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SONY ST-S333ESXII

      1987年 定価49,800円


SONY ST-S333ESXIIは1987年10月に発売された、ESシリーズのFM/AMシンセサイザーチューナーです。

当時はCDプレーヤーの全盛期のせいか、各社ともチューナーのラインアップは整理・縮小しており、新製品も少ない状況でした。
1987年に販売されていたチューナーで、ライバル機となりそうなのは、KENWOOD KT-880F(1985年・45,000円)、ONKYO integra T-445XX(1986年・43,000円)、Pioneer F-120D(1984年・49,800円)、SANSUI TU-α507i(1987年・45,000円)、Technics G-80T(1986年・49,800円)、Victor FX-711(1987年・49,800円)、YAMAHA TX-900(1986年・49,800円)など。


ESシリーズの「ES」は、Extremely high Standardの略で、1960年代から商品を発売しています。1982年にはアンプ、チューナー、カセットデッキにESモデルを投入。翌1983年にはCDプレーヤーにもESモデルが投入されました。ただし、この時はTC-K555ESやCDP-501ESなど、既存モデルを改良して性能と音質を向上させたりしていました。

1986年になるとESシリーズにはバブルの物量機が投入されます。アンプの「798」戦争を引き起こしたTA-F333ESX、その上級機となるTA-F555ESX。カセットデッキにはTC-K555ESX、CDプレーヤーにはCDP-555ESDと、現在でも「名機」と呼ばれるモデルが次々に登場しました。

これらのモデルに比べるとあまり話題にはなりませんでしたが、チューナーにもST-S555ESX、ST-S333ESX、ST-S222ESXといったESモデルが投入されました。
特にST-S555ESXとST-S333ESXには新しい回路が投入され、チューナーではようやくKENWOODやPioneerに肩を並べる水準になったと言えます。


そのST-S333ESXの後継機として、翌1987年に投入されたのがST-S333ESXUです。基本的な回路技術はST-S333ESXを踏襲していますが、フロントパネルや中味の回路基板などは新設計の物になっています。

ST-S333ESXから投入された回路は、「Wave Optimaizer Technology」(波形最適化技術)と呼ばれるもので、フロントエンドの「SSTサーキット」、IF部の「WOIS」、検波部の「WODD」、MPX部の「WODSD」といった回路です。

これはKENWOODが、フロントエンドからMPX部にいたる回路を総称して「4Dシステム」と呼んでいたのに対抗したのかもしれません。

内訳としては、SSTサーキットはトラッキングエラーの減少と音質の改善をはかった回路。WOISはIF段の歪み補正回路。WODDは直線検波回路。WODSDはビートカットフィルターを排除しながら音質と妨害能力を両立した回路という感じですが、WOISとWODDはKENWOODの「DCC」と「DLLD」によく似た回路ですし、WODSDはSUNSUIの「SLDD」そのものです。

つまり、KENWOODやSANSUIのチューナー技術に、SONY独自の名前を付けたようなことになっている訳ですが、逆にSONYはこの時期にKENWOODとSANSUIに、CDプレーヤーの核心技術のひとつである、サーボ回路のICを供給していました。

SONYはサーボ回路にあたかもKENWOODやSANSUIが、自社で開発したような回路名を付けることを許しており、「CDプレーヤーの技術を渡すから、チューナーの技術をちょうだい」というような「密約」があったのかもしれません。


機能としてはチューニングはオートとマニュアルが可能。マルチプロセスメモリーにより、周波数と受信条件を同時に記憶する、FM/AMランダムプリセット機能(合計20局登録)。

留守録に便利なプログラム受信機能を搭載しており、プログラムタイマーと連動して4つの放送局を受信できます。その他にカセットデッキの録音レベルの調整用に、キャルトーンを搭載しています。



(受信について)
現在は家にFMアンテナが無いので、ケーブルテレビからFM放送を聴いています。受信性能は良好で、5連バリコン相当のTRIO KT-1010と遜色ないぐらいです。


(音質について)
音がクリアで解像度も高く、セパレーションともにすばらしいです。とても音の良いチューナーだと思います。細部の音や楽器の表現力なども、キチンと出ています。

サウンドはやわらかめで、「SONYサウンド」とはちょっと違います。これは当時、組み合わされたアンプのTA-F333シリーズの音が、少しハデ目だったので、チューナーはおとなしめにして、ちょうどバランスがとれて良かったのかもしれません。クラシックにはとてもよく合います。

日曜日の午後のNHK-FMでいうと「きらクラ!」はまさにドンピシャですが、その後の70〜80年代の洋楽・ロック番組「洋楽グロリアスデイズ」は、音のメリハリが足りず、チューナーを取り換えたくなるくらいです。


(フロントパネル)
前モデルのST-S333ESXは、アンプのTA-F333ESXと合わせた無骨なデザインでしたが、ST-S333ESXIIでは新たにアナログチューナーを彷彿させる、チューニングダイヤルが装備され、全体のデザインもスタイリツシュなものになりました。

シンセサイザーチューナーのチューニングダイヤルというと、KENWOODのD-3300TやKT-1100D、少し古いところではKT-3030やKT-2020などの、上級モデルに採用されていました。ESモデルとして、これらへの対抗の意味合いがあったのかもしれません。

またSONYは1985年にビデオデッキのSL-HF900にジョグダイヤルを搭載。これを真似して1986年には、TechnicsがCDプレーヤーのSL-P1200やSL-P720に、ジョグダイヤル(カタログ名はサーチダイヤル)を搭載したのが話題になっており、このあたりの影響があったのかもしれません。


ST-S333ESXIIのチューニングダイヤルには、バリコンチューナーと同じように操作する「マニュアル」。左右に少し回すだけで自動的に放送局をサーチする「オート」、プリセットメモリーしておいた放送局を次々に呼び出す「ダイアルプリセットスキャン」という3つの機能があります。


レイアウトは左側から電源スイッチ、プログラムスイッチ(留守録)。ディスプレィの下には、キャルトーン、MPXフィルター、チューニングモード、IFバンド、ミューティング、FMモード、FM/AM切り替え、プリセットのメモリーボタン、SHIFT(プリセットのグループの切り替えボタン)。

ディスプレィの右側には選局(プリセット)ボタン。その上にはチューニングダイヤルのモードの切り替えボタン。そして右端がチューニングダイヤルのモードです。

多機能なのでボタンの数が多いですが、バランスよく配置されているので使い勝手は良いです。

ディプレィの中には受信周波数の他にチューニングレヘル、チューンモードやステレオインジケーターの他に、SSTサーキット、IFバンド、MPXフィルターなどのインジケーターがあります。

SSTサーキット ON

IFバンド NARROW プリセットメモリーボタン


(キャビネットと内部について)
アルミのフロントパネルにキャビネットは薄い鋼板製です。天板や底板は指でたたくと良く鳴りますが、サイドウッドが付いているおかけで、全体としての剛性は上がっていますし、内部損失が高い木のおかげで振動も吸収してくれます。
インシュレターは樹脂製で大型です。接地面にはラバーが貼られています。、

天板には放熱用のスリットがあります。このせいで内部はホコリが溜まりやすく、中古で入手した場合は内部の基板のクリーニングは不可欠です。


1987年ということで49,800円のチューナーとはいえ、さすが「ES」モデル。内部にはバブルの時期らしい物量が投入されています。

基板は銅箔の上だけにレジスト材を盛った「ES基板」を採用。ST-S333ESXよりも一回り大きく、回路のレイアウトは大幅に変更されています。またインピーダンス対策として新たに銅製のバスパーが設置されています。

そして、MPX部以外のIF部などにも高音質で有名なコンデンサ「MUSE」が使われています。さすがに効果のほどは疑問ですが、PLL回路にも「MUSE」があるのは嬉しい驚き。やはりオーディオには「ロマン」も必要です。

基板やパーツだけでいうと、KENWOOD KT-880F(45,000円)よりも2ランクぐらい上のレベルです。
基板には回路名が印刷されており、ラインで囲われているのでメンテナンスの時にも便利です。


ST-S333ESXIIにはコイルや可変抵抗など、調整ポイントがたくさんあります。回路はそれだけ、しっかりと作ってある訳ですが、発売から約30年も経っているので、パーツの経年変化により、ズレが生じている箇所も多くなる可能性があります。

ウチのように高価なシグナルジェネレーターが買えず、スピーカーから出てくる音と自分の耳頼みで、調整する人も多いと思いますが、時間がかかった分だけ労力が報われる音が出てきます。



底板 インシュレーター


(電源回路)
カタログでは、あたかも電源部を中央に配置して、電源部と各段を最短距離で結んで、インピーダンスを下げたとなっていますが、それほど中央にある訳ではなく、空いたスペースに押し込んだというようにも見えます。

普通は、まずオーディオ信号の流れが最短(シンプル&ストレート)になるように回路を設計するので、偶然この配置になったのか、意図してこの配置になったのかは不明です。

ただ電源部の中央配置は、この時期のSONYのアンプ、カセットデッキでも見られますが、そのカタログでは電源ラインの最短距離化が、取り上げられていないところを見ると、宣伝文句ほどの効果はないのかもしれません。


電源トランスはカタログでは、フローティングされているように書かれていますが、実際にはされていません。電源トランスは薄型のシンセサイザーチュナーとしては大きめで、磁気ひずみ対策のために「ES」の文字が付いたカバーが付いています。

電源回路は大きく分けると回路用とディスプレィ用の2系統になっており、ディスプレィで発生したノイズが回路部分に流れ込むのを防いでいます。また家庭用電源から侵入してくるノイズを防ぐためESフィルターを装備しています。

電解コンデンサはニチコンのオーディオ用コンデンサ「グレートサプライ」63v・1800μFや「MUSE」などバブル期ならでは。プリセットメモリーのバックアップ用に、ELNA製の専用コンデンサ「RD」が搭載されています。



電源トランス 回路用の電源回路

ディスプレィ用の電源回路 メモリーのバックアップ用の
コンデンサ ELNA RD


(システムコントロール)
システムコントロールに使用されるマイコンは、SONYのロゴがありますが、NEC製の4bitマイコン「μPD75108CW-107」です。

このマイコンには「スタンバイモード」が搭載されており、チューニングなどの操作が10秒間されなかった時は、動作を休止させることができます。これによりマイコンから発生されるデジタルノイズを減少させています。

他にはNANDゲートの三菱製「M4011BP」やディスプレィ用のドライバーICなどがあります。

システムコントロール回路


(フロントエンド・PLLシンセサイザー)
ST-S333ESXUのフロントエンド部は4連バリコン相当で、トラッキングエラーの抑制と音質の向上を狙った、SSTサーキット(Super Sound Tracing Circuit)を搭載しています。

FM放送の電波は、放送に乗っているオーディオ信号のレベルによって、周波数が変化します。この時にが、信周波数と受信周波数以外の周波数をカットするバンドパスフィルターの、中心周波数がズレてしまう現象がトラッキングエラーです。

受信周波数の両端(76MHzと90MHz)で、バンドパスフィルターをアジャストさせると、中央部となる83MHzでは100kHzものエラーが発生する可能性があり、FM多極化時代を迎えようとする中、妨害排除能力に問題が生じてしまいます。

そこでSSTサーキットでは、受信周波数帯域を4つに分割。76MHzと90MHzに加えて、3つの分割ポイントの合計5か所で、バンドパスフィルターをアジャストすることで、トラッキングエラーを1/4に減少しています。
またこれにより、フィルター特性が平坦化するため、フロントエンドで発生する歪の量を抑えています。

このSSTサーキットは、IFバンドがワイド時には有効ですが、ナローの時にはかえって歪や雑音が大きくしてしまうため、IFバンドがワイドの状態で、35dBf以上の信号入力がないと動作しないようになっています。


PLLシンセサイザーの基準周波数は、残留ノイズ対策として可聴周波数よりも上の25KHzがよく用いられていましたが、SONYではそれでも19KHzのパイロット信号と干渉する恐れがあるということで、基準周波数を100kHzにまでアップさせることで、ノイズやビートの発生を抑える「ダイレクトコンパレーター」を搭載しています。


IC関係はSSTサーキットには三菱製の8チャンネル・マルチプレクサ「M4051BP」とNEC製のオペアンプ「μPC324C」があります。
PLLシンセサイザー回路の専用ICはSONY製の「CX7925B」で、プログラマブルカウンターなどを内蔵しています。

AM用のチューナーICはSANYO製の「LA1245」で、KENWOODのチューナーなどでも使用されています。

フロントエンド PLL回路

SSTサーキット AMチューナー
SANYO LA1245


(FM復調 IF・検波回路)
IF部はWOIS(Wave Optimized IF System)ですが、いわばKENWOODのIF歪補正回路「DCC」のSONY版です。WOISはIFフィルターのフィルターカーブを適正化する回路で、モノラル時には郡遅延特性に対して、ステレオ時には振幅特性に対して理想的な波形に最適化を行います。この結果、高い選択度を確保と歪の低減を両立しています。

検波部はPLL検波で、WODD(Wave Optimized Direct Detector)という回路が搭載されています。これもKENWWODのチューナーに搭載されていた「DLLD」回路の、SONY版とも言える回路です。

WODDはPLL検波器内にあるVCO(電圧制御発振回路)の、非直線性の歪みを解消する仕組みで、回路内のバラクターダイオードの歪と、FETの帰還容量が全く反対の非直線性を持つこから、この2つを合成することで打ち消しています。これにより直線検波を可能にして、高いS/N比と低歪率を実現しています。

使用されているICは、IFアンプやミューティング回路などを内臓した、SANYO製のIFシステム「LA1235」。このLA1235にはクワドラチャ検波器が内蔵されていますが、回路はPLL検波となっています。


差動増幅回路用にNEC製の「uPC1163HA」が使われています。

IF回路 検波回路


(ステレオ復調 MPX回路)
MPX段にはWODSD(Wave Optimized Digital Stereo Decoder)を搭載しています。これは名前は違いますがサンスイが開発した「SLDD」(Super Linear Digital Decoder)とほぼ同じものです。

日本のFM放送は100kHz単位で周波数を割り当てているため、放送局どうしの電波の干渉も100kHz単位で現れます。このうち200kHz以上の妨害信号はIF段でカットされますが、100kHzの信号は復調回路に入ってしまいます。

復調回路で使用される38kHzのスイッチング信号からは、3次の高調波として114kHzのノイズ(信号)が造られます。これが周波数の近い100kHzの信号と干渉して、14kHzのビートノイズを発生させます。

これを防ぐために従来は100kHzの信号をカットする「ビートカットフィルター」(アンチバーディ・フィルターとも呼ばれます)と呼ばれるローパスフィルターを使用していました。ただしこのフィルターを使用すると、23〜53kHzのステレオコンポジット信号の位相や、振幅に影響を与えてしまいます。

WODSDでは38kHzの矩形波と、38kHzと114kHzを平衡掛算して得た矩形波を加算して、3次の高調波が少ないスイッチング信号を発生させています。これにより100kHzの妨害波との干渉によるビートを抑えるとともに、コンポジット信号の位相、振幅をそのまま伝えることができ、音質への影響も抑えています。

この結果、ビートカットフィルターが不必要となり、、高純度の音質を保ちながら一段と妨害を排除することができました。


MPX回路のデモジュレーター(復調器)のICはSONY製の「CXA1064」ですが、ロットによって、サンヨー製の「SANYO LA3450」が使われています。つまりこの2つは互換チップということになります。

LA3450はSANSUIの「SLDD」回路の搭載機に使われていたICで、内部にはステレオ復調回路の他に、PLL回路などが内臓されています。

オペアンプは三菱 M5220が使われています。コンデンサは「MUSE」の他に銅箔スチロールコンデンサなどが使われています。

MPX回路 MPXデモジュレーター
CXA1064


(アンテナ端子・出力端子)
アンテナ端子はFM用の75Ωの同軸ケーブル端子(F型コネクター) と、AM用の300Ωのフィーダー用端子です。出力端子は固定出力が1系統です。



SONY ST-S333ESXIIのスペック

FM 受信周波数 76MHz〜90MHz
周波数特性 15Hz〜15kHz +0.2-0.5dB
感度 0.9μV(IHF)、10.3dBf(新IHF)
SN比50dB感度
MONO 1.8μV(IHF)
16.8dBf(新IHF)
STEREO 23μV(IHF)
38.5dBf(新IHF)
高調波歪率
MONO WIDE 0.008%
NARROW 0.04%
STEREO WIDE 0.02%
NARROW 0.1%
実効選択度
WIDE 65dB
NARROW 65dB
S/N比 MONO 100dB、STEREO 92dB
ステレオ
セパレーション
WIDE 65dB
NARROW 50dB
スプリアス妨害比 120dB以上
AM   受信周波数 531〜1611kHz
感度 30μV(IHF)、250μV/m
SN比 54dB
高調波歪率 0.3%
消費電力 16W
サイズ 幅470×高さ86×奥行345mm
重量 5.2kg











SONY ST-S333ESXII B級オーディオファン