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SONY TC−K555ESG

  1989年 定価99,800円

SONYのTC-K555ESGは1989年11月に発売された3ヘッドカセットデッキです。新しいデザイン、新しいメカニズムなど1990年代へのリファレンスとなるべく開発されたデッキであり、それまでのSONYのカセットデッキの技術を集大成したモデルとも言えます。FM fanのダイナミック大賞の優秀推薦機。

1987年に次世代のカセットと言われたDAT(Digital Audio Tape)用デッキの、EXCELIA XD-001やSONY DTC-1000ESが発売されたました。DAT用のデッキやテープの価格が下がるのは時間の問題とされていましたが、コピープロテクションの問題などを抱え普及に対して不安な要素もありました。

カセットデッキは1980年代の後半というと、技術的にはすでに成熟期に入っており、低価格のモデルでも十分な性能を持っていました。またDATの登場もあり機種は減る一方で、特に高級機は各メーカーともに新商品の開発を停止していきました。1989年に発売されたカセットデッキで、9万円以上の製品はこのTC-K555ESGとA&D GX-Z9100EXしかありません。

カセットデッキは縮小傾向といっても、アンプ、スピーカー、CDプレーヤーは血を血で洗うような壮絶な物量戦争が行われていた時代です。前モデルのTC-K555ESRもレーザー・アモルファスヘッド、クローズドループ・デュアルキャプスタン、スーパーバイアス、ミッドシップドライブ・システムなど搭載した「物量モデル」でしたが、TC-K555ESGではさらに物量化が進められ、シャーシやメカ、回路が強化されました。
TC-K555ESGの定価はTC-K555ESRよりも少し安くなっていますが、製造コストは逆に20%ぐらい増えているかもしれません。

TC-K555ESGのシャーシは磁気歪み対策の銅メッキが施されて構造を強化。そのおかげで重量は2kg以上増加しています。メカは新設計のもので、キャプスタンのベース部分にダイキャストを使用した堅牢なメカです。カセットのドアの開閉はパワーローディングとなり、レーザーアモルファスヘッドのリード線には、単結晶状のESC-OCC線(4N・OFC)を採用しています。

電源回路ではコンデンサの増設により安定化がはられており、同様に再生系回路の強化も行われています。録音回路には高音域の特性を改善するドルビーHX-PROが新たに搭載されました。

テープの種類(タイプI・ノーマル、タイプII・ハイポジション、タイプIV・メタル)を、自動的に検出するオートテープセレクターを搭載。録音系はESモデルということでバイアスやRECレベルや、バイアスのキャリブレーションなども装備しています。

結果としてDATはデッキやテープの価格があまり下がらないうちに、1992年に登場したMDにとって変わられ、プロ用機材やコンピュータのデータストレージとして使われるようになります。またMDも2000年代に入ると撤退するメーカーが増えて、ほぼ終焉を迎えた状況になりました。

それに対してカセットテープは現在も販売されています。ただ新品で入手できるカセットデッキは機種が限られるため、程度の良い古いデッキは中古ショップやオークションで高値で取引されています。
TC-K555ESGのような高性能なカセットデッキが1台あれば、家庭に眠っている録音された「カセットテープの資産」の活用もできますし、CDからのダンビングやチューナーからのエアチェックといった、1980年代のオーディオライフを楽しむことができます。

兄弟機のTC-K333ESG(79,800円)とはシャーシの銅メッキを省略したり、音質に差を付けるためにオペアンプやコンデンサを変更しているだけで、外見だけでなく内容やスペックもほとんど同じになっています。



(音質について)
ワイドレンジで腰のある濃密な音です。当時の5〜6万円クラスのカセットデッキは音にメリハリがあったり、カセットテープの特性上、どうしても「ハイ落ち」になるのを誤魔化すため、高域を無理やり上げている感じがありましたが、さすが「ES」シリーズの高級機。そのようなことはありません。

当時、このクラスのデッキはソースとテープの再生音の差が少ないと言われていましたが、現在のCDプレーヤーはDACの解像度とレンジだけは上がっているため、これを使って録音・再生すると、どうしても差は出てきます。
もっともこのデッキを使って、新たにCDからのダビングやエアチェックしたくても、もはや高性能なカセットテープの入手が出来ないので仕方ありません。

ただカセットデッキがオーディオの主役のひとつだった頃に、FM放送で盛んに放送されていたコンサートなどのライブ音源はCD化されていないものが多く、今でもこれら貴重なライブラリーの再生にとても役に立ちます。


(フロントパネル)
フロントパネルのデザインは一新。センターメカをはさんで左側はカウンターと再生・録音・早送り・巻き戻しの操作ボタン。右側にはレベルメーターとドルビーHX-PROやバイアスなど録音用の調節ツマミがあります。

カウンターは分秒表示で減算機能を持つリニア電子カウンター。レベルメーターは-40dB〜+8dBの範囲でピーク値を表示し、ピークホールド機能がついた「ワイドレンジ・ピークプログラムメーター」です。またディスプレイON/OFFスイッチもついています。

カセットホルダーの「窓」(透明部分)は、TC-K555ESRに比べるとだいぶ小さくなり、テープ残量が確認できるだけとなりました。またその部分もスモーク化されています。

以前の窓はカセットテープ本体をすべて見せるという発想でしたが、TC-K555ESGからは、カセットテープの長期保管のために、テープをなるべく外光(昼の室内への反射光を含む)に当てないというふうにポリシーが変わったためです。

SONYのカセットテープでは、一足先にこのポリシーが取り入れられており、「Metal Master」と「UX Master」、「Metal-ES 」「Metal-S」などで、窓や透明部分の小型化が行われていました。




(シャーシと内部について)
シャーシは磁気歪の発生を防ぐというカッパータイト(銅メッキ)。ウェイトバランスやシャーシの剛性アップ、ブロック間の干渉の低減するために、カデッキと電源部を中央に、コントロール系とオーディオ回路を左右に配置したミッドシップドライブ・システム(センターメカ)が採用されています。ちょうど同じ頃から、CDプレーヤーもセンターメカの機種が増えてきていました。

中央にある電源トランスはけっこう大きく、ここまで必要なのかと思うほど。左側のシステムコントロールの回路は、メカとデイスプレィ用の電源ブロックとICがあるだけでシンプル。それに対し右側のオーディオ回路は、録音系と再生系の干渉を防ぐため2階建てとし、全段L/RツインモノのDCアンプ構成となっています。

ファインセラミック インシュレーター サイドウッド


(ヘッド・メカ)
録音・再生ヘッドにはLC-OFCをコイルに使用したレーザー・アモルファスのコンビネーションヘッドを搭載。消去ヘッドはS&F(センダスト&フェライト)ヘッドとなっています。

駆動系はテープ走行を安定させるクローズドループ・デュアルキャプスタンを採用。3層リニアトルクBSLモーターによるダイレクトドライブで、これによりワウ・フラッターの向上やテープのヘッドタッチの安定化をはかっています。リールモーターはDCモーターを使用しています。


TC-K555ESGは新しいメカを採用し、カセットのローディングはモーターを使用した「パワーローディング」になりました。ホルダーにカセットを入れておけば、プレイなどの操作ボタンを押すだけで、自動的にテープがローディングされます。

今までのSONYのカセットデッキというと、ソレノイド(アクチュエータ)でメカを動かしていたので、ヘッドの上げ下げの時に「ガッチャン」という音がするのが特徴でしたが、このパワーローディングの導入に伴い。メカの駆動もモーターとゴムベルト、ギヤによる駆動に変わって、音は静かになりました。

またテープ走行中の有害振動を抑えるカセットスタビライザーも装備されています。


TC-K555ESGのサーボはクォーツPLL・FGサーボで、メカの後ろにサーボ回路があります。キャプスタンモーターの制御はSONY製のIC「CX20174」。クォーツPLL回路は東芝製の「TC9142P」、FG(周波数発電機)のバッファアンプはNEC「μPC4557C」が使われています。

ヘッド・キャプスタン・ピンチローラー メカの裏側


(電源部)
電源トランスは大きなケース入り。下手なアンプのトランスぐらいの大きさがあります。

カセットデッキは磁気テープを扱う訳ですが、電源トランスから発生するリーケージフラックス(磁束漏れ)に対しては、高級機でも意外とルーズでした。SONYのESシリーズでも前モデルのTC-K555ESRまでは、十分な対策が取られていません。
このTC-K55ESGではトランス本体をケースで覆い、さらに磁気歪み対策としてシャーシ内部に銅メッキが施されました。

このケースは特殊樹脂を含浸させた高剛性なもので防振仕様となっています。別巻線は3系統で電源回路もメカとディスプレィ、録音、再生の独立電源となっています。

電源ケーブルは川崎電線のOFC丸形キャブタイヤコード(1.25mu)です。
トランスと電源回路 日本ケミコン 63V・4700μF X 2


(システムコントロール回路)
システムコントロール回路では録音、再生、早送り、巻き戻しなどのキー操作のコントロールと、ディスプレィ表示などの制御をしています。
メインはSONYのマークがついている三菱製のマイコン「M50964-220SP」で、他にはFLデイスプレィのドライバー「MSL9512RS」などのチップがあります。

システムコントロール回路
奥はメカ・ディスプレィ用の電源回路
マイコン M50964-220SP


(録音回路)
ノイズリダクションはドルビーBとCタイプを搭載。専用チップは自社製の「CX20188」を搭載しています。

ドルビーHX PROはドルビー研究所とB&O社が共同で開発したもので、録音時にテープヘッドで実効バイアスを検出し、これを基に1/1000秒単位でACバイアスを最適値にコントロール(低減)することで、高音域の周波数特性(周波数の拡大と出力)を改善しています。専用チップはNEC製の「uPC1297CA」です。

システムコントロール系からオーディオ系に漏れれる電流を排除するために、C-MOSバッファ「MC14050BCP」で電流を1/10000程度に低減しています。

音質の劣化を防ぐために純度99.997%以上の無酸素銅線、ESC-OCC線材が要所に使われています。

録音用回路 録音用回路

ドルビーB・C用 SONY CX20188 ドルビーHX PRO用 NEC uPC1297CA


(再生回路)
TC-K555ESRに比べてパーツをぐーんと増やして、回路自体を強化しています。

再生回路のドルビーICも「CX20188」が使用されています。新たにバイアス信号のフィルタリングに、GIC(Generalized Immittance converter)型のフィルターを搭載。フィルター用のオペアンプは現在でも音質には定評のあるTI製「NE5532P」です。

オペアンプは他にイコライザーアンプ用に、アナログデバイセズの「AD712JN」(TC-K333ESGはNE5532P)が使用されています。

※GIC型のフィルターはSONYのCDプレーヤーでも搭載されており、SCD-1やCDP-552ESD、CDP-553ESDなどで使用されています。

再生用回路 オペアンプ NE5532


(入出力端子)
入出力端子は通常のラインイン、ラインアウト端子の他に「CDダイレクトイン」端子がありますが、回路をバイパスするとかということではなく、単にラインインが2系統あり片方にそういう名前をつけただけです。専用リモコンは「RM-J702」。

入出力端子 リモコン RM-J702

1980年代の半ばともなるとCDプレーヤーの普及に伴いCDからカセットへのダビング需要が増えてきます。そんな中、新興ブランドの「That's」は三角窓のEVE-IVやCD-IVといった低価格なメタルテープを投入します。
これにTDKやマクセルなども応戦し、メタルテープの価格を下げたり、廉価版の新モデルを投入します。
しばらく静観していたSONYも1989年に廉価版のMETAL-XRを発売。さながらメタルテープ戦争のような状況へとなっていきました。


SONY TC-K555ESGのスペック

周波数特性 15Hz〜22kHz ±3dB(メタルテープ)
周波数範囲 10Hz〜23kHz(メタルテープ)
S/N比 56dB(Dolby オフ・メタルテープ)
73dB(Dolby C・メタルテープ)
ワウ・フラッター ±0.04%(Wpeak)
0.022%(WRMS)
消費電力 24W
外形寸法 幅470×高さ140×奥行380mm
重量 12.7kg











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