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DENON DCD-1500

     1985年 定価99,000円



DENONのDCD-1500は1985年に発売されたCDプレイヤーです。DENONのサイトによると3月の発売となっていますが、当時の「ステレオサウンド」によるとDCD-1500とDCD-1100の発売は9月となっています。搭載されているDACなどからいっても9月が正しいと思います。

ライバル機はSONY CDP-303ES(99,800円)、Lo-D DAD-005(99,800円)、Technics SL-P500(89,800円)、KYOCERA DA-7CX(89,800円)など。


当時のCDプレーヤー市場は、1984年秋にポータブルながら、49,800円という低価格を実現したSONY D-50の発売により、オーディオファンのみならず世間の注目を集めました。そこに1985年春、marantz CD-34が発売されたことで、一気に低価格が進み活性化し始めました。

まだこの頃のDENONは、現在のようなCDプレーヤーのトップメーカーではありません。当時のフラグシップは、2年前に発売されたDCD-1800を改良したDCD-1800R。でもDCD-1800RはDACは1つしか搭載されておらず、デジタルフィルターは装備されていませんでした。

DCD-1500は当時最新のDACだったバーブラウン「PCM54HP」を左右独立に搭載。それに加えてデジタルフィルターも左右独立で搭載していました。もちろんDENON自慢のスーパーリニア・コンバーター(S.L.C.)も装備されています。

さらに、ノイズ対策としてローパスフィルターの回路に、シールドケースが取り付けたり、ラインアンプは音質に優れたDCアンプにするなど、オーディオ回路も強力でした。

ピックアップはトレース能力が高い3ビームレーザーを採用。メカはシャーシからフローティングされて、外部からの振動にも安定した読み取りが出来るようになっていました。電源回路もデジタル系とアナログ系を独立させた4電源構成とし、相互干渉を防ぐなど基本性能にも力を注いでいます。

この頃は15~16万円クラス(フラグシップモデル)といっても、YAMAHA CD-2000Pioneer PD-9010XKENWOOD DP-2000はDACを1個しか持っていないシングルDAC機です。
それに対してDCD-1500は左右独立DACと、左右独立デジタルフィルターなどを搭載。その内容は自社のDCD-1800Rを完全に上回わるだけでなく、他社のフラグシップをも上回る部分を持っていました。そのために、DCD-1500はDENONの事実上のトップモデルとして扱われることになります。

DCD-1500は15~16万円クラスにも、一部上回る内容を持っていたにも関わらず価格は99,000円。雑誌では価格帯が違うために15~16万円クラス(各社のフラグシップモデル)と、DCD-1500が一緒にレビューされることは、ほとんどありませんでした。

また下の価格帯にはmarantz CD-34という、15~16万円クラス並みの内容を持ちながら、価格は59,800円という、採算を度外視した大人気モデルがありました。
このせいかDCD-1500はオーディオ誌の評価は良かったものの、それほど世間の注目は得られなかったようです。


後継機はDCD-1600で海外での製品名はDCD-1500MKⅡと名付けられます。DCD-1600は弟分のDCD-1400とともにヒット商品となり、続くDCD-1610、DCD-1630も高い評価を得て、1990年にDCD-1650が誕生します。

このDCD-1650はシリーズ化され、DCD-1650GLDCD-1650ARなど続々とヒットモデルを生み出し、最後のモデルDCD-1650REへと続いて行きます。ですからDCD-1500はDCD-1650シリーズの直系の祖先にあたります。

「15」シリーズとしてはDCD-1500から3年後の1988年に、DCD-1610の弟分としてDCD-1510を発売。1989年のDCD-1530、1992年のDCD-1550と続き、1994年のベストセラーDCD-1515ALや1997年のDCD-1550ARを経て、2005年のDCD-1500AEで「1500」の名前が復活。DCD-1500SEを経てDCD-1500REへと至ります。



(音質について)
左右独立DACとデジタルフィルタの効き目か、KENWOODのDP-1000と比べても、セパレーションや定位は良い感じです。中低音に力がありDENONサウンド(現在のではなく1980~90年代)の、片鱗を感じます。
ただ高音は少しシャリ気味。音場は立体感は出ますが、それほど広くありません。硬めの音ですがジャズやボーカルに合いますし、オーケストラもそこそこ良いです。

DACのバーブラウン「PCM54HP」は当時最新のラダー型DACで、当時のCDプレーヤーで良く使われていた積分DACと比べると、変換精度が高く音質的なアドバンテージがありました。
ただ、前モデルの「PCM53JP」に比べると、解像度は上がっていますが、音はやや硬めになって少しザラついたという感じがします。このあたりもあって、同じ年に発売されたSONY CDP-553ESDやTEAC ZD-5000は、PCM53JPを採用したのかもしれません。

翌1986年に登場する「PCM56P」と比べると、PCM56Pのほうがノイズ感も少なく、音がなめらかで総合的にも格段の差があります。
PCM54HPはDACとしては谷間の世代という感じもありますが、DENONは3年後にDCD-1510で「リアル20bitDAC」として面白い使い方をします。


(フロントパネル)
翌1986年に発売される弟分のDCD-1300(69,800円)と共通のデザインです。
大型のディスプレイを装備しており、トラックナンバーや演奏時間、20曲のミュージックカレンダー、プログラムなどを表示できます。
10キーはダイレクト選曲が可能。ボタンの配置は系統別にはなっているものの、ちょっと使いずらいです。輸出仕様にはシルバーモデルもありました。







(シャーシと内部について)
シャーシは樹脂製ですが回路部分の下は修理時の対応がしやすいように、アクセスパネルとして鋼板がネジ止めされています。天板は鋼板製でフロントとサイドは樹脂と鋼板の2重構造となります。
樹脂製のシャーシにしているのは磁気歪み対策と、鉄と樹脂という振動係数の違う素材を組み合わせることで、振動を減衰させる目的があります。
インシュレーターはシャーシと一体成型された小型のものなので、正確にはインシュレーターというより「脚」といったところ。


内部の配置は、左側にメカと電源トランスにサーボ回路。右側には電源・信号処理・システムコントロール・オーディオ回路があるメイン基板となっています。

基盤の前のほうには黒いウレタン製のブロックがありますが、中にパーツがある訳ではないようで、天板の振動を抑えるための物のようです。


底板 インシュレーター



(電源回路)
電源トランスの容量は22VAで別巻線になっています。このトランスの横には、家庭用電源からのノイズを取るノイズフィルターも装備されています。

電源回路はデジタル系、サーボ系、オーディオ系、ディスプレイ系に分かれた独立電源で、相互の干渉を防いでいます。コンデンサは日本ケミコンのAWD(オーディオハイグレード品)25V・4700μF X2本やSM(標準品)の16V・6800μF X2本などを使用しています。

電源ケーブルは細い並行コードです。極性表示は無いですが、極性による音の差が大きいので要注意です。

電源トランス 電源回路



(デジタル回路 サーボ・信号処理・システムコントロール)
サーボ回路はメカの下と後ろに小さな基盤2枚に分かれてあります。使われているのはSONY製のサーボ制御用IC「CX20108」とRF信号処理用IC「CX20109」で、性能が良いチップのためDENONをはじめ多くのメーカーで採用されました。

サーボ回路の調整用ボリュームはメカの隣に4つありますが、パーツ番号しか記載がないため何の調整用かはわかりません。

信号処理の回路はEFM誤り訂正用のデモジュレーターがSONY「CX23035」。誤り訂正に使用されるRAMは日立製の8bitのハイスピードCMOSスタティックRAM「HM6116P-4」です。

DCD-1500ではデジタルフィルターが2つあるため、誤り訂正が終わった信号を日立製の「HM6116P-4」をデマルチプレクサとして使用して、左右の信号に振り分けているようです。

システムコントロール用の回路では、日立製の8bitマイコン「HD63A05Y0P」や、三洋製のディスプレイドライバ「LB1240」などが使われています。

デジタル回路 サーボ回路

サーボ制御 CX20108 RF信号処理 CX20109

EFMデモジュレーター
SONY CX23035
マイコン
日立 HD63A05Y0P



(DAC・オーディオ回路)
オーディオ回路は、スペースの関係でローパスフィルター(LPF)を、別基盤とした2階建てになっています。

D/Aコンバーターはバーブラウンの16bitDAC「PCM54HP」を、左右独立で搭載しています。このDAC部分はスーパーリニア・コンバーター(S.L.C.)となっています。

S.L.C.はDENON独自の回路で、DAC本体とDACから発生するゼロクロス歪を、排除する回路から構成されています。
ゼロクロス歪の原因となるDACの僅かな変換誤差を、変換誤差検出訂正回路によって検出。それを元にした補正用信号を、アナログ信号に加えてゼロクロス歪を排除しています。

デジタルフィルターは、2倍オーバーサンプリングのNPC「SM5801P」で、DCD-1500では左右独立で2個搭載。121次のFIR型フィルターで、優れた高域リップル特性を持っています。

ローパスフィルターは、約30kHzまで群遅延特性が平坦な「リニアフェイズフィルター」を搭載しています。正式名称は「Computer Analyzed Linear Phase Filter」となっており、何らかのマイコンによる制御がかかっている感じですが、ケースに収められているので不明です。

上記の回路の他に、ラインアンプ(サーボ回路付きのDCアンプ構成)、デグリッチ、サンプルホールド、デエンファシスといった回路があるはずですが、ともかくスペースが無いので、オペアンプなどのチップを多く使っています。

使われているオペアンプはTI NE5532P、ナショナルセミコンダクタ LM8528、JRC 4560D。他にはS.L.C.の補正信号を、D/A変換後の信号に合成する日立製のマルチプレクサ「HD14053BP」や、可変出力用の松下(現パナソニック)製の、電子ボリュームコントローラーMN6632などのパーツもあります。


オーディオ回路 上:左右独立D/Aコンバータ PCM54HP
下:左右独立デジタルフィルター SM5801P

ローパスフィルター(LPF)
リニアフェイズフィルター
LPFの下の回路



(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップは3ビームのSONY製のKSS-121A。このピックアップやスピンドルモーターはBMC製のメカシャーシに固定されています。
BMCはエンジニアリングプラスチックで、現在のCDプレーヤーで主流の薄い鋼板のメカシャーシよりも、高い強度と内部損失を持っています。また特殊ゴムによりフローティングされてり、外部からの振動に対応しています。

ビックアップのスライド機構はギヤ式。CDのクランプはチャッキングアーム式です。トレイのローディングはギヤだけを使ったもので、音が少しうるさいですがゴムベルトが無いので、ベルトの劣化により開閉が不能となることはありません。

ピックアップ・ドライブメカ ピックアップ・ドライブメカ

ピックアップ KSS-121A トレイ



(出力端子・リモコン)
リアパネルの出力端子はアナログが固定と可変の2系統。デジタル出力はありませんがサブコード出力端子を装備しています。
出力端子

上:初代 DCD-1500(1985年)
下:3代目 DCD-1500SE(2010年)


DENON DCD-1500のスペック

周波数特性 5Hz~20kHz ±0.3dB
高調波歪率 0.0025%以下
ダイナミックレンジ 96dB以上
S/N比 96dB以上
チャンネル
セパレーション
95dB以上
消費電力 17W
サイズ 幅434×高さ89×奥行350mm
重量 6.0kg





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