バナナプラグの音質の比較
バナナプラグは、1990年代にスピーカーへのケーブルの接続の簡単さや、導線のショートを防止のために広まりました。
特にAVアンプはチャネル数が多く、スピーカー端子の間隔がとても狭く配線がしずらいため、誤ってケーブルをショートさせる心配もあります。またバイワイヤリング対応の小型スピーカーの中には、端子の間隔が狭いため同じ様な問題がありました。これらの解決に使われたのが、プラグを差すだけで簡単に配線ができるバナナプラグです。
以前のバナナプラグは、カバーにプラスチックを使ったものが多かったですが、現在は安価なものでも金属製のカバーを使っています。またケーブルをハンダ付けする必要がない、ソルダーレスタイプが主流となっています。
金属製ボディのプラグは見栄えが良く、音が良さそうに感じますが、実際にはそう簡単にいきません。
スピーカー用の端子は、機種によってはケーブルの裸線をネジでキチンと留めても、端子とケーブルの接触面積が少なく、伝送ロスが発生してしまう場合があります。このような場合はコンタクトが良好なバナナプラグを使うと、かえって裸線よりも音質が向上する場合もあります。
またバナナプラグを取り付けることで、スピーカーケーブルの導体の酸化の進行を遅らせて、音質の劣化の防止※などにも役立ちます。
以前はバナナプラグの音質について、プラグがケーブルの振動を抑えるため、音が良くなるという話もありましたが、実際にはプラグを取り付けても、ケーブルの先端部の振動を抑えるだけなので、それほどの効果は期待できません。
バナナプラグの購入する時に注意しなくてはならないのは、安価な物は質の悪い偽物が多いということです。「Nakamichi」ブランドの偽物の話は今では有名になりましたが、最近では「Viborg
Audio」(ヴィボーオーディオ・中国のメーカーで高級品が多い)のロゴを付けた商品が多いです。
雑誌DIMEのサイトでも、ライターが本物だと鵜呑みにして紹介しています。当然、まとめサイトのライターは本物かどうかは気にしていません。
これらの商品は昔からある安物のバナナプラグに、Viborg Audioのロゴを付けただけです。したがってメーカーのサイトには全くの載っていません。また日本には代理店が無いので、正式な輸入ルートも無いようです。
Nakamichiの24kバナナプラグは、日本のamazonでは、8本で700円とか1000円という価格ですが、日本の業者が仕入れに使う中国の「alibaba」での価格は、仕入れる量にもよりますが、安いところだと1個2円ですので、業者は十分に儲かる訳です。
ちなみに、ちゃんとした24kメッキは工程が多く、大量生産の場合でもメッキ代だけで100円ぐらいになるそうです。
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FURUTECH・フルテック FP-200B(R)
フルテックのバナナプラク FP-200B(R)のピンの部分はリン青銅、ボディ部分は銅合金で非磁性のロジウムメッキ処理が施されています。
ケーブルの固定はイモネジ式で、長さの違う2種類のイモネジが入っており、ケーブルの太さによって使い分けます。ピンはコンタクトの良い円筒波型スリット構造です。
音はフラット志向ですが、オヤイデのSRBNほどではないので、バランスとしてはFP-200B(R)のほうが良く、いろいろなジャンルに使えます。
情報量の多さはウチにあるバナナプラグの中では断トツで、繊細な部分の表現もキチンと出てきます。オーディオテクニカのプラグでは、出てこない音が聴こえてきたりします。
値段はそこそこ高いですが、性能の良いプラグだと思います。
取付最大ケーブル径 5.5mm
価格 6,930円(4個1組)
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OYAIDE・オヤイデ SRBN
SRBNの本体は高級ケーブルのプラグにも使われるリン青銅の削り出し。それにスリットやネジ穴を付けただけという、音質に考慮したシンプルな構造です。
メッキはダイレクト銀メッキ+ロジウムメッキ。小ネジ(イモネジ)は、ステンレスを焼き入れをしたブルースチールです。L型の六角レンチが付属。
※ブルースチールは、鋼を焼き入れして青みを定着させ、それを磨いて美しい深みのある青色を出したものです。メッキよりも錆びにくいという実用性と装飾性があり、スイスの高級時計などでも使用されています。
プラグの十字スリットはミクロン単位で調整したということで、少々穴が大きめのタンノイのスピーカー端子でもコンタクトは良好です。
材質、精度、構造などでは、下手な1万円クラスのバナナプラグよりも、上ではないかと思います。
音はナチュラルですが、裸線よりもフラット志向となります。これを歓迎するか着色感と見るか、人によって評価がわかれるかもしれません。
音楽的にはクラシック向き。これでジャズを聴くと面白みに欠ける部分が出てきます。
ピンの部分は少し違いますが、Viborg Audio(ヴィボーオーディオ)のVB401Rは、SRBNを意識して作ったバナナプラグだと思います。
※OYAIDEは中国でも人気があり、コネクタ関係はコピー商品(偽物)が多く作られています。
取付最大ケーブル径 4.0mm
価格 7,344円(4個1組)
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AET BP-208CG
台湾のコネクタメーカー「AET」のバナナプラグです。日本ではオヤイデなどで販売されています。
ソルダーレスのネジ止めタイプで、本体は真鍮製。金メッキが施されています。カバー部分も真鍮製でクロームメッキとなっています。
:ピンの部分は円筒波型スリット構造で、スピーカー端子とのコンタクトはとても良いです。
音は期待していなかっただけにビックリ。接点面積が広いせいか、スピーカーによっては裸線を上回ることもあります。
高音・中音はナチュラル。低音は適度な締まりがあり、輪郭もハッキリしています。
オーディオテクニカの2品よりも断然、良い音です。
取付最大ケーブル径 5.5SQ(約3mm)
価格 605円(2個1組)
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オーディオテクニカ AT6302
ソルダーレスタイプのバナナプラグ。本体は真鍮製で金メッキがされています。ケーブルは後ろ側の大きなネジで固定するので、着脱の際に工具は必要ありません。
普通の4mm用のバナナプラグですが、端子と接触するスプリングの面積が少なく、プラグの穴が大きめのスピーカーだと、コンタクトが緩めになってしまいます。
音は裸線に比べて中・低音がマスキングされるので、高音が少し強調される形になります。普通に考えればマイナスですが、高域が不足しているスピーカーにはかえって、良くなることもあるかもしれません。低音は締まりは弱くて、ややブーミーです。
取付最大ケーブル径 3.7mm
価格 2,000円(4個1組)
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オーディオテクニカ AT6301
昔ながらの樹脂製カバーのバナナプラグです。本体は真鍮製で金メッキ。ソルダーレスタイプですが、「AT6302」とは違い、2つの小ネジ(イモネジ)で、ケーブルを固定するタイプです。
ABS樹脂のカバーは見た目こそ安っぽいですが、絶縁性があるため金属性のバナナプラグのように、ボディが触れてショートするということはありません。
端子と接触するスプリングの面積が大きいので、スピーカー端子ときちんとコンタクトできます。
音はナチャラルに出るのが持ち味。ただ小型スピーカーではわかりにくいですが、フロアスピーカーだと低音の量感がなく、締まりが悪いことがわかります。
AT6301の強みは裸線と比べても、音の着色感が少ないこと。ここに重きを置く人には、とてもコストパフォーマンスの高いプラグだと思います。
カバー無しでも使えるので、端末処理もやりやすいと思います。注意しなくてはいけないのは、取付られる線が2mmまでと太いケーブルには使えません。
取付最大ケーブル径 2mm
価格 1,800円(4個1組)
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シャークワイヤ SDB-035GA
シャークワイヤー(SHARKWIRE)は、台湾のケーブルメーカーで、ピュアシルバー(純銀)ケーブルや純銀メッキのケーブルで有名なメーカーです。ケーブルの他にも各種コネクタやインシュレーターも手がけています。
ケーブルのほうは高価格帯のものが多いですが、それに目を付けてオークションでは中国製の偽物が、けっこう入ってきています。
SDB-035GAはソルダーレスのバナナプラグで、ピンの部分はスプリングタイプで金メッキがされています。
カバーの部分は昔のバナナプラグによくあったビニール製です。
音はナカミチよりは良いですが、同じ台湾のAET BP-280CGと比べると、解像度は1ランク下ですし、高音にはキャラクが付き、低音はこもったような音になるなど、まさに完敗です。
価格 1,944円(4個1組)
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ナカミチ バナナプラグ
往年のオーディオブランド「ナカミチ」の名前がつくバナナプラグ。
プラグ自体はソルダーレスタイプで、接触面は金メッキ。2本の小ネジでと導体を固定するタイプです。ナカミチといっても、外側も内部も形が全く同じなので、Sewellの「Silverback」の偽物だと思います。他にも「Dayton
Audio」とそっくりなプラグに、ナカミチのロゴが入ったものもあります。
音は透明感が悪く、高音の伸びや低音の締まりも悪くなります。また細部の音はつぶれたような感じになります。
やはり音は価格相応で、ペアで3万円以上のスピーカーであれば、このプラグを使うのはもったいないというか、スピーカーが可哀想です。
amazonでは8本で700円とか1000円という価格ですが、日本の業者が仕入れに使う中国の「alibaba」での価格は、仕入れる量にもよりますが、安いところだと1個2円です。
本体は真鍮製だと思いまいすが、安物の真鍮は電気の伝導率が低く、音も悪くなります。この価格では金メッキはまず無理なので、金色メッキ(真鍮合金のメッキ)だと思います。
実際の製造コストにメーカーや流通業者のマージン、それに物流費などが入っても、この価格ですので当然、品質は期待しないほうがよいと思います。
このプラグを販売しているのは「nakamichi connectors Co ltd」という会社ですが、調べてみると会社の住所や詳細は不明で、パッケージ裏の電話番号を調べると、中国広東省にある全く別の会社の番号になっています。
もしかすると中国の業者が、勝手にナカミチのロゴを入れさせて、作っている物かもしれません。中国製のオーデイオ製品の偽物というとイヤホンが有名ですが、こういうコネクタ類も、日本ブランドの偽物がたくさん作られています。
ナカミチは1997年にグランデ・ホールディングズの傘下になりますが、日本では2002年に倒産。それ以降は海外の企業が商標を持ち、Nakamichiブランドの製品を販売しています。
このプラグが日本で大量に出回り始めた時、ナカミチブランドの商品を販売していたのは、中東ドバイのNakamichi UAEです。
その後、ニンブル・ホールディングスを経て、現在は「twd industrial company」がナカミチの商標を持っており、商品はNakamichi USAが販売しています。
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Yラグ端子には「圧着タイプ」と「ネジ止めタイプ」があります。圧着タイプは構造がシンプルな分、価格も安いですが工作技術によって精度に差が出ます。また1度しか使えないため、ケーブルを替えたい時には新たに購入する必要があります。ネジ止めタイプはケーブルの交換が可能です。
※スピーカーケーブルの導体の酸化を防止するためには、端末処理によりある程度、密閉化することが必要です。熱収縮チューブなどにる密閉が不十分だと、導体が空気にふれて酸化し音質が劣化してしまいます。Yラグは端子の形状によって密閉しにくいものもあるので注意が必要です。 |
AET UFP-HSR
無酸素銅をインパクトプレスした圧着タイプのYラグです。肉厚のロジウムメッキを施されています。
内幅 8mm
外幅 12mm
取付最大ケーブル径 8スケア
価格 4,520円(4個1組)
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FURUTECH・フルテック FP-203(G)
シンプルな圧着タイプのYラグです。材質はOFC(無酸素銅)の板材をダイレクト加工したもので、24K金メッキが施されています。
厚みがあり、しっかりとしたYラグです。ただケーブルの厚着部のすぐ先から幅が広くなるので、チューブで端末を密閉することが難しいです。そのためケーブルの導体も早く酸化してしまいます。
音は少し着色感があります。
内幅 8.2mm
外幅 12mm
取付最大ケーブル径 4.0mm
価格 3,024円(4個1組)
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