TOP使っているオーディオCDプレーヤー > CDP-101


SONY CDP-101

     1982年 定価168,000円



SONYのCDP-101は、1982年10月1日に発売された世界初のCDプレーヤーです。

家電品は「軽薄短小」が技術の証のような時代でしたが、CDP-101は複雑な回路のIC化を行い、他のメーカーのCDプレーヤー1号機より、ひとまわり小さなプレーヤーとして登場しました。

価格は他社よりも3~5万円ぐらい安いものでしたが、それでも定価は16万8000円で、当時の大卒の初任給の12万7200円よりも高い高額品でした。


(CDの開発)
1977年、フィリップスはLPレコードに代わる新しいメディア「DAD」(デジタルオーディオディスク)の方式として、ALP(オーディオ・ロング・プレイ)を開発します。光学式のディスクで直径は115mmでした。

日本のメーカーもDADの開発をスタートさせており、1977年秋に開催された「オーディオフェア」では、SONY、日立・日本コロムビア(DENON)、三菱電機・TEAC・東京電化が、各社独自の仕様によるDADのプレーヤーの試作機を展示します。
三菱電機・TEAC・東京電化のディスクは非接触式レコード「PCMレーザーディスク」という名前が付けられました。

1978年、日本ビクターが静電式のDAD「AHD」を発表します。

1979年、フィリップスはオーディオブームの最中にあった、日本で「ALP」のデモンストレーションを開催。
その一方で、SONYとフィリップスは「DAD」のひとつの方式として、コンパクトディスク(CD)の共同開発をスタートします。並行してCDを再生するためのプレーヤーの開発もスタートします。

1980年、メーカーによるDAD懇談会が発足して2年が経過しますが、仕様はまとまっていません。それでもオーディオフェアでは各社が試作機を展示して技術力のアピール行いました。

フィリップス家電(日本法人)は試作機による試聴会を実施。SONYも試作機の展示を行います。またAurex、Pioneer、日立、サンヨーなども光学ディスクプレイヤーの試作機を展示しています。
CDと競合する規格だったAHD方式ではVictorとYAMAHAがプレーヤーを参考出品しました。

このオーディオフェアにより、オーディオファンはレコードに代わる次世代ディスクの誕生が、そこまで来ていることを実感し、メーカー側も「デジタル対応」を唱ったアンプやスピーカーをぞくぞくと発売していきます。

1981年に、ようやくDAD懇談会でSONY・フィリップスの「CD」、日本ビクターの「AHD」、ドイツのテレフンケンとテルデックが開発した機械式のDAD、「MD」(ミニディスク/マイクロディスク・・・後にSONYが開発するMDとは別もの)が承認されます。

この年のオーディオフェアに、SONYは「ゴロンタ」と呼ばれるCDプレーヤーの試作機を参考出品。その垂直ローディングのCDメカに各メーカーは驚き、各社が1号機で採用するキッカケとなります。



(CDP-101について)
1982年の8月にはSONYとフィリップスによって、CDシステムの発表会が行われ、10月1日に第1号機となるCDP-101が発売されました。それを追いかけるように各メーカーからも、CDプレーヤーの1号機が発売され、いよいよCD時代の幕が開きました。

CDP-101はミニコンポサイズのボディに大きな操作ボタンを配したデザインで、垂直ローディングが多かった各メーカーの1号機の中ではYAMAHA、ONKYOとともに水平ローディングを採用しました。

全く新しい分野のオーディオ機器ということで、新たな技術開発がたくさんの行われました。プレーヤーの心臓ともいえる16bitのD/Aコンバーターは、IC化され1つのチップにまとめられ、CDの信号処理用の回路もLSI3個にまとめられました。

その他にも多くのIC(LSI)が新たに作られ搭載されており、当時の1号機の中では信頼性はとても高かったと思います。
(現在残っているCDP-101はメカ部分のグリスが固着してトレイが開かなかったり、チャッキングやピックアップの移動ができないものが多いです。)

ピックアップは小型の半導体レーザーとしては群を抜いた性能だったシャープ製を採用。それにディスクの振れや偏芯回転にもレーザーが追従できる2軸システムも開発しました。

1982年~83年の初めにかけて17社ものメーカーからCDプレーヤーの1号機が発売されましたが、断トツに売れたのはCDP-101でした。

これら1号機の中には音質や機能など個々の部分ではCDP-101を上回るプレーヤーはありますが、ほど良い操作性やコンパクトなサイズ、堅牢なメカと現在よりも長寿命のレーザー、そして168,000円という価格など、総合的にはとても良く出来たプレーヤーだったと思います。
CDプレーヤー1号機の比較

CDプレーヤーの技術革新は早く、CDP-101より安くて高性能なモデルが次々と誕生しましたが、販売は1985年まで続けられました。



(音質について)

音はというとドッシリとしたサウンドで意外と低音がでます。当時は「デジタルぽい」とか「デジタル臭い」といわれた音ですが、現在と比べればレンジも狭く解像度もあまりないので、かえってアナログライクに感じられます。

→ CDP-101のCM(英語)   CDP-101の動画


(CDの特徴について)
1982年のCD(コンパクトディスク)の発売時には、何度も雑誌に書かれたことですが、CDはレコードと比べて以下の特徴があります。

1.高いオーディオ特性
ダイナミックレンジ90db以上、SN比90db以上、ひずみ率0.004%以下、ワウフラッターは測定できないレベルなど、レコードより高いオーディオ特性があります。
これが当時CDが高音質であると言われたゆえんです。※

2.長寿命
当時、レコードが100回程度で音溝が摩耗するという話(オーディオ評論家も雑誌にそう書いていました)があったのに対し、CDは半永久的とも言われていました。

3.取扱いの簡単さ
レコードのように静電気やホコリによる「チリチリノイズ」が無く、頻繁なカートリッジの針先のクリーニングの必要もありません。何より名前のとおりデイスクがコンパクトなため、置き場所に困らないというメリットがありました。

4.プレーヤーとしての特徴
トレイに入れて再生ボタンを押すだけですぐに再生が可能。また選曲やサーチもボタン1つで出来るようになり、自分の好きな順に演奏できるプログラム機能が装備されました。またカセットデッキとのシンクロやタイマープレイも可能となりました。


※初期のCDプレーヤーでは数値的にはCDの能力を引き出したものの、聴感上の音質は十分に引き出せませんでした(後にメーカーも認めています)。
しかし1982~83年当時のどの雑誌を見ても、CD及びCDプレーヤーのことを、音が悪いなどと言う評論家は1人もおらず、現在も雑誌に記事を書いている方は、ほとんどが「レコードよりも音が良い」という評価を与えています。

ところが1990年代になりバブルが崩壊し、オーディオメーカーの経営が苦しくなると、「オレは昔からCDは音が悪いと言っていた」という評論家が何人もでてきました。金の切れ目が縁の切れ目でしょうか?

そんなことがあったにも関わらず、1990年代の終わりにSACDとDVDオーディオが登場すると、舌の根も乾かぬうちに「音が良い」との大合唱が起こりました。

そして現在もまた「ハイレゾ」について、CDよりもビット数が大きく、サンプリング周波数が高く、データ量(情報量)が大きいので「音が良い」と言っている評論家が多くいます。

とはいうものの彼らの書いた文書を読む限り、いつものようにメーカーの「受け売り」ばかりで、ビット数やサンプリング周波数のことを、正しく理解しているとは思えないのですが・・・。



(フロントパネル)
デザインは高級感や装飾性などはまったく無くて、わかりやすさや使いやすさを追求したデザインです。
ボタンもデザイン性よりも大きさと押しやすさを重視。ディスプレィの表示は最小限と、SONYらしくない質実剛健さがあります。

トレイの垂直方式ではなく、水平方式を採用。当時は「リニアスケイティング方式」と呼ばれていました。CDの再生を停止するボタンは、「STOP」という名前ではなく「RESET」という名称になっています。







(内部について)
シャーシーの内部は左側にピックアップ・ドライブメカと電源回路。右側がにサーボやシステムコントロール、オーディオの回路となっています。コンパクトなボディのためビッシリと詰まっていますが、AurexのXR-Z90NEC CD-803と比べると、だいぶ部品の点数が少なくなっています。

試作機の「ゴロンタ」が登場したところは、CDプレーヤーはレコードプレーヤーと違って振動に強いとされていましたが、CDP-101は初期のプレーヤーとしては、かなり慎重な防振対策が取られています。

水平ローディングやダイキャストベースで、ディスクやメカの不要な振動を抑え、サーボ回路にはアンチショック機能を搭載。トランスの外部装着や天板は鋼板を2枚張り合わせたものにダンパーが貼ることで、シャーシの振動を抑えています。


底のフタを開けた様子



(電源回路)
電源回路のトランスはシャーシの外に取り付けられています。隣にはヒートシンクがあります。
BANDO製の電源トランス
28V・38VA
電源回路



(サーボ回路・システムコントロール回路)
メインの基板は2階建てで、上がサーボとシステムコントロールの回路になっています。マイコンとオペアンプを使うことにより、他社の1号機に比べるパーツ数が少なくだいぶコンパクトに仕上がっています。
1号機では各社ともにサーボ回路の設計に苦労していますが、CDP-101は他社に比べて先進的な回路となっています。

サーボ回路は富士通製のマイコン「MB8841(1061)」を使用して、フォーカスやトラッキングのサーボ制御を行っています。この回路の特徴は「ノーマル」と「アンチショック」の2つのモードがあることで、リアパネルのスイッチでトラッキング・ゲインの値を切り換えることができました。アンチショックにすると音質は悪くなりますが、振動発生時にも安定した読みとりができるようになっています。
まだ当時のCDプレーヤーにはピックアップを振動から守るフローテイング機構が無かったのですが、このような装備を持っていたのはCDP-101だけだと思います。
ディスクを回転させるスピンドルモーターの制御は専用チップの「BX-1201」で行っています。

システムコントロールも富士通製のマイコン「MB8841(1060)」を使用しており、キー操作やディスプレィ表示、オートプレイなどをコントロールしています。

システムコントロールと
サーボ回路
富士通 MB8841(1060)

SONY BX-1201 リモコン・デコーダー
 LM6416E



(DAC・オーディオ回路・信号処理回路)
1階部分の基板は手前が信号処理回路、奥がオーディオ回路となっています。

オーディオ回路のD/Aコンバータは16bitのSONY製「CX20017」で、Aurex/KENWOOD、SHARP、SANYOなどの1号機でも使われています。ローパスフィルターはモジュール化されており銀色のケースに収められています。まだデジタルフィルターは搭載されていません。

信号処理用のLSIは新たに開発されたもので、EFMとサブコード復調用の「CX7933」、RAMコントロール用の「CX7934」、CIRC復調用の「CX7935」があります。この信号処理用のチップは他社にも供給され、多くの1号機に搭載されました。

オペアンプはデエンファシス用などにTI製の「NE5532P」、ヘッドフォンアンプにJRC製の「4560DD」が使われています。

CD信号処理
オーディオ回路
オーディオ回路

D/Aコンバータ
CX20017
CD信号処理用のLSI
SONY CX7934


(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップ・ドライブメカはダイキャストのベースにしっかりと取り付けられています。フローティングはされておらず、いわゆる「リジッド」です。

ピックアップは「KSS-100A」ですが、内部の半導体レーザーはシャープ製です。半導体レーザーはSONYでも開発をしていましたが、CDP-101の発売には間に合わず、安定性が高く歩留まりが良いため数量も確保できるシャープのVSISレーザーが採用されたました。シャープの社史によると、このVSISレーザーの寿命は4万時間だそうで、現在主流のMOCVD法を使ったレーザーの平均寿命が1万時間といわれていますから、すごい耐久性を持っていたことになります。

その後、SONYは特性が良く量産に向いたMOCVD法を使ったレーザー開発し、1984年から生産を始めます。これを自社のCDプレーヤーに搭載するだけでなく、他のメーカーにもレーザーやピックアップユニットとして販売しました。そして、現在に至るまで多くのCDプレーヤーにSONY製のKSSシリーズのピックアップが搭載されることになります。
ピックアップのスライドはギヤ式ですが、アクセス・スピードはけっこう早いです。

ディスクの有無はCDをはさむように、上にLEDの発光部、下に受光部がありCDを検知しています。この受光部が汚れたり、接触不良になるとディスクエラーとなり、CDが入っていなくても勝手にトレイが開いたりします。またCDが入っている場合でも読み込み動作には入りません。


(メカのメンテナンス・修理)
CDP-101のトラブルで一番ポピュラーなのは、トレイが開閉できないことです。CDP-101はトレイの開閉のゴムベルトは使っておらず、ギヤのみで行っています。ところがこのギヤのグリスが変質して茶色くなり、ギヤを固着して開閉メカを動かなくしているのが原因です。

ギヤをクリーニングするためには底板を外します。ピックアップのスレッド(スライド)用のギヤのクリーニングは簡単ですが、トレイ開閉用のギヤは一部が基板の下に隠れているので、なかなか大変です。またギヤだけでなく、トレイのロックレバーも固着しているので、これもクリーニングしなくてはなりません。

グリスはかなり粘度が高くなっており、アルコール綿棒だけではふき取れません。接点復活材などでグリスを溶かしてから、ふき取るほうが手間がかかりませんし、キレイにクリーニングできます。

ピックアップ・ドライブメカ ピックアップ KSS-100Aと
スピンドル(BSLモーター)

ディスク検知用のLED 左側がチャッキングアーム用モーター、右はピックアップのスライド用のモーター

クリーニング前のメカ

グリスが変質し茶色くなっています。このためギヤが固着し、トレイの開閉やピックアップのスレッド(スライド)が出来なくなっています。


(出力端子・リモコン)
出力端子はアナログは固定が1系統。他にカセットデッキとのシンクロ端子とアクセサリー端子、ヒートシンクの下には電源コンセントがあります。

自動一時停止スイッチは1曲終わるごとに自動的にPAUSEスイッチが入り一時停止になるというもの。アンチショックスイッチは振動による音とびを防止のためのスイッチです。底部にはリモコン受信時の確認用のBEEP音のスイッチがあります。

オプションはワイヤレスリモコン(RM-101 10,000円)、シンクロリモコン(RM-65 3,000円)、CDクリーナー(XP-CD1 1,000円)、ウッドケース(TAC-101 16,500円)。

アナログ出力・
アクセサリー端子
電源コンセント

リモコン受信時の
BEEP音のスイッチ
専用リモコン RM-101
別売・10,000円



コンパクトディスク この新しい世界

1982年に製作されたCBS・ソニーによるデモンストレーション用の非売品CDで、CDP-101やCDP-701ES、501ESの購入時のオマケなどに使われていました。
またSONY社内でもCDプレーヤーの修理時のテストなどにも使われていたようです。

これ以外にもSONYは、CDとCDプレーヤーの普及のために、何種類ものデモンストレーション用のCDを製作しています。



世界初のCDソフト

CDP-101の発売と同時に、CBS・ソニー/EPICソニーと日本コロムビアから世界初のCDソフトが発売されました。CBS・ソニーからの発売は50タイトルでクラシック、ポップスやロック、歌謡曲などいろいろなジャンルのものが発売されました。

発売は続き年末には約100タイトルとなります。1984年にはLPレコードの1/10近い生産数となり、発売から4年後の1986年には年間4500万枚を生産し、LPレコードとほぼ同じ生産量となります。


SONY CDP-101のスペック

周波数特性 5Hz~20kHz±0.5dB
高調波歪率 0.004%以下
ダイナミックレンジ 90dB以上
SN比 90dB
チャンネル
セパレーション
90dB
消費電力 23W
サイズ 幅350×高さ105×奥行325mm
重量 7.6kg





SONYのCDプレーヤー

CDP-555ESJ CDP-X55ES
CDP-XA3ES CDP-552ESD
CDP-333ESD CDP-303ES
CDP-302ES CDP-750
CDP-301V SCD-XB9


TOP
CDプレーヤー
アンプ
スピーカー
カセットデッキ
チューナー
レコードプレーヤー
PCオーディオ
ケーブル
アクセサリー
歴史・年表
いろいろなCD





SONY・ソニー CDP-101 B級オーディオ・ファン