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SONY CDP-333ESJ 

     1992年 定価60,000円



SONYのCDP-333ESJは、1992年11月に発売されたESシリーズのCDプレイヤーです。海外仕様はCDP-X303ESです。

ライバル機はバブル崩壊の後なので新製品が少ないです。
DENON DCD-1290、KENWOOD DP-7040、Pioneer PD-T03、SANSUI CD-α617DR、TEAC CD-Z5000、Victor XL-Z505など。


CDP-333ESJはCDP-555ESJをベースに開発されたモデルです。

DACは内部に8つの1bit・DACを持つ「アドバンスト・パルスD/Aコンバーター」を搭載。高い分解能を持っており、グリッチやゼロクロス歪が発生しないメリットとともに、1bit・DACの弱点である可聴帯域の再量子化ノイズを低減しています。

また45bit・8倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターも、ディザ(擬似ランダム信号)により、再量子化ノイズを無相関化し音質を改善しています。

ジッター対策としてマスタークロックをパルスD/Aコンバーターと同一チップ上に形成したダイレクト・デジタル・シンクを搭載しています。

ローパスフィルターには音質に優れたGIC型のローパスフィルターを採用しています。出力部はDCサーボアンプを採用して、FETによるAクラス動作としています。

サーボ回路はハイプレシジョン・デジタルサーボです。

電源トランスはデジタル回路とオーディオ回路用に、それぞれ専用のトランスを搭載。シャーシにトランスの振動を伝えないようにゴムダンパーでフローティングしてあります。

電源回路もデジタル、オーディオ、DAC、メカ、ディスプレィなどに分かれた独立電源です。


ドライブメカは現在のハイエンド機でも使用されていない、高速で高精度のリニアモーターを採用。メカのベース部分には組成が大理石と同じという、Gベースユニットを採用して振動や共振を抑えて、ピックアップの読み取り精度を向上させています。

シャーシはフレームとビームにより高い剛性を誇るFBシャーシ。インシュレーターは、特殊樹脂に亜鉛を混合したポリスチロールジンク・インシュレーターです。


機能としては、カスタムエディットや最大24曲のプログラム再生、8モードのリピート、ミュージックスキャン、オートキュー、オートスペースなど、たくさんの再生機能があります。

カスタムファイル機能は、ディスク1枚につき最大10文字までメッセージが記録したり、ディスクごとに異なる再生レベルを設定。ディスクに好きな個所にインデックスを設定することができます。



(CDP-333ESJとCDP-555ESJの違い)
CDP-333ESJはCDP-555ESJと同じ、剛性の高いFBシャーシを使用しており、銅メッキが省かれているだけです。

CDP-333ESJの重量は12kgで、CDP-555ESJの13kgに比べて1kg少ないですが、これは大半がサイドウッドの重さによるものです。

インシュレーターはCDP-555ESJがファインセラミック。CDP-333ESJは特殊樹脂に亜鉛を混合した、ポリスチロールジンク・インシュレーターになっています。

オーディオ回路のDAC、デジタルフィルターは同じですが、CDP-333ESJはDACから後ろの回路のパーツ数が大幅に少なく、簡略化した回路となっています。他にオーディオ回路の基板の材質。

メカのスピンドルモーターは、CDP-555ESJがBSLモーター、CDP-333ESJがDCモーターです。
ディスクを固定するクランパーが装着されている「ブリッジ」は、CDP-555ESJは肉厚の「BMC」。CDP-333ESJは強度の高いエシジニアリング・プラスチック製です。その他にはステイブルロック。


(CDP-333ESAから強化された部分)
シャーシの剛性の向上、新型のデジタルフィルター、ローパスフィルターを音質の良いGIC型に変更、ラインアンプを独立。電源回路の強化とオーディオ用コンデンサの採用、デジタルサーボの改良など。

これだけ強化しても価格は据え置きです。1990年代は良い時代でした。現在だったら少なくても3~5万円の値上げになってしまいます。



(音質について)
前モデルのCDP-333ESAに比べて大幅に向上しています。解像度や透明感が高くなり、音のキレや艶、高音の伸びなども良くなっています。

中音がメインで、シンバルの音は抑えられており、うるさくはないです。低音は少し物足りません。
音場は散乱系に近く定位がビシっと決まる訳ではありません。

6万円クラスということで、クラシックもジャズ、ロックも聴けるオールラウンドな音づくりですが、その中でも良いのはジャズとクラシック。ロックがメインであれば、メリハリのある音のKENWOOD DP-7040のほうが向いています。

6万円の中級機としてはレベルの高い音で、バランスよく、まとめられていると思います。


それでも上級機のCDP-555ESJと比べると、レンジの広さや細部の再現性、音場などに差があり、ESの「555シリーズ」との格の違いを感じます。

ただし、CDP-555ESJの内容は、現在のハイエンドの50万円クラスを超えており、その音をキチンと出すためには、それなりのアンプやスピーカーなどが必要となります。


CDP-333ESJは6万円という価格のために、ある意味組み合わせができる機器の幅も広く、バランスが取れた音で実用性が高いです。

それでいてシャーシ、メカ、電源回路などは現在のハイエンドでいうと、30万円クラス以上の内容を持っており、そういうものも音質の中に活かされているため、価格に比べて高いポテンシャルがあります。



(フロントパネル)
前モデルのCDP-X555ESAとCDP-333ESAは、デザインが違うフロントパネルになっていましたが、CDP-333ESJはCDP-555ESJと共通のデザインとなりました。

再生やストップなど頻度の高いボタンは大きく、関連性のあるボタンはまとめて配置するなど、デザイン性と操作性が考慮されています。

ディスクトレイの開口部には、特殊ゴム材によるダンパーを設けたアコースティックシールドです。これによりトレイリッド(隙間)から侵入する、スピーカーの音の空気振動を抑えて、音質への影響を少なくしています。

また気密性が向上することで、CDプレーヤー内部へのマイクロダストの侵入が抑えられ、ピックアップのレンズの汚れを防げます。






(シャーシ・内部について)
シャーシーはFB(フレーム・ビーム)シャーシです。
頑丈なフレームとフロントとリアパネルを結合するビームからなるシャーシで、これに底板と天板を組み合わせたモノコック構造により、高い剛性を実現しています。

フロントとリアパネルを結合するビームは6本あり、これにサイドパネル2枚が加わります。ビームはすべて縦方向に配置されていますが、フロントとリアパネルの変形を防ぐ効果もあり、横方向に加わる力に対しても高い強度を持っています。


天板は0.9m厚。制振鋼板のようで叩いてもほとんど鳴りません。これに1.5mm厚の鋼板を張り合わて2重にしています。黒のフェルトのような防振材が貼られています。

シャーシ本体は1.6mmの鋼板製。底板はスリットの開いた1.6mm厚の鋼板で、13個のビスでしっかりと取り付けられています。

現在のオーディオ機器でも1.6mmの鋼板は使われますが、強度の弱い(質の悪い)鋼板も多いです。CDP-333ESJの物はしっかりとした強度があります。

インシュレーターは特殊樹脂に、制振効果のある亜鉛を混合したポリスチロールジンク・インシュレーターです。


内部のレイアウトは、真ん中はメカと電源回路。左側にオーディオとデジタルの独立のトランス。右側はオーディオ回路で、基板はCDP-555ESJがガラスエポキシ基板なのに対し、CDP-333ESJはベークライト基板です。

サーボ制御と信号処理の回路はメカの下にあります。


天板 底板

底板を外したところ ポリスチロールジンク
インシュレーター



(電源回路)
電源部は海外仕様のCDP-X303ESよりも強化されており、国内の6万円クラスのCDプレーヤーと比べても、強力な電源部になっています。

電源トランスは上級機のCDP-555ESJと同様に、デジタルとオーディオ用を独立して搭載しています。
サイズも大きなもので専用のフレームに固定することで、メカやオーディオ回路に振動が伝わりにくくしています。


電源回路はデジタル部からオーディオ回路への、電気的な干渉を防ぐために独立電源となっています。オーディオ用の電源もDAC、差動合成・ローパスフィルター、ラインアンプと3系統に分かれています。

レギュレータは性能を十分に発揮させるために、放熱用のヒートシンクが取り付けられています。オーディオ回路用の電源部には銅製のバスバー(ブスバー)が設置されており、グランドの安定化や低インピーダンス化を図っています。

大きな電解コンデンサはCDP-333ESAでは一般品でしたが、CDP-333ESJは、ELNAのオーディオ用「DUOREX」に変更されています。

電源コードは直径7mmのキャブタイヤです。

電源トランス 電源回路



(デジタル回路 サーボ・信号処理・システムコントロール)
サーボや信号処理回路はピックアップ・ドライブメカの下にあり、基板の両面にICが並んでいます。

サーボ回路は新開発の「ハイプレシジョン・デジタルサーボ」です。制御用のICは「CXD2501Q」で、このサーボ回路は優秀で2000年代になっても、これを改良したデジタルサーボが使われています。

CDP-333ESJは前モデルのCDP-333ESAと同じICを使っていますが、回路は変更されています。コネクタ類は共通なので、基板を入れ替えてテストをしてみました。

結果は傷や汚れの多いCDなどの読み取り能力が向上しています。基本的には傷の多いCDでも、サーボを強くすれば読める物が多くなります。ただしサーボを強くすると音質は悪化します。

CDP-333ESJの場合、CDP-333ESAよりも音質はかなり向上しているので、サーボを強くしている訳ではなく、設定のチューニングによって、読み取り能力の改善を図っているようです。

ピックアップのアクチュエータや、モーターの駆動を制御するBTLドライバは、ローム製の「BA6297AFP」が使われています。


CDに収められた音楽信号のデコードや、誤り訂正を行う信号処理用のICは、SONY製のシグナル・プロセッサー「CXD2500AQ」です。

システムコントロール用のマイコンは、SONYのロゴが付いていますが、三菱製の「M37451M8-282FP」です。

サーボ・信号処理回路 サーボ・信号処理回路

デジタルサーボ用のIC
CXD2501Q
マイコン
M37451M8-282FP



(DAC・オーディオ回路)
前モデルのCDP-333ESAと比べて、回路は強化されており、パーツ数もかなり増えています。


D/Aコンバーターは1bitのアドバンスト・パルスD/Aコンバーターの「CXD2562Q」で、高い解像度と131dB(ICレベル)というダイナミックレンジを持っています。

当時の1bitDACはテクニクスの「MASH」がPWM(パルス幅変調)方式、フィリップス、YAMAHA、ビクターなどがPDM(パルス密度変調)方式としていたのに対し、SONYはPLM(パルス長変調・Pulse Length Modulate)方式を採用していました。

PLMはPWMの改良型ともいうべき方式で、PWMではパルス幅がマスタークロック2個ずつしか増えないのに対し、PLMではマスタークロック1個ごとにパルス幅が増えるため、理論的にはPWMの2倍の分解能を持っていました。

以前のCDP-X555ESなどでは1チップに、4個のDACが入った「CXD2552Q」を2個使って差動出力していましたが、CXD2562Qは1チップに8つのDACを持っています。

実際のD/A出力は高調波歪の低減を行うため、補数関係にある2つの出力をコンプリメンタリーPLMで差動合成しているため、CXD2552Qと同じく片チャンネルあたり4D/A出力となっています。それをさらにDACの後ろで合成して2chとしています。

ジッター対策では、マスタークロック信号の純度を高めてD/Aコンバーターに直結させ、ジッターを少なくするダイレクトデジタルシンクを搭載しています。

デジタルフィルターは45bitの演算能力を持ち、ディザ技術により1bit・DACの弱点である量子化ノイズを、オーディオ信号と無相関化できるスコアデジタルフィルター「CXD2567M」を搭載しています。


DACの後ろの回路はL・R独立のツインMONO構成です。CDP-333ESAでは、差動合成とアクティブ型ローパスフィルターを1つのオペアンプで行わせ、かつラインアンプを兼用するというコストを省いた回路でした。

CDP-333ESJではパーツを増やして、差動合成、ローパスフィルター、ラインアンプを完全に独立した回路にしています。

ローパスフィルターは音質に有利なGIC型を搭載しています。ラインアンプはDCサーボアンプとして、音質に影響するカップリングコンデンサを排除。FETをAクラス動作させています。

オペアンプはTI製のNE5532Pがメイン、ラインアンプにはアナログデバイセズのOP27も使われています。

真ん中には銅製のバスバー(ブスバー)があり、グランドの安定化や基板の低インピーダンス化を図っています。

スコアデジタルフィルター
CXD2567
D/Aコンバータ
CXD2562Q

デジタルフィルター・
DAC周辺の回路
L・R独立の
ツインモノ構成



(ピックアップ・ドライブメカ)
ドライブメカの本体、ピックアップやスピンドルモーターが取り付けられる、メカシャーシにはGベースが採用されています。

GベースやGトレイの素材はSONYのアンプなどに使われた、G(ジブラルタル)シャーシと同じ物で、大理石と同じ組成をした炭酸カルシウムに、不飽和ポリエステルに加えて、グラスファイバーで強化したものです。

特徴は強度が高く、内部損失が大きいなど振動に強いこと。それに加えて、非磁性・非金属であるため電磁歪や、うず電流の発生がないなどのメリットを持っていました。

また再生中にディスクトレイの振動を抑えるステイブルロックが装備されています。

ピックアップは自社製のKSS-272Aで、スライド機構は高速アクセスのリニアモーターです。ディスクを回転させるスピンドルモーターはDCモーターです。


ディスクトレイのローディング機構は、ESシリーズで受け継がれている機構です。トレイの内側に太いスチールシャフトを配置して、ベアリング(軸受)として使うことで、ギア音が無いスムースな開閉を実現するとともに、ディスクトレイの剛性を高めています。

ディスクトレイは「ジブラルタル」を使用したGトレイです。

メカ リニアドライブ

ピックアップ ステイブルロック



(出力端子・リモコン)
出力端子はアナログは固定と可変が各1系統。デジタルは光のみとなっています。

リモコンの型番はRM-D991。

リアパネル

リモコン RM-D991


上:CDP-333ESJ 下:CDP-555ESJ

SONY CDP-333ESJのスペック

周波数特性 2Hz~20kHz ±0.3dB
高調波歪率 0.0018%以下
ダイナミックレンジ 100dB以上
S/N比 115dB以上
チャンネル
セパレーション
100dB以上
サイズ 幅430×高さ125×奥行375mm
消費電力 21W
重量 12.0kg





SONYのCDプレーヤー

CDP-X55ES CDP-XA3ES
CDP-552ESD CDP-333ESD
CDP-303ES CDP-302ES
CDP-101 CDP-750
SCD-XB9 CDP-301V


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