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SONY CDP-333ESA

     1991年 定価60,000円



SONYのCDP-333ESAは、1991年11月に発売されたCDプレイヤーです。海外仕様はCDP-X339ESです。

CDP-X333ESの後継機で、FMファンのダイナミック大賞の優秀推薦機となっています。

ライバル機はバブルの崩壊で、各社ともに新製品の発売を控えたため、
数が少なくKENWOOD DP-7040、SUNSUI CD-α607DR、TEAC CD-Z5000、Victor XL-Z505などです。


CDP-333ESAはCDP-555ESA(90,000円)を、ベースに開発されたCDプレーヤーで、価格の差は3万円ありますが、中味はオーディオ回路が簡略されている他は、あまり変わらないという、お買い得なモデルです。


1990年はTechnicsのMASH、SONYのパルスD/Aコンバーター、YAMAHAのI-PDM、VictorのDDコンバーター、フィリップスのビットストリームDACと各社の1bit DACが出そろいます。

いよいよ1bit DACによる戦国時代が始まると思われた時に、バブルが崩壊してしまい、オーディオ業界にも暗雲がかかります。

1bit DACは製造コストが安く、ゼロクロス歪が発生しないなどのメリットがあり、音質も良いことからオーディオ業界にとっては、希望の星だったかもしれません。


CDP-X555ESAとCDP-333ESAに搭載された、アドバンスト・パルスD/Aコンバーター「CXD-2562」は、従来の回路の改良を行い、1チップの中に8つのDACを納めた当時最強ともいえる1bit DACでした。

片チャンネルあたり4個のDACを使用し、コンプリメンタリーモード(相補型)にして差動出力をすることで、音質悪化の原因となる高調波歪を打ち消すという贅沢な回路です。


1bit DACはクロック・ジッターの影響を受けやすいため、これを解決するためにダイレクト・デジタル・シンクを搭載しています。

それまでのCDプレーヤーでは、マスタークロックをDACのそばに配置していましたが、ダイレクト・デジタル・シンクはマスタークロックをDACのチップ内に内蔵しました。
さらにDACの最終段の前にジッター除去回路を設けることで、原理的にはジッターの発生を無くしています。


デジタルフィルターの「CXD-2560」も強力で、45bitという高い演算能力とノイズシェイピング回路を搭載しています。


電源トランスはデジタル回路とオーディオ回路用に、それぞれ専用のトランスを搭載。シャーシにトランスの振動を伝えないようにゴムダンパーでフローティングしてあります。

電源回路もデジタル、オーディオ、DAC、メカ、ディスプレィなどに分かれた独立電源です。


ドライブメカは現在は生産されていないため、ハイエンド機でも使用ができない、リニアモータードライブです。

メカのベースは組成が大理石と同じという、Gベースユニットを採用して振動や共振を抑えて、ピックアップの読み取り精度を向上させています。


機能としては、カスタムエディットや最大24曲のプログラム再生、8モードのリピート、ミュージックスキャン、オートキュー、オートスペースなど、たくさんの再生機能があります。

カスタムファイル機能は、ディスク1枚につき最大10文字までメッセージが記録したり、ディスクごとに異なる再生レベルを設定。ディスクに好きな個所にインデックスを設定することができます。



(CDP-333ESAとCDP-555ESAの違い)
CDP-333ESAはCDP-555ESAと同じ、剛性の高いFBシャーシを使用しており、銅メッキが省かれているだけです。

CDP-333ESAの重量は12kgで、CDP-555ESAの13kgに比べて1kg少ないですが、これは大半がサイドウッドの重さによるものです。

インシュレーターはCDP-555ESAがファインセラミック。CDP-333ESAは特殊樹脂に亜鉛を混合した、ポリスチロールジンク・インシュレーターになっています。

内部の回路はDAC、デジタルフィルター、サーボ回路、電源回路などは共通。CDP-555ESAがGIC型のローパスフィルターと独立したラインアンプを装備しているのに対し、CDP-333ESAはローパスフィルターの簡略化しているのと、ローパスフィルターで出力を稼いで、ラインアンプと兼用しています。またオーディオ回路の基板の材質が違います。

メカもほとんど同じですが、スピンドルモーターはCDP-555ESAがBSLモーター、CDP-333ESAがDCモーターです。

ディスクを固定するクランパーが装着されている「ブリッジ」は、CDP-555ESAはたぶん「ジブラルタル」。CDP-333ESAは強度の高いエシジニアリング・プラスチックです。

フロントパネルの違いはCDP-333ESAには、CDP-555ESAには無いダイレクト選曲ボタンなどがあり、リモコンが無くても、ひととおりの操作ができます。

CDP-333ESAのトレイのゴムベルト交換



(音質について)
いちおうSONYのサウンドですが、CDP-333ESAの音はレンジや解像度などを落としてフラット方向に振り、音を少し柔らかめにして落ち着かせたという感じです。

もしかすると、同じ時期にヒット商品となっていたPanasonic SL-PS700Victor XL-Z505の音を意識したのかもしれません。


落ち着かせた反面、高音の艶などが控えめになり、中低音の締まりも少しルーズになっています。

音場の広さや音の立体感などは、他社の6万円クラスよりもすこし良い程度。定位はしっかりとしています。
高音質のCDなどを聴くと、音の深みや重心の低さは、他の6万円クラスと格が違うことを感じさせます。

ただ、この手の音は難しいです。フロアスピーカーで大音量が出せる家では良いかもしれませんが、普通の家で大きな音が出せない環境では、変に物足りない部分がクローズアップされるかもしれません。

また機器の組み合わせがシビアになるので、アンプやスピーカーとの相性の問題が出やすいと思います。

夜中に小音量で良い音を聴きたい人や、解像度や透明感を重視する人には向かないと思います。
また従来のSONYサウンドが好きな人は、物足りなさを感じるかもしれません。

ジャンルはいちおうオールラウンドで、ジャズ、クラシック、女性ボーカル、ロックやJPOPと聴くことができますが、どれも一長一短があります。


CDP-555ESAとシャーシやメカ、そしてDACも共通ということで、2世代前の555モデル CDP-X55ESと聴き比べて見ました。

音はかなり接近しているか、一部は超えているかと期待したのですが、結果は意外と差があり、解像度や繊細さ、立ち上がりの速さ、音の厚みなどCDP-X55ESのほうが優れており、まだまだ届いていません。

2世代後の333モデル CDP-XA3ESと聴き比べると、レンジや音場の広さ、解像度、音のキレ、高音の伸びなどで負けてしまい、逆にCDP-XA3ESの確実な進化を実感します。



CDP-333ESAは中古では、ESの「333」シリーズの中でも人気が無く、前モデルのCDP-X333ESよりも価格が安いです。

中古で入手するにも、実際に音を聴いて判断できる場合は少ないでしょうから、内部の写真で判断している人も多いかもしれません。

CDP-333ESAが人気が無いのは、下の写真のように内部のオーディオ回路のパーツが少ないからだと思います。

パーツが少ないのはDACから後ろの回路です。でも実際にはラインアンプ以外はCDP-X55ESの回路と同じで、パーツのグレードやオペアンプの銘柄が違うだけです。

DACの「CXD2562Q」の音は、明らかにCDP-X55ESのDACよりも良くなっています。
それでも、音にかなりの差があるということは、チューニングで価格の差の分を、キッチリと音の差として付けているのだと思います。



(フロントパネル)
前モデルのCDP-X333ESを踏襲したデザインです。

ディスクトレイの開口部には、特殊ゴム材によるダンパーを設けたアコースティックシールドです。これによりトレイリッド(隙間)から侵入する、スピーカーの音の空気振動を抑えて、音質への影響を少なくしています。

また気密性が向上することで、CDプレーヤー内部へのマイクロダストの侵入が抑えられ、ピックアップのレンズの汚れを防げます。

ディスプレイのON/OFF機能があり、OFFや部分点灯によって、ディプレィから放出されるノイズを減らすことができます。






(シャーシと内部について)
シャーシーはCDP-555ESAと共通のFB(フレーム・ビーム)シャーシです。

フロントとリアパネル、サイドパネルでフレームを作り、5本のビーム(梁)で、前後のパネルと連結することで、強固なシャーシになっています。ビームのうち2本は、デジタル回路や電源回路から、オーディオ回路への干渉を低減するシールド板の役目も持っています。

これに、天板と底板を固定することで、モノコック構造も合わさるため、剛性はさらに高まります。

シャーシやビームは1.6mm厚の鋼板。1.6mmといっても、今時のオーディオ機器が使っているヤワな鋼板ではなく、品質が良く強度が高い物です。

底板は2mm厚の鋼板、リアパネルは1.2mm厚の鋼板。コの字型の天板は0.8mm厚ですが制振鋼板です。さらに大き目の0.8mm厚の制振鋼板を貼り2重とし、防振材も取り付けられています。

また、オーデイオ基板は独立したフレームに取り付けられているため、電源トランスからの振動が伝わりにくい構造となつています。


ライバル機のKENWOOD DP-7040やVictor XL-Z505も、シャーシは頑張っており、現在のDENON DCD-1600NE(120,000円)などよりも、ずっと強固なシャーシですが、さすがにCDP-333ESAには勝てません。

インシュレーターは、特殊樹脂に亜鉛を混合して成型したポリスチロールジンク・インシュレーターです。
6万円クラスのインシュレーターというと、樹脂製で中空のが多いですが、これは中空では無く成型された、固まりのインシュレーターで、接地部分にはゴムが貼られています。そこそこの重さがあります。


内部は左側にピックアップ・ドライブメカと電源回路。メカの下にはサーボ制御と信号処理回路があります。右側の基板はオーディオ回路です。



底板を外した内部 底板

天板 インシュレーター



(電源回路)
電源トランスはデジタル回路からオーディオ回路への、干渉を防ぐために、デジタルとオーディオ専用のEIトランスを2個搭載しています。

CDP-555ESAの海外仕様のCDP-X559ESでも、トランスは1個ですから、日本専用のCDP-333ESAは大盤振る舞いです。

この2つのトランスは向きを逆に配置して、お互いの漏洩磁束をキャンセルするようになっています。DENONのアンプで昔から使われている「L.C.マウント・ツイントランス」と同じです。


電源回路もデジタル、オーディオ、DAC、メカ、ディスプレィなどに分かれた独立電源で、電圧変動やノイズがオーディオ回路に干渉するのを
防いでいます。

電解コンデンサは日本ケミコンの一般品「W」の35V・5600μFが2本。オーディオ用には日本ケミコンの「AVF」50V・1000μF 2本などが使われています。

電源コードは直径8mmのキャブタイヤです。

電源トランス 電源回路

オーディオ回路用の電源部

中央の茶色のコンデンサは、日本ケミコンのAVF 50V・1000μF。
レギュレーターは三菱製の「7812」と「7912」。



(デジタル回路 サーボ・信号処理)
サーボや信号処理回路はピックアップ・ドライブメカの下にあります。

ハイプレシジョン・デジタルサーボ用のICはSONY製の「CXD2515Q」です。

ピックアップの動きを制御するドライブ回路には、ファインドライブを採用しています。±2電源方式によるバランスプッシュプルにすることで、ノイズ成分の打ち消しを行い、電源部やアースラインにノイズが混入することを防いでいます。

ピックアップのアクチュエータやモーターの駆動を制御するBTLドライバは、ローム製の「BA6297FP」が使われています。

デコードや誤り訂正を行う信号処理用のICは、SONY製のシグナル・プロセッサー「CXD2500AQ」です。

システムコントロール用のマイコンは、SONYのロゴが入った三菱製の「M37451-H8」です。

サーボ・信号処理回路 サーボ・信号処理回路

デジタルサーボ用のIC
CXD2501Q
マイコン
三菱 M37451-H8



(DAC・オーディオ回路)
D/Aコンバーターは1bitのアドバンスト・パルスDAC「CXD2562Q」です。

「CXD2562Q」はPLM(パルス長変調・Pulse Length Modulate)方式の1bitDACです。

PLMはPWM(パルス幅変調)の改良型ともいうべき方式で、PWMではパルス幅がマスタークロック2個ずつしか増えないのに対し、PLMではマスタークロック1個ごとにパルス幅が増えるため、理論的にはTechnicsのMASH(PWM)の2倍の分解能を持っていました。

DACは1秒間に45MHz(4500万パルス)を生成する駆動能力があり、64倍オーバーサンプリングとSony Extended Noise Shaping方式のノイズシェイパーを搭載しています。

内部には8つのDACが搭載されており、D/A変換を行った後に片チャンネルあたり4つの出力を行っています。

デジタルフィルターはノイズシェイピング回路を搭載した、45ビットの演算能力があるSONY製の「CXD2560M」です。


DACから出た信号はバッファアンプを経て、差動合成しています。その後ろにはアクティブ型のローパスフィルター、ミューティング回路を経て出力されます。
その真ん中には銅製のバスバー(ブスバー)があり、グランドの安定化や基板の低インピーダンス化を図っています。

オペアンプは2つありますが、三菱「M5238」はバッファアンプ(緩衝増幅器)として使われています。

もうひとつのオペアンプJRC「5532DD」は、差動合成とローパスフィルターの回路に使われいます。差動アンプではDACの2次歪や外来ノイズ(コモンモード・ノイズ)を除去します。

また高域の不要成分の減衰を行う、ローパスフィルターの反転アンプとしての機能を持ちながら、出力用レベルの調整を行うので「ラインアンプ」とも呼ばれています。

オペアンプの数が少なくて済むのでコストは安いですが、ローパスフィルターや出力用の増幅などの音質は、どうしても悪化します。

他のオペアンプはヘッドホンアンプにJRC「4556D」、リップルフィルターに三菱「M5238」が使われています。

電解コンデンサは、日本ケミコンの「AVF」や「AWF」が使われています。
オーディオ回路 オーディオ回路
DAC・デジタルフィルター
の周辺部分

デジタルフィルター
CXD2560M
D/Aコンバーター
CXD2562Q

オーディオ回路

バッファ、差動合成
ローパスフィルター。



(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップは自社製のKSS-272Aです。スライド機構はリニアモーターで、高速アクセスが可能です。

ドライブメカの本体、ピックアップやスピンドルモーターが取り付けられる、メカシャーシはGベースが採用されています。

素材はSONYのアンプTA-F333/555シリーズなどに使われた、G(ジブラルタル)シャーシと同じ物で、大理石と同じ組成をした炭酸カルシウムに、不飽和ポリエステルに加えて、グラスファイバーで強化したものです。

特徴は振動に強く内部損失が大きいことに加えて、非磁性・非金属であるため電磁歪や、うず電流の発生がないなどのメリットを持っていました。

メカのスライド機構はリニアモーターなので振動が少ないです。それに加えてGベースによって、スピンドルモーターの振動を抑え込むことができるので、現在のハイエンドのCDプレーヤーに使われている、メカよりも圧倒的に高精度で振動が少ないメカになっています。

また再生中にトレイの振動を抑えるステイブルロックが装備されています。

ディスクトレイのローディング機構は、ESシリーズで受け継がれている機構です。トレイの内側に太いスチールシャフトを配置して、ベアリング(軸受)として使うことで、ギア音が無いスムースな開閉を実現するとともに、ディスクトレイの剛性を高めています。

ディスクトレイは「ジブラルタル」を使用したGトレイです。

ピックアップ・ドライブメカ ピックアップ・ドライブメカ
白っぽい部分がGベース

ピックアップ
KSS-272A
トレイの振動を抑える
ステイブルロック



(出力端子・リモコン)
出力端子はアナログは固定と可変が各1系統。デジタルは光のみとなっています。

専用リモコンの型番はRM-D991。

リアパネル

リモコン RM-D991


SONY CDP-333ESAのスペック

周波数特性 2Hz~20kHz ±0.3dB
高調波歪率 0.0018%以下
ダイナミックレンジ 100dB以上
S/N比 115dB以上
チャンネル
セパレーション
110dB以上
サイズ 幅430×高さ125×奥行375mm
消費電力 20W
重量 12.0kg





SONYのCDプレーヤー

CDP-555ESJ CDP-552ESD
CDP-X55ES CDP-333ESD
CDP-333ESD CDP-303ES
CDP-302ES CDP-750
CDP-301V SCD-XB9


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