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SONY TC−K555

     1981年 定価79,500円

SONYのTC-K555は1981年11月に発売された3ヘッドカセットデッキです。定価は108,000円と書かれているサイトがありますが、正確には79,500円です。またTC-K777の姉妹機と書いてあるところもあるようですが、確かに弟分にあたりますが中味はまったくの別物です。

SONYは1980年秋からカセットデッキの型番を変更し、7万円以下の中級・初級モデルや「デジックデッキ」には「TC-FX」。それ以上のクラスには従来からの「TC-K」の型番というようになりました。そしてこのTC-K555とTC-K777から「ES」シリーズへと発展していくことになります。

1981年はメタルテープと対応デッキが発売されて3年目となり、メタルテープの価格が下がり普及期となったことと、従来よりもノイズリダクションの効果が大きいドルビーCタイプが新たに登場したため、カセットデッキの新商品がたくさん発売されました。
ライバル機はAIWA AD-FF8、AKAI GX-F44R、Aurex PC-G8AD、DENON DR-F7、Lo-D D-88、Pioneer CT-780、TEAC V-3RX、Technics RS-M270X、Victor DD-77、YAMAHA K-9などがありました。


TC-K555のメカはクローズドループ・デュアルキャプスタン方式です。2組のキャプスタンとピンチローラーによって、テープの定速化とテープの振動を抑えることで、テープのヘッドタッチを安定させ、音質の向上をはかっています。

録音と再生ヘッドはS&F(センダスト&フェライト)ヘッドで、センダストの高い飽和磁束密度とフェライトの優れた高域特性を合わせ持っています。この録音と再生ヘッドは独立懸架されており、個別にアジマス調整ができるため、均一なテープタッチが可能です。この再生ヘッドと再生アンプはダイレクトカップリングとして、コンデンサによる音質劣化を無くしています。
消去ヘッドにはマグネフォーカスF&F4ギャップヘッドを搭載しています。

カセットテープのヒスノイズを低減するための、ノイズリダクションシステムは、従来からのドルビーNR Bタイプに加えて、新たにドルビーCタイプを搭載しました。ドルビーCタイプはBタイプに比べて、5kHzで約3倍の20dBのノイズ改善効果を実現しています。

録音と再生のフラットアンプは、全段L/Rツインモノ構造として、相互干渉を防いでいます。
ちなみに、この1981年にSONYは、ドルビーCタイプを搭載していないカセットデッキ向けに、ドルビーNR・Cタイププロセッサー NR-500(29,800円)を発売しています。

テープポジションはノーマル、クローム、フェリクローム、メタルの4段で、オートセレクターではなく、手動による切替となります。またノーマルテープのバイアス値の調整用に、バイアスアジャストボリューム(±20%)を装備しています。

機能としては、オートプレイ/メモリープレイ、オートスペース付きREC MUTE、MPXフィルター、タイマースタンバイなどがあります。


後継機はTC-K555ESです。「ES」の型番が付きましたが、ヘッドをレーザーアモルファスヘッドに変更したぐらいで、中味はほとんど変わりません。

(SONY TC-K555シリーズの歴史)

1981年11月 TC-K555 初代モデル。
1982年10月 TC-K555ES TC-K555の改良機。レーザーアモルファスヘッド搭載。
1984年5月 TC-K555ESII ESIIとなっていますが、回路部分はフルモデルチェンジ。
1986年11月 TC-K555ESX フルモデルチェンジ。ミッドシップドライブ(センターメカ)。クローズドループ・デュアルキャプスタン。
1988年10月 TC-K555ESR TC-K555ESXの改良機、スーパーバイアス。サイドウッド。
1989年11月 TC-K555ESG 新フロントパネル。新型メカ、ドルビーHX-PRO搭載。
1990年11月 TC-K555ESL 新フロントパネル。Lapisメカデッキ。鋳鉄インシュレーター。
1991年10月 TC-K555ESA TC-K555ESLの改良機。
1992年11月 TC-K555ESJ TC-K555ESAの改良機。ドルビーS、再生回路などを改良。
1994年 TC-KA5ES 新フロントパネル。Rコアトランス。再生回路などを変更。



(音質について)
後輩にあたるTC-K555ESXやTC-K555ESGには、さすがに見劣りする部分が出てきますが、そこは「555」モデル。5〜6万円台のモデルとは違って、明らかにランクが上がった、しっかりとした音が出ています。クラシックを聴くのも大丈夫です。

実質的な前モデルであるTC-K71(79,800円)と比べると、レンジや解像度など音質は大きく向上しています。大幅に強化されたTC-K555の録音・再生回路から考えると、TC-K71と中身がほぼ同じであるTC-K75(94,800円)の音も軽く超えているかと思います。

TC-K555ESXやTC-K555ESGとの違いを上げると、レンジの狭さと音が軽いこと。TC-K555ESX以降のモデルは、いわゆるバブルの物量機なので、メカ・回路ともにTC-K555とはかなりの差があり、これはしょうがないところ。音の太さあたりは電源回路の能力による差が大きいかもしれません。



(フロントパネル)
フロントパネルのデザインはオーソドックスですが、見やすく・わかりやすく・操作しやすいデザインです。

レイアウトは一番左には電源ボタン、タイマースタンバイ、イジェクトボタン、ワイアードリモコン端子。リモコンは別売でワイヤレスリモコンユニット RM-80(18,000円)、ワイヤードリモコン RM-50(6,000円)。

カセットホルダーは窓が大きく、中のテープが見やすいです。ディスプレィには電子カウンターとFLのピークレベルメーターやDOLBYなどのインジケーター。カウンターは減算機能を持つリニア電子カウンターで、レベルメーターはピークホールド機能が付いています。隣の小窓はソースモニターのインジケーターがあります。

その下にはバイアスを微調整できるバイアスキャリブレーションと、テープポジションとノイズリダクション切替スイッチ。その下がカウンターのリセットとメモリボタン。再生・録音・早送り・巻き戻し、PAUSEなどの操作ボタン。
右側には録音ボリュームに、ヘッドフォン端子とボリュームなどがあります。




(シャーシと内部について)
TC-K555シリーズは剛性と強度の高いシャーシが特徴ですが、TC-K555のシャーシは普通の中級機と同じレベルです。奥行きがないので、内部は基板とケーブルがギッシリです。

内部は左側にメカと電源トランス、電源回路やシステムコントロール回路。右側の基板は録音系と再生系の回路で、干渉を防ぐために2階建てになっています。


底板をはずした写真


(ヘッド・メカ)
録音と再生ヘッドはセンダスト合金(Si-Al-Fe)と、フェライトを組み合わせたS&F(センダスト&フェライト)ヘッドです。

S&Fヘッドはガード部にフェライトを使用し、コアにはHigh μタイプのフェライト。これにセンダスト合金のチップを組合わせた特殊3段構造となっています。

コア材は従来の積層構造では、ギャップずれが起こりやすくなるため、SONY独自の加工技術によるソリッド構造としています。ギャップ部は、高硬度石英被膜を特殊蒸着する新開発のギャップ形成法を採用し、ギャップの精度を高めて優れた周波数特性を確保しています。

センダスト合金には第4元素を添加して、耐蝕性や耐摩耗性を高めて、F&Fヘッドに迫る耐摩耗性を得ています。

この録音と再生ヘッドは独立懸架されており、個別にアジマス調整ができるため、均一なテープタッチが可能です。消去ヘッドにはメタルテープに対応するため、消去能力の高い、マグネフォーカスF&F4ギャップヘッドを搭載しています。

駆動系はテープ走行を安定させるクローズドループ・デュアルキャプスタンです。キャプスタン用のモーターはBSLグリーンモーターで、DD(ダイレクトドライブ)ではなく、ベルトドライブで2つのフライホイールを回転させています。
BSLグリーンモーターは、カセットデッキ用に設計されたもので、トルクむらやコッキング(トルクの脈動)の原因となるスロットやブラシが無いため、滑らかな回転が可能となっています。

ただし、クローズドループでありながら、ダイレクトドライブではないということで、ワウフラッターは普通の中級機と同じ、0.04%(WRMS)となっています。

サーボ制御はたぶんFGサーボだと思います。サーボ用の基板のICはSONY製の「CX069」。半固定抵抗がありスピードの調整ができます。

リールとメカ用はハイトルクDCモーターで、リール部には巻き径によってテンショントルクが変動するのを抑えて、安定したテープ走行を行うために、マグネットクラッチを装備しています。

ヘッド・キャプスタン・ピンチローラー メカ

BSLグリーンモーター サーボ回路


(電源部)
電源トランスは、リーケージフラックス(磁束漏れ)対策として、四方を金属製のケースで囲っています。

電源回路はメカとディスプレィ、録音、再生の独立電源となっています。また左右のチャンネルの相互干渉を抑えるために、±2電源方式を採用しています。
さらにFETバッファ回路を設置し、モーターが駆動する際(サーボ制御がかかる時)に、発生する「電圧のふられ」を低減しています。

電源ケーブルは並行コードです。

電源トランス 電源回路


(システムコントロール回路)
キー操作とディスプレィ表示などの制御するシステムコントロール用のマイコンは、沖電器製の「MSM58361RS」です。他にチップはコンパレーターのNEC「μPC339C」などがあります。
マイコン MSM58361RS


(録音回路)
録音・再生回路は録音系と再生系の干渉を防ぐために別基板とし、上下2階建て(録音が下段、再生が上段)にするとともに、基板の間には絶縁シートを設置しています。
回路自体も録音・再生アンプともに、全段をL/Rツインモノ構造として、相互干渉を抑えて音質の向上をはかっています。また再生アンプと再生ヘッドはダイレクトカップリングとし、カップリングコンデンサによる音質劣化を防いでいます。

ノイズリダクション(雑音低減方式)はドルビーNR BとCタイプを搭載しています。
新たに搭載されたドルビーCタイプでは、マスキング領域でバンド(帯域)を可変させる「スライディングバンド技術」を改良して、刻々と変化する音楽信号に対して、安定したノイズリダクション量を確保。これにより高域ノイズの変動が原因となる、ブリージング(息つぎ現象)の発生を抑えています。

エンコーダー部分には、高域のダイナミックレンジ改善のために、スペクトラルスキューイング(帯域制限回路)と、アンサチュレーションネットワーク(飽和防止回路)を搭載しており、高域MOL(最大出力)は15KHzで約8dB、9kHzで約4dBの改善効果があります。
また2段プロセシング技術により、各段10dBに動作を分割することで、ダイナミック動作領域を重複させないため高い処理精度を得ています。

ドルビー回路はまだ集積化への過渡期で、自社製のチップ「CX174-1」を、L・Rのチャンネルごとにアンプとスイッチ部に各1個、合計4個使用して回路を構成しています。CX174-1にはアンプの他にスイッチやバイアス回路、リミッター、V/I回路が内蔵されており、いろいろな用途に使用できますが、TC-K555では個別の機能しか使用していないようです。もしかするとCDプレーヤーのデュアルチャンネルのDACを、音質対策のためにMOMOで使用するのと同じなのかもしれません。

録音回路の上にある絶縁シート 録音用回路

ドルビー・ノイズリダクション用ICのSONY「CX174-1」。TC-FX77などに使われている「CX174-2」と、ほぼ同じ構造のようです。
CX174-1はドルビーB用のICで、ドルビーCの回路部分はディスクリートで組まれています。


(再生回路)
再生回路も「CX174-1」を4個使用してドルビー回路を構成しています。イコライザー用のオペアンプはJRC「2043DD」です。 電解コンデンサはELNA製の「RE」など。
再生回路 オペアンプ JRC 2043DD


(入出力端子)
入出力端子はラインイン、ラインアウトが各1系統です。
リアパネル

(SONYのメタルテープ METALLIC)
「METALLIC」は1979年に発売されたSONYの最初のメタルテープです。

磁性体はSONYが独自に開発した金属微粒子磁性粉を使用した「METAL POWDER」で、大きな残留磁束密度と「JHF」の約2倍という保磁力を持っていました。
これにより全帯域にわたるダイナミックレンジの拡大と、変調ノイズの減少、転写特性の向上を実現しています。

また段差ハブとスジ付きシートにより、テープの巻き乱れを減少させた「DP(Dual Protection Mechanism)メカ」を採用し、走行不良による変調ノイズや、走行ノイズも少なくしています。
当初は価格が高いこともあって、C-46のみの発売で価格は1,250円。ちなみにDUAD C-90の価格は1,200円。大卒の初任給は109,500円でした。
その後、メタルテープ対応デッキの普及により、ラインアップを拡充し値下げも行われました。値下げ後の価格はC-46が1,000円。C-60が1,150円。C-90が1,500円。


SONY TC-K555のスペック

周波数特性 25Hz〜17kHz ±3dB(メタルテープ)
周波数範囲 20Hz〜19kHz(メタルテープ)
S/N比 60dB(Dolby オフ・メタルテープ)
67dB(Dolby B・メタルテープ)
73dB(Dolby C・メタルテープ)
高調波歪率 0.5%
ワウ・フラッター 0.04%(WRMS)
±0.06%(Wpeak)
消費電力 22W
外形寸法 幅430×高さ105×奥行285mm
重量 6.1kg











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