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SONY TC−K71

     1980年 定価79,800円

SONYのTC-K71は1980年4月に発売された3ヘッドカセットデッキです。

ライバル機はAIWA AD-F66M、AKAI GX-715U、DENON DR-F3、Lo-D D-90S、LUX K-8、Nakamichi 480、Pioneer CT-770、ROTEL RD-1010、SANSUI SC-D77、TEAC F-510MKU、Tecnics RS-M273、Victor KD-A66、YAMAHA K-3など。


1970年代後半に起こったオーディオブームは、終息に向かいつつありましたが、メタルテープという「アイテム」を得たカセットデッキの売り上げは好調でした。また日本のカセットデッキは音質も性能も良いということで、世界の市場を席捲していました。

1979年末のSONYのメタル対応デッキは、TC-K88(15,8000円)、TC-K75(94,800円)、TC-K65(73,800円)、TC-K55(59,800円)、TC-K45M(49,800円)というラインアップでした。
1980年春には新商品として、オートリバース機のTC-K77R(94,800円)、TC-K75とTC-K65の間を埋める商品としてTC-K71(79,800円)、TC-K55の後継機であるTC-K61(59,800円)、さらに入門用のモデルとしてTC-K33(33,800円)投入されました。

こうした積極的な商品展開もあり、SONYのKシリーズ(TC-K)は1976年のスタート以来、生産台数が200万台となり、主力商品のひとつとなります。この200万台を記念して1980年6月に、TC-K61 Limitedが発売されました。



TC-K71はメカにクローズドループ・デュアルキャプスタン方式を採用しています。2組のキャプスタンとピンチローラーによって、テープの定速化とテープの振動を抑えることで、テープのヘッドタッチを安定させ、音質の向上をはかっています。フライホイールは共振を抑えるためのデッドニング処理をしています。

録音と再生ヘッドはS&F(センダスト&フェライト)ヘッドで、センダストの高い飽和磁束密度とフェライトの優れた高域特性を合わせ持っています。消去ヘッドはフェライトヘッドです。

ノイズリダクションシステムはドルビー Bタイプを搭載しており、MPXフィルターも装備していました。

テープポジションはノーマル、クローム、フェリクローム、メタルの4段で、オートセレクターではなく、手動による切替となります。またノーマルテープのバイアス値の調整用に、バイアスキャリブレーション(±20%)を装備しています。

外部出力は可変出力で、安価なボリュームではなく、固定抵抗を使用したアッテネータになっています。

その他の機能としてはオートプレイとメモリープレイ、オートスペース付きREC MUTE、タイマースタンバイなどがあります。


TC-K71のカタログスペックや機能は、上級機のTC-K75とほとんど同じで、録音レベルのキャリブレーションと、LINE/MICのインプットセレクタが省略されたぐらいです。
録音レベルのキャリブレーションは、別に無くても差しつかえない機能ですし、音質的に考えると録音回路から可変抵抗が2つとスイッチが1つ減り、配線の引き回しが短くなるので、かえって好都合ともいえます。

内部のメカはホルダーの開閉機構が変更になっただけで同じもの。回路はいちおう新設計となっていますが回路構成は同じ。パーツ数もほぼ同じで、使われているICも同じです。

この内容の差でTC-K71はTC-K75よりも15,000円も安いので、お買い得な商品と言えました。ただ音質も同じというのは、商売上はよろしくないので、一部パーツの銘柄を変えて音に差を付けていると思います。



(音質について)
クローズドループ・デュアルキャプスタンということで、走行性能が安定しているせいか細かい音が出てきます。でも解像度がやや悪いのが気になります。

中味もスペックも上級機のTC-K75とほとんど同じですが、実質的な後継機となるTC-K555と比べると、レンジの狭さや音が軽さなど、いろいろな部分で見劣りしてしまいます。
上記のようにこの価格帯もライバル機が多く、TC-K555では録音と再生回路が大幅に強化されているので、これは当然の結果かもしれません。

オーディオ製品には電源コードの極性によって、音質が大きく変わるものがありますが、このTC-K71はまさにそのひとつ。使用時にはプラグの極性をチェックすることをお忘れなく。



(フロントパネル)
フロントパネルはTC-K75やTC-K65ののデザインを踏襲しています。ディスプレィが大きくなっていますが、これはデザイン上の処理で、LEDのメーターは16セグメントで変わっていません。

テープポジションの切り替えはTC-K75では、バイアスとイコライザーが独立していましたが、TC-K71では一体型となり、使いやすくなりました。

レイアウトは一番左には電源ボタン、タイマースタンバイ、イジェクトボタン、ワイアードリモコン端子。リモコンは別売でワイヤレスリモコンユニット RM-80(18,000円)、ワイヤードリモコン RM-50(6,000円)。

カセットホルダーは窓が大きく、中のテープが見やすいです。ディスプレィにはLEDのピークレベルメーターがあるだけです。
ピークレベルの表示は「オート」と「マニュアル」のモードを選べます。オートはピークレベルの表示が2〜3秒間隔で消えて、新しいピークレベルに更新していきます。マニュアルではピークレベルの表示が、そのレベルを超える入力があるまでずっと表示され続けます。

カウンターは3ケタの回転式。その横にはリセットボタンとメモリープレイのスイッチ。
その隣のバイアスキャリブレーションは、ノーマルテープ専用で±20%まで調整できます。テープポジションはTypeT(ノーマル)、TypeU(ハイ・クローム)、TypeV(デュアド・フェリクローム)、TypeW(メタル)の4つ。ドルビーノイズリダクションはOFF/ON/ON MPXフィルターと切替できます。

その下が操作ボタンで再生・録音・早送り・巻き戻し、PAUSE、REC MUTE。隣にはソースモニタのスイッチ。
ソースモニタはカセットテープをセットしなくても、録音レベルの調整ができるので便利です。最近のCDプレーヤーから録音する場合は、出力レベルが昔のCDプレーヤーよりも、かなり高いので、くれぐれも昔の感覚でやらないことがポイント。

一番右側には録音ボリュームと、外部出力とヘッドフォン兼用のアッテネータ。ヘッドフォン端子もラインアウトと兼用(標準プラグ)、マイク端子(標準プラグ)があります。




(シャーシと内部について)
シャーシのサイズはTC-K75と同じ。基本的には同じ物だと思います。
フロント、リア、サイドパルメで四角のフレームを造り、真ん中にビーム(梁)を入れて補強。それに底板とコの字型の天板を取り付けて、全体の剛性を高めています。

TC-K75の重量は6.3kgですが、TC-K71は5.6kgしかありません。この差はたぶん底板の違いだと思います。TC-K71の底板は薄く柔らかい板で、手で簡単に折り曲げることができます。

内部は左側にメカと電源トランス、電源回路やシステムコントロール回路。右側の基板は録音と再生回路で、専用の電源回路もあります。


底板をはずした写真


(電源部)
電源トランスは、リーケージフラックス(磁束漏れ)対策として、四方を金属製のケースで囲っています。

電源回路は独立電源となっており、電解コンデンサはニチコン製の「SL」や「LM」などが使われています。電源ケーブルは並行コードです。

電源トランス 電源回路

オーディオ部の電源回路


(システムコントロール回路)
ロジックメカのキー操作などを制御するシステムコントロール用のマイコンは、NEC製の「μPD547C」です。他にチップはゲートICの富士通「MB84069B」、コンパレーターのNEC「μPC339C」などがあります。

システムコントロール回路 マイコン NEC μPD547C


(ヘッド)
録音と再生ヘッドはセンダスト合金(Si-Al-Fe)と、フェライトを組み合わせたS&F(センダスト&フェライト)ヘッドです。

S&Fヘッドはガード部にフェライトを、コアにはHigh μタイプのフェライトを使用し、これにセンダスト合金のチップを、組み合わせた3段構造となっています。

コア材は従来の積層構造では、ギャップずれが起こりやすくなるため、独自の加工技術によるソリッド構造となっています。またギャップ部は、高硬度石英被膜を特殊蒸着する新開発のギャップ形成法を採用して、ギャップ精度を高めて優れた周波数特性を確保しています。
センダスト合金には第4元素を添加して、耐蝕性や耐摩耗性を高めて、F&Fヘッドに迫る耐摩耗性を得ています。

簡単にいうと、S&Fヘッドはテープタッチ面にセンダストを使用しているだけで、中味はフェライトヘッドです。センダストヘッドは薄膜化したラミネートコアが音質的には最良でしたが、当時はセンダストの加工が難しく各社ともに苦労していました。また耐蝕性や耐摩耗性を高めるために使う、添加物により磁気特性の低下を招いていました。

TechnicsとYAMAHAはチップと呼ばれる、ブロック状のセンダストをコアに使ったヘッドを開発しますが、過電流の発生という問題が残ります。結局、薄膜化できたのはPioneerのリボンセンダストヘッドだけでした。

SONYは1970年代後半から、次世代の本命といわれたアモルファスヘッドの開発をスタートさせていたので、本心はセンダストヘッドにあまり興味がなかったのかもしれません。そのレーザーアモルファスヘッドは1981年のTC-FX77から搭載が始まります。

消去ヘッドはフェライトヘッドです。


ヘッド・キャプスタン・ピンチローラー S&Fヘッド


(メカ)
駆動系は安定したテープ走行が可能な、クローズドループ・デュアルキャプスタンです。キャプスタン用のモーターはBSLグリーンモーターで、ゴムベルトで2つのフライホイールを回転させています。フライホイールは共振を防ぐためにデッドニング処理がされています。

BSLグリーンモーターは、カセットデッキ用に設計されたもので、トルクむらやコッキング(トルクの脈動)の原因となるスロットやブラシが無いため、滑らかな回転が可能となっています。

リール用はハイトルクDCモーターを使用。メカの駆動はソレノイド(アクチュエイター)です。

モーターの隣にはサーボ制御の基板があり、半固定抵抗でスピードの調整ができます。サーボ用のチップはSONY製の「CX069」。

メカ メカ

BSLグリーンモーター フライホイール

サーボ回路

モーター内蔵型の簡易なサーボ回路と違って、きっちりとパーツが投入されています。


(録音・再生回路)
録音・再生の基板は左側に録音回路、右側に再生回路というレイウウトで、それぞれの回路内にドルビーノイズリダクションが組み込まれています。どちらも左右独立のMONO構成です。

ノイズリダクションシステムはドルビー Bタイプで、ドルビー用ICはSONY製の「CX174-1」です。

イコライザー用のオペアンプはTI製の「RC4558P」です。 電解コンデンサはニチコン製の「SL」など。

録音・再生回路 録音回路

再生回路 ドルビー用IC SONY CX174-1


(入出力端子)
リアパネルの入出力端子はラインインが1系統。ラインアウト(可変出力)が1系統です。

リアパネル

SONY カセットテープ classic(クラシック)
SONYからクラシック音楽専用カセットテープとして発売されたもので、ポジションはノーマル。

フルオーケストラの大音量フォルテシモから、繊細なピアニッシモまで対応する広いダイナミックレンジ。というのが宣伝文句ですが、中味は「AHF」です。
価格はC-54が650円。C-74が800円。

他にポップス専用カセットテープ「Pops」、中味はBHF。ロック専用カセットテープ「Rock」、中味はJHFも発売されていました。


SONY TC-K71のスペック

周波数特性 30Hz〜18kHz ±3dB(メタルテープ)
30Hz〜18kHz ±3dB(フェリクローム)
30Hz〜17kHz ±3dB(クローム)
周波数範囲 20Hz〜20kHz ±1.5dB(メタルテープ)
S/N比 60dB(Dolby オフ・メタルテープ)
60dB(Dolby オフ・フェリクローム)
58dB(Dolby オフ・クローム)
70dB(Dolby B・メタルテープ)
高調波歪率 0.8%(メタルテープ)
ワウ・フラッター 0.04%(WRMS)
消費電力 21W
外形寸法 幅430×高さ130×奥行290mm
重量 5.6kg










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