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Pioneer PD-8070

    1987年 定価89,800円



パイオニアのPD-8070は、1987年9月に発売されたCDプレーヤーです。
この1987年は「898」(89,800円)の価格帯が激戦地帯で、のライバル機はSONY CDP-337ESD、YAMAHA CDX-1000KENWOOD DP-1100SGTechnics SL-P990など。


PD-8070は前モデルのPD-8030に比べて、シャーシや電源部などが大幅に強化されています。

D/Aコンバータはフィリップス製の16bitDAC「TDA1541」を搭載。TDA1541は1チップに2つのDACが搭載されており、PD-8070ではそれを左右独立DACとして使っています。デジタルフィルターは4倍オーバーサンプリングのものを採用しています。

電源部ではバイファイラ・ツイスト巻のトランスを採用することにより、出力電圧の平衡度を向上させ、ノイズも低減しています。オーディオ回路用の電源は負荷変動に対する応答が早いディスクリートプッシュプル電源としています。また電解コンデンサも容量の大きなオーディオ用コンデンサを多用しています。

メカはセラミックやゴムによる複合インシュレーターでフローティングされ、新型のピックアップを採用しています。
シャーシはパイオニア独自のハニカムシャーシで、脚もハニカムインシュレーターとなっています。また天板も2重構造とするなど防振能力の向上により、PD-8030に比べて重量は大幅に増加しています。

プログラム機能は多彩で、通常のプログラム機能の他に、オートプログラム、タイムフェード、ワンタッチフェードなどがあります。特徴的なのはミュージック・ウィンドウで、曲の中から好きなフレーズを抜き出してフェードイン・フェードアウトでつなげることができます。

使用時に気になることは、再生や選曲時、停止時などに保護用のリレーが働くため「カチ」と音が出るのですが、この音が少し大きいので、人によっては故障ではないかと心配する人がいるかもしれません。


当時、CDプレーヤーでは遅れをとっていたパイオニアですが、この1987年に物量機「PD-3000」を投入し、各社のフラグシップ機に追いつきます。PD-8070もPD-8030より大幅に進化しましたが、このクラスの他社の物量投入はそれを上回っていました。

DACではYAMAHA CDX-1000とTechnics SL-P990が18bitDACを搭載しており、SONY CDP-337とSL-P990、Lo-D DA-703Dが4つのDACを搭載していました。デジタルフィルターもSONY、YAMAHA 、Technicsが18bitを採用。シャーシも各社が2重構造とする中でPD-8030の底板はハニカムの1枚板。
強化したはずの電源でも、KENWOOD DP-1100SGやSL-P990はデジタルとオーディオを分離したツイントランスを採用していました。結局PD-8070はライバル機に比べて抜きん出たものが無く、影の薄い存在となってしまいました。
1987年の89,800円クラスのプレーヤーの比較

デザインはPD-3000と良く似ていますが、型番からもわかるとおりPD-8070は、PD-7070やPD-6070の兄貴分ではありますが、PD-3000の弟分ではありません。PD-3000のポリシーを受け継いだ弟分は、1988年に登場するPD-2000/PD-2000LTDということになります。



(音質について)
一聴するとクセの無い素直な音ですが、ちょっと聴き込んでいくと、いろいろと物足りなさが出てきます。低音は締まっていますが量感は不足気味。高音は刺激的な要素は無いものの伸びが足りません。音場は広がりや定位は普通ですが、奥行はそれほど良くありません。

クラシックやボーカルを聴くと、スケール感や繊細さといったものや表現力、情感などの不足を感じます。まとめてはいるものの、どこか小ぢんまりとしている感じです。
ライバル機のDP-1100SG、CDX-1000、DCD-1600などと比べても、やはりここが弱いところです。また1990年代の6万円クラスのモデルと比べるとレンジの狭さも感じます。

でもDACの「TDA1541」のおかげで、パイオニアの特徴である変な明るさはありませんし、音に落ち着きもあります。ところがパイオニアが「TDA1541」を搭載したのは、このPD-8070だけで海外専用モデルにも採用していません。もしかすると開発者は「TDA1541」の音は、パイオニア向きでは無いと感じていたのかもしれません。

それでも音は先代のPD-8030からはかなり良くなっています。ただ後継機のPD-2000/PD-2000LTDのほうがPD-8070よりも格段に音が良いのも間違いありません。


(フロントパネル)
PD-8030のスリムなデザインから一転して、ボリュームのあるデザインとなりました。
このデザインはPD-3000を踏襲したもので、違いはサイドのウッドパネルが無いことと、ディスプレィの下のプログラム関係のボタンが減ったこと。他にはトレイの部分のゴールドのラインやディスプレィの上の金文字などです。

操作ボタンやプログラムのボタンは右側にまとめて配置されているので、最初はちょっとわかりずらいかもしれませんが、慣れてしまえば問題ないと思います。
10キー(選曲ボタン)はダイレクトではなく、数字キーを押してからPLAYボタンを押すタイプです。

フログラムは24曲で、リピート機能は1曲/ALL/A→B/プログラムの4モードとなっています。カセットテープへの編集機能はプログラムエディット、タイムフェード、ミュージックウインドウの3つ。
ミュージックウインドウ機能は、曲のフレーズをフェードイン/フェードアウトで取り出して、最大8フレーズまでつなげて再生することができます。

電源スイッチの隣には、アナログとデジタルの出力切替スイッチがあります。




動画の音はビデオカメラの内蔵マイクで録音しているため、音質は良くありません。


(シャーシ・内部について)
シャーシは鋼板製で磁気歪を低減するために銅メッキがされています。底板は厚さ1.3mmで、ハニカム状のプレスを施したハニカムシャーシとなっています。インシュレーターも樹脂製のハニカムインシュレーターとなっています。

ハニカムシャーシは、1986年のPD-7030やPD-6030から採用されたもので、同じ厚さの鋼板よりも強度があり高い剛性を持っていました。しかし、他のメーカーでは厚さや素材が違うものを2重、3重にして、剛性だけでなく振動係数の変化や微細振動にも対応するのが主流となっていました。

パイオニアもこの方法のメリットには気づいており、PD-8070では天板を薄い鋼板(0.9mm)と厚い鋼板による2重構造としています。
また底板についても後継機のPD-2000(1988年)では、極細パイルを静電植毛した「ハイブリッド・ハニカムシャーシ」を採用。1990年のPD-T07ではBMCと鋼板を組み合わせた「多層構造ハニカムシャーシ」へと進化させていきます。

内部は左側にメカと電源トランス。右側の基板は手前がサーボや信号処理、システム・コントロールなどのデジタル回路。奥の左側が電源回路、右側がオーディオ回路とオーソドックスな配置です。
デジタル出力回路は銅メッキされたケースの中に収められており、オーディオ回路への干渉を抑えています。


天板 底板 ハニカムシャーシー

ハニカムインシュレーター

樹脂製のインシュレーターですが、内部をハニカム構造にすることで、剛性を高めています。
外側にはアルミ製の化粧リングが装着されています。


(電源回路)
電源トランスはバンドー製で容量は16VAです。実質的な容量は大きくありませんが、コアは15VAクラスのトランスの3倍以上の容量を持つコア材を使っており、磁気歪の原因となる磁束漏れを抑えるラミネートラップ構造になっています。

巻線はバイファイラ・ツイスト巻です。バイファイラ巻は+と−のコードを並行にしてコアに巻くもので、出力電圧の平衡度の向上に効果があります。それをツイストにすることで、ノイズや振動の影響も受けにくくしています。

電源回路は独立電源で、PD-8030と比べて電解コンデンサの容量を上げたり、本数を増やして安定した電源供給を行っています。オーディオ回路用の電源は負荷変動に対応するため、過渡応答特性に優れたディスクリート・プッシュプル電源となっています。

電解コンデンサは、ELNA製の「FOR AUDIO」 35V・4700μFと35V・3300μFが2本ずつ、他にDUOREXも使われています。

電源コードは10X3mmのキャプタイヤで、いわゆる極太ケーブル。コンセントも大型のものがついています。

電源トランス 電源回路

電解コンデンサ

ELNA製の「FOR AUDIO」



(デジタル回路 サーボ・信号処理)
デジタル回路の主要パーツはSONY製です。サーボコントロール用の「CXA1082」やRFアンプ「CXA1081」、信号処理用の「CXD1135QZ」、8bit CMOSスタティックRAM「CXK5816PN-15L」となどのチップが使われています。

オートフェーダー用のデジタルアッテネーターには「PD0026A」が使われています。

デジタル回路 SONY CXA1082

SONY CXA1081 SONY CXD1135QZ



(DAC・オーディオ回路)
D/Aコンバーターはフィリップス製の16bitDAC「TDA1541」です。TDA1541は内部に2つのDACを内蔵しており、1チップで左右独立DACとして使用することができます。

DEM(ダイナミック・エレメント・マッチング)を搭載していおり、出力信号をシフトすることで、素子のバラツキなどによるD/A変換の誤差を平均化し、高い変換精度を可能としています。またグリッチノイズが極めて低いのも特徴でした。


デジタルフィルターは、4倍オーバーサンプリングのSONY製の「CXD1088」を使用しています。

CXD1088はFIR型のフィルターで83次+21次の2段構成で、ノイズ成分を可聴帯域の20kHzから離れた、156.4kHzの周波数に移動できます。
リップル特性±0.001dB以内、阻止帯域の減衰量80dB以上という能力を持っています。


ラインアンプはFETを使ったA級動作になっています。

使われているオペアンプは、JRC 5532DDや5534DD。コンデンサは日本ケミコン製のオーディオ用コンデンサ「AWD」や銅箔スチロールコンデンサなども使われています。

オーディオ回路 DAC
フィリップス TDA1541

デジタルフィルター
SONY CXD1088
オーディオ回路


(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップ・ドライブメカはサイドのチャッキングアーム式で、ディスクの振動を押さえるためディスク・スタビライザーが取付られています。

メカベースは銅メッキされた鋼板製。この上に「バラストベース」と名付けられたピックアップやスピンドルモーターが取り付けられたメカシャーシ(プレート)が載っています。バラストベースは重心を下げるため特殊な形をしており、セラミックとゴムによりフローティングされて、振動がピックアップに伝わるのを防いでいます。

ピックアップは自社開発した3ビームの「PWY-1010」で、ディスクの記録面から反射されて戻ってきたレーザー光を、読み取り電気信号に変換するフォトディテクタ(光検出器)に、バッファアンプを内蔵し外部のノイズにも安定した信号の読取りを実現しています。
またパイオニア独自の、RF信号の遅延による位相差を改善する「アキュ・フォーカスシステム」も搭載されています。

スライド機構はウォームギヤ方式を採用しているので、高速アクセスが可能です。スレッド用のモーターとギヤとの間はゴムベルトを使用し、モーターの振動がピックアップに伝わるのを防いでいます。
トレイは樹脂製ですが肉厚が薄く、明らかに強度不足(エントリーモデルのCDP-750よりも華奢)です。



(メカのメンテナンス・修理)
このメカは外見はちゃんとしていますが、部品の精度が雑で樹脂製のパーツは華奢です。バブル期としては出来の悪いメカです。下級機のPD-7070(PD-6070も同じ?)も同じメカを使用しており、ネット上でもいろいろなトラブルも報告されています。

1.ピックアップレンズの脱落
これはPD-8070だけではなくて、1980年代後半のパイオニアのCDプレーヤー全般で、見受けられる有名なトラブルです。1990年代のPD-Tシリーズでも一部発生しているようです。
原因は接着材の劣化により、ピックアップレンズが取れてしまうもので、再度接着すれば使えるケースも多いようです。ウチでは該当機種7台中、これが発生したのは1台だけですので、必ず発生するというものではないようです。

2.フローティングのゴムの劣化
ピックアップやスピンドルモーターが取り付けられたメカシャーシ(プレート)は、多くの機種が吊り下げ方式を採用していまいすが、PD-8070のメカは下から支える方式です。
経年変化によりゴムが劣化し収縮すると、CDを回転させるスピンドルの位置が下がってしまうため、回転するディスクとトレイが接触して、擦れる音を発生させます。
普通はゴムといっても経年変化の少ないゴム系素材を使用しますが、どうやらPD-8070で使われてのものは縮みが大きいようです。
この現象はウチのPD-8070やPD-717でも発生しました。対策としてはフローティングのゴムの間に、薄いワッシャーを挟んで、かさ上げしたところ解消しました。

3.トレイのディスクのエレベーター部品の変形
エレベーターはトレイについているパーツで、トレイの開閉時にディスクを上下させる役目をします。耐久性が求められるパーツですが、これも出来が悪くわずかな変形で干渉を起し、トレイが開閉できなくなることがあります。
この問題を起こすのは前期の製造ロット分で、エレベーターが4本のツメになっているタイプです。後期ロットからはエレベーターの形状が改良されています。(PD-7070も同様)

ピックアップ・ドライブメカ ピックアップ・ドライブメカ

ピックアップ PWY-1010 ディスク・スタビライザー

バラストベース

スピンドルモーターやスレッドモーター、ピックアップが載るメカシャーシを下方に折り曲げることで、重心位置を下げています。
これによりディスクの読み取りを安定性させて、音質の向上をはかっています。

トレイの開閉機構

チャッキングアームの上下と、トレイの開閉を行うための部分です。
樹脂製のパーツの出来が悪く、トラブルを起こしやすいのと、負荷が大きいメカなのでトレイのゴムベルトは早め早めの交換がベター。

ゴムベルトの交換は、中央のプーリーを抑えているネジを外してから行います。


(出力端子)
出力端子はアナログの固定出力が1系統、デジタル出力は光と同軸の2系統です。

出力端子

上:PD-8070(1987年) 下:PD-8030(1986年)


Pioneer PD-8070のスペック

周波数特性 4Hz〜20kHz ±0.3dB
全高調波歪率 0.0025%以下
ダイナミック
レンジ
97dB以上
S/N比 108dB以上
チャンネル
セパレーション
100dB以上
消費電力 12W
サイズ 幅420×高さ129×奥行350mm
重量 9.6kg (実測9.9kg)



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