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YAMAHA CD-2000

    1985年 定価150,000円



YAMAHAのCD-2000は1985年11月に発売されたプレーヤーで、兄弟機のCD-1000(118,000円)とシャーシーやメカ、回路など多くの共通点を持つモデルです。
ライバル機はSONY CDP-553ESD、KENWOOD DP-2000TEAC ZD-5000Pioneer PD-9010Xなど。→1985年の15~16万円クラスのCDプレーヤーの比較

1984年の秋、世界初のポータブルCDプレーヤーSONY D-50(49,800円)によって、CDとCDプレーヤーはオーディオファンだけでなく一般の人の注目も集めます。さらに1985年2月に、マランツより当時のハイエンドモデルをも上回る内容を持ったCD-34(59,800円)が発売され爆発的なヒットとなります。
そこでオーディオメーカー各社は、いよいよ普及期に突入したと判断し、CDプレーヤーのラインナップの拡充をはかりました。

YAMAHAは1985年秋にCDプレーヤーのラインナップを一新し、型番の数字も3ケタと4ケタに変更します。そのフラグシップとなったのがCD-2000とCD-2000Wです。
フラグシップ機は数こそは出ませんが、メーカーの「顔」であり、下級機がそのデザインを受け継いだり、技術の一部を導入するなど、販売や広告宣伝の上で重要なポジションとなるモデルです。

CD-2000はちょっと変わった回路を持っています。2倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターは、「左右独立」ということで2個搭載されています。ところがD/Aコンバータは、バーブラウンの16bitDAC「PCM54HP」が1個しか搭載されていません。これではデジタルフィルターを2個にした意味がありません。→詳しくはオーディオ回路参照

DACの「PCM54HP」は確かに当時の最新のDACでしたが、15万円という価格であれば2個搭載して左右独立DACにすることは何も問題ありません。現実に同じ年の9月に発売されたDENON DCD-1500(99,000円)でも、左右独立デジタルフィルターと「PCM54HP」の左右独立DACを搭載しています。
ちなみに歴代のYAMAHAのCDプレーヤーを見ても、デジタルフィルターを2個搭載し、DACが1個だけというのはCD-2000だけです。

振動対策はメカ全体を弾性素材によりシャーシーからフローティングし、外部や内部のトランスからの振動を低減しています。シャーシは樹脂と鋼板、アルミバネルを使った複合シャーシに鉄製のインシュレーターを備えています。


CD-2000のメカはCD-3(89,800円)と同等ですし、シャーシも基本構造はCD-3と同じで、少し強化してアルミトップと鉄製のインシュレーターを付けたくらいです。オーディオ回路はDACが新しくなったので見直されていますが、サーボや信号処理回路もCD-3と基本的には同じで、カタログには「新設計のLSI」と書いてあるものの、実際に搭載されているのは2年前に開発されたものだったりします。

CD-2000は回路やメカやシャーシという点では、第2世代のCD-2やCD-3から特段進歩している訳ではありません。またCD-34の大ヒット後に開発されたモデルですが、それほど物量を投入している訳でもありません。どちらかというとCD-2やCD-3などの技術を、熟成させて正常進化させたものです。

本格的な物量投入が始まるのは、翌1986年に発売された後継機のCDX-2200からで、徹底的に防振対策が強化され、重量はCD-2000の約2倍となります。また世界で始めて18bitDACを搭載し、物量的にはようやくCD-34を凌駕するモデルとなります。
1986年は他のメーカーも物量の投入を開始し、いよいよCDプレーヤーは本格的な物量・ハイビット競争へと突入していきます。



(音質について)
音は典型的なヤマハサウンドで高音がキレイに出てきます。昔のヤマハの音が好きな人には安心して聴いていられる音です。シングルDACの割には解像度があり、セパレーションも良いです。あながち左右独立のデジタルフィルターは、無駄ではなかったのかもしれません。

当時はまだ積分DACを搭載したCDプレーヤーが多かったのに対し、CD-2000のDACはラダー型の最新型である「PCM54HP」です。PD-9010XやDP-2000など積分DACを搭載したモデルと比べると、解像度やレンジ、細部の表現などは明らかに優位です。

それでも翌年に発売されたCDX-2200と比べると解像度、レンジ、音場、高音の伸びなど全体的に物足りなさを感じます。
CDX-2200は後継機とは言ってもバブルの物量機で、内容的には2ランク上のモデルといっても良い物なので、これはしょうがありません。そう考えるとCD-2000の音は、まだ発展途上だったのかもしれません。

現行モデルのCD-S1000と比べると、解像度や透明感などはCD-S1000が勝りますが、音の「厚み」「腰」「張り」といったものはCD-2000のほうが上です。結果からいうと最近の24bitや32bitDACの長所と短所(解像度は良いが音の肉付きが今いち)が、音の差にハッキリと出たという感じですが、それも約30年も前のモデルとはいえ、CD-2000がフラグシップとしての「底力」を持っている証でもあります。



(フロントパネル)
デサインは以前のYAMAHAのCDプレーヤーよりも、洗練されてスッキリとしたものになりました。ボタン操作もわかりやすいです。CD-2000の後に登場してくるCDプレーヤーは、機能の増加によりボタンが増えて、また操作がわかりずらくなっていきます。

10キーは起動時だけダイレクトではなく、数字キーを押してから「PLAY」ボタンを押すタイプ。演奏中はダイレクト選曲が可能です。スキップは「+」と「-」のボタンで行います。「PAUSE」と「STOP」ボタンは兼用で、1回押すとPAUSE。もう1度押すとSTOPになります。

シルバーモデルには、サイドウッドが取付られCD-2000W(158,000円)として発売されました。



動画の音はビデオカメラの内蔵マイクで録音しているため、
音質は良くありません。





(シャーシと内部について)
CD-2000のボディは290mmと奥行が短く、サイズとしてはエントリーモデル程度の大きさしかありません。そのために回路の一部を2階建てにするなどやりくりをしています。

シャーシは基本的にはCD-3と同じ構造。CD-3のシャーシを強化して、発展させたというところでしょうか。ベースとなるのは磁気歪み対策のための樹脂製の箱形シャーシです。下部はメンテナンス用に開口部があり、底板を取り外すと基板やメカの裏側が現れます。

底板は1.2mm厚の鋼板で、基板の下だけ2.7mmの鋼板を追加した2重底。天板は3枚のアルミ板をコの字型に組み合わせたもので、厚さは天板部分が2.7mm、サイドの部分が3mm。天板が鉄板と書いてあるサイトもありますがそれは間違い。実機を見ればわかります。

サイドパネルには樹脂を補強するために1.7mmの鋼板を取付けられており、天板をはめると樹脂、鉄、アルミの3重構造となります。リアパネルは樹脂のみです。

インシュレーターはカタログでは「重りを加えたインシュレーター」ということになっていますが、実際は鉄製のインシュレーターにアルミのカバーを付けた物で、接地面にはフェルトが貼られています。CD-2000の実測重量は7.9kgですが、インシュレーターで重さは1個250gで合計1kg。確かに「重り」というだけあって、インシュレーターで重量を稼いでいるところはあります。

内部の配置は左側にメカと電源トランス。メカの下にはサーボ回路の一部があります。右側のメイン基板は手前がデジタル回路、奥の左側が電源回路、右側がオーディオ回路です。テジタル回路の上には、ヘッドフォン・可変出力用の電動ボリュームが載っています。


底部 底板をはずしたところ

天板 底板

インシュレーター

本体は鉄製で、そのまわりにアルミのカバーが取り付けられています。このアルミの部分はよくある化粧リングではなく、キチンとしたカバーとなっています。接地面はやや厚めのフェルトです。

今これを単体で買うとなると、4個1組で1万円以上はするんじゃないかと思います。



(電源回路)
電源トランスは23VAが1個。振動対策のためにシャーシーの上にアルミプレートがひかれ、その上に取り付けられています。電解コンデンサは日立製の35V・3300μFが2本など。

電源コードはフルカワ製で極性のライン入りですが、普通の並行コードです。
電源トランス 電源回路



(デジタル回路 サーボ・信号処理・システムコントロール)
メイン基板のデジタル回路には、チップ以外のパーツはほとんどありません。

サーボ制御用のチップは自社製の「YM3531」で、EFM信号やサブコードの復調などの処理も行っています。サーボ用の調整ボリュームはメカの下にあり、7つもあるので調整する時は大変です。

インターリーブ復調、誤り検出、誤り訂正などの信号処理を行うのは「YM2201」です。このYM2201にはデジタルフィルターも内蔵されていますが、CD-2000ではこれを使わずに、NPC製のデジタルフィルターを使用しています。

カタログでは「従来より回路の集積度を上げた新設計のLSI」を採用したということになっていますが、「YM2201」は2年前に発売されたCD-X1用に開発されたものですし、「YM3531」もCD-3に搭載されており、別に新しいLSIではありません。

デジタル基板 サーボコントロール YAMAHA YM3531

信号処理 YAMAHA YM2201 サーボ調整用のボリューム



(DAC・オーディオ回路)
オーディオ回路は2階建てで、1階部分が通常のオーディオ回路。2階部分はヘッドフォン回路と可変出力回路に電動ボリュームの制御回路となっています。

デジタルフィルターはNPC製の「SM5800P」で、2倍オーバーサンプリングの121次直線位相FIR型のデジタルフィルターです。CD-2000ではこれを左右独立で2個搭載しています。
D/Aコンバーターは、抵抗ラダー型のバーブラウンの16bitDAC「PCM54HP」のKグレードが1個です。

不思議なのは、このデジタルフィルターとDACの回路です。
まず、デジタルフィルターに入る前の信号は、左右のチャンネルがミックスされた状態です。デジタルフィルターの中では、オーバーサンプリングされてフイルタリングをした後に、左右のチャンネルに振り分けられます。ですから正確に言うと「左右独立」というよりも、「パラレル」のデジタルフィルターという方が正しいです。

DACのPCM54HPはシングルDACですので、2個のデジタルフィルターから出た信号を、再度ミックス(左右をいっしょにする)しないとD/A変換ができません。つまりDACのところで、デジタルフィルターの「左右独立」を帳消しにしている訳です。

DACから出た信号は、サンプルホールド回路の電子スイッチで、左右のチャンネルにまた分離されます。そして5次のバターワース型アクティブ・ローパスフィルターを通り、ラインアンプを経て出力されます。

電解コンデンサはニチコンのMUSEや、ルビコンのブラックゲートなどのオーディオ用コンデンサが使われています。

このオーディオ回路の基板の裏には、VMA(振動変調解析法)により開発された、VMスタビライザが取付けられています。VMスタビライザはモーターやトランスの振動によって、基板が振られて発信するのを防ぎ、音質の向上に役立つものですが、パーツを輻射ノイズから完全にシールドできるような物ではないので、シールド効果はどの程度の効果があるのか疑問です。

デジタルフィルター
NPC SM5800P X2
DAC バーブラウン
PCM54HP Kタイプ

オーディオ回路 ローパスフィルター

MUSE コンデンサ VMスタビライザ


(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップ・ドライブメカはチャッキングアーム式です。メカベースは鋼板製のしっかりしたもので、弾性ゴムによりフローティングされています。

ピックアップは追従性が良い3ビーム方式のオリンパス製「TAOHS-HG1」。ロットによって「TAOHS-DG1」も使われているようです。スライド機構はギヤ式ですが、モーターの振動が伝わらないように、ゴムベルトにより動力を伝達しています。


(メカのメンテナンス・修理)
メカの部分で使われているゴムベルト(ウレタンゴム)は、摩耗に強いのですが長期間使用すると、加水分解するという欠点があります。
この時期のゴムベルトは加水分解により、伸びてしまったり、最悪の場合はドロドロに溶けてしまいます。

ただYAMAHAのメカはメンテナンス性が良いので、他のメーカーに比べれば、クリーニングやゴムベルトの交換は簡単です。トレイの開閉用ベルトはトレイの隣にある大きなパーツ(ネジを外せば取れます)の下にプーリーがあり、簡単に交換ができます。スライド機構用のベルトは、チャッキングアームの稼働部のネジを緩めて外せば、トレイとの隙間から交換ができます。

ピックアップのTAOHS-HG1はTAOHS-DG1と互換性があり、交換することができます。

ピックアップ・ドライブメカ ピックアップ・ドライブメカ

ピックアップユニット メカの裏側


(出力端子)
出力端子はアナログの固定と可変が各1系統で、デジタル出力はありません。他にサブコード端子があります。
出力端子

上:YAMAHA CD-2000 下:Pioneer PD-9010X


YAMAHA CD-2000のスペック

周波数特性 2~20kHz ±0.3dB
高調波歪率 0.0025%
ダイナミックレンジ 97dB
S/N比 102dB
チャンネル
セパレーション
95dB
消費電力 12W
サイズ 幅435×高さ100×奥行290mm
重量 8.0kg (実測7.9kg)





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