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S.M.S.L SU-8は2018年5月に発売されたハイレゾ対応のUSB-DACです。発売時の価格は27,000円。 デジタルアンプのDA-8、ヘッドホンアンプのSH-8と組み合わせて使うように、同一のサイズ、統一されたデザインになっています。 ESSテクノロジーのES9038Q2M DACをデュアルで搭載し、PCMは最大32bit/768kHz、DSDは最大DSD512まで対応しており、なおかつバランス出力装備と、ヨーロッパのメーカーが作ったら、10万円超えとなる内容のUSB-DACです。 現に最初にヒットしたのは、中国とヨーロッパです。日本は電源が115V仕様であったことから、扱う業者が増えなかったので、注目度は高かったものの、それほどのヒットにはならなかったという感じです。 アメリカはトランプ政権が中国製品に多額の関税をかけた時期ですので、その影響もあるかもしれません。 DACのES9038Q2MはHyperstreamⅡというD/A変換回路や、ジッターを低減するタイムドメイン・ジッタエリミネーター、THD補正機能を搭載。 出力は電流出力です。スペックも優秀でダイナミックレンジが128dB、THD+Nは-120dBとなっています。 SU-8ではES9038Q2Mを左右独立で搭載されており、最終出力段まで音質の劣化が少ないフルバランス伝送になっています。 DACでの音質低下の原因のひとつにジッターがありますが、その対策としてCPLDと超低位相雑音クリスタルを使用した、クロックシステムを搭載してジッターを削減しています。 このあたりが日本のオーディオメーカーがダメなところで、ジッター対策というと単純にクロックの精度が高く、低ノイズであればよいという考え方で、1980年代から進歩がありません。 ジッターは他の回路で発生したノイズによっても起きるため、世の中ではジッターを除去する回路を搭載するのが普通になってきています。DACを自作する人でも、ジッターの除去回路を搭載している人が増えています。 USBインターフェイスには、第2世代のXMOS xCore 200を搭載しており、PCMはは最大32bit/768kHz、DSDは最大DSD512まで対応しています。 USBだけでなくS/PDIFの同軸、光端子もDSD(DoP)入力が可能になっています。 電源は内部にトロイダルトランスを使用した電源回路を搭載しているため、ACアダプタが不要になっています。 USB-DACの音質向上にはキチンとした電源回路が必須です。他の回路で電圧の変動やドロップが発生すると、DACやオーディオ回路も、その影響を受けて音質が悪化してしまいます。 また、XMOSやマイコンなどは大量のノイズが発生した、これが電源回路に入り込み、DACやオーディオ回路の音質低下を招きます。 このためSU-8では独立電源回路を採用し、DACなどインターフェイスICは、ICごとにレギュレーターを独立させて相互の干渉を低減しています。 本体の裏側に115Vと230Vの切り替えスイッチがありますので、日本で使用する場合は、115Vにします。 電源ケーブルは3Pの着脱式です。電源ケーブルとの相性は出るほうで、ウチにある何本かのケーブルを試したが、ハマる物が見つかりませんでした。 2~3万円台のケーブルよりも、中国製のACアダプタ用の細いケーブル(ブランド名無し)が一番良かったです。 入力端子はUSB TypeB(1.1/2.0)、S/PDIFの光端子(TOS-LINK)とコアキシャル同軸端子の3系統。出力端子はRCA端子とXLR端子で固定出力となっています。 リモコンでは音量、入力の切り替え、PCMフィルター、サウンドカラー、ディスプレィ表示、ディマー(ディスプレィの照度)などの操作ができます。→取扱説明書 ディスプレィはサイズが小さく、表示される文字も小さいです。 付属品はリモコンと電源ケーブル、USBケーブルです。 ライバル機は価格的にはTopping D-50/D-50sとなりますが、内部の回路は電解コンデンサが1個だけという、メチヤクチャな手抜き設計なので、ライバルと呼ぶのはSU-8が可愛そうです。内容から見るとTopping D-70がライバルに近いです。 |
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(USBのドライバーについて) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
対応OSはWindows 7/8/8.1/10、Mac OSX10.6以降とLinux。 ドライバーはSMSLのサイトからダウンロードできます。ファイル形式はrarのため、7-ZipやWinRARなどの解凍ソフトが必要になります。 |
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(音質について) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
音は解像度と透明感があり、小さな音、細かい音でもよく再生します。1万円クラスのUSB-DACや、エントリークラスのCDプレーヤーでは聴こえない音も聞こえます。 現代的なハイスピードサウンドで、レンジも広いです。定位は少し甘くて散乱系です。 高音がポイントで、高音が良く出るアンプと組み合わせると出過ぎてしまって、少しうるさく聞える場合もあります。逆に低音はあまり出ないため、量感が不足を感じます。 音楽のジャンルはオールラウンド。クラシック、ジャズ、フュージョン、ロックと再生OK。打ち込み系が多いアニソンは少し苦手。 ウチにある2000年以降に発売された、ピュアオーディオのSACDの中級機と聴き比べましたが、低音の量感が無いので音が軽く感じたり、音場の狭さが気になるものの、解像度はDENON DCD-1650RE(180000円)を上回ります。 音のレベルとしては、これらの中級機に近いポテンシャルを持っていると思います。 10~20万円クラスのアンプやスピーカー、CDプレーヤーと組み合わせても違和感のない音です。 PCオーディオで使う場合も、デジタルアンプやスピーカーの質が高いほうが、SU-8の能力を引き出せます。 |
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(ケースについて) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ケースはアルミ合金製です。アルミは非磁性のため磁気ノイズを低減します。 厚さは天板が3mm、一体成型のフロント、サイド、リアパネルが4mm。底板が2mmです。 底板には3点支持のゴム脚が付いています。 |
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(内部について) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ES9038Q2M DACは、新しい32ビットHyperStream IIアーキテクチャを採用し、音質と特性を向上させます。 ES9038Q2Mを左右独立で搭載し、I/V変換、差動合成、ローパスフィルターの回路を含めて、フルバランス伝送になっています。RCA出力はアンバランス変換回路を通して出力しています。 DACの後ろにあるI/V変換回路ではオペアンプが左右で1個ずつ使われていますが、その後の差動合成回路は1個のオペアンプで、左右の回路を処理しています。オペアンプはTI 1612Aにです。 ローパスフィルターはRCフィルターで次数が少ないです。その後ろにはラインアンプがあります。 クロックシステムのジェネレーターはCPLD(アルテラ MAXⅡ)と超低位相雑音クリスタルを使用しています。Topping D70でも同様のシステムが搭載しています。 このジェネレーターはDACやXMOSなどに高精度なクロックを提供するだけでなく、CPLDを使ったジッター削減回路となっています。 詳細は公開されていませんが、PLL回路の中でジッターのノイズ成分を、CPLDでシェービングして削減する方法や、ジッタークリーナーのように複数のPLLを使用して、ジッターを削減する方法があります。※ジッターを削減する方法はいくつもあります。 USBインターフェイスは第2世代のXMOS USBオーディオソリューションxCore 200を搭載しており、PCMはートは最大32bit/768kHz、DSDは最大DSD512まで対応しています。 S/PDIFのインターフェイスICはオンセミコンダクタのLC89091Jで、PCMは24bit/192kHzまで対応しています。 ディスプレィや入力の管理をするマイクロコントローラはSTC 15F2K60S2です。4メガビット のSPIフラッシュメモリはWinbond 25X40CLING。 |
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(ES9038Q2Mについて) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ESSテクノロジーは1983年にアメリカで設立されたメーカーです。当初はいろいろなデバイス向けの合成音声(電子音声)を作成する会社でした。 1990年代の半ばからパソコン用のサウンドチップやビデオチップなどの製造を始め、2000年代になるとDACやADCの開発をスタートさせます。2009年に登場したES9018は高音質で評判になり、いろいろな製品に搭載されたことから、ESSのDACは有名になりました。現在はオーディオ機器だけでなく、スマートフォンやタブレットにも搭載などにも搭載されています。 ES9038Q2MのHyperstreamⅡは64ビットのアキュムレーターと32ビットのデータパスを持ち、従来の技術に加えて新開発のディザや、動特性を重視した量子化アルゴリズムを採用しています。 またノイズシェーピングやDACチップ内部の物理特性の誤差に由来するノイズ成分をコントロールして、ローパスフィルターで上手にカットすることができるように調整しています。 ジッター対策も優れており、内蔵のASRC(非同期サンプルレートコンバータ)は、ジッターの削減効果があることが知られていますが、それに加えて専門のジッター除去回路であるタイムドメイン・ジッタエリミネーター(特許)も搭載して、クロックジッターを低減しています。 し THD補正機能により2次高調波の発生を抑制し、局所的に発生した歪みも効果的に低減します。 デジタルフィルターはFIRフィルタで7つのプリセットが可能です。 これらにより、従来と比べて、D/A 変換における過渡応答特性や、THD のリニアリティなどが向上しています。 また非周期的な信号が入力されたときの出力の安定性も向上し、小振幅時の歪率が低下しています。 その他の機能としては、ソフトミュート、ボリューム・コントロール、デエンファシス機能、ゼロディテクトなどの機能があります。 |
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(電源回路について) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
デスクトップオーディオの場合、電源回路は製品のサイズや価格から制約を受けます。 サイズの制約からACアダプタを使用する機種も多いですが、SU-8では小型のトロイダルトランスを使用した電源回路を搭載して、ACアダプタが不要になっています。 磁気漏洩の少ない医療グレードのトロイダルトランス(THAI LIN TH99-0100-024)を搭載しています。 現在のデジタル回路は昔のCDプレーヤーやDACに比べて、大量のノイズが発生するようになっており、音質への影響が高まっています。 ハイレゾ対応のUSB-DACでは、ファイルサイズの大きいPCMやDSDなどのデータを受信するために、USBやS/PDIFのインターフェイスICは高速のスイッチング動作をします。 また同様にデイスプレィなどを制御するマイコンも、高速のスイッチング動作を行います。 これらのICのスイッチング動作によって、スパイク状の電流が流れ、ノイズの発生と電源電圧が変化します。 ここで発生したノイズは、音楽信号といっしょに流れるだけでなく、電源のラインにも伝わります。また電源電圧の変化は回路の動作が不安定になる原因となります。 そのため、USBインターフェイスが原因で起きた電圧の変化により、DACに供給する電圧が一時的に降下して、変換精度が悪化して音質低下の原因となります。 SU-8ではIC別、回路別の独立電源を採用しています。電源を独立化することで、ノイズの回り込みを抑えるとともに電圧の変動も、その回路だけになるため、他の回路への干渉(影響)を抑えることができます。 SU-8の電源回路は上級機のSU-9よりもしっかりしたもので、パーツを投入してキチンと作っています。逆にSU-9では電源部で手を抜いいると言えます。 SU-9ではトロイダルトランスに変えて、小型の電源モジュールを搭載しています。この電源モジュールはサイズからみて、間違いなくスイッチング電源です。つまり小型のACアダプタと同じです。 ACアダプタはスマホ用の小型のものから、小型のデジタルアンプより大きいものがまであります。よくデスクトップオーディオで大型のACアダプタが使われるのは、音質に影響する電流の容量の確保と電圧を安定させるためです。 またSU-8の小型トロイダルトランスだけで、価格が電源モジュールの2倍ぐらいはするので、コスト削減の意味も大きいと思います。 SU-8の安定化電源回路にはダーリントン・バイポーラ・パワー・トランジスタのMJD122、MD127が使われています。他にパワーMOS-FETのNCE 4614。DC-DCコンバータがXLSEMI XL1509。 使われている電解コンデンサは平滑コンデンサが、ニチコンFM 25V・3300μFが2本(SU-9は25V・470μFが4本)。その他にはニチコン KY、VRなどが使われています。 |
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入力データ | (USB) ビット:1bit-32bit サンプリングレート: PCM 44.1~768kHz DSD 2.28224~22.5792MHz (S/PDIF 光・同軸) ビット:1bit-24bit サンプリングレート: PCM 32~192kHz DSD 64(DoP) |
SN比 | 116dB |
THD + N | 0.0003% |
ダイナミックレンジ | 120dB |
消費電力 | 3W |
サイズ | 幅185×高さ40×奥行125mm |
重量 | 1kg |
USB DAC |
デジタルアンプ |
ヘッドホンアンプ |
DAP |
イヤホン |
ヘッドホン |
オーディオケーブル |
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