TOP使っているオーディオCDプレーヤー > CDP-301V


SONY CDP-301V

    1988年 定価69,800円



SONYのCDP-301Vは1988年3月に発売されたCDVプレイヤーです。

CDV(CDビデオ)は1987年からスタートした新しいCDの規格で、音楽CDの収録曲を減らして、5分間の映像を記録できるようにしたものです。
ディスク自体は内側がオーディオパートと呼ばれる部分で、従来の音楽CDと同じ規格で最大20分の音声データが収録でき、外側のビデオパートに最大5分間の映像データを収録できました。

ビデオパートはレーザーディスクと同じ規格としたため、回転数を合わせるためにサーボ回路の改良が必要だったものの、780nm赤外線レーザーのピックアップや、44.1kHz/16ビット・リニアPCMのデジタル音声の信号処理回路やD/A変換回路はCDプレーヤーと同じものが使用できました。

このCDVの発売に際して各メーカーは、CDとLD(レーザーディスク)のコンパーチブルプレーヤー(通称・コンパチ)を、CDVにも対応できるようにしたものを新商品として発売しました。
ところがパイオニアはPD-707V(1987年11月発売・79,800円)、YAMAHAはCDV-S100(1987年11月発売・69.800円)という、CDプレーヤーでCDVが見られるという、いわば新たなジャンルとなるモデルを投入しました。※

このような状況に当時、国内トップシェアのSONYが黙っているハズがなく、少し遅れて投入されたのがCDP-301Vです。
開発は期間を短縮するためか、1987年の秋に発売されたCDP-950(49,800円)をベースに、映像回路を追加するという形で行われました。※


CDP-950は左右独立DAC(フィリップス製のTDA1541)や4倍オーバーサンプリングのデジタルフィルター、独立電源を搭載。シャーシやメカは上級機のCDP-227ESDと、ほぼ同等の防振対策が施されていました。内容的には同じ年に発売された他のメーカーの59,800円のモデルに匹敵するかそれ以上のものを持っていました。
CDP-301Vではこれらをほぼそっくり受け継ぎながら、TBC(タイムベースコレクター)など備えたキチンとした映像回路が搭載されました。

CDVソフトは1987年から発売されました。価格はほとんどが2400円で、音楽CDと識別するためにレーベル面を金色とされ、レコード会社によっては裏面もゴールドディスク仕様にしていました。

CBS/ソニー、ポニーキャニオン、ビクター音楽産業など、いろいろなレコード会社が参入しアイドルを中心にCDVが作られましたが、売れ行きは芳しくはありませんでした。

1990年にはCDVからオーディオパートを取り去ったビデオシングルディスク(VSD)が発売されました。こちらは価格が1200円と安くなったものの、やはり普及はしませんでした。


結局SONY、パイオニア、ヤマハのCDVプレーヤーも売れ行きはパっとせず、一代限りで消滅してしまいます。
1993年にビデオCD(VCD)が登場すると、SONY VCP-1(1994年・69,000円)やVictor XL-SV1(1994年・59800円)などビデオCDに対応したプレーヤーが発売されましたが、これらも1996年に登場したDVDに圧倒され姿を消していきました。


※当時の雑誌によるとSONYはオーディオフェアが終わった後に、大阪で開催された「エレクトロニクスショー」にCDVプレーヤーの試作品の展示(CDP-301Vの試作機かどうかは不明)を行ったそうです。
SONYが1987年の秋~年末に発売したCDV対応のコンパーチブルプレーヤー(MDP-201、MDP-801、MDP-AV1)は、いずれもビデオ事業部が開発したもので、エレクトロニクスショーの試作品はオーディオ事業部が製作したものだったそうです。



(音質について)
音はCDP-750と同じでロックやJPOP向きの少しメリハリをつけた明るめのサウンドです。解像度や繊細さは物足りないので、ジャズやクラッシックには不向きです。

CDVとして発売されたのは、ほとんどが歌謡曲やニューミュージックだったので、CDP-950をベースにしたのは正解だったと思います。



(フロントパネル)
デザインはESシリーズを踏襲しており、ディスプレィ内にミュージックカレンダー、その横に20キーと当時のSONYのCDプレーヤーの標準的なスタイルです。トレイの中心には「CDビデオ」のロゴマークが描かれています。

CDP-950との違いはトレイの下に「CDV」を再生する際に点灯するインジケーターが追加。カスタムファイル機能が無くなったため、FILEボタンがTV/DISCインジケーターに、カスタムインデックスポタンがCDVダイレクトボタンに変わっています。



CDVスペシャル「小泉今日子」

1987年発売 2400円
ビクター音楽産業 VDX-1





(シャーシと内部について)
CDP-950をベースにしてはいるもののメイン基板は同じではなく、カスタムファイル用のメモリなどが取り除かれており、CDP-950とCDP-750の中間といった内容です。もしかすると何かの輸出専用モデルの基板を持ってきているのかもしれません。

シャーシはCDP-950のものにフロントパネルとリアパネルを結ぶビームが追加されています。このビームはシャーシの剛性を向上させるとともに、映像用基板の取付にも使われています。
外側は鋼板、内部は樹脂製という2重構造になっており、樹脂製にしているのは磁気歪対策のためです。インシュレーターは本体と一体のモールドで、化粧リングが取り付けられています。

天板の裏側、ちょうど映像回路の上にあたる部分に透明のビニール状のシートが貼られています。これは防振目的ではなくノイズ対策のものかもしれません。

内部はの基板は2階建てで1階部分にはサーボ、信号処理、システムコントロール、オーディオ、電源などの回路が収められ、2階部分が映像用の基板となっています。


底板をはずした状態 1階部分のメイン基板

天板 インシュレーター


(電源回路)
電源回路は簡素ながらデジタルとアナログなどを分離した独立電源の回路となっています。電源トランスは映像回路があるため、27.5VAと大きめものが搭載されています。使われているコンデンサはニチコンの16V・4700μFなど。

電源トランス 電源回路



(デジタル回路 サーボ・信号処理)
サーボ回路は「SサーボII」と呼ばれるもので上級機と同じものです。サーボ制御用のチップにはCDP-950の後期型と同じCXA1182が使われています。
信号処理回路にはRF信号処理用のCXA1081、EFM復調やエラー訂正を行うCXA1125、RAMはサンヨー製の8bit CMOSスタティックRAM LC3517QMなどが使われています。

信号処理とサーボ回路 SONY CXA1182



(映像回路)
映像回路には輝度信号用と色信号用のTBC(タイムベースコレクター)があります。これにより2段階の時間軸補正を行い色ズレによるエッジのボケなどを低減しています。

映像回路 映像回路

SONY CXA1018 Pioneer PA0009



(DAC・オーディオ回路)
D/Aコンバータはフィリップスの16bitDAC「TDA1541」(デュアルDAC)を搭載しています。このDACの特徴はDEM(ダイナミック・エレメント・マッチング)を搭載していることです。

DEMは出力信号をシフトすることで、素子のバラツキなどによるD/A変換の誤差を平均化し、高い変換精度を可能としていました。

デジタルフィルターは、4倍オーバーサンプリングの「CXD1088」で、このデジタルフィルターのおかげで、ローパスフィルターは低次のものが搭載されています。

使用されているコンデンサは、ニチコン AVFやELNA DUOREXなどのオーディオ用コンデンサで、オペアンプはJRC 5532DDが使われています。

オーディオ回路 フィリップス製DAC TDA1541



(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップ・ドライブメカのベースは樹脂製。4点支持によるフローティング機構を持っています。メカのトップカバー鋼板製ですが、ベースとなったCDP-950はロットによってブラック・セラデッドと鋼板があるので、CDP-301Vでもブラック・セラデッドのものがあるかもしれません。

ピックアップにはKSS-200Aを使用しています。このピックアップはCDP-301V用の特殊仕様のようで、他に仕様しているプレイヤーは見当たりません。スライド機構はギヤ式でトレイはシングルCDにも対応しています。

ビックアップ・ドライブメカ ビックアップ・ドライブメカ

ピックアップ KSS-200A トレイ


(出力端子・リモコン)
出力端子は音声はアナログ2系統(固定・可変)と、映像は1系統(RCA端子)です。

またRCA端子の無いテレビに対応するために、テレビ放送のアンテナケーブルに映像信号を載せる機能があり、VHF用の入出力端子(75Ω不平衡・F型コネクタ)を装備しています。

この場合、テレビアンテナからの同軸ケーブルを、まずCDP-301VのVHF入力端子につなぎ、VHFの出力端子とテレビのアンテナ端子も同軸ケーブルで接続します。(当時のビデオデッキの接続と同じです。)

CDP-301Vで再生した映像は、スイッチでチャンネル(1chか2ch)の指定が可能で、こうすることでテレビ側では、テレビといっしょにCDVの映像を見ることができました。

リモコンの型番はRM-D301Vです。

出力端子


SONY CDP-301Vのスペック

オーディオ 周波数特性 2Hz~20kHz±0.3dB
高調波歪率 0.003%以下
ダイナミックレンジ 95dB以上
S/N比 102dB
チャンネル
セパレーション
95dB以上
映像 水平解像度 410本
輝度信号SN比 46dB
総合 消費電力 23W
サイズ 幅430×高さ105×奥行340mm
重量 5.3kg (実測5.4kg)





SONYのCDプレーヤー

CDP-555ESJ CDP-552ESD
CDP-X55ES CDP-XA3ES
CDP-333ESD CDP-303ES
CDP-302ES CDP-101
CDP-750 SCD-XB9


TOP
CDプレーヤー
アンプ
スピーカー
カセットデッキ
チューナー
レコードプレーヤー
PCオーディオ
ケーブル
アクセサリー
歴史・年表
いろいろなCD





SONY・ソニー CDP-301V B級オーディオ・ファン