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TEAC V-R1

      1981年 定価89,800円



TEAC V-R1は1981年11月に発売されたオートリバースのカセットデッキです。

f-650R(1979年発売・95,000円)の後継機ですが、1981年当時はまだオートリバース機の数が少なく、実質的なライバル機になりそうなのは、1万円安いAKAI GX-F44Rぐらいです。シングルウェイ機ではAIWA AD-F88、DENON DR-F8、ONKYO TA-7X、TRIO KX-1000D、Victor DD-7など。


1980年にTEACはそれまでの、量販モデルの主力「fシリーズ」に代えて「Vシリーズ」を発売します。メタルテープへの対応やロジックメカなどを装備し、デザインもそれまでの質実剛健なものから、時代にあった薄型のデザインに変更されました。この中からはV-9 通称「カメレオン」(59,800円)が、その印象的なデザインから注目を浴びます。

Vシリーズはその後もTEACの主力シリーズとして生産・販売されますが、オートリバース機は1984年からRシリーズと型番を変えて発売されました。


V-R1は「4チャンネルヘッド」※を使用したオートリバース機です。オートリバースの方式にはヘッドが回転する「ロータリー方式」や、ヘッドが前後に移動する「リニアモーション方式」。ヘッドを動かさずにカセットテープ自体を回転させるAKAIの「Invert-O-Matic」やNakamichiの「ユニ・ディレクショナル・オートリバースメカニズム」などがあります。

4チャンネルヘッドのメリットはヘッドが固定式のため、テープの安定した走行が可能で、ワウフラッターなどを低くできました。またヘッドを動かす機構がないため、故障の心配が少ないということもありました。

そのかわり弱点もありました。ひとつはロータリー方式やリニアモーション方式に比べて、アジマスずれに敏感でカセットのA面を再生中でもほんの少しズレると、B面の信号を拾ってしまいます。
もうひとつは小さなヘッドの中に、1チャンネル当たり2つのコアが必要なため、8つのコアを納めなくてならず、精密さが要求されとコストもかかりました。

特に問題なのがアジマスずれで、同じ4チャンネルヘッドを搭載しているNakamichi DRAGONは、自動アジマス調整機構「NAAC」(ナカミチ・オート・アジマス・コレクション)を搭載して、この問題を解決しています。

結局、この後はコストが安くテープ走行の安定性もそこそこ確保できるということで、ロータリー方式が主役となっていき、TEACもロータリーヘッドを採用します。

テープの反転は、赤外線を利用したTEAC独自のI.R.コンビネーション・テープセンサーで、テープエンドを感知し、約0.4秒でクイックリバースを行います。
録音・再生ヘッドはハードパーマロイヘッド。消去ヘッドはダブルギャップフェライトヘッドです。

メカは3S(ソフト・スムーズ・サイレント)メカニズムと呼ばれるもので、キャプスタンはDCサーボモーター、リール用とメカ駆動用にはDCモーターを使用した3モーターです。

テープポジションはノーマル、クローム、メタルの3段で手動による切り替えです。ノイズリダクションはドルビーBタイプとdbxを搭載しています。

録音・再生回路のアンプ部はDC構成とし、カップリングコンデンサを減らして音質の劣化を防いでいます。電源部は独立電源でオーディオブロックは±2電源方式となっています。

この他に飛び越し選曲できるCPS(Computomatic Program System.)機能や、任意の2点間を繰り返し再生するブロックリピート機能を搭載しています。またワイヤードリモコンが標準で付属していました。


※カタログではV-R1は4トラックヘッドと書かれていますが、ふつうの録音・再生ヘッドの搭載機も「4トラック・2チャンネルヘッド」と書かれています。
テープ側から見るとV-R1もシングルウェイ機も4トラック対応で、録音や再生時は2チャンネルしか使わないので、4トラック・2チャンネルヘッドということになります。

ヘッドの構造から見ると、4つのコアがあり4チャンネルの録音・再生が可能で、オートリバースの場合は、それをデッキのシステム側で2チャンネルしか使用していないということになります。



(音質について)
解像度はまずまずですが、レンジは広いとは言えません。高音の伸やキレは今ひとつなど、音は中級機と同じか、少し良いかなという程度。この後に登場してくるTRIO KX-880などには負けてしまいます。

V-R1は89,800円という価格ですが、オートリバースにdbx、プログラム機能、電動ボリュームそしてリモコンなど、当時としてはコストのかかる装備をたくさん搭載しています。そのために録音や再生、電源など音質の基本となる回路に、お金が回っていないのも事実です。商品のコンセプトとしては、音質よりも機能優先だったのかもしれません。



(フロントパネル)
フロントパネルは、操作部にシートスイッチ(メンブレンスイッチ)を使っているのが特徴。
シートスイッチは大きさや色を自由に設定できるなど、デザイン的には優れていましたが、当時は耐久性が十分とは言えませんでした。このためミニコンポなどではよく使われましたが、信頼性が求められるピュアオーディオで使われたのは一部の機種だけです。


レイアウトは左側に電源ボタン、カセットのイジェクトボタン、タイマースイッチとカセットホルダーがあります。

レベルメーターは16ドットのLEDで、ピークホールド機能が付いています。その下にはプログラムナンバーの表示と、電子カウンターがあります。オートリバースのモードスイッチでは、片道録音・再生、リバースの往復録音・再生、エンドレス再生が選べます。

その下にあるのがタッチフェーダーコントロール機能と名付けられた、録音レベルの調整機能です。これは電動ボリュームをタッチボタンを使って、レベルの上げ下げを行っており、スピードを2段階に調整できます。
シーリングパネルの中には、このスピードの調整ボタンと、録音バランスと出力レベルのボリュームがあります。

右側には操作ボタンが集められており、上にテープポジション、ドルビーとdbxの切り替えスイッチ。CPSやブロックリピートのボタン。それに巻き戻し・早送り、再生、録音、停止、PAUSE、RECミュートの操作ボタン。右端にはヘッドフォン端子とマイク端子、そしてワイアードリモコン(RC-95)の端子があります。

この頃のカセットデッキのリモコンは、ほとんどがオプション(別売り)で、ワイアードリモコンの価格は5,000円〜6,000円ぐらい。V-R1のように標準装備にしているのは珍しかったです。





(シャーシと内部について)
シャーシは鋼板製です。奥行がないので内部はパーツや配線がギッシリです。

内部は左側がメカと電源トランス。そしてシステムコントロールなどのデジタル回路。右側には録音と再生回路に、電源回路とがあります。


底板



(電源部) 
この価格帯としては、電源部は貧弱です。電源トランスは小型で磁束漏れ対策はされていません。回路はいちおう独立電源で、録音・再生回路は±2電源方式になっていますが、レベルとしては中級機並みの回路です。

電源ケーブルは細い並行コードです。

電源トランス 電源回路



(システムコントロール回路)
システムコントロール用の基板は2枚あります。1枚はメカの後ろにあり、録音・再生などのボタン操作や、オートリバースのモードにより、ロジックメカをコントロールするマイコンなどがあります。
もう1枚はトランスの上で、プログラム機能のCPS(Computomatic Program System.)や、ブロックリピート機能のための基板で、東芝製のNAND ゲート「TC4011BP」がたくさん取り付けられています。

この頃はまだマイコンの能力が低かったため、プログラム機能を搭載するためには、もうひとつ専用のマイコンを装備するか、V-R1のようにロジックICをたくさん使用して回路を作るしかありませんでした。

マイコン基板 プログラム基板



(ヘッド・メカ)
録音・再生ヘッドはハードパーマロイの4チャンネルヘッドです。消去ヘッドはダブルギャップフェライトです。
ハードパーマロイといっても、1970年代の単に耐摩耗性をを向上させたヘッドとは違い、飽和磁束密度や歪率が改善されて、メタルテープに対応できるようになっています。

4チャンネルヘッドは、カセットテープのA面走行時には第1・2トラックを使用し、リバースしたB面走行時には第3・4トラックを使用しており、オープンリールデッキのオートリバース機とは、トラックの使い方が異なっています。

メカは「サイレント・メカニズム」と呼ばれるもので、キャプスタン、リール、メカの駆動にそれぞれ専用のモーターを使用した3モーターです。メカの駆動にソレノイドを使用しないことで、静かな駆動を行うということで、3S(ソフト・スムーズ・サイレント)メカニズムと名付けられました。

サイレントとはいうものの、実際にはソレノイドによる「ガチャ」という大きな音は無いにしろ、モーターでヘッドやピンチローラーを上げ下げする際や、手動でのカセットホルダーの開閉時に、そこそこ大きな音がします。

ヘッド・キャプスタン・
ピンチローラー
メカ



(録音・再生回路)
音質に直結する回路ですが、V-R1の最大の弱点でもあります。レベルとしては1978年のKD-A5(59,800円)よりも低いくらいです。

工場での組立て上の都合だと思いますが、音質面からみるとレイアウトが悪くて配線の引き回しが多いです。昔の業界風の言葉でいうと「美しくない」というところでしょうか。

録音回路はそこそこパーツがありますが、電源回路に分断された配置になっています。再生回路は簡易で、小さなサブ基板にあります。ただしレベルとイコライザー用の半固定抵抗が離れた場所にあるため、配線の無駄な引き回しが起きています。ドルピーBタイプの回路はIC(東芝 TA7629P)を使用していますが、これもまた簡易な回路です。

dbxの回路は別基板でまだIC化されておらず、TI製のオペアンプ「TL082CP」を5つ使って回路を組んでいます。

録音回路 再生回路

ドルビーIC 東芝 TA7629P dbx基板



(入出力端子)
入力端子は1系統。出力端子も1系統で可変出力です。

リアパネル

TEAC V-R1のスペック

形式 2ヘッド・3モーター
テープ走行 オートリバース
駆動方式 バイディレクショナル・ツインキャプスタン
キャプスタンモーター 電子制御DCモーター
ヘッド 録音再生:ハードパーマロイの
4チャンネルヘッド
消去:ダブルギャップフェライト
ノイズリダクション ドルビーB、dbx
周波数特性 30Hz〜19kHz (メタルテープ)
S/N比 59dB(Dolby オフ)
69dB(Dolby-B)
91dB(dbx)
ワウ・フラッター 0.045%(WRMS)
消費電力 20W
外形寸法 幅436X高さ113×奥行275mm
重量 6.3kg




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