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SONY TC−FX600

    1982年 定価59,800円

SONYのTC-FX600は1982年11月に発売された、レーザーアモルファスヘッドを搭載したカセットデッキです。

当時のことを良く知らなかったり、貨幣価値をわかっていない人が、59,800円クラスを「初級機」などと言ったりしますが、メーカーの位置付けは「中級機」です。

今でこそ、オークションや中古ショップでは高級機が人気ですが、当時のカセットデッキの売れ筋は、この「598」の価格帯で、まさに激戦地帯でした。

ライバル機はAIWA AD-FF5、AKAI GX-F31、Aurex PC-G6AR、DENON DR-M1、DIATONE DT-51、Lo-D D-X7、marantz SD420、Nakamichi BX-1、ONKYO TX-44X、Pioneer CT-X7、SANSUI D-370、TEAC V-70C、Technics RS-B70、TRIO KX-660R、Victor KD-D55、YAMAHA K-500などがありました。


前モデルのTC-FX66(1981年・59,800円)とTC-FX600の違いは、ヘッドがS&Fヘッドからレーザーアモルファスヘッドに変更、FL菅によるピークレベルメーター、AMSの搭載などです。

実はTC-FX600の中味は1年前に発売されたTC-FX77(69,800円)で、フロントパネルのデザインを変更し、リモコン端子をリアパネルに移動しています。
中の回路とメカ、シャーシはTC-FX-77と同じで、TC-FX600ではオーディオ回路のコンデンサのグレードを落とし、ヘッドホンボリュームがありません。
中味が同じなのでスペックもほとんど同じですが、価格は1万円の値下げとなりました。



TC-FX600のヘッドは「レーザーアモルファスヘッド」です。非結晶のアモルファス合金を使ったヘッドで、磁束密度がフェライトの倍以上も高く、センダストをも上回っていました。さらに薄い帯状に製造できるため、渦電流損失を少なくできるなど、ヘッド材料として積層ラミネートコアを作るのに適していました。

レーザーアモルファスヘッドの音質を活かすために、ヘッドと再生アンプはダイレクト結合のDCアンプとして、カップリングコンデンサーを省き、音質の劣化を防いでいます。

ノイズリダクションシステムはドルビーBとCタイプを搭載。テープセレクターはオートセレクターではなく手動。 ポジションはメタル、フェリクローム、クローム、ノーマルの4段です。

メカは低共振フライホイールを採用し、キャプスタン用にはDCサーボモーター、リール・メカ用にDCハイトルクモーターを使用しています。

他には頭出や選曲ができるAMS(オートマチック・ミュージック・センサー)や、リピート機能、カウンターメモリー、RECミュートなどの機能も備えていました。


使用上の注意点としては、経年によりカセットホルダーが開く時にロケットオープンになることと、スライド式の録音ボリュームにガリが出やすいこと。スライド式ボリュームの故障は当時から問題になっており、後継機のTC-FX705では電子アッテネーターが搭載されています。



(音質について)
少し硬めの音でメリハリがあります。レンジはそんなに広くありませんが、アモルファスヘッドなので高音は伸びます。低音はそこそこ締まっています。

ジャンルとしてはロック、フュージョン、J-POPなど向きます。
いわゆる80年代の「洋楽ブーム」の最中ですので、量販機の音の「ねらい目」としては、ここら辺りでしょう。中級機として、いちおうクラッシックやジャズも聴けますが、それがメインの方はESシリーズへ、どうぞという感じです。

音の傾向は基本的にはTC-FX77と同じですが、TC-FX600はレンジが少し狭く音のキレもちょっと弱いです。回路は同じですがコンデンサのグレードの違いが、やはり出ています。

当時のカセットデッキは競争が激しく、1年たつと音質の向上が著しい時代でした。各社ともに毎年、お金をかけて新商品を開発した訳ですが、SONYはそれだったら
開発費の償却が終わっている、69,800円のTC-FX77の回路やメカを利用したほうが安上がりだと考えたのかもしれません。

でも、音がまるっきり同じではTC-FX77のお客さんに申し訳ないということで、コンデンサのレベルを落として、音質も少し落としたのだと思います。



(フロントパネル)
デザインでもTC-FX77を踏襲しており、ボタンやボリューム、ディスプレィのレイアウトは、ほとんど変わっていません。

特徴的なのはシートスィッチを採用したことです。当時のSONYは未来的なデザインを志向して、フロントパネルのフラット化を進めており、シートスィッチは上級機のTC-FX1010やミニコンポの「リバティ」などでも採用されていました。SONY以外ではTEACがV-R1などにシートスイッチを採用しています。

ただシートスイッチは見た目はともかく、操作性が悪く当時の物はシート部分の耐久性も良くなかったため、後継機のTC-FX705では以前のスイッチに戻してしています。


レイアウトは左側から電源、タイマー、カセットホルダーの開閉ボタン。それにヘッドフォン端子(ヘッドホンボリュームはありません)。
ちなみにTC-FX77では、この場所にリモコン端子がありましたが、TC-FX600ではリアパネルに移動しています。

カセットホルダーをはさんで、ディスプレィには録音や再生時間がわかるリニア電子カウンターとFL管のピークプログラムメーター。その横にドルビーのインジケーターがあります。

電子カウンターには「プリエンドウインカー」という機能が付いており、録音時にテープの残量が終わりに近づくと、カウンターの数字が1秒間隔で点滅します。

ディスプレィの下はカウンターリセット、メモリー、AMS、リピートのボタン。その隣には横一列に並んだ録音、再生、早送り、巻き戻し、ポーズなどの操作ボタン。

下にはTypeT(ノーマル)、TypeU(クローム)、TypeV(デュアド・フェリクローム)、TypeW(メタル)のテープポジションの切替えスイッチ。録音ボリュームは100mmのロングスライドボリュームです。

一番右にはドルビーのスイッチ(B・C・OFF)とヘッドフォンボリューム。マイクの端子(標準プラグ)があります。




(シャーシと内部について)
シャーシ(キャビネット)のサイズ、構造ともにTC-FX77と同じです。

鋼板製で真ん中にシールド板を置いて、デジタル回路からオーディオ回路への干渉を防ぐとともに、リアパネルや底板と結合することで、ビーム(梁)の役目もしており、シャーシの剛性を高めています。

内部は左側に電源トランスと電源回路。ロジックコントールをするためのマイコンがあるシステムコントロール回路(デジタル回路)、そしてメカがあります。右側には録音と再生の回路があります。



(電源回路)
電源トランスはリーケージフラックス(磁束漏れ)対策のために、ケースで四方を囲っています。

左右のチャンネルの相互干渉を抑えるために、±2電源方式を採用しており、FETバッファ回路を搭載して、モーターが駆動する際(サーボ制御がかかる時)に、発生する「電圧のふられ」を低減しています。電源ケーブルは並行コードです。

レギュレータは真ん中のシールド板に4個取り付けられており、シールド板がヒートシンクの役目もしています。

電解コンデンサは日本ケミコンの「SL」がメイン。TC-FX77ではオーディオ用の電源部にはオーディオ用コンデンサが使われていましたが、TC-FX600は「SL」で、グレードが下げられています。

それでも、貧弱なTC-FX66の電源部に比べると、倍近く強化されたことになります。

電源トランス メカ・デジタル回路用の電源

シールド板に取り付けられたレギュレータ。


(システムコントロール回路)
マイコンは富士通製の「MM8843 590」と「MM8843 594」の2つが使われています。たぶん片方が再生や録音、早送り、巻き戻しなどのメカのコントロールを行い、もうひとつは電子カウンターとFLレベルメーターなどの制御をしていると思います。

ロジックIC(NOTゲート・HEXインバータ)は、富士通「MB84049B」「MB84069B」と東芝「TC40H004P」の3つ。

システムコントロール回路 マイコン 富士通「MM8843 594」


(ヘッド・メカ)
ヘッドは録再と消去の2ヘッドです。録再ヘッドには高い磁束密度と磁気リニアリティを持つという非結晶合金の「レーザーアモルファスヘッド」。消去ヘッドには「マグネフォーカス4ギャップF&Fヘッドヘッド」が使われています。

レーザー・アモルファスヘッドは、S&F(センダスト&フェライト)ヘッドの弱点を克服するために採用されたヘッドです。

センダストはフェライトよりも磁束密度が高いものの、コアに使用すると渦電流損失が大きく、高域特性が悪化するなどの弱点がありました。
またオーディオ用のヘッドとして使用するには加工がしずらく、耐食性を高めるために添加物が必要なため、本来の磁束密度が得られないなどの問題がありました。
そのためS&Fヘッドでは、コアに従来どおりフェライトが使用され、センダストはテープとの接触面だけに使用されています。

レーザー・アモルファスヘッドは、非結晶のアモルファス合金を使用したヘッドで、磁束密度がフェライトの倍以上も高く、センダストをも上回っていました。
また薄い帯状に製造できるため、渦電流損失を少なくできるなど、ヘッド材料として積層ラミネートコアを作るのに適していました。


メカはキャプスタン用のモーターがDCサーボモーター、リール用はDCモーターとなっています。フライホイールはデッドニング(防振対策)を施した低共振フライホイールです。

メカはソレノイド(アクチュエイター)で駆動しているので、音はうるさいですが、ゴムベルトが切れてヘッドが上がらないという症状は出ません。
メカで使われているゴムベルトはキャプスタンのフライホイール駆動用だけです。

メカの裏側にはサーボ基板があります。

ヘッド・キャプスタン
ピンチローラー
メカ


(録音・再生回路)
録音・再生回路はDCアンプ構成となっています。

ドルビーノイズリダクション用のICはSONY製の「CX174-2」です。CX174-2はドルビーBタイプ用のICですので、ドルビーCタイプの追加部分はディスクリートによって組まれています。

回路の半固定抵抗(調整ボリューム)はREC(録音)レベル、PB(出力)レベル、レベルメーターの感度だけで、再生イコライザーはありません。

録音・再生回路 バイアス OSC(オシレーター)
ユニット

ドルビー・ノイズリダクション用ICのSONY「CX174-2」。録音の左・右ch、再生の左・右chの全部で4個が使われています。


(入出力端子)
入出力端子はライン入力とライン出力(固定出力)です。それにリモコン用の端子があります。

リモコンは別売でワイヤレスリモコンユニット(RM-80 18,000円)や有線のリモコン(RM-50 6,000円)、フットリモコン(RM-51 8,800円)がありました。


SONY UCX

1982年に発売されたハイポジション用のカセットテープで、「JHF」の後継モデルとなります。
新開発の高性能超微粒子磁性体により、JHFに比べてMOLは中低域で2dB、高域で1dB向上。感度は全帯域で1dB向上しています。



SONY TC-FX600のスペック

再生周波数 20Hz〜19kHz(メタルテープ)
周波数特性 30Hz〜17kHz ±3dB
(メタル、フェリクロームテープ)
S/N比 59dB(Dolby オフ・メタル)
66dB(Dolby B・メタル)
72dB(Dolby C・メタル・フェリクローム)
高調波ひずみ率 0.5%
ワウ・フラッター 0.04%(WRMS)、±0.06%(W Peak)
消費電力 21W
サイズ 幅430×高さ105×奥行275mm
重量 5.6kg


















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