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DENON DCD-1550/DCD-1550G |
1992年 定価79,800円 |
DENONのDCD-1550は、1992年2月に発売されたCDプレイヤーです。ブラックモデルがDCD-1550で、ゴールドモデルがDCD-1550Gという型番になり内容は同じです。 当時のステレオサウンドには、発売されるのはDCD-1550Gで、ゴールドが「N」、ブラックが「K」という型番になると書かれていますが、発売直前に変更になったのかもしれません。 海外仕様はDCD-2060Gで、DACは国内仕様とは違いバーブラウン PCM-61を搭載しています。 バブルが崩壊した後で、CDプレーヤーの機種が減った時期にあたるため、同じ価格帯のライバル機はPioneer PD-T05やNakamichi CD Player3しかありません。ただ内容的にはSONY CDP-333ESA(60,000円)などとも競合します。 DCD-1550/1550GはDCD-1510、DCD-1530に続いて登場した中級機です。前モデルのDCD-1530/DCD-1530G(59,800円)から、一気に20,000円の値上げとなりました。 でも、これは型番上での話です。DCD-1550/1550GはDCD-1290(59,800円)と兄弟機で中味は同じです。内容的にはDCD-1530から正常進化したのがDCD-1290で、これにアルミトップとサイドウッドを取り付けた物が、DCD-1550/1550Gとなります。 当時は1bit・DACが全盛を迎えていましたが、DENONはマルチビットの、リアル20ビット・ラムダ・スーパーリニアコンバーターです。 DACはアナログ・デバイセズの、18bit・DAC「AD1861N」を左右独立で搭載しています。当時のマルチビットDACでは、ゼロクロス歪みが音質悪化の原因になっていましたが、DCD-1550では、ラムダS.L.Cによってゼロクロス歪みの発生を防いています。 「ラムダS.L.C」ではラムダプロセッサにより、テジタルパイアスをかけて、信号をプラス側とマイナス側の二つに分け、ゼロレベルをクロスしない状態でD/A変換して合成し、ゼロクロス歪を解消しています。 デジタルフィルターは8倍オーバーサンプリングを搭載しています。 電源部は前モデルのDCD-1530から大幅に強化され、安定した電源を供給により、音質の向上に寄与しています。 シャーシの底板は2重構造。天板は現在は高級機でしか見られなくなった、アルミ押し出し材によるアルミトップです。 機能としてはランダムプレイや最大20曲のプログラムプレイが可能。テープの録音・編集用の機能として、レベルの調整に便利なピークサーチ。タイムエディット、オートスペース、フェードイン、フェードアウトなどの機能を搭載しています。 またデジタルピッチコマンダーにより、CDの再生スピードを±12.0%まで調整できます。 (音質について) DCD-1550の持ち味は、硬めのハイスピードサウンドです。 兄貴分のDCD-1650GLと比べると、レンジや音場は少し狭いのと、この「音の硬さ」が気になります。 特徴は「音のキレ」の良さ。単音の解像度はDCD-1650REのほうが高いのですが、このキレの良さで、曲によっては音楽全体の解像度はDCD-1550のほうが良く聞こえたりします。 全体としては粗削りの部分もありますが、この「キレ」が曲にハマると、とても小気味の良い音になります。 ジャンルとしは、やはりジャズ向きの音で、フュージョンやロックもOKです。クラシックや女性ボーカルには、曲によって相性の悪さを感じます。 硬めのサウンドが「持ち味」ですので、組み合わせるスピーカーによっては、聴き疲れをする場合も出てくるかと思います。 |
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(フロントパネル) | |||||||||||||||||||||
デザインは前モデルのDCD-1530Gと同じです。 操作ボタンは電源、開閉、プレイ、ストップ、ポース、スキップなどで、その他のボタンは、シーリングパネル(トラップドア)の中に収めています。 ディスプレーの明度は4段階の調整ができます。 |
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(シャーシ・内部について) | |||||||||||||||||||||
全高や全幅はDCD-1650/DCD-1650G、DCD-1650GLなどと同じですが、奥行は40mm短いです。 一見するとDCD-1650GLと、シャーシの構造は同じように見えますが、センタービームやビームの取り付け方が違い、DCD-1650GLほどのガッチリ感はありません。 かといってDCD-1550のシャーシが悪い訳ではなく、DCD-1650GLが良すぎるのです。(重量はDCD-1550よりも5.3kg重い12.5kg) シャーシは1mm厚の鋼板製で、底板は1.5mm厚の鋼板を加えた2重底です。サイドはサイドウッドが付くので、これも2重になります。 天板は今ではハイエンドしか使っていない、アルミ押し出し材を使用したアルミトップです。 アルミは内部損失がありますが、軽量ゆえに振動しやすい面もあります。そこでパネルを2枚に分けて、1枚には凹凸を付けることで、振動係数を変えてあり、片方のパネルに振動が伝わっても、隣のパネルには振動が伝わりにくいように設計されています。 制振鋼板をシャーシに使い、内部に3つのビーム(梁)という補強材を入れることで、シャーシの剛性を稼いでいます。 インシュレーターは樹脂製で、接地面には硬質ゴムが貼られています。 内部はDCD-1290と共通で、左側にメカと電源トランス。基板の手前の部分は、サーボ・信号処理などのデジタル回路。奥の左側が電源回路。右側がオーディオ回路という配置で、オーソドックスですが合理的な配置です。 |
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内部(ビームをはずした状態) | |||||||||||||||||||||
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(電源回路) | |||||||||||||||||||||
電源トランスは別巻線。回路は独立電源で電解コンデンサは、ELNA シルミックの50V・2200μF、日本ケミコン ASFなど、オーディオ用コンデンサが使用されています。 オーディオ回路用の電源部で、こちらにもシルミックがたくさん使われています。 電源の供給力と安定度ともに余裕度が高く、急激な電圧変動などが発生しても、安定したD/A変換やI/V変換、ライン出力が可能となっています。 レギュレータはJRCの79M12A、7812Aなど。電源コードは並行コードで極性表示付です。 |
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(デジタル回路 サーボ・信号処理・システムコントロール) | |||||||||||||||||||||
1990年代になるとデジタルサーボが普及しますが、DCD-1550はアナログサーボを搭載しています。 サーボ回路ではサーボの量を大きくすると、ディスクを読み取りエラーは少なくなりますが、ノイズや電源変動が大きくなり、かえって音質が悪化するという問題があります。 当時のデジタルサーボは、まだ未完成な部分も多く、サーボ量と音質のバランスがうまく取れない物もありました。 その点、アナログサーボは熟成されており、音質を確保するには賢明な選択ともいえます。 サーボ制御用のICはSONY製の「CXA1372S」。CD信号の復調や誤り訂正などの信号処理を行うICは、SONY製の「CXD2500AQ」です。 他にはDENONのマークがついたマイコン「M50959-359SP」(三菱電機製?)などがあります。 |
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(DAC・オーディオ回路) | |||||||||||||||||||||
DCD-1550のDACは、リアル20ビット・ラムダ・スーパーリニアコンバーターです。 ですがDAC本体はアナログ・デバイセズの18bit・DAC「AD1861N-J」で、左右独立で搭載しています。 当然、これでは2bit分が変換できなくなります。以前のDCD-1610やDCD-1510に搭載された「リアル20ビットDAC」では、この2bit分をオペアンプを使用した簡易なDACで変換して、DAC本体の信号と合成していました。(コンビネーションDAC) しかしDCD-1550にはそういう回路は見当たりません。ラムダプロセッサ「HG62E33R79FS」のシフト機能を使って、フローティング処理を行い、20bit・DACとして動作させていると思います。 ※ラムダS.L.Cの詳細は下記参照。 NPC AD1861Nを国産モデルで採用しているのは、このDCD-1550/1550GとDCD-1290だけで、海外モデルを入れても数機種しかないという、いわばマイナーなDACです。 R2Rラダー方式のD/Aコンバータで、内部には18ビット入力ラッチ、シリアル-パラレル入力レジスタなどがあり、電流出力が可能です。 また、オプションとしてMSB調整回路を接続でき、DCD-1550ではここにスーパーリニアコンバータの回路を接続して、MSBの補正を行って歪みの除去を行っています。 誤差の少ないレーザートリミング技術により製造され、低ひずみで低グリッチノイズになっています。 DCD-1550に搭載されているAD1861N-Jは、たぶん選別品で、高調波歪率がノーマル品の半分(0.04%)、ダイナミックレンジ96dB(ノーマルよりも+8dB)、S/N比は107dBとなっています。 デジタルフィルターは、20bit・8倍オーバーサンプリングNPC「SM5840AP」を搭載しています。 3段のFIRフィルタ(69次+13次+9次)と24bitのアキュムレーター(累算器)、19bit x 14bitのMuitiplier(乗算器)の他、ノイズシェイパー、デジタル・ディエンファシス、ソフトミュートなどを搭載しています。 リップル特性0.125±0.03d、阻止帯域の減衰量-55dB。 DACの後ろにはNEC製のオペアンプ「μPC4570」を使用した、I/V変換回路とアクティブ型のローパスフィルターがあります。 電解コンデンサには「シルミック」を使用。他にスチロールコンデンサなども使用されています。 可変出力回路には松下製・2CH電子ボリューム「N6632A」と、NEC製のオペアンプ「μPC4570C」が使用されています。 |
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(ラムダS.L.C) | |||||||||||||||||||||
マルチビットDACの弱点といわれていた、ゼロクロス歪(クロスオーバー歪みやスイッチング歪みとも呼ばれます)を解消する仕組みで、ラムダプロセッサとDAC、そしてS.L.C.(スーパーリニアコンバータ)を組み合わせたシステムになっています。 LAMBDA(ラムダ)は、「LADDER-FORM MULTIPLE BIAS D/A」の略です。 CDの中に入っている音楽信号は、「0」「1」のデジタル信号になっていますが、D/A変換の際にプラスとマイナスが、交互に繰り返す交流の波形に戻さないといけません。 当時のマルチビットDACでは、D/A変換で信号がプラスとマイナスの間にあるゼロレベルとクロスする際に、歪が大きくなる欠点がありました。これがゼロクロス歪と呼ばれるものです。 上級機のDCD-1650のように4つのDACを搭載している場合、まずラムダプロセッサがチャンネルごとに、信号をプラス側とマイナス側の二つの信号に分けます。(全部で4つの信号) その信号にテジタルパイアスをかけて、シフト(ビットの位置を移動)させます。信号は分割と移動により、ゼロレベルをクロスしない状態になります。 これをLチャンネルのプラス用、Rチャンネルのマイナス用というように、1つの信号をひとつのDACでD/A変換を行います。音質に悪影響を与えるゼロクロス歪は発生しません。 変換が終わった信号は、プラス側とマイナス側を合成して、ふつうのアナログ信号に戻ります。 しかしDCD-1550は、片チャンネルに1個のDACで、合計2個しかありません。そのため4DACのラムダS.L.C.に比べると、手を抜いた動きをしています。 ラムダプロセッサに入る信号は、手前のデジタルフィルターで20bitになっています。ただし信号のレベル(ダイナミックレンジ)からいうと、いつも20bitの信号になっている訳ではありません。 信号が低いレベル時は、DACに余裕があるため、4DACと同じようにデータを分けて、ゼロクロスが起きないようにシフト(ビットの位置を移動)を大きくします。 レベルが大きい時は、18bitの上限までの余裕が少ないので、シフトを小さくします。この時、信号はゼロレベルを横切るために、ゼロクロス歪みが発生しますが、そこで以前のように、スーパーリニアコンバータを作動して、MSB補正を行って除去します。 信号のレベルがMAXに近い時(最大レベルの約99.6%以上)は、ラムダプロセッサは、シフトをやめますので、DACはそのままD/A変換。ゼロクロス歪みは、スーパーリニアコンバータで除去します。 2DAC用のラムダS.L.C.を搭載したDCD-1530のカタログでは、宣伝上18bit・DACを何とか「20bit・DAC」に見せたいのと、「ゼロクロス歪がない」と言いたいために、何ともチグハグな説明になっています。 さすがにそれは問題になったのか、DCD-1550のカタログでは20Bitの話はデジタルフイルターのみ、ラムダプロセッサーの動作については具体的な説明が無くなりました。 |
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(ピックアップ・ドライブメカ) | |||||||||||||||||||||
メカは新開発の物です。DENONは長いことディスクを押さえるクランパーが上下する、チャッキングアーム方式のメカを使ってきました。 DCD-1550では、クランパーの位置は固定で、ピックアップやモーターが、上下にリフトする方式のメカに変わりました。(現在のCDプレーヤーと同じ方式) ピックアップやスピンドルモーターが、取り付けられているメカシャーシは厚めの鋼板製。外部からの振動を吸収するためにフローティグされています。メカベースは樹脂製です。 ピックアップはSONY製のKSS-240Aです。スライド機構は、ラック&ピニオン式です。 写真で見ると、ちょっと頼りなさそうにも見えるメカですが、メカの本体は現在のハイエンドのCDプレーヤーと同じレベルです。 現在は自社でメカを製造しているところはわずかで、他社からDVD用の安価なメカを仕入れて、それに高級感を持たせた、ブリッジやケースを組み合わせているだけです。 |
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(出力端子・リモコン) | |||||||||||||||||||||
出力端子はアナログが固定と可変の2系統。デジタルは光と同軸の2系統です。 専用リモコンの型番はRC-234です。 アナログの可変出力の調整はリモコンからしか出来ません。RC-234でなくても、RC-202など同時期の可変出力の調整ボリュームが付いた、CDプレーヤー用のリモコンで調整が可能です。 |
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リアパネル |
周波数特性 | 2Hz~20kHz |
高調波歪率 | 0.0025% |
ダイナミックレンジ | 100dB |
S/N比 | 113dB |
チャンネル セパレーション |
105dB |
消費電力 | 17W |
サイズ | 幅470×高さ122×奥行320mm |
重量 | 7.3kg |
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