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SONY TC−FX705

     1983年 定価62,800円

SONYのTC-FX705は1983年11月に発売されたカセットデッキです。

この年のカセットデッキは、各社ともにオートリバースに力を入れており、SONYも売れ筋の価格帯に、TC-FX707R(79,800円)、TC-FX606R(リニアスケイティング方式・69,800円)、TC-FX505R(54,800円)と3つのオートリバース機を投入しました。

TC-FX705は型番や外見からわかるとおり、TC-FX707Rのシングルウェイモデルという位置付けのデッキです。ただ商品ラインアップとしては、TC-FX600(59,800円)の後継機とするために、価格は1万7000円も安い62,800円に設定されました。

ライバル機はAKAI GX-R6、TRIO KX-880SR、Victor KD-V6、Technics RS-B70など。


TC-FXシリーズは「デジックデッキ」と呼ばれ、1980年から登場したカセットデッキのシリーズで、TC-FX1010を除く中〜初級機に型番が使われました。※
LEDやFLのレベルメーター(当時はデジタルメーターとかデジタルバーグラフと呼ばれていた)と、ロジックコントロールメカを装備していたことから、「デジック」という名前になったかと思います。1981年からはデジタルカウンター(電子カウンター)も搭載されました。

TC-FX705は録音レベルの調整に、電子式のアッテネータを搭載したカセットデッキです。
FM放送からの録音(エアチェック)の際に、放送局によってソースの入力レベルにかなり差がありました。このため録音のたびボリュームを操作する必要がありましたが、当時のデッキで良く使われていたスライドボリュームは壊れやすく、またガリも出やすいものでした。
電子アッテネーターはこれを解消するとともに、2つの録音レベルをメモリできました。またオートアッテネーター(自動録音)機能もついていました。

ただ電子式アッテネータはコストが高かったのか、その後のモデルでは、また普通のボリュームになってしまいます。
他にはオートフェーダー、録音ミューティングなど、録音や編集に便利な機能も備えていました。

ディスプレィにはテープの録音・再生時間がわかる減算機能・プリエンドウィンカー付きのリニア電子カウンターを装備。応答性能の早いFL管によるピークプログラムメーター、オーバーしたレベルが数値で表示されるデジタルレベルモニターがあり、RECバランスやLINE OUT/PHONEレベルもデジタル表示が可能でした。

操作系では再生、巻き戻し、早送り、カウンターリセットなど8ステップまで予約できるファンクションメモリーや前後9曲までの頭出しができるAMS(オートマチック・ミュージック・センサー)、ブランクスキップ、ミュージックスキャンなどを搭載しています。

録再ヘッドにはレーザーアモルファスヘッドを採用。ノイズリダクションシステムはドルビーBとCタイプ。カセットテープを自動判別してバイアスとイコライザーを自動設定する、オートテープセレクターも装備しています。

1983年当時のカセットデッキとしては、録音・再生系の機能がとりわけ充実しており、また電子カウンターや応答性の早いFLレベルメーター、電子アッテネーター、オートアッテネーター、メモリ機能など、デジック・デッキの高級機 TC-FX1010にも迫るSONYらしい「ハイテクマシーン」でした。


※あまり知られていませんが、従来からのKシリーズ(TC-K)には「THE・DECK」という愛称が付けられていました。



(音質について)
典型的な当時のSONYサウンドという感じ。音は少し硬めでレンジは広いですが、音場はやや狭いです。ジャンルでいうとロックやジャズ向き。
62,800円という価格ですが、ベースは79,800円のTC-FX707Rで、それを回転ヘッドから固定ヘッドにしただけ。音はしっかりとしています。



(フロントパネル)
フロントパネルはTC-FX707Rとほぼ同じですが、オートリバースではないので再生ボタンはひとつで、関連するファンクションキーやインジケータはありません。その他は同じです。

ディスプレィには録音や再生時間がわかるリニア電子カウンターとFL管のピークプログラムメーター。右端にはデジタルレベルモニターがあり、電子アッテネーターの設定レベルやオーバーレベル、ラインアウト/ヘッドホン出力のレベルやバランスなどを表示できます。

オートテープセレクターを搭載していますが、おり、ポジション用の検出口のないカセットテープにも対応するため、TypeT(ノーマル)、TypeU(ハイ・クローム)、TypeV(デュアド・フェリクローム)、TypeW(メタル)の切替えスイッチがあります。




(シャーシと内部について)
シャーシ(キャビネット)は普通の鋼板製。この頃の中級機としては一般的なものです。

内部の基板はSONYが1970年代から採用している2階建て構造。録音・再生回路への干渉を防ぐのが目的で、2枚の基板はある適度な間隔を空けて設置されています。
1階部分の基板がシステムコントロール回路と電源回路。2階部分はオーディオブロックで録音・再生関係の回路となっています。

メカのキャプスタン用のモーターはDCサーボモーター、リール用はDCモーターとなっています。メカの駆動はソレノイド(アクチュエータ)です。


回路のドルビーB・C用のICはSONY製の「CX20028」、録音、再生用のアンプは同じく「CX10032A」が使われています。ヘッドフォン用のオペアンプは三菱製「M5218L」です。システムコントロール用のマイコンは「CX565-031」です。

電源回路はメカや回路別に分けた独立電源。電源トランスはリーケージフラックス(磁束漏れ)対策のために、ケースで四方を囲っています。電源コードは細い並行コードです。

電源回路

オーディオブロックの基板 メカブロック


(ヘッド)
ヘッドは録再と消去の2ヘッドです。録再ヘッドには高い磁束密度と磁気リニアリティを持つという非結晶合金の「レーザーアモルファスヘッド」。消去には「F&Fヘッド」が使われています。またカセットハーフをしっかりと保持するスタビライザーも装備されています。

レーザー・アモルファスヘッドは、1981年からデッキに搭載され始めたヘッドで、S&F(センダスト&フェライト)ヘッドの弱点を克服するために採用されたヘッドです。

センダストはフェライトよりも磁束密度が高いものの、コアに使用すると渦電流損失が大きく、高域特性が悪化するなどの弱点がありました。またオーディオ用のヘッドとして使用するには加工がしずらく、耐食性を高めるために添加物が必要なため、本来の磁束密度が得られないなどの問題がありました。
そのためS&Fヘッドでは、コアに従来どおりフェライトが使用され、センダストはテープとのタッチ面だけに使用されていました。

レーザー・アモルファスヘッドは非結晶のアモルファス合金を使用したヘッドで、磁束密度がフェライトの倍以上も高く、センダストをも上回っていました。さらに薄い帯状に製造できるため、渦電流損失を少なくできるなど、ヘッド材料として積層ラミネートコアを作るのに適していました。

音質的にも従来のS&FヘッドやF&Fヘッドよりも優れていたため、SONYの副社長だった大賀典雄氏が、トップダウンでカセットデッキへの搭載を決定したという逸話があります。



(入出力端子)
入出力端子はライン入力とライン出力。その隣にリモコン端子があります。リモコンは別売で有線のリモコンユニット(RM-50 6,000円)、フットリモコン(RM-51 8,800円)やプレーヤーなどとのシンクロユニット(RM-65 3,000円)なども用意されていました。



  左:1983年 That's FX この年からThat'sがカセットテープを販売。
  中:1984年 FUJI GT-1 日本初のカーステレオ専用カセットテープ。
  右:1985年 National Angrom G-DU TYPETの真空蒸着のカセットテープ。

SONY TC-FX705のスペック

周波数特性 30Hz〜17kHz ±3dB
(メタル、フェリクローム、クロム)
20Hz〜17kHz ±3dB
(ノーマル)
S/N比 59dB(Dolby オフ・メタル)
66dB(Dolby B・メタル)
72dB(Dolby C・メタル)
高調波ひずみ率 0.5%
ワウ・フラッター 0.04%(WRMS)
消費電力 22W
サイズ 幅430×高さ105×奥行275mm
重量 5.9kg












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