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SONY TC−K555ESX

1986年 定価105,000円

SONYのTC-K555ESXは1986年11月に発売された3ヘッドカセットデッキです。同年のFM fanのダイナミック大賞の部門賞に選ばれており、長岡鉄男の評価は「違いのわかる人にお勧めのハイCPデッキ」。

ライバル機はAKAI GX-93・GX912、KENWOOD KX-1100G、NAKAMICHI ZX-5、TEAC V-850X・V-900X、YAMAHA K-1X/K-1XWなどがありました。


1986年はCDとCDプレーヤーの本格的な普及期を迎えており、それに対応すべくデジタル時代の新しいリファレンス機として、開発されたのがTC-K555ESXです。

SONYのカセットデッキで、初めてメカを中央部に配置した「ミッドシップドライブ・システム」(センターメカ)を採用。内部を3等分するようにセパレーターを配置し、シャーシーの剛性アップと各ブロック間の相互干渉を防いでいます。

ヘッドは正確なアジマス精度が得られるSONY独自の独立懸架3ヘッドのレーザー・アモルファスヘッド(LC-OFC巻線)を搭載。
クォーツロックサーボにより制御されたBSLモーターによるダイレクトドライブと、クローズドループ・デュアルキャプスタンによって、安定したテープ走行が可能です。

録音バイアス値を調整できるバイアスキャリブレーションや、テープ感度による録音と再生レベルの差を無くす、録音レベルキャリブレーションを搭載しています。また録音イコライザーは高域特性を3段階に切り換えることができます。

ノイズリダクションシステムはドルビー B・Cタイプで、TC-K777ESII用に開発した新型のドルビーICを使用しています。オートテープセレクターを搭載しており、TypeI(ノーマル)、TypeII(ハイ・クローム)、TypeIV(メタル)に対応しています。他にはMPXフィルターやRECミュートなどの機能があります。


1986年ごろのカタログブックを見ると新商品で多いのが、簡単にカセットテープのダビングができるWカセットデッキで、ちょっとしたブームになっていました。
6〜7万円クラスの中級機は売れ筋で激戦クラス。3ヘッド・3モーターを搭載し、ワウフラッターなどのスペックも高級機と遜色ないレベルで、CDプレーヤーからの録音に便利な機能や、多彩な再生機能を持っていました。

それに対しTC-K555ESXは、テープの走行やヘッドタッチを安定させるための、頑丈なシャーシと駆動メカを持ち、余分な機能をそぎ落とし録音と再生の音質のみを追求したカセットデッキです。

兄弟機のTC-K333ESX(85,000円)とは、シャーシ、メカ、回路などほとんどの部分が共通です。違うのは録音イコライザーの切替えやキャリブレーションスイッチ、リモコン対応による操作ができないのと、音の傾向を変えるためコンデンサなどの銘柄を変更しています。



(音質について)
同年代の中級機 Vicor TD-V66と比べると、レンジや高音の伸びやキレなど、2ランクぐらい音質が違うという印象です。TC-K333ESXが無いので後継機のTC-K333ESRと音を比べると、TC-K333ESRはどちらかというと、ロックもOKのオールラウンドであるのに対し、TC-K555ESXは少し柔らかな傾向で、クラシックやジャズ向けという感じの音です。



(フロントパネル)
フロントパネルのデザインはセンターメカを採用したことで、前モデルのTC-K555ESUとは大きく変わりました。

センターメカをはさんで左側はカウンターと再生・録音・早送り・巻き戻しの操作ボタン。右側にはレベルメーターと録音レベルの調節ツマミ、ノイズリダクション切替スイッチ、バイアスを微調整できるバイアスキャリブレーション、ヘッドフォンボリュームなどがあります。

カウンターは減算機能を持つリニア電子カウンター。レベルメーターはピークホールド機能が付いています。



(シャーシと内部について)
ウェイトバランスやシャーシの剛性アップ、ブロック間の干渉の低減するために、メカと電源部を中央に、コントロール系とオーディオ回路を左右に配置した、ミッドシップドライブ・システム(センターメカ)が採用されています。

真ん中の2つのシールドパネルは、マイコンからの放射ノイズやトランスからの磁気ノイズを、右側にある録音・再生回路に侵入するのを防ぐとともに、両脇のサイドパネルといっしょに、フレームとして機能してシャーシの剛性をアップしています。

中央のメカや電源トランスがある部分は2重底となっており、トランスから発生する振動や、外部からの振動を押さえ込んで、メカのヘッドや走行系への影響を防いでいます。
シャーシの底板、サイドパネル、シールドパネルには防振鋼板が使われています。インシュレーターは樹脂製です。

内部は中央にメカと電源トランス。左側にはシステムコントロール回路と、メカとデイスプレィ用の電源ブロック。右側のオーディオ回路は、録音系と再生系の干渉を防ぐため2階建てとし、全段L/RツインモノのDCアンプ構成となっています。
底板 インシュレーター


(ヘッド・メカ)
録音・再生ヘッドはLC-OFC巻線のレーザー・アモルファスのコンビネーションヘッド。消去ヘッドはS&F(センダスト&フェライト)ヘッドです。

レーザー・アモルファスヘッドは、S&F(センダスト&フェライト)ヘッドの弱点を克服するために開発されたヘッドです。

センダストはメタルテープに対応するために必要な素材でしたが、コアに使用すると渦電流損失が大きく、高周波特性が悪化するなどの問題点がありました。このためコアの部分は従来どおりフェライトが使用されています。(VicterのSAヘッドのコアはパーマロイ)
またオーディオ用のヘッドとして使用するには加工がしずらく、耐食性を高めるために添加物が必要なため、本来の飽和磁束密度が得られないなどの問題もありました。

レーザー・アモルファスヘッドは非結晶のアモルファス合金を使用したヘッドです。アモルファス合金は磁束密度がフェライトの倍以上も高いのが特徴で、センダストと比べても10%以上高いです。
磁束密度が高ければ、細かい音までキッチリとテープに録音することが可能になります。また薄い帯状に製造できるため、ヘッド材料として積層ラミネートコアを作るのも容易でした。

弱点は磨耗性です。アモルファス合金は単純な硬度では、フェライトよりも高いのですが、磨耗性はフェライトよりもかなり劣ります。センダストとはほぼ同等ということになっていますが、実際は薄帯化したことにより、センダストよりも磨耗性は悪いようです。ただ磨耗さえしていなければ、音質的には「最強」とも言えます。

磨耗が進んだレーザー・アモルファスヘッドは、音質の劣化が大きくなるということで、一部のユーザーからはバッシングを受けていますが、これは他の素材のヘッドでも同じです。
現実的には少しの磨耗や片減りでは、音質的が悪化することはありません。ネットをよく見るとアジマス調整もしないで、音が悪いのを単にヘッドのせいにしている人が多いようです。


駆動系はテープ走行を安定させるクローズドループ・デュアルキャプスタンです。キャプスタンはクォーツロックの3層リニアトルクBSLモーターによるダイレクトドライブで、これによりワウ・フラッターの向上やテープのヘッドタッチの安定化をはかっています。リールのモーターはDCモーターです。メカの駆動はソレノイド(アクチュエータ)を使用しています。

カセットテープのローディング時に、自動的にテープのたるみをチェックして巻き戻す機能が搭載されています。

ヘッド・キャプスタン・ピンチローラー メカの裏側


(電源部)
電源トランスは28V・38VAで「ES」の文字が入っており、リーケージフラックス(磁束漏れ)対策として、四方を金属製のケースで囲っています。実際には磁束漏れは上方にも起こるので、これでも十分ではありません。

トランスは別巻線。電源回路もメカとディスプレィ、録音、再生の独立電源となっています。整流回路にはELNA DUOREXやニチコン VXなどのコンデンサが使われています。
電源ケーブルは並行コードですが、線材はOFCで極性表示が付いています。

電源回路は見た目以上に強力で、TC-K555ESX/333ESX以降のシリーズも、ほとんど同じ回路が使われています。
放熱量がかなりあるので、カセットデッキの上に他の機器を置いて長い間使用すると、内部に熱がこもってパーツの寿命を早めてしまうかもしれません。

電源回路 ELNA DUOREX 35V・6800μF X 2

メカとデイスプレィ用の電源回路 パワートランジスタ NEC D1585


(システムコントロール・サーボ回路)
キー操作とディスプレィ表示などの制御するシステムコントロール用のマイコンは、富士通製の「MB88517B」です。録音イコライザーの切替え用のICは三菱製の「M50761-417P」。

モーターのサーボはクォーツPLLサーボです。ICは東芝製のクォーツPLL・モーターコントローラー「TC9142P」と水晶振動子(クォーツ)、三菱製のロジックIC「M4069UBP」などが使われています。

システムコントロール・サーボ回路 マイコン MB88517B



(録音回路)
ノイズリダクションはドルビーBとCを搭載。専用チップは自社製の「CX20188」を搭載しています。

録音用回路 ドルビーやMPXフィルターの
スイッチ基板

ドルビーB・C用 SONY CX20188 バイアス OSC(オシレーター)ユニット


(再生回路)
再生回路のドルビーICも「CX20188」が使用。イコライザー用のオペアンプは三菱「M5220」です。 電源用のレギュレーターはNEC C2275とA985。コンデンサはELNAのオーディオ用コンデンサ「DUOREX」が使われています。
再生回路 オペアンプ 三菱 5220

レギュレーター NEC C2275 コンデンサ ELNA DUOREX


(入出力端子)
入出力端子はラインイン、ラインアウトが各1系統です。
リアパネル

上:TC-K555ESX(1986年) 下:TA-F333ESX(1986年)


(SONYのメタルテープ METAL-S)
1985年、SONYは1979年以来、販売されていた「METALLIC」」に代えて、「METAL-S」を発売。1983年に発売された上位モデルである「METAL-ES」もリニューアルしました。

METAL-Sは超微粒子メタル磁性体を、高密度充填したもので、METALLICに比べてMOLが1.5dB向上しています。

METAL-ESは超微粒子メタル磁性体「エクストラロイ」を、特殊分散技術で高密度充填したもので、METALLICに比べてMOLは2dB向上。ダイナミックレンジは4dB拡大されています。
当時の雑誌では最強のパワーとも言われたメタルテープで、録音テストでは+10dBをクリアしました。
METAL-S、METAL-ESともに、2種類の樹脂を一体成型した高精度広窓のハーフとDP-Uメカニズムにより、テープの安定走行を実現しています。

価格はMETAL-SはC-46が780円。C-60が990円。C-90が1350円。METAL-ESはC-46が890円。C-60が1100円。C-90が1450円。



SONY TC-K555ESXのスペック

周波数特性 20Hz〜20kHz ±3dB(メタルテープ)
周波数範囲 15Hz〜22kHz(メタルテープ)
S/N比 56dB(Dolby オフ・メタルテープ)
73dB(Dolby C・メタルテープ)
歪率 0.5%
ワウ・フラッター ±0.04%(EIAJ)
0.025%(WRMS)
消費電力 27W
外形寸法 幅430×高さ125×奥行350mm
重量 8.9kg













SONY・ソニー TC-K555ESX  B級オーディオ・ファン