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DigiFi No.7付録 Olasonic デジタルアンプ


「DigiFi No.7」(2012年8月発売)の付録、USB-DAC付きデジタルパワーアンプです。設計はOlasonic(東和電子)が行っています。

前年に発売された「stereo 2012年1月号」の付録、LXA-OT1の安くて音が良いという「余韻」が収まらないうちに発売され、LXA-OT1がデジタルアンプだけで、2,800円だったのに対し、こちらはデジタルアンプにUSB-DACも付いて2,980円。

当時、中国製の安価なデジタルアンプとUSB-DACを組み合わせても、5,000円〜6,000円ぐらいしましたので、この価格はまさに激安でした。

LXA-OT1の時と同じく、安くて音が良いということで、雑誌はそうそうに売り切れ。オークションなどでは高値で取引されました。


デジタルアンプの部分を「デジタルパワーアンプ」と呼んでいるのは、ボリュームが付いていないからです。音量の調節はパソコンのOS側のボリュームを使用して行います。

入力端子はUSB端子(TYPE B)のみですので、パソコンやタブレット、スマホ、DAPなどしか接続できません。LXA-OT1がライン入力(RCA端子)を装備し、普通のアンプとして、いろいろなオーディオ機器と接続できたのとは、ちょっと指向が違います。

その代わりUSB-DACを内蔵しているので、後はスピーカーとスピーカーケーブルさえあれば、PCオーディオが完成します。


回路のデジタルアンプICはTI製の「TPA3110D2」を使用。USB-DACのD/AコンバータはTI製のバーブラウン「PCM2704」となっています。ちなみにDACは16bitなので、ハイレゾ再生はできません。
またプリアンプ部が無いので、LXA-OT1のようにオペアンプを交換して、音の違いを楽しむということはできません。

電源部はSCDS(Super Charged Drive System)電源回路となっているそうです。


入力端子はUSB端子(TYPE B)で、パソコンからオーディオ信号とバスパワー電源を取り込みます。電源はUSBバスパワーのみで、外部電源は利用できません。
スピーカー端子はワンタッチ式のため、太いスピーカーケーブルは入りません。

付録として入っているのはDACの基板、金属製の脚、取り付け用のビスなどです(USBケーブルは別売)。新たにWindowsやMacなどのドライバーをインストール必要はありません。Windows10でも動作します。



問題点は音量の調節。パソコンのボリュームを使う訳ですが、ほとんど微調整が効かない感じです。高能率の小型スピーカーだと、音量は「1」〜「2」%で十分という感じで、夜だと「2」%でもうるさく感じるかもしれません。

またパソコン側の音量を絞って出力するということは、16bitのオーディオ信号のbit数を落とすのにも等しいので、実質的には音が劣化してしまいます。

※No.7の改良型である「DigiFi No.13」の付録のデジタルアンプでは、パソコンのボリューム微調整できる、スイッチ式のボリュームが取り付けられました。



(音質について)
当時、ネットでは音が良いという好意的な評価がある一方で、音が悪いという意見もけっこうありました。

確かにデジタルアンプとUSB-DAC付きで2,980円ということを、念頭におけば文句のない音です。Lepai LP-2020A+に安物のUSB-DACを、組み合わせたぐらいの音は出ているかもしれません。

でもTOPPING TP-21Audinst HUD-mx1の組み合わせと聴き比べると、レンジが狭い。透明感がない。キレが悪い。細部の音はつぶれている。音が軽い。低音が出ない。など不満点が山盛りです。

音が良いと言った人の中には、今までパソコンにアクティブスピーカーを、直付けして音楽を聴いていた人もいるでしょうし、また音の良くないデジタルアンプやDACを使っていた人もいるかもしれません。

一方でピュアオーディオやPCオーディオを、趣味的にやっている人たちは、経験を積むにつれて音質のハードルが上がってくる(耳が肥えてくる)訳で、そういう人たちからすれば、辛口の評価になってもしょうがない音です。





(基板・入出力端子について)
幅64×奥行93mmと小さい基板ですが、スペース的にはまだ余裕があります。

回路は大きく分けて3つ。USB経由で入ってきたオーディオ信号を、アナログ信号にするD/A変換回路。それをスピーカーを鳴らせるように増幅するデジタルアンプ。USBのバスパワーから取り込んだ電源を安定化させて、デジタルアンプに供給する定電源回路です。


価格は2,980円ですが、雑誌本体の価格は1,300円ということなので、付録はなんと1,680円。この価格ですので、どの回路も最少構成という感じのシンプルな回路です。


入力端子はUSBのTYPE-Bで、USBのバスパワーにより電源の供給も受けています。スピーカー端子はワンタッチ式です。

回路の配置は左前がデジタルアンプ、
右側がD/A変換、奥が電源部です。

USB端子(TYPE-B) スピーカー端子


(デジタルアンプICについて)
デジタルアンプICはTI製の「TPA3110D2」。いわゆるフィルタレスのデジタルアンプICです。
ただし、このアンプではICの後ろに、きちんとしたLCフィルタが取り付けられています。


TIは2014年ごろから宣伝文句として、「第2世代のD級アンプでは、出力が1W以下の製品(IC)ではフィルタレスは当たり前になっている。」と書いたことで、それがデジタルアンプの説明として、あちこちに流用されています。

フィルタレスのデジタルアンプは、2000年代のはじめには「TPA2005D1」などが登場しており、携帯電話などに搭載しされていました。もともとはフィルタなどの部品を削減することで、コストの圧縮と回路の小型化を狙った製品です。けっしてオーディオ製品向けに開発されているものではありません。


フィルタレスのデジタルアンプの特徴は、方形波(矩形波)をスピーカーに出力することを前提にしていることです。方形波といってもスピーカーは「0」か「1」のデジタル信号では音が出ないので、方形波の形をしたアナログ信号です。

従来のPWM変調のデジタルアンプでは差動出力のため、無音時の出力波形は「+」と「−」出力の位相が反転しています。このままだと負荷電流が大きいため、スピーカーを破損する可能性があります。
実際にはLCフィルタによって差動合成をして、スピーカーに出力を行っています。

TPA3110D2などの、フィルタレスのデジタルアンプでは、無音時の出力は「+」と「−」出力の位相を同相とすることで、スピーカーへの電圧をほぼ0Vにしています。

単純にスピーカーから見れば、異常な出力さえなければ方形波でも問題はありません。特にスマホや携帯電話などのように、人の声がハッキリと聴こえれば良い。という単純な機能のものにとっては、大きな問題は無いと思います。

ただし音楽信号を流すとなると話は別です。音楽信号には低音〜高音までの幅広い周波数とダイナミックレンジが含まれます。さらにオーディオ的には、これに解像度や音色などの再現性、艶、キレ、スピード感などの「情報」が入っています。

これに時間軸の要素を加えるとかなり複雑な波形となり、それを方形波の形をしたアナログ信号で、表現するのはちょっと無理があります。

またオーディオ用のスピーカーも、音楽信号が来るという前提で設計されている訳ですから、方形波の信号が来ても能力を100%発揮することはできないと思います。


メーカー(TI)は「フィルタレス」と言いながら、フェライトビーズによるフィルターの設置を推奨しています。これはアンプで増幅した信号にノイズが含まれているためです。

ただしフェライトビーズでは、可聴帯域より上の高周波ノイズはカットできるものの、まだ可聴帯域にはかなりのノイズが残ります。
このためオーディオ用に使用するためには、いかにフィルタレスのDACであっても、LCフィルタを装備して可聴帯域のノイズを減らさないと、良い音はでません。


つまり、フィルタレスのデジタルアンプIC自体が、オーディオ用には向いていないのだと思います。それでは何でこの付録に「TPA3110D2」を使ったのか。それは単純にコストが安かったからだと思います。

デジタルアンプIC
TI TPA3110D2
LCフィルタ


(DACについて)
DACはTI社製のバーブラウンのデルタシグマ型DACの「PCM2704」です。

PCM2704はDACというよりも、USBインターフェース(コントローラ)やD/Dコンバータ、デジタルボリュームなどを搭載した多機能チップです。

DAC部分は16bit・DACで、サンプリング周波数は32/44.1/48kHzに対応しています。

デジタルフィルターは、2倍オーバーサンプリングです。ビギナーモデルのCDプレーヤーのDACでも、8倍オーバーサンプリングですので、音質的にはかなり不利です。ましてやノイズがバリバリでるUSBインターフェースを内蔵しているチップとしては、全くの役不足です。

DACのスペックはS/N比とダイナミックレンジが98dBと、オーディオ用のDACとしてはかなり悪いです。


PCM2704はこれ1つあれば、USB-DACやDDCなどいろいろと作れ、しかも多機能の割に値段が安いので、自作派の人たちには人気ですが、オーディオ用のDACとしては、低グレードで音は良くありません。

昔の自作派の人たちはバーブラウン「PCM1702」とか、音の良いDACに差動回路、安定化電源と、メーカー品に不満で良い音を出すためには、お金をかけるという感じでした。今はおこずかいのデフレ化のせいか、音質よりもコスト優先のようです。

DAC バーブラウン
PCM2704

(電源部)
電源部はSCDS(Super Charged Drive System)電源回路となっているそうです。仕組みとしては1970年代からあるもので、別段目新しいものではありません。

中国製のデジタルアンプの中にも、急激なダイナミックレンジの上昇時でも、デジタルアンプICをの作動を安定させるために、電源を安定させてる回路として同様のものが入っています。

Olasonicはこれによって、10W+10Wの出力を可能としていると説明していますが、数値は実効出力ではなく、ダイナミックパワーですので、注意しなくてはいけません。

その出力自体も、ボリューム問題でパソコンからの入力レベルを低く見なければならず、その裏返しでパワーアンプのゲインを、20倍にも上げる必要があったということがポイントだったと思います。

改造派の人たちの中には、これを嫌ってパソコンからのレベルを上げるために、パワーアンプのゲインを落とす改造をした人もいました。
※パソコンからの入力レベルが高い方が音質が良くなります。

使われている電解コンデンサは、日本ケミコンのSMQ 16V・4800μF。それ以外は固体コンデンサです。

ただ価格の安い固体コンデンサは、音が良いものは少ないのが現実で、Degifi.10のヘッドホンアンプや、このアンプの改良型であるDegifi.13の付録では、ほとんどが電解コンデンサに置き換えられています。



DigiFi No.7 Olasonic デジタルアンプのスペック


定格出力 10W+10W
(8Ω・ダイナミックパワー)
周波数特性 20Hz〜20kHz(+0,-3dB)
DAC 16bit
32/44.1kHz/48kHz
電源 USBバスパワー
サイズ 幅64×高さ38×奥行93mm
重量 57g


















DigiFi No.7付録 Olasonic デジタルアンプの音質とレビュー  B級オーディオ・ファン