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SONY CDP-303ES

     1985年 定価99,800円



SONYのCDP-303ESは、1985年11月に発売されたESシリーズのCDプレイヤーです。

ライバル機はDENON DCD-1500、Lo-D DAD-005、Technics SL-P500、Pioneer PD-7010など。


CDP-303ESは、前モデルのCDP-302ESと比べて、電源部を大幅に強化したり、シャーシにフレーム構造を取り入れるなど、基本的な性能に関わる部分についてレベルアップが行われています。

D/Aコンバーターは、SONY製の積分DAC「CX20152」を搭載しています。デジタルフィルターも、自社製のオーバーサンプリング(2倍)のものです。

積分DACの変換精度は、クロックと充電用のコンデンサに依存する部分が大きいため、全ての信号処理をひとつのクロックに、完全同期する仕組みを採用しています。これは現在、DENONのSACDプレーヤーが搭載している「DACマスター・クロック・デザイン」と全く同じ思想のものです。

電源回路はデジタルとアナログ回路への供給を分離して、干渉を抑える独立電源とし、コンデンサの本数や容量を強化して、安定した供給を行っています。

メカのベース部分は内部損失が大きく剛性の高い、新開発のブラック・セラデッドベースを採用。フローティング構造として外部からの振動を抑え、安定したディスクの信号の読み取りを実現しています。


CDP-303ESはバランスの取れたモデルでしたが、上級機のCDP-553ESDでは積分DACをやめて、バーブラウンの抵抗ラダー型DAC「PCM-53P」を採用していました。
当時、CDプレーヤーはすごいスピードで進歩していたのに対し、積分DACではそれに対応できなかったためだと思います。

後継機のCDP-333ESDでは、積分DACの搭載をやめ、フィリップス製の「TDA1541」を採用して、左右独立のデュアルDACとするなど、本格的な物量プレーヤーとなり大ヒットとなります。



(音質について)
搭載しているのが積分DACということもあり、解像度はあまり良くありませんし、レンジもけっして広くはありません。それでも自社製DACの強みかうまく使いこなしており、同じDACを搭載しているPioneer PD-9010Xを上回る部分さえあります。

前モデルのCDP-302ESと比べると、DACは同じでオーディオ回路もあまり変わっていませんが、maranz CD-34が登場した後ということで、コンデンサを「MUSE」に入れ替えるなどのチューニングを行い、音質的にはかなり進歩しています。

ただライバル機でいうとDENON DCD-1500、Lo-D DAD-005、Technics SL-P500の3台は、当時最新の抵抗ラダー型DAC・バーブラウンPCM54HPを搭載しています。CDP-303ESの積分DACとは性能の差は歴然で、解像度など音にも差がついています。



(フロントパネル)
全高85mmと薄型のボディですが、当時のオーディオラックにはアンプ、チューナー、カセットデッキなどが収まり、一番上にはレコードプレーヤーが鎮座していました。このぐらいの高さであれば薄型のチューナーやプリアンプと重ねて一段に収めることができ、重宝なサイズでした。

フロントパネルはCDP-302ESのデザインを踏襲しながら、ディスプレィを大型化するなどリフッシュを計っています。パネルのカラーはガンメタで、トレイ、ディスプレィ、ボタンなどがブラックになっています。

本体には10キーが無いのでダイレクト選曲はできませんが、この時期のSONYのリニアーモーターはめちゃくちゃ早いので、AMS/RMS(スキップ)ボタンで押していっても、それほど苦痛になりません。リモコンには20キーが装備がされています。
プログラム(RMS)は最大16曲、リピート機能は1曲/ALL/A→B/プログラムの4モードとなっています。

トレイにはプッシュローディングという機構が付いているので、トレイが開いている時は開閉ボタンを押さなくても、トレイを軽く押せば閉まります。



動画の音はビデオカメラの内蔵マイクで録音しているため、音質は良くありません。


(シャーシと内部について)
シャーシーはフロントとリア、サイドパネルでフレーム構造を造り、中央の2本のビームでフロントとリアパネルを結合して剛性を高めています。天板も底板も1枚板の鋼板で、防振材はありません。脚はインシュレーターでは無く、大きめのゴム脚です。実測7.1kg。

内部は左側にピックアップ・ドライブメカと電源トランス。真ん中の2本のビームの間には電源回路用の電解コンデンサがあります。またこの空間はメカ、電源トランスとデジタル・オーディオ基板の間の干渉を防ぐ役割も持っています。

右側の基板は手前がサーボやシステムコントロールなどのデジタル系回路。奥の左側が電源回路、右側がオーディオ回路となっています。


天板 ゴム脚


(電源回路)
電源トランスは別巻線で容量は17VA。電源回路はデジタルとアナログの干渉を防ぐため独立電源となっています。

電解コンデンサはニチコンのオーディオ用コンデンサ「MUSE」 25V・3300μF X2本、16V・4700μF X2本など。中央部の基板には8個のコンデンサが設置できるようになっていますが、実際に設置されているのは4個だけです。

電源コードはOFCで極性付きですが、細い並行コードです。

電源トランス 電源回路
MUSEコンデンサ


(デジタル回路 サーボ・信号処理など)
デジタル回路のメインのチップは基板の裏側にあります。サーボ制御用のチップはSONY製の「CX20108」。

デコードや誤り訂正など信号処理を行う「CX23035」も自社製。RAMは富士通製の「MB8416-20L」を使用しています。
システムコントロール用のマイコンは沖電気の「M6404A-41」です。

デジタル回路 信号処理用 CX23035

サーボコントロール用 CX20108 システムコントロール用マイコン
沖電気 M6404A-41


(DAC・オーディオ回路)
D/AコンバータはSONY製の16bitの積分DAC「CX20152」です。当時としては代表的なDACのひとつですが、時代はバーブラウンなどのラダー型DACが進化し、性能的に限界がある積分DACは終焉の時を迎えつつありました。

積分型DACは、コンデンサの充放電を使った積分回路と組み合わせて使うもので、「コンデンサの電圧はコンデンサに入力される電流の積分値に比例する」という特徴を使ったDACです。

動作は、まずCDからのデジタル信号をクロックを使ったデジタルカウンターにセットし、カウントダウンをします。カウントダウンと同時に積分回路のコンデンサが充電を開始し、デジタルカウンターが「0」になった時点で充電をやめます。このようにして入力したデジタル値に対応したコンデンサの出力電圧(アナログ出力)を得ています。
この方式のメリットはゼロクロス歪が発生せず、ノイズにも強いことですが、変換精度には難がありました。

デジタルフィルターはオーバーサンプリング(2倍)の「CX23034」を搭載しています。

DACの後ろのには積分回路、D/A変換した信号を左右のチャンネルに振り分けるスイッチング回路、サンプルホールド回路、ローパスフィルター、エンファシス回路などがあります。

オペアンプは積分とサンプル・ホールド回路に「LF353」、ローパスフィルターとエンファシス回路には「NE5532P」が使われています。スイッチング回路の電子スイッチはNEC「μPD4053BC」。電解コンデンサはニチコンの「MUSE」となっています。

オーディオ回路 D/Aコンバータ
CX20152(上)
デジタルフィルター
 CX23034(下)

積分回路とスイッチング回路 ローパスフィルター
エンファシス回路


(ピックアップ・ドライブメカ)
メカベースは内部損失が大きく剛性も高い、セラミックパウダー入の特殊樹脂とメタルを複合成型した「ブラック・セラデッドベースユニット」です。樹脂とメタル、セラミックという振動係数の異なった素材を合わせることで、共振も抑えています。

チャッキングアームは金属製ですが、樹脂のパーツを取り付けて振動係数を変えることで、振動を抑えています。このメカブロック全体はフローティングされており、外部からの振動の影響を抑えています。

ピックアップのスライドはリニアモーターで、高速なアクセスが可能です。ピックアップはSONY製の「BU-1C」です。


(メカのメンテナンス・修理)
トレイが開閉しなくなる原因はゴムベルトの伸びか、チャッキングアームのギヤの固着、トレーの開閉用のマイクロスイッチの接触不良などです。

トレイ開閉用のゴムベルトは2本あります。交換は底板を外して、メカの後部にあるローディングギヤのカバーを外します。モーターはネジ1本で固定されているので、これを外せば交換出来ます。ベルトの大きさは1本が直径4.5cmぐらいで太さは2mmの角ベルト。もう1本は直径6cmぐらいで、太さは1.5mmぐらいです。

チャッキングアームのギヤに使われているグリスは、変質して茶色くなり粘度が高くなっています。クリーニングしてグリスアップすれば、元どおりに作動します。

ピックアップ・ドライブメカ ピックアップ・ドライブメカ

ピックアップ BU-1C メカの裏側

チャッキングアームの上げ下げはモーターとギヤのみで作動します。このギヤの動きに合わせてトレイの開閉用のスイッチがON/OFFするため、ここがうまく動作しないとトレイの開閉もキチンと作動しません。

この時期のSONYのプレーヤーに使われているグリスは、20年以上も経ているため、変質し潤滑どころか、粘度が高くなりギヤの回転を阻害します。

ギヤをキチンとクリーニングすれば、元どおりになりますが、簡単に済ませると夏場は良くても、冬場になると残ったグリスが固まり、トラブルが発生します。

トレイの開閉機構は金属製のワイヤーと、ゴムベルトを組み合わせた物になっています。



(出力端子・リモコン)
出力端子はアナログは固定が1系統だけでデジタル出力はありません。他にサブコード端子とシンクロ端子があります。純正リモコンはRM-D302でCDP-302ESと同じです。

アナログ出力 リモコン RM-D302


SONY CDP-303ESのスペック

周波数特性 2Hz~20kHz±0.3dB
高調波歪率 0.003%以下
ダイナミックレンジ 96dB以上
チャンネル
セパレーション
95dB
消費電力 12W
サイズ 幅430×高さ85×奥行335mm
重量 6.8kg (実測重量 7.1kg)





SONYのCDプレーヤー

CDP-555ESJ CDP-552ESD
CDP-X55ES CDP-XA3ES
CDP-333ESD CDP-101
CDP-302ES CDP-750
CDP-301V SCD-XB9


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