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Victor XL-Z505

     1990年 定価59800円



ビクターのXL-Z505は、1990年10月に発売されたCDプレーヤーです。

時はバブル時代の最後ということもあり、XL-Z505は59,800円という価格にも関わらず、最新のDACの搭載やシャーシやメカの振動対策、音質に悪影響を与えるジッターへの対応。

そしてパーツにはオーディオ用の良い物が使われるなど、まさに物量が投入されています。海外にもJVC XL-Z1050という名前で輸出されました。


D/Aコンバータは1bitのDD(Digital Direct)コンバーターで、VANS方式のノイズシェーパーを採用しています。またPEM(Pulse Edge Modulation)回路により、パルスのエッジ(立ち上がり・立ち下り)をカウントするためPWM方式に比べ2倍以上の高分解能・高精度を実現しています。デジタルフィルターは8倍オーバーサンプリングです。

内外から発生する振動によるピックアップや回路基板への影響を抑えるため、ラダーフレームシャーシとメカアークベースを採用しています。

クロックによる同期ズレによるジッターを防ぐために、精密なファインクロック・ジェネレーターも搭載。音質に悪影響を与えるサーボ回路などの電圧変動により発生するリップルやジッターを除去するためにK2インターフェースを搭載しています。その他には、マイコンノイズを防ぐためのディスプレイのON/OFF機能もあります。

編集機能はカセットテープなどの録音用にトリプルエディティングシステムを搭載。これは、指定時間内にぴったり納める編集が行えるというもので、「オートエディット」ではマイコンまかせで曲順通りにワンタッチ編集、「プログラムエディット」では好みの曲順でプログラムができます。


K2インターフェースはビクターとビクター音楽産業(現・ビクターエンタテインメント)が共同開発したもので、もともとは1987年にスタジオ用のシステムとして開発されたものです。

「K2」は開発者の桑岡俊治・金井実両氏の頭文字から取られました。CDプレーヤーでは1988年発売のXL-Z711に初めて搭載されました。

仕組みはCDのデジタル信号の波形から符号が「0」か「1」、「1」か「0」の安定した部分だけを伝送して、それ以外のノイズ成分(ジッターやリップル)が含まれた部分を高速なスイッチで切り取ります。こうして残ったキレイな符号情報から、新たな波形信号を組み立て直すというものです。

当時はデジタル・ノイズ対策というと「光伝送」が多くのメーカーに採用されており、特にオンキョーとビクターは低価格のモデルにも搭載していました。ビクターではこのK2インターフェースの登場により、光伝送がK2インターフェースに置き換えられていきます。



(音質について)
音質は全体としてはフラットでソフト傾向です。曲を聴いているともう少し低音や解像度が欲しいと思うこともあるのですが、しだいに「これはこれで良い」と思えます。
しっとりとした艶と情感があり、再現力より表現力に重きをおいたという感じです。やはり、レコード屋さんの作ったプレーヤーはひと味違うようです。
ボーカル物やジャズなどには良くあいますが、ロックにはパワー不足。打ち込み系にも不向き。



(フロントパネル)
デザインはセンタートレイの両側に、時間やトラック・ナンバーなどを表示する薄型ディスプレィを配した独特のものです。ダイレクトキーやヘッドフォン端子・ボリュームなどはシーリングパネルの中にあります。




動画の音はビデオカメラの内蔵マイクで録音しているため、
音質は良くありません。





(シャーシと内部について)
シャーシは「ラダーフレームシャーシ」です。底板は厚さ1.6mmの鋼板をラダーフレームで補強。上部には、フロントとリアパネルを結ぶ2本のトップカバービームがあり、シャーシの補強と天板の鳴きの防止をしています。

内部はセンターメカを採用。左側は電源回路と手前にヘッドホンの回路。右側は手前がシステムコントロールとサーボ・信号処理などのデジタル回路。その奥はオーディオ回路という構成です。




(電源回路)
電源回路にはタワーのように、日本ケミコンのオーディオハイグレード品である「AWF」が2本立っています。容量は50V・2200μF。

1bitDACでは、1秒間に数万回という高速なスイッチング処理が行われるため、ごく小さな電圧の変動でも歪みやノイズが発生し、これが音質の悪化となります。

このため電圧を安定させる大容量の平滑コンデンサはかなり効果があったはずです。他にもオーディオ用コンデンサが使用されています。トランスは田淵電機のゼブラトランス。

電源回路 電源トランス

日本ケミコンのAWF

50V・2200μF



(サーボ・信号処理・システムコントロール回路)
サーボ・信号処理回路でメインとなるのはYAMAHA製の「YM7121B」です。YM7121Bは1チップにCIRC復調、誤り訂正とそれに使用するRAMなどの信号処理回路と、フォーカス、トラッキング、スピンドルなどのサーボ制御回路。
そしてデジタル出力回路と4倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターを、内蔵した統合型のチップとなっています。

サーボの調整ボリュームはトラフィック・ゲインとトラフィック・オフセット。

システムコントロール回路にあるのは日立製のCMOS 4bitマイコン「HD4040 19RS」です。

サーボ・信号処理・
システムコントロール
YAMAHA YM7121B



(DAC・オーディオ回路)
D/Aコンバーターは、1ビットDACのDD(Digital Direct)コンバーターです。内部には8倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターが内蔵されています。

このDDコンバーターの特徴は、PEM方式の変調回路と、4次という高次のVANS方式のノイズシェーパーです。

PEM(Pulse Edge Modulation・パルスエッジ変調)回路は、CDの16bit信号を1bitに変換し、パルスの列の幅で波形を表すという形で出力します。

出力だけを見るとMASHと同じPWM(パルス幅変調)ですが、PEMでは2つのパルス波を作り出して、立ち上がりと立ち下りのエッジの時間差から、パルス幅を決めることで高い分解能を得ています。


VANS方式のノイズシェーパーは、カタログには次数を4次に上げてデータの精度をより高めたとだけ書いてありますが、実は巧妙な仕組みを持っています。

ノイズシェーパーはDAC内部の量子化器(16bitを1bitに変換する回路)で発生する量子化ノイズを、可聴帯域よりも、ずっと高い周波数領域に押しやる機能です。

DACのオーバーサンプリングの倍数が同じならば、ノイズシェーパーの次数を高くするほど可聴帯域のS/N比は改善されますが、逆に高周波ノイズが増加するため、オーディオ回路全体としては音質悪化の原因となります。

DDコンバーターのノイズシェーパーは、可聴帯域で発生した量子化ノイズに対しては4次で動作をして、ノイズシェーピングを行い、原信号と被るノイズを減らすことで、変換誤差(量子化誤差・単に信号が正しく変換されたかどうかではなく、ノイズや歪み成分の量まで含めて誤差が計算されます)を低減して高いS/N比を得ています。

可聴帯域よりも高域で発生したノイズに対しては、2次や1次で動作して高周波ノイズの低減を実現しています。

また1bitDACの変換精度は時間軸(クロック)の精度に、影響を受けるため、DDコンバーターとK2インターフェースのためだけに、専用のファインクロック・ジェネレーターを搭載して、ジッターによる歪みの発生を抑えています。


DDコンバーターには4つのDACが搭載されており、差動出力されています。信号はバッファアンプを経て差動合成されて、アクティブ型のローパスフィルター、ミューティング回路を経て出力されます。


オーディオ回路の電解コンデンサは日本ケミコンのAWFやNX-Vが使用されています。ミューティングリレーはOMRON製のG5A-237PL。オペアンプはオーディオ回路がJRC 5532、ヘッドフォン回路が三菱 M5216です。

オーディオ回路 オーディオ回路

DDコンバーター ファインクロック・ジェネレーター(左)と、K2インターフェース(右)

ヘッドフォン回路



(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップ・ドライブメカの土台には、高い振動減衰率を誇るというメカアークベースを使っています。
素材は高比重の発泡樹脂で、いわゆるエンジニアリングプラスチックと呼ばれるもので、このあたりはSONYのGベースを意識したのかもしれません。

その上に樹脂製のベースと、金属製のメカシャーシ(ピックアップやスピンドルモーターをマウントしている部分)によるメカ本体が載ります。

メカアークベース、樹脂製のベース、金属製のメカシャーシと、振動係数の異なる3つの素材を使うことで、振動を減衰するとともに、メカシャーシをフローティングして、外部からの振動を吸収しています。


ピックアップは「JVC」の刻印がある自社製の「OPTIMA-5S」で、スライド機構はラック&ピニオンのギヤ式になっています。

ブリッジに装着されているクランパーは、スタビライザーの効果を狙ったのか大型のものがついています。



(メカのメンテナンス・修理)
振動対策などメカとしての出来は悪くないのですが、メンテナンス時には少々やっかいです。
トレイが開閉しなくなった時は、ベルトの劣化(伸び・切断)やギヤのグリスの固着などが原因ですが、このメカはベルトの交換にしろ、ギヤのクリーニングにしても、トレイをメカから引き抜かないと作業ができません。

その場合はメカと基板を結ぶケーブルを外し、メカを固定しているビス外して本体からメカを取り出します。

メカの後ろには緊急用のトレイを引き出す機構があり、それを大きめのマイナスドライバーで回してやるとトレイが動きます。(トレイにはストッパー用のネジがあるので、これを取ればメカからトレイをはずせます)

ギヤに使われているグリスは劣化により粘度が高くなっており、冬場などは固着しやすいので、一度はクリーニングとグリスアップが必要です。

ピックアップ・ドライブメカ ピックアップ・ドライブメカ
とアークベース

ピックアップ OPTIMA-5S メカの裏側

緊急用に
トレイを引き出す機構
トレイの開閉機構




(出力端子・リモコン)
リアパネルのデジタル出力端子は光学と同軸が各1系統、アナログ出力はFIXED、VARIABLEの2系統。他の機器とのシンクロ用の接続端子もあります。
デジタル出力とシンクロ端子 アナログ出力端子

専用リモコン
RM-SX505


K2インターフェースの技術はCDの製作にも利用され、ビクターの「20bitK2 スーパーコーディング」や「xrcd」など高音質CDを支える技術のひとつとなります。

※20bitK2 スーパーコーディングは1993年に開発されたもので、16ビットの16倍という、20ビット相当の音楽信号を16ビットCDフォーマットに記録する技術です。



Victor XL-Z505のスペック

周波数特性 4Hz~20kHz
全高調波歪率 0.0017%
ダイナミックレンジ 100dB
S/N比 110dB
チャンネル
セパレーション
110dB以上
消費電力 15W
サイズ 幅435×高さ115×奥行345mm
重量 7.6kg





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