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DENON DCD-1510 |
1988年 定価54,800円 |
DENONのDCD-1510は1988年11月に、発売されたCDプレイヤーで、DCD-1400の後継機となります。海外ではDCD-1420として販売されました。 1988年はまさにCDプレーヤーの黄金期で、ライバル機となる59,800円のクラスには、SONY CDP-228、KENWOD DP-7010、Victor XL-Z521、Technics SL-P777、YAMAHA CDX-620など、各メーカーともに強力なモデルを揃えていました。販売のほうも激戦区となり「598戦争」とも呼ばれました。 →1988年の598クラスのCDプレーヤーの比較 この時期のDENONの売り物は「リアル20ビットS.L.C(スーパーリニアコンバーター)」で、20bit・DACとDENON独自のスーパーリニア・コンバーターを組み合わせた物です。 当時はDACのbit数の大きさを争う「ハイビット競争」が勃発していました。 しかしオーディオ用の20bit・DACはまだ無かったため、DCD-3500とDCD-1610は18bitの「PCM64P」、DCD-1510は16bitの「PCM54P」を搭載しました。 そこでDCD-3500とDCD-1610では不足する2bit、DCD-1510では4bit分を、オペアンプを使用したDACで変換して、それを合成して20bitとしていました。 DACはバーブラウンのPCM54HPを左右独立で使用しています。前モデルのDCD-1400が搭載していたのがPCM56Pですから、新商品にも関わらず古いDACを搭載したことになります。 ライバル機が使用する最新型のPCM58Pに比べると、2世代前のDACなので音質も劣ります。そのかわり、2世代も前ですと調達価格はぐっと安くなります。 DENONはSONYや松下、ビクター、YMAHAに比べると、会社が小さいため営業力が弱く、DENON製のCDプレーヤーもまだ人気になっていませんでした。 販売戦略としては他社よりも「価格が安い」というのをアピールせざるを得ず、そのためコストの安いPCM54HPという選択になったのかもしれません。 スーパーリニア・コンバーターは「変換誤差補正回路」と呼ばれるもので、D/A変換時に抵抗値の誤差からが生じるゼロクロス歪みを、検出して補正することで歪みを排除するというものです デジタルフィルターは20bit・8倍オーバーサンプリングのNPC SM5813APを搭載しています。 機能は最大20曲のプログラムプレイやランダムプレイ、オートエディットやオートスペースなどカセットへの録音に便利な機能や、再生時のデジタルノイズを減らす、ディスプレイのON/OFFスイッチなどです。 (音質について) 音はDENONサウンドですが、レンジ・解像度ともにあまり良くありません。高音はキレが弱くまったり気味。低音の締まりも弱いです。 ソースにもよりますが、音場はこじんまりとした感じです。 リアル20bit・DACといっても、そのうちの4bit分は簡易なオペアンプによるDACです。変換精度は落ちますし音質も本体のDACより落ちます。 またDAC自体がPCM54HPですので、20bitにしたところで、ライバルメーカーのPCM58P、PCM56P搭載機には、音質的には太刀打ちできません。特にこの1988年は「598戦争」と呼ばれたぐらい、このクラスは音質・内容ともに充実していました。 販売上の戦略として、20bitDACを搭載して、他社よりも安くという戦略はわかりますが、肝心の音質を犠牲にしてはどうしようもありません。 |
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(フロントパネル) | ||||||||||||||||||||||||||||||
デザインは兄貴分のDCD-1610を踏襲したもので、前モデルのDCD-1400からは全高が少し高くなっています。 1980年代前半のCDプレーヤーのデザインは薄型が主流でしたが、バブル期に入ると、背が高いほうが高そうに見えるということで、多くのプレーヤーが取り入れています。 ダイレクト選局用の10キーはデイスプレィの下にありますが、ボタンが小さいので使い勝手は良くありません。(それでもDCD-1610よりは大きくなっています) その下にはプログラム演奏関連のボタンが配置されています。 PLAYやSTOPなどの操作ボタンは一番右に、まとめられており使いやすいです。 |
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(シャーシと内部について) | ||||||||||||||||||||||||||||||
シャーシは厚さ1mmの鋼板製です。底板はそれに厚さ1mmの鋼板を付け加えた2重底です。 シャーシの天板側の中央にビームが1本ありますが、はめ込み式で噛み合わせも甘く、無いよりはましですが、シャーシの強度の向上にはあまり貢献していません。 インシュレーターは、よくある中空のプラスチック製のように見えますが、底の部分には鉄の板が貼られています。これにより振動係数を変えることで、外部からの振動を減衰しています。接地面は硬質ゴムになっています。 内部はと左側にメカと電源トランス。右側のメイン基板は手前側がサーボ、信号処理、システムコントロールなどのデジタル回路。奥の左側が電源回路、右側がオーディオ回路です。 DCD-1510はオーディオ回路にもICがたくさんあるので、回路の配置がわかりにくいですが、真ん中のタテに取り付けられているサブ基板の後ろ側がオーディオ回路となります。 |
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(電源回路) | ||||||||||||||||||||||||||||||
電源トランスは別巻き線。電源回路はメカ、デジタル回路、ディスプレィ、オーディオ回路に分かれた独立電源です。 電解コンデンサは、日本ケミコンのAWF(オーディオグレード)の50V・2200μF X2本や一般品のSMEなどを使用。 電源ケーブルは直付けで細い並行ケーブルです。 |
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(デジタル回路 サーボ・信号処理回路) | ||||||||||||||||||||||||||||||
サーボ回路や信号処理回路で使われているのは、SONY製のICです。 サーボ制御用は「CXA1182」、RFアンプの「CXA1081」。信号処理用回路には「CXD1125」。そしてSRAMは日立製の「HM6116FP-4」です。 サーボ回路の調整ボリュームはトラッキンク・ゲイン(TRK GAIN)、フォーカス・ゲイン(FCS GAIN)、トラッキング・オフセット(TRK OFFSET)、フォーカス・オフセット(FCS OFFSET)の5つ。 この近くにPLL.ADJ.というボリュームがありますが、これはサーボ用ではないので、触ってはいけません。 システムコントロール用のマイコンは、M50957-134SPです。 |
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(オーディオ回路) | ||||||||||||||||||||||||||||||
D/Aコンバータは20bitですが、16bitのバーブラウンの「PCM54HP」を左右独立で使用して、残りの4bitはオペアンプ NEC「μPC4570」を使用した簡易なDACで変換しています。 このような方式のDACは「コンビネーション型」とか「デスクリート型」と呼ばれ、DENON以外ではVictor XL-Z711、XL-Z521、Technics SL-P999などでも使われていました。 DCD-1510ではデジタルフィルターで、CDの16bit信号を20bitにアップコンバートして、「HG61H04B22P」というICで、PCM54HPの信号(16bit)と、オペアンプのDAC用の4bitの信号に分割しています。 PCM54HPは、ニクロム薄膜抵抗を使用した抵抗ラダー型のDACです。 内部には抵抗ラダー回路、ツェナー電圧リファレンス、高速電流スイッチなどで構成され、低歪み、低ノイズを実現しています。全高調波歪みは-82dB、ダイナミックレンジは96dBです。 S.L.C.(スーパーリニアコンバーター)はDENON独自の回路で、当時のマルチビットDACで問題となっていた、ゼロクロス歪を排除するというものです。 歪の原因となるDACの僅かな変換誤差を、変換誤差検出訂正回路によって検出。それを元にした補正用信号を、アナログ信号に加えてゼロクロス歪を排除しています。 デジタルフィルターは20bit・8倍オーバーサンプリングのNPC製の「SM5813AP」を使用しています。 3段のFIRフィルタと25bitのアキュムレーター(累算器)により、199次(153次+29次+17次)の演算を行い、リップル特性±0.00005dB以内、阻止帯域の減衰量110dB以上という能力を持っています。 ローパスフィルターは、オペアンプ「JRC 8217」を使用したアクティブフィルターです。 |
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(ピックアップ・ドライブメカ) | ||||||||||||||||||||||||||||||
ピックアップ・ドライブメカは、この頃になると現在と同じ、クランパーの位置を固定して、ピックアップやモーターが、上下にリフトする方式が主流になってきますが、DENONはディスクを押さえるクランパーが上下する、チャッキングアーム方式のメカです。 ピックアップやスピンドルモーターが、取り付けられているメカシャーシは厚めの鋼板製。低反発ゴムとスプリングの2重構造の、サスペンションでフローティングし、外部の振動を吸収しています。メカベースは金属製です。 ピックアップはSONY製の「KSS-150A」。ピックアップのスライド機構はラック&ピニオン式です。 |
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(出力端子・リモコン) | ||||||||||||||||||||||||||||||
リアパネルの出力端子はアナログが固定と可変の2系統。デジタルは光と同軸の2系統です。 専用リモコンの型番は「RC-217」。 |
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リアパネル |
周波数特性 | 2Hz〜20kHz |
高調波歪率 | 0.003% |
ダイナミックレンジ | 97dB |
S/N比 | 106dB |
チャンネル セパレーション |
103dB |
消費電力 | 11W |
サイズ | 幅434×高さ135×奥行310mm |
重量 | 7.0kg |
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