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SONY TC-4300SD 1975年 定価72,800円

SONYのTC-4300SDは、1975年10月に発売された2ヘッドのカセットデッキです。

1974年11月にSONYは初めての正立透視型の、カセットデッキ TC-5350SD(99,800円)を発売します。TC-4300SDはその普及型モデルとして開発されたデッキです。

カセットの垂直ローディング自体は難しい技術ではなく、1960年代に発売されたラジカセで、すでに実用化されていました。ただ音質と正確な回転が求められるオーディオ機器となると、話は簡単ではなく、1970年代前半のカセットデッキは、ほとんどが水平型を採用していました。

1973年になるとNakamichi 1000(278,000円)が、ラジカセと同じように逆立のホールディングで登場。またコンポ型としてTechnics RS-676U(89,800円)が登場します。
RS-676Uは中のメカは水平型でしたが、コンポ型になったおかげで、オーディオラックの中に置けたり、カセットデッキの上にチューナーを重ねたりと、設置性の良さで評判となり、他のメーカーからも類似品が発売されるようになります。

そこに登場したのがSONY TC-5350SDです。最初は正立透視型といわれても何のことかわかりませんでした。当時はラジカセの「逆立」が当たり前でしたし、それが正しい利用方法だと思っていたためです。

何しろTC-5350SDが出るまで、カセットの「正立」など誰も見たことがなかった訳で、回転性能に不安を覚える人もいました。そこで、説明によく使われたのがカセットテープのラベルの向きです。
ラジカセにカセットを入れるとラベルは反対になり、文字は逆さになります。逆にTC-5350SDにカセットを入れると、ラベルの文字はもちろん、テープのメーカーや商品名もちゃんと見えます。こうしてカセットテープの向きは「正立」が正しいということを認識されました。

さらに水平型のカセットデッキに比べて、ヘッドのクリーニングや消磁が簡単にできるというメリットもありました。


TC-4300SDのヘッドはSONY独自のF&F(フェライト&フェライト)ヘッドです。F&Fヘッドはコアとガード部にフェライトを使用し、高い硬度のガラスで融合溶着したヘッドで、フェライトならではの高域特性の良さと、パーマロイの約200倍という摩耗への耐久性があり、片減りがしにくく、ギャップエッジの崩れが起きにくいなどのメリットがありました。

メカのモーターの回転はFGサーボで制御しています。ただモーターは1モーターで、スピンドルとリールの回転も行っているため、ワウフラッターは0.08%(WRMS)と精度は高くありませんが、当時としてはこれがふつうでした。

ノイズリダクションシステムはドルビーBタイプで、MPXフィルターも搭載しています。

テープセレクターはバイアス3段とイコライザー3段でノーマル、クローム、フェリクロームに対応しています。その他にはオートシャットオフ(オートストップ)機能を搭載しています。



(音質について)
もう40年以上前のデッキですが、意外と音がクリアです。もうひとつ驚いたのが高音が良く伸びること。高音の良さはもともとフェライトヘッドの特徴のひとつですが、それを見事に活かしたというところでしょうか。
低音は締まっており、これも良くでます。1970年代のユーザーは、オーディオ機器を選ぶ時に、低音が重要な基準だったので、当たり前とも言えますが。左右のセパレーションも良いです。

それでもレンジや解像度となると、やはりメタルテープ登場後の、1980年代のデッキにはかないません。

中味を見た時にこの小さな基板でだいじょうぶかとも思いましたが、大卒初任給89,300円の時に、72,800円という価格ですので、音はしっかりとしています。



(フロントパネル)
フロントパネルはTC-5350SDのデザインを元に、大型のレベルメーターやレバースイッチを装備するなど、1970年代のTC-Kシリーズのベースとなりました。

全高は168mmと1980年代のデッキに比べるとかなり背が高いです。ヘアライン仕上げのパネルに、スイッチノブやツマミもヘアライン仕上げとなっており、高級感があります。

レイアウトは左側に電源ボタンとヘッドフォン端子。カセットホルダーの下には操作用のピアノボタンが並んでいます。ボタンには押し間違いの防止のために、一部に色が付けられています。
カセットホルダーの横には3ケタのテープカウンターと、タイマースタンバイスイッチがあります。

右側には大型のVUメーターと録音のインジケーターがあります。ドルビーNR(Bタイプ)のスイッチはON/ON(MPXフィルター)/OFF。リミッタースイッチ。
テープセレクタはバイアスとイコライザーを独立して切り替えるタイプで、ノーマル、クローム、フェリクロームの3ポジションに対応しています。

録音ボリュームはラインインとマイクが独立。外部出力用のボリューム(ヘッドフォンの音は調整できません)。入力端子はラインイン(ステレオ標準プラグ)とマイクの入力端子(標準プラグ)があります。




(シャーシと内部について)
シャーシ(キャビネット)は鋼板製です。オーデォ機器の重ね置きが当たり前の時代だったので、天板は厚めのしっかり物です。また底板も厚めの鋼板が使われており、プレスにより強度が高められています。

メイン基板は、この頃のSONYお得意の裏返し設置。基板は小さく内部はいわゆるスカスカです。
基板が小さいといっても抵抗はすべて立ててあるなど、パーツが高密度で実装されているので、簡易な回路という訳ではありません。録音回路も再生回路も、そこそこパーツの数は投入されています。ただし電源部だけは本当に簡易な回路です。

左側には電源トランスとメカ、サーボ回路があります。メイン基板には録音、再生、ドルビー、電源の回路とVUメーター用の回路があります。フロントパネル裏の小さな基板は、いわゆるスイッチ基板ですが、録音回路の一部があります。


底板


(電源回路)
電源トランスは小型で、リーケージフラックス(磁束漏れ)対策のために、金属ケースに入っています。電源回路は整流だけの簡易な回路という感じです。電源コードは細い並行ケーブル。


電源トランス 電源回路


(ヘッド・メカ)
ヘッドは録再と消去の2ヘッドで、録再ヘッドには高域特性の良い「F&Fヘッド」が使われています。

F&FヘッドはSONYが独自開発したもので、コアとガード部にフェライトを使ったオールフェライト構造で、パーマロイに比べて耐久性が高く、ヘッドの片減りやギャップエッジの崩れが少ないという特徴があります。ヘッド表面はブラックミラー仕上げとして、良好なテープのヘッドタッチとゴミの付着を防いでいます。

ヘッドのアジマス調整はホルダーのドアを外して行います。


F&Fヘッド


(メカ)
正立透視型のメカです。正立透視型が可能となったのは、メカの性能の向上とカセットテープの高品質化があります。

正立透視型では水平型に比べてカセットのホールドをしっかりしないと、ヘッドのテープタッチが安定せずアジマスのズレを招く心配があります。

またモーターの回転精度を高めないと、早送りや巻き戻しの際に巻乱れを起こし、それが原因で録音・再生時にテープ走行が安定しなかったり、モーターに負担を掛けることにもなります。
そのためカセットデッキ側はトルクの大きなモーターが必要で、大型のものが搭載されていました。

カセットテープの規格はフィリップスにより決められていましたが、1970年代の初めでも、カセットのハーフの精度が悪く、安物だと裏表の接合が少しずれていることもありました。またシートの摩擦が大きくハブ(リール)の回転に力が必要だったり、ガイドローラーの精度の問題もありました。

カセットテープのメーカーは1970年代に入って、クロームテープやフェリクロームテープなど、新しい磁性体の開発とともに、カセットハーフの高精度化や、内部のシートの摩擦低減を行い、品質が大幅に向上しました。


TC-5350SDでは水平デッキでも使われていた、大きなヒステリシス・シンクロナスモーター(ACモーター)が使われていましたが、TC-4300SDでは小型のハイトルクモーターを使用しています。

モーターの回転軸には2本のベルトが掛けられています。1本はキャプスタンとサプライ用(巻き戻し)のリールの回転用で、普段はフライホイールとキャプスタンを回し、巻き戻しボタンが押された時には、ギヤが噛んでリールに回転を伝達します。

もう1本はテイクアップ側のリールとオートシャットオフの検知用メカに動力を伝えています。再生・録音や早送りホタンが押されると、アイドラーがリールのハブに接触、回転させてテープの巻き取りを行います。

オートシャットオフはリールの回転に合わせて、カムがストッパーを上下させており、テープが終了するとカムが1回転してからストッパーが止まり、ピアノボタンのロックを解除することで、オートシャットオフを実現しています。

モーターはFG(Frequency Generator)サーボで制御されています。FGとは「周波数発電機」という意味で、モーターの回転軸にNとSのマグネットを装着した板を取付けて、その磁界をFGセンサで検出しパルスとして出力します。それをロジックICなどで基準周波数とチェックして、スピードのズレを検出しモーターのスピードをコントロールしています。

カセッホルダーの開閉はソフトイジェクト。カタログではエアダンパーとなっていますが、実際はバネを使った機構で、SONYのカセットデッキでよく発生するゴムパーツの劣化による「ロケットオープン」は発生しません。

メカ メカ

カセッホルダーの開閉メカ サーボ回路


(録音・再生回路)
ドルビー回路にはICが使われていますが、その他の録音、再生回路はディスクリート構成です。どの回路も左右独立のMONO構成で、バイアス部分の回路は、他からの干渉を受けないようにシールドケースに覆われています。

回路の半固定抵抗で調整できるのは、録音レベル、バイアス、再生レベルとイコライザー、そしてVUメーターです。


録音回路 バイアス回路

再生回路 ドルビー回路


(入出力端子)
入出力端子はライン入力と、ライン出力は固定と可変があります。RCA端子以外にDIN端子も装備しています。
電源コンセントはTC-4300SDの電源スイッチと連動したものが1口、非連動が1口です。

リアパネル


(富士フィルムのカセットテープ FX)
富士フィルムは1960年代からオープンリールテープを生産していましたが、1969年からカセットテープの生産をスタートします。1971年にノーマルタイプの「FM」、1972年にクロームタイプの「FC」を発売します。

そして1974年に発売されたのが「FX」です。FXは磁性体に純粋なガンマヘマタイト(γ-Fe2O3)や、新しく開発したバインダーシステムと、走行メカニズムを採用したテープで、ノーマルタイプでありながらクロームテープに匹敵する性能を持っていました。
1976年にはFXの弟分の「FX Jr」と、2層塗りの「FX DuO」が発売されました。



SONY TC-4300SDのスペック

周波数特性 20Hz〜16kHz フェリクロームテープ
20Hz〜16kHz クロームテープ
20Hz〜14kHz ノーマルテープ
S/N比 59dB(Dolby オフ・フェリクローム)
55dB(Dolby オフ・クローム)
53dB(Dolby オフ・ノーマル)
Dolby-B使用により1kHzで5dB改善、5kHz以上で10dB改善。
ひずみ率 1.7%(フェリクロームテープ)
ワウ・フラッター 0.08%(WRMS)
消費電力 6.5W
サイズ 幅430×高さ168×奥行310mm
重量 7.5kg













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