クラスのCDプレーヤー以上で、今でも「一級品」のレベルにあると思います。

D/Aコンバーターは、このクラスとしては標準的な16bitDAC(バーブラウン PCM56P)を搭載していますが、専用回路で誤差を補正する「リアルステップ・フルビットD/Aコンバーター」として、歪みを減少させています。デジタルフィルターは4倍オーバーサンプリングを採用しています。

フォトカプラを使用した光伝送により、デジタル部からオーディオ部へのノイズの進入を防せいでいます。また電源部も「クリーンサイクロン電源」を採用して、家庭用電源からのノイズをシャットアウトし、音質への影響を防いでいます。

後継機は1988年発売のDP-8010(79,800円)ですが、シャーシの底板を薄くしたり、サスペンションの簡略化、電源トランスや電源回路の能力ダウンを行って、プライスダウンをしています。


DP-1100SGは、インシュレーターにエアーサスペンションを使用しています。このため本体の上に重い物を載せると、その効果が弱まったり、サスペンションの空気抜けが起こります。



(音質について)
音は少し柔らかめで高・中・低音のバランスがとても良いです。変に刺激的な部分もありません。同期のCDX-1000SL-P990といった18bit機よりも解像度は上ですし、TOTALでは頭ひとつ出ているという感じです。

1990年代以降の中級機と比べても、DACの性能差のために解像度や透明感などは劣りますが、総合的にはそれほど見劣りしないと思います。

特に強力なシャーシとサスペンションなど防振対策の恩恵なか、高音や中音の伸びは今でも素晴らしいものがあります。クラッシック、ジャズ、ボーカル、ロックといろいろなジャンルの音楽をこなせるプレーヤーです。



(フロントパネル)
以前のDP-1100シリーズのデザインからは一新。10キーの位置や「プレイモード」のインジケーターランプなど、SONYのESシリーズを意識したデザインになりました。


OPEN/CLOSE、サーチ、スキャンなどのキー。文字や矢印などのプリントが消えやすいので、リモコンの使用がオススメ。 ダイレクトキーは10個ですが、+10~+50のキーがあるので、59曲までダイレクトに選曲できます。

可変出力のボリューム デジタル出力ボタン






(シャーシ・内部について)
シャーシの底板に2mm厚の鋼板使用しています。底板はキチンと塗装されており、サビなどを防止するとともに、微細な振動の抑制を狙ったものです。

天板は1mmの鋼板に0.6mmの鋼板を張り合わせた2重構造。出力端子があるリアパネルも強度を稼ぐためにリブが付けられています。

インシュレーターはコイルスプリングとエアーダンパーによるストラット・エアーサスペンションを採用しています。

普通CDプレーヤーのインシュレーターというと、CDプレーヤー全体の重量を支えるのと、重量を集中させた「踏ん張り効果」により内部振動を抑えるのがメインで、外部振動の吸収はどちらかというと、メカのフローティング機構におまかせになっています。

ストラット・エアーサスペンションは、インシュレーターの接地部に特殊弾性ゴムを使用。そこで吸収しきれなかった振動を、コイルスプリングとエアダンパーで吸収する仕組みとなっています。

その構造は自動車のストラツト・サスペンションにそっくりです。これにより、ピックアップや回路基板への振動を減少させて、音質への影響を防いでいます。

内部の配置は、左側にメカと電源トランス。右側の基板は2階建てで、1階部分にシステムコントロールと、サーボ系回路などデジタル回路。2階部分がオーディオ回路の基板で、上級機のD-3300Pのレイアウトを踏襲したものとなっています。


天板は1mmと0.6mm鋼板を張り合わせたもの。オーディオ回路の上になる部分にはフェルト材が貼ってあります。 リアパネルにまで制振材が貼られているCDプレーヤーはあまり有りません。パネルの裏側を塗装しているのも、少しでも振動を抑えるためで、振動対策への執念が感じられます。

ストラット・エアーサスペンション。底板もキチンと塗装されてます。 ストラット
エアーサスペンション


(電源回路)
電源回路の特徴は家庭内の電源による音質劣化の影響を抑える「クリーンサイクロン電源」です。

これはトランスの巻線にノイズをカットする素子を追加し、基板の回路上にも特殊な素子「クリーンサイクロンデバイス」を装備して、高周波領域のデジタルノイズを2次電圧に変化させないというものです。ちなみに同時期に発売されたプリメインアンプのDA-1100EXにも搭載されています。

また電源回路全体を独立電源回路として、デジタルノイズ対策を行っています。

電源トランスはD-3300Pではトロイダルが1つでしたが、これでは別巻線としても、デジタル回路から戻ってきたデジタルノイズが、オーディオ用電源の巻線に影響を与えてしまいます。

DP-1100SGでは、デジタルとオーディオ独立のEIトランス2個に変更。それぞれをケースに入れて磁束漏れを防いでいます。

コンデンサの容量や本数なども、上級機のD-3300Pより強化されています。電源コードは直径7mmのキャブタイヤコードです。

デジタル・オーディオ用の
独立電源トランス
オーディオ用の電源回路・左上に6つ並んでいるのが「クリーンサイクロンデバイス」。



(サーボ回路)
サーボの制御回路は「オプティマムサーボタイプⅢ」を搭載しています。といっても実態は自社製のサーボ回路では無く、SONY製のサーボ回路です。
サーボ用のICは「CXA1244S」を搭載。EFM復調やエラー訂正など信号処理用のICも、SONY製の「CXD1125QZ」を採用しています。

この頃はKENWOODの他にもDENONやPioneerなどが、SONY製のサーボ回路を搭載していました。でも各社にとってSONYは最大のライバル。そこで各社ともサーボ回路に独自の名前をつけて、バレないようにしていました。またSONYも事実上、それを黙認していました。

でもSONY製のパーツがあるのを見られたくないという配慮か、基板の裏側に取り付けられているケースも多いです。

サーボ回路の調整用ボリュームは、トラッキング・ゲインやフォーカス・ゲインなど4つ。

1階部分にあるサーボ回路とシステムコントロール回路の基板。可変出力用の電動ボリュームもあります。 サーボ回路のボリュームはトラッキング・ゲイン、フォーカス・ゲイン、トラッキング・バランス、フォーカス・バランスの4つ。



(DAC・オーディオ回路)
オーディオ回路は、デジタル回路からの影響を少なくするため2階部分にあります。デジタル部からの信号はフォトカプラを使用した光伝送(現在でいうデジタル・アイソレーション)を行い、オーディオ部へのデジテルノイズの進入を防いでいます。

また基板自体もPCBインシュレーターによりフローティングして、振動による回路の発振を抑えています。

D/Aコンバータはバーブラウンの16bitDAC「PCM56P-K」です。PCM56P-Kはオリジナルの「PCM56P」やSL-P990やCDX-1000に搭載された「PCM56P-J」よりも全高調波歪が大幅に改善されたタイプです。フィリップスのDAC「TDA1541A」でいえば S-2に相当するグレードです。

これを左右独立で使用して分解能や位相特性を高めています。さらにKENWOODは「リアルステップ・フルビットD/Aコンバーター」という、DACのMSBと2SBの歪みを補正する回路を取付て、直線性を高め歪みを減らし音質の向上を行っています。

デジタルフィルタは16bit・4倍オーバーサンプリングのNPC製の「SM5804D」。オペアンプはJRC 55320Dが使われています。

2階部分のオーディオ回路 オーディオ基板をフローティングしているPCBインシュレーター。

DAC バーブラウン
PCM56P-Kタイプ
DACの補正回路
リアルステップ・フルビット
D/Aコンバーター



(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップ・ドライブメカはとにかくスゴイです。ベースは1.2mmの鋼板の上にアルミダイキャストを重ねた堅牢な造りです。

ピックアップのマウント部は、防振合金を使用したダイキャスト製で、スプリングとゴムによるハイブリッド・インシュレーターで、フローティングされています。またチャッキングアームの基部にも、大きな制振材が貼ってあります。

最近のSACDプレーヤーは宣伝文句とは裏腹に、メカにはお金をかけていません。ハイエンドと呼ばれるプレーヤーでもDP-1100SGよりも、貧弱なメカを搭載しているものが、いくつもあります。

例えばmarantz SA-11S3(48万円)のように、メカの防振に力をいれていると言っている物もありますが、それでも実際に搭載しているメカは、バブル期の6万円クラスのメカと同じレベルで、DP-1100SGには遠く及びません。

ピックアップ自体はKENWOOD製?の「J91-0341-05」。スライド機構はニリアモーターで高速アクセスが可能です。

当時の雑誌によると実はこのメカ、レコードプレーヤーのKP-1100を設計した担当者が開発したものだそうです。そう言われて見ると確かに納得します。

ピックアップ・ドライブメカ ダイキャストのベース

ピックアップとスピンドル トレイ



(出力端子・リモコン)
リアパネルのデジタル出力端子は光学と同軸が各1系統。アナログ出力はFIXED(固定)、VARIABLE(可変)の2系統となっています。
専用リモコンはRC-P1100SG。

出力端子 リモコン RC-P1100SG


KENWOOD DP-1100SGのスペック

周波数特性 4Hz~20kHz
高調波歪率 0.0025%
ダイナミック
レンジ
97dB以上
S/N比 108dB以上
チャンネル
セパレーション
106dB以上
消費電力 23W
サイズ 幅440×高さ124×奥行360mm
消費電力 23W
重量 11.8kg





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