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Technics SL−P720 |
1986年 定価79,800円 |
テクニクスのSL-P720は1986年9月に発売されたCDプレーヤーで、SL-P500(1985年・89,800円)の後継機です。 ライバル機はmarantz CD650、SANSUI CD-α707など。 SL-P720はSL-P520(59,800円)とシャーシやメカ、回路などを共用している兄弟機です。最大の特徴は2つのスピードで頭出しが行えるサーチダイヤルです。 D/Aコンバータは16bitDACのバーブラウンPCM54HPを搭載。デジタルフィルターは自社製の96次・2倍オーバーサンプリングの「スーパークリーン・デジタルフィルター」を採用しています。 オーディオ回路ではこれに加えて負荷変動に強いテクニクス独自の「classAA」をサンプルホールド回路と、バッファアンプ、I/V変換回路にも採用して、安定した動作を可能としています。 ピックアップは3ビーム方式に比べてレーザー光の利用効率が高い、1ビーム方式の「FF-1レーザーピックアップ」を採用。メカもコイルスプリングと弾性ゴムによりシャーシーからフローティングされています。 シャーシも鋼板製の本体の下にTNRCを取り付けた複合ベースとして、振動周波数を変えることで外部からの振動を減衰しています。 この時期のテクニクスの製品カタログは、実際の内容以上に製品を良く見せる(錯覚させる)ために、華美な宣伝文句が多いですが、このSL-P720もそんな一台。 ことさら上級機のSL-P1200の技術を受け継いだように書かれていましたが、実際には下級機のSL-P520に「トッピング」をしたものがSL-P720というのが正解です。 SL-P720とSL-P520の違いは電源やオーディオ回路の一部のコンデンサの変更とI/V変換回路やTNRCの追加ぐらいしかなく、中味は90%以上が共通になっています。 パーツ代にするとその差はせいぜい3000円ぐらい。それを2万円も高い値段で売ってしまうのですから浪速の商人は恐ろしいです。 さすがに反省したのか翌1987年発売の後継機、SL-P770は59,800円に値下げされ、16bit・4DACを搭載するなど、6万円以下のクラスでは断トツとなる物量機として投入されました。 |
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(音質について) | ||||||||||||||||||||||||
少し明るめの音で低音は出ますがルーズなのでモコモコした感じになってしまいます。シングルDACということで解像度は少し物足りません。このあたりが影響しているのか全体的に音にキレがありません。定位はまずまずですが音場はやや狭いです。 79,800円という値段が付いているものの、中味は59,800円のSL-P520です。DACを電流出力としたり、パーツの交換やTNRCの底板になったとはいえ、2万円分の「音」の向上には無理があります。 音ではライバル機のマランツ CD650にはかなうハズはありませんし、2年後に「598」の激戦区に登場するKENWOOD DP-7010、Victor XL-Z521などにも勝てません。 |
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(フロントパネル) | ||||||||||||||||||||||||
フロントパネルのデザインはSL-P520と基本的に共通です。右側には大きな「サーチダイヤル」があり、1回転で1秒(slow)と約30秒(fast)の2つのスピードでサーチが可能です。 これにより曲の聴きたい場所を短時間で探すことができます。SL-P720ではこのサーチダイヤルとは別にサーチボタンとミュージックスキャンボタンも装備されています。 トレーの上にはCDの回転している状況が見える照明付きの窓「クリスタルウィンド」が付いています。 |
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(シャーシと内部について) | ||||||||||||||||||||||||
シャーシは基本部分はSL-P520と同じ。SL-P720では下にTNRC(テクニクス・ノンレゾナンス・コンパウンド)と呼ばれる樹脂製の底板が取り付けられています。TNRCといってもSL-P1200やSL-P990と違い、鋼板と樹脂の2層だけになっています。 天板は厚さ1mmのコの字型でメカの上の部分に防振材が貼ってあります。インシュレーターは樹脂製です。 内部は左側にピックアップ・ドライブメカと電源トランス。右側のメイン基板は手前がサーボ、信号処理、システムコントロールなどのデジタル回路。奥の左側が電源回路、右側がオーディオ回路です。 メカや基板もSL-P520と共通で、もちろんパーツもほとんどが共通です。 |
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(電源回路) | ||||||||||||||||||||||||
電源トランスは15VA。デジタルとオーディオの別巻線になっており、電源回路もデジタルとオーディオの独立電源です。回路は基本的にSL-P520と同じで、SL-P720の方がコンデンサの容量が少し大きくなっています。 電解コンデンサはELNA REの25V・1000μFが2本など。電源ケーブルはめがね型コネクタです。 |
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(デジタル回路 サーボ・信号処理・システムコントロール) | ||||||||||||||||||||||||
サーボ制御は自社製のチップ「AN8370S」。復調や誤り訂正など信号処理用のチップも自社製の「MN6617」です。RAMはライバルのSONY製の「SVICXK5816」を使っています。 システムコントロール用のマイコンは「MN15283PDP」です。フロントパネルにはSL-P520と比べてサーチボタンとミュージックスキャンボタンが増えていますが、回路は同じなのでSL-P520では機能を使っていないだけだと思います。 |
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(DAC・オーディオ回路) | ||||||||||||||||||||||||
オーディオ回路がSL-P520と一番違う部分ですが、変更部分はそれほど多くありません。SL-P520とSL-P720で違う部分は 1.I/V変換回路の追加 2.サンプリングホールド回路のマイカコンデンサをスチロールコンデンサに変更 3.オペアンプ ナショナルセミコンダクター LM833を三菱 M5238に変更 4.エンファシス用のリレースイッチの追加 などです。 D/Aコンバーターは16bitDACのバーブラウン「PCM54HP」のKグレード(一番上のグレード)です。SL-P520ではロットによってJグーレードとKグレードが使われているので、SL-P720でもJグレードがあるかもしれません。 ただ1個しか搭載されていないので、サンプルホールド回路とローパスフィルターに組み込まれたスイッチを使って、左右のチャンネルに分離しています。SL-P520は電圧出力ですがSL-P720では電流出力となっています。 デジタルフィルターはSL-P500(1985年)に搭載された「MN6618」の改良型で、「スーパークリーン・デジタルフィルター」と名付けられた、96次2倍オーバーサンプリングの「MN6618A」です。 ローパスフィルターはモジュール化されたTDK製の「AL175-68」です。これもSL-P520ではロットによって「AF822-D68」と「AL175-68」が使われており、SL-P720もロットによって違うかもしれません。 サービスマニュアルを見るとデグリッチ回路も内蔵しているようで、ローパスフィルターと言いながらオーディオ回路のキーパーツとなっています。 オペアンプはI/V変換とサンブルホールド回路に三菱製の「M5238」。ラインアンプに三菱製の「M5218」が使われています。 |
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(ピックアップ・ドライブメカ) | ||||||||||||||||||||||||
ピックアップ・ドライブメカもSL-P520と共通です。サイドのチャッキングアーム方式で、メカベースは鋼板製。メカ全体をスプリングと弾性ゴムによりフローティングしています。 ピックアップは独自の1ビーム方式「FF-1レーザーピックアップ」です。FF-1はテクニクス最初のポータブルCDプレイヤー SL-XP7(1985年・49,800円)用に開発されたもので、その後の多くのCDプレーヤーに搭載されています。特徴は3ビームに比べて光効率が良いことですが、逆にトレース性能は3ビームよりも落ちます。 ピックアップの型番は「SOALP1200」。名前からもわかるようにSL-P1200にも搭載されています。ロットによって白いボディと黒いボディがあるようです。レンズには非球面のガラスレンズを採用して光収差を抑えています。 スライド機構はリニアモーターを採用しているため高速アクセスが可能。スピンドルモーターはブラシレスモーターを使用しています。 SL-P520の59,800円という価格であれば、リニアモーターにブラシレスモーターというのは、なかなか良いメカだと思いますが、79,800円という価格となるとインパクトはありません。 (メカのメンテナンス・修理) トレイ開閉用のゴムベルトはメカの裏側にあります。そのためベルトを交換する際は、メカをシャーシから外す必要があります。 |
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(出力端子とリモコン) | ||||||||||||||||||||||||
アナログ出力は固定が1系統、他にサブコード端子があります。 | ||||||||||||||||||||||||
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上:SL-P720(1986年) 下:marantz CD650(1986年) |
周波数特性 | 4Hz〜20kHz ±0.2dB |
全高調波歪率 | 0.003%以下 |
ダイナミックレンジ | 96dB以上 |
S/N比 | 101dB以上 |
チャンネル セパレーション |
105dB以上 |
消費電力 | 9W |
サイズ | 幅430×高さ97.5×奥行260mm |
重量 | 5.2kg (実測重量 5.2kg) |
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