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S.M.S.L M100 MKII

2020年 オープン価格




S.M.S.L M100 MKIIは、2020年8月に発売されたハイレゾ対応のUSB-DACです。

SA-36Aなどのヒット商品を持つ、中国のオーディオメーカー「S.M.S.L」の、デスクトップオーディオの新世代の商品です。アンプのSA100と組み合わせて使うために開発されたDACで、統一されたデザインが採用されています。

オープン価格ですが、実売価格は7,980円~10,000円。


S.M.S.L M100 MKIIの最大の特徴は55mm x 55mm x 93mm(幅x高さx奥行・突起物を含まず)というコンパクトなサイズと、スクエアな新しいデザインの採用です。

デスクの上に置く場合、少しでも小さい方が良い訳ですが、現在の技術を持ってすれば、USBメモリぐらいのサイズでUSB-DACを作ることは可能です。
確かに音は出ますが、そのサイズではキチンとした音質を出す回路を作るのは不可能なため、どのぐらいの大きさで、音質はどこまで頑張るかというバランスがポイントとなります。

S.M.S.Lは内部の基板を2階建てにすることで、コンパクトなサイズでも音質に必要な最低限の回路を組み込見込んでいます。


S.M.S.L M100 MKIIという型番からわかるとおり、2018年12月に発売されたM100のバージョンアップモデルです。

DACがAKM AK4452からESS SABRE9018Q2Cに変更され、ソフトウェアのバージョンアップにより、ドライバーのインストールやデジタル署名無効化の問題を解決しています。


32bit/768kHzまでのPCMと、DSD512(DSD 22.4MHz)に対応しており、単純にスペックだけを見るとコスパの高いモデルです。


ESS SABRE9018Q2Cは2015年1月に発表されたDACで、ヘットホンアンプを内蔵しています。他に32-Bit HyperStreamアーキテクチャーや、ジッター除去機能、ソフトミュート、電子ボリュームなどを搭載しています。

USBインターフェイスにはXMOS XUF208。S / PDIFインターフェイスはAKM AK4118を採用しています。



入力端子はUSBがUSB Micro-Bで、PCMが最大32bit/768kHz。DSDネイティブがDSD64~DSD512。パソコン、タブレットの他にスマホとの接続も可能です。

S/PDIFは光と同軸端子で最大24bit/192kHzのPCMに対応しています。

出力端子はRCA端子だけです。

電源はDC 5Vで、USB端子からバスパワーで供給も可能です。またDC IN端子もあり、ACアダプタなどの外部電源から供給を受けることも可能です。この端子もUSB Micro-B端子となります。

M100 MKIIは消費電力が大きいので、スマホに接続してDACとして使う場合は外部電源を使用しないとスマホのバッテリーの消費が早くなってしまいます。



付属品はUSBケーブル (A to Micro-Bタイプ)で長さは1m。RCA ケーブルは同梱されていないので、別途用意する必要があります。


また新しいモデルですが、リモコンには対応していません。
操作はフロントパネルの電源/機能ボタンから行います。→取扱説明書

機能としては入力(USB/光/同軸)の切り替えと、DSDフィルターが3モード、DPLL(Digital Phase Lock Loop)の設定が9モードを切り替えできます。
機能は豊富ですがボタンが1つしかないため、何回もボタンを押さねばならず使い勝手は悪いです。


ボディはアルミ製です。カラーはブラックとブルーの2色があります。ブルーは正確にはブルーメタリックになっています。
フロントパネルはアクリル製で、キズ防止用のフィルムが貼られています。


S.M.S.L M100 MKIIはスペックだけを見ると高級DAC並みですが、あくまでもコンパクトで使いやすさがメインのエントリーモデルです。

Topping E30と同じで、いくら音質の良いDACを搭載していても、電源の能力が低く、ノイズ対策も十分ではありません。またMk2となって改良されたとはいえ、オーディオ回路も不十分です。

スペックやESSのDACだけを見て、音質に対してに過度な期待をしても無理があります。






(Windows用ドライバー)
ドライバーはS.M.S.Lのサイトからダウンロードしてインストールできます。

圧縮形式がrar形式なので、7-ZipやWinRARなどの解凍ソフトが必要になります。

マニュアルでは対応OSではなく、USB互換性という言葉でWindows 7/8 / 8.1 / 10、Mac OS X10.6以降/ Linuxとなっています。


プレーヤーアプリによっては通常のドライバー(DIRECT SOUND)と、ASIOやWASAPIの音質がまるで違う場合もあるので、新しいドライバーをインストールしたうえで、きちんと設定を行ったほうが良いです。


DSDの再生には、パソコンやスマホのプレーヤーアプリが、DSDに対応していることが必要になります。アプリによってはDSDの出力を、PCMに変換の後にダウンコンバートして出力するものもあるので、注意が必要です。



(ハイレゾ音源について)
ハイレゾのブームのピークは5年ぐらい前で、一般の人からは「オワコン」などと呼ばれてもいます。

確かに新譜の数が少なくなり、それも24bit/96kHzが中心になっていますし、e-onkyoなどの配信サイトでは、常に値引きキャンペーンが行われているので、「終焉」に近づくパターンとも言えます。

PCM 32bit/768kHzをサポートしていますが、32bit音源は2015年~2016年にアニソンを中心に音源が作られただけです。32bit音源を聴きたければ、この音源を購入する他ありません。

DSDは新譜が出ていますが、それでも国内では1年に20タイトルもありません。それがDSD256(11.2MHz)となると、もう少し数が減ります。
DSD512(22.4MHz)音源はネットで探しても見つからないぐらい無いです。

※既存の16bitや24bit音源をサンプリングを上げて、コンバートすれば音が良くなると思う人もいるかもしれませんが、そう単純ではありません。



(音質について)
ESSのDACだから音は良いハズなどと思うと大間違い。同じS.M.S.LのESS搭載機 SU-8と比べると、音色や繊細さなどがまるで違う。同じメーカーのDACとは思えないぐらい。

音はレンジが狭く全体的に音が平面的で痩せていて、情報量が少ないです。
解像度や透明感も良くないので、音の混濁が感じられます。

ハイレゾ音源を聴いても傾向は同じで、音の情報量が増えないですし、滑らかさもありません。ハイレゾ対応のマークは付いていますが、音は全くハイレゾ対応になっていません。
本当のハイレゾの音を楽しみたいなら、他のUSB-DACを買ったほうがいいです。


音を比較すると24bit/96kHzのDAC-SQ5JHUD-mx1に負けます。曲やジャンルによっては、DAC-X4Jにも負けてしまいます。

このあたりはTopping E30と同じですが原因も同じです。上記のモデルは、いずれも基本に忠実な設計と高音質パーツを使っています。
HUD-mx1は10年以上古いモデルですが、高音質のパーツを使い、電源部も安定化とノイズ対策をしているので、音に差が出ても不思議はないです。


いくらESSのDACやXMOS XU208を使って、かたち上はハイレゾ対応になっていても、M100MK2にはハイレゾをキチンと再生するのに、必要なオーディオ回路や電源回路になっていません。

USBケーブルから入ってくるパソコンのノイズや、XMOSなどのインターフェイスICから出るノイズを、DACに入らないようにする対策も不十分です。


また、RCA端子からの出力はヘッドホンアンプを通して行っています。つまりヘッドホン出力です。
音量は調整されてるようですが、問題はインピーダンスがヘッドホン用になっている訳で、ライン出力を受けるアンプの、入力インピーダンスとは違うことになります。これによる音質の劣化があるかもしれません。



SA100(左)とM100MK2(右)





(内部について)
ボディが小さいので内部の基板も小さくなります。そこで回路基板は2階建てになっています。
2階部分はインターフェイスICやマイコンなどがあるデジタル回路。1階部分はDACなどがあるオーディオ回路となっています。


デジタル回路のUSBインターフェイス回路には、USBコントローラのXMOS XUF208と、WINBOND製のシリアル・フラッシュメモリ 25X40CLNIG。

S/PDIFのインターフェイス回路には、オンセミコンダクタ LC89091JとTI製のオクタル・バッファ(ラインドライバー)のLA244A。

ディスプレィやスイッチの制御には、STC製のマイクロコントローラ 2K16S2Dが使われています。

クロックは低位相・低ノイズタイプで、44.1kHzと48kHzの2つが搭載されています。



1階部分の回路は手前側の半分がオーディオ用の電源部なので、正確にはオーディオ回路は基板の半分しかありません。

通常のDACは、その後ろにはI/V変換回路、差動合成回路、ローパスフィルターなどが必要になるため、DACの後ろにもたくさんのパーツが必要となります。


それに対してM100MK2では、DACの後ろにERO製のフィルムコンデンサやMELF型抵抗など十数個のパーツしかありません。

DACとして使われているESS SABRE 9018Q2Cは、DACとヘッドフォンアンプを内蔵した、SoC(System On a Chip)のため、出力をそのまま出力端子に繋ぐことができます。(Sabaj Da2などはそうなっています。)

この手の統合型のオーディオICは1990年代からあり、ポータブルのCDプレーヤーなどに搭載していました。

メリットは低コストで省スペースなことです。デメリットはアナログ回路の部分が、他の回路から干渉を受けて音質が劣化することです。これはSABRE 9018Q2Cも同じです。

ESSのDACは価格が高いですが、SABRE 9018Q2Cは1個1.5~3ドルと安いです。
ちなみにM100で使われていたAKM AK4452は230円~400円ぐらいです。
M100MK2ではSABRE 9018Q2Cに変えたことで、オーディオ回路のパーツがかなり減っているので、コストダウンが図れています。

SABRE 9018Q2Cは2015年に登場していますが、搭載したのはいずれもポータブルヘッドホンアンプで、USB-DAC専用機への搭載は珍しいです。

何故使われないかというと、出力インピーダンスがヘッドホン用になっているためで、アンプの入力インピーダンスとは合わないためです。当然、音質にも影響が出ていると思います。

ESSだから音が良いハズだと思う人もいるかもしれませんが、SABRE 9018Q2Cの価格と内容から見て、他のESSのDACのような音を出すのは難しいと思います。

ちなみに搭載しているHPAは SMSL iDEA、SMSL IQ、nextDrive SPECTRA、Fiio M6、Sabaj Da2、Sabaj Da3など。



電源は、ほとんどの人はパソコンからのUSBバスパワーの5V・500mAを使うことが想定さますし、ACアダプタを使うといっても、市販の5Vのものは500mA程度が多いです。

ともかく容量が無いということで、見た目以上に気配りした設計になっています。デジタル部はICごとに電圧が違うため、回路を独立化し降圧して給電しています。

オーディオ用の電源部も独立化しており、オペアンプ「MC33078」を使用した定電圧回路となっています。電解コンデンサはニチコンのFW。

この電源回路はTopping E30に比べると、はるかにお金がかかっていますが、音楽を再生するという部分では良いとしても、良い音で再生するという部分では、ノイズ対策や安定度など、まだまだ不十分な回路です。


ハイレゾ対応といっても、DSDなどの大きいファイルを再生した時は、データ量が大きくなり、インターフェイスICやDACなどの消費電流が増えます。

でも電源の余裕が無いこともあり、こういう状況ではDACがD/A変換する際に、音は途切れることはないものの、変換精度が低くなるため、本来の音を再生できなくなります。

また、パソコンからUSBケーブルを伝わって入ってくるノイズや、デジタル回路で発生するノイズへの対策は不十分です。

ここは中国のメーカー ToopingもSMSLも「やる気」がないようで、フラグシップのSMSL M400でさえ、十分な対策を取っていません。



(XMOS XUF208について)
USBコントローラはXMOS XUF208です。XUF208は内部に強力なマルチコアのマイクロコントローラを搭載しているので、インターフェイスではなく「コントローラ」と呼ばれます。
コアプロセッサは32ビット・8コアで処理速度は1000MIPS。

XUF208はメーカー側でプログラミングすることで、USBインターフェイスだけではなく、いろいろな家電品や自動車、産業用機器、ロボットなどに、組み込みんで活用が出来る製品として開発されています。

でもオーディオメーカーのほとんどは、32bit/768kHzやDSD512のデータを受け取れるインターフェイスとしてしか使っていません。


デジタル回路基板

オーディオ回路基板

USBコントローラ
XMOS XUF208
シリアル・フラッシュメモリ
25X40CLNIG

S/PDIFのインターフェイス
とマイクロコントローラ
オーディオ用の
電源部

オーディオ回路 DAC
ESS SABRE9018Q2C

(付属品)

USBケーブル


S.M.S.L M100 MKIIのスペック

入力データ
(USB)
(PCM)
16bit~32bit
44.1kHz~768kHz

(DSDネイティブ)
DSD64~DSD512
入力データ
(光・同軸)
(PCM)
16bit~24bit
32kHz~192kHz
S/N比 117dB
高調波歪率 0.0003%
ダイナミックレンジ 120dB
電源端子 DC5V
消費電力 1.2W
サイズ 幅55×高さ55×奥行93mm
(突起物を含まず)
重量 258g





USB DAC
デジタルアンプ
ヘッドホンアンプ
DAP
イヤホン
ヘッドホン
オーディオケーブル
PCオーディオTOP
オーディオTOP






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