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KENWOOD DP-7010

     1988年 定価59,800円



KENWOODのDP-7010は、988年10月に発売されたCDプレイヤーです。

1987年の「898」クラスの物量戦争やハイビット競争を受けて、1988年は「598」クラスが大激戦となります。 当時「598」クラスはメーカーにとって数量上では主力商品であり、ここでの売れ行きはエントリークラスのセールスにも影響するため、各メーカーとも最新のDACや上級機の技術を搭載したモデルを投入していました。

ライバル機はSONY CDP-228ESD、YAMAHA CDX-620、Victor XL-Z521Technics SL-P777などで、有名なFMファンのダイナミック大賞でも、このクラスからは異例ともいえる4機種が選ばれており、優秀機が多かったことがうかがえます。
1988年の「598」クラスのCDプレーヤーの比較

KENWOODはこの年からラインアップの拡充に合わせて製品の番号体系を変更し、数字部分の頭1ケタをグレード、3ケタ目を世代の番号としました。これはパイオニアのCDプレーヤーと同じ方式です。

アルファベットの部分がKENWOODは「DP-」だったのに対し、パイオニアが「PD-」を使っていたため、発売年は違うもののKENWOODには「DP-7010」「DP-7050」。パイオニアには「PD-7010」「PD-7050」があるというように紛らわしいことになります。



DP-7010はD/Aコンバータに、バーブラウンの18bitDAC「PCM58P」を搭載。デジタルフィルターは8倍オーバーサンプリングを採用しています。これに加えてDACのMSBと、2SBの歪みを補正する回路「リアルステップ・フルビットD/Aコンバーター」を搭載しています。

DP-7010の広告で最も力を入れていたのが、DPAC(デジタルパルス・アクシスコントロール)です。これはデジタルフィルターも含めて時間軸の調整を行い、ジッターを抑えてD/A変換の精度を高め、音質を向上させるというもので、KENWOODにとってはいわば「新兵器」でした。

振動対策にはダブルコイル・サスペンションによる「NEWマルチ・インシュレーションシステム」が搭載されています。

電源回路は別巻線トランスを使った独立電源で、「クリーンサイクロンデバイス」という素子を使い、デジタルノイズを低減しています。

実はDP-7010は1988年の「598」クラスでは重量が軽いほうで、一部の49,800円のモデルより軽いくらいです。

それほどシャーシーやメカの防振性能は高くありません。また18bitDACや8倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターというのも標準的なもので、「物量」という点でライバルと比較すると見劣りさえします。それでも評価も売れ行きも良くヒット商品となりました。

DP-7010は弟分のDP-5010(49,800円)とシャーシやメカなど多くのパーツを共有しています。
この頃は「498」の価格帯も物量が投入され始め、DP-5010も評判の良いモデルでした。DP-7010との違いは搭載されているのが16bitDAC(バーブラウンPCM56P)、リアルステップ・フルビットD/Aコンバーターやサスペンション、デジタル光出力の有無などです。

使用時に少し気になるのはメカの音が大きいことです。再生している時はまったく静かなのですが、選曲やスキップ、CDの再生が終わった後など、ピックアップが大きく動く時にギヤが大きな音を出します。(グリスアップをやり直しても音は小さくなりません)



(音質について)
音はクラシックもジャズ、ロックもソツなくこなす「オールラウンダー」というところ。当時の「598」の客層のニーズにうまくあわせて、たくみにチューニングしたというところでしょうか。

ジャズのシンバルの音、クラシックのピアノの立ち上がり、ロックのバスドラなど、パッと聴いて良い音かどうか判断しそうなところは、うまく音を出しています。たぶん、ここが「受けた」ところではないでしょうか。マニアが聴いたら「出しているのでは無く、作っている音なので偽物だ」とか言われそうな気もしますが。

1980年代後半のバブル期のCDプレーヤーですので当然、線は太く低音の量感はあります。またKENWOODはソツなく音をまとめるのがうまい。

同期のXL-Z521やSL-P777、C-701XDといったライバル機と比べても、いろいろなジャンルを聴くのであればDP-7010が一番良いかもしれません。もしクラシックだけなら音がフラットなXL-Z521も良いですし、ロックだけならメリハリがあり低音にパワーがあるSL-P777も良いと思います。

でも上級機のDP-8010とクラシックやジャズを聴き比べると力の差は明白で、レンジや解像度、細部の表現などではDP-8010の方が格段に上。
価格差以上のものも感じる部分もあります。ロックやボーカルは多少メリハリがありボーカル帯域を持ち上げてあるDP-7010のほうが向いています。

確かに当時の「598」の評価は高かったものの、上級機や音が格段に進化していく90年代の5~6万円クラスと比べてしまうと、どうしても辛い部分がいくつも出てきてしまいます。

でもこれはDP-7010だけの話だけではなく、XL-Z521も上級機のXL-Z711には全くかないませんし、SL-P777もクラシックやジャズでは後輩のSL-PS700にはかないません。



(フロントパネル)
デザインは上級機のDP-8010や、下級機のDP-5010とも共通のもので、当時としてはオーソドックスなものです。ディスプレィの下のスイッチ兼用の4つのランプがポイント。

ディスプレィの表示は20曲のミュージックカレンダーと、その隣にはヘッドフォン・可変出力のインジケーターがあります。

ヘッドフォンのボリュームは電動式で、ディスプレィの下にUP/DOWNのボタンがあります。



動画の音はビデオカメラの内蔵マイクで録音しているため、音質は良くありません。



(シャーシや内部について)
シャーシの天板は1mmの制振鋼板に、0.5mmの鋼板を張り合わせた2重構造ですが、底板は1mm厚の鋼板が1枚です。補強用として前後のバネルをつなぐビームが1本あります。

インシュレーターは2個のコイルスプリングを使ったダブルコイルスプリング方式サスペンションで、上級機のDP-8010と同じものです。ダンパーが付属しており設置環境に合わせて、使い分けることができます。

カタログにはNEWマルチインシュレーションシステムを搭載ということになっていますが、サスペンション以外はたいしたものはなく、シャーシとメカはライバル機のXL-Z521やC-701XDよりは劣ります。

内部の配置は左側にピックアップ・ドライブメカと電源トランス。右側のメイン基盤は手前がシステムコントロールとサーボ回路などデジタル回路。奥の左側が電源回路で右側がオーディオ回路です。
オーディオ回路の後ろには、ヘッドフォンと可変出力のための電動ボリュームがあります。


1mmと0.5mm鋼板を
張り合わせた天板
ダブルコイルスプリング方式サスペンション。隣にあるのが着脱式のダンパー。


(電源回路)
電源トランスは別巻線タイプを使用し回路全体としても独立電源回路としています。

家庭内の電源からのノイズをカットする「クリーンサイクロン電源」で、回路には「クリーンサイクロンデバイス」という素子を設置してノイズを低減しています。

電解コンデンサはELNA製の16V・2200μFなど。電源コードは平型のビニールキャブタイヤです。

電源トランス 電源回路

クリーンサイクロンデバイス ELNA 25V・1000μF



(デジタル回路 サーボ・信号処理・システムコントロール)
サーボ回路や信号処理回路は上級機のDP-8010と同じくSONY製です。

サーボ制御用のチップは「CXA1244S」、RFアンプの「CXA1081S」、EFM復調やエラー訂正など信号処理用の「CXD1125QZ」、SRAMは「CXK5816PS-15L」などが使われています。

システムコントロール用のマイコンはNEC製の「μPD75212ACW」です。

デジタル回路 サーボ制御
SONY CXA1244S

SONY製のSRAM NEC製のマイコン

サーボ回路はメイン基板とメカの隣にあります。

サーボ調整用のボリュームはメイン基板にトラッキング・ゲインとフォーカス・ゲイン。
メカの隣の基板にトラッキング・バランスとフォーカス・バランスがあります。



(DAC・オーディオ回路)
オーディオ回路は上級機のDP-8010のように別基板となっていませんが、内容的には「リアルステップ・フルビットD/Aコンバーター」の部分やオペアンプやコンデンサなどが違うだけで、ほぼ同様の構成となっています。

デジタルフィルタは18bit・8倍オーバーサンプリングのNPC「SM5813AP」。このデジタルフィルタと一緒に動くのが新開発の「DPAC(デジタルパルス・アクシスコントロール)」です。

DPACはデジタルフィルタの演算速度まで含めて時間軸の調整を行うもので、これによりジッター成分を吸収してしまうことで、D/A変換を正確なクロックで行い精度を高めるというものです。

D/Aコンバータはシールドと放熱を兼ねたケースに収められています。DACはそれほど発熱しませんが、温度変化で特性が変わることもあるので、少しでも冷やそうとしているようです。

搭載されているのはバーブラウンの18bitDAC「PCM58P」で、電圧変動による影響が少ない電流出力としています。これにMSBと2SBの歪みを専用回路「リアルステップ・フルビットD/Aコンバーター」で補正しています。ただ上級機のDP-8010にはあるフィードバック回路はついていません。

オペアンプはI/V変換とローパスフィルター、ラインアンプにJRC 4565が使われています。

オーディオ回路 デジタルフィルタ
NPC SM5813AP

DAC バーブラウン PCM58P I/V変換・LPF
ミューティング回路



(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップ・ドライブメカは、エントリーモデル用のアッセンブリーで、お金はかかっていません。つまり「安物」です。メカベースもメカシャーシも薄い鋼板製。いちおうフローティングはされています。

ピックアップは東芝製の「TOPH7855」で、スライド機構はラック&ピニオンギヤです。アクセススピードは遅く動作音も大きめです。


(メカのメンテナンス・修理)
トレイ開閉用のゴムベルトを交換するには、ブリッジを固定しているネジを緩めて、ブリッジを少し浮かすと、トレイをメカから引き抜けます。ブリッジを外して大きな丸いギヤの横のカバーを外せば、ゴムベルト(直径3cm)を交換できます。

ピックアップのレーザーの出力ボリュームは側面にあります。調整には精密ドライバー(+)が必要です。

ピックアップ・ドライブメカ ピックアップ・ドライブメカ

ピックアップ 東芝 TOPH7855 トレイ開閉用のゴムベルト


(出力端子・リモコン)
リアパネルのデジタル出力端子は光学と同軸が各1系統。アナログ出力はFIXED(固定)、VARIABLE(可変)の2系統となっています。デジタルの端子は金メッキになっていますが、アナログの端子は金メッキではありません。

専用リモコンはRC-P8010。

出力端子

リモコン RC-P8010

上:KENWOOD DP-7010 下:KENWOOD DP-8010

KENWOOD DP-7010のスペック

周波数特性 4Hz~20kHz
高調波歪率 0.0025%
ダイナミックレンジ 97dB以上
S/N比 108dB以上
チャンネル
セパレーション
106dB
サイズ 幅440×高さ111×奥行311mm
消費電力 17W
重量 5.9kg (実測重量 5.9kg)





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