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TOPPING TP21

実売6,980円~9,000円





TOPPING TP21は中国の拓品電子のデジタルアンプです。2009年ごろの発売。

TOPPINGは2000年代半ばから後半の、中国製デジタルアンプのブームの立役者で、当時はTP-20TP-10などが人気でした。一時期、Lepy(Lepai)やS.M.S.L などの低価格なデジタルアンプに押されていましたが、現在は盛り返して多くの製品を販売しています。


日本では、こういったアンプを「デジアン」とか「中華アンプ」と呼んでいますが、メーカーの呼び名は「Desktop Amplifier」(机の上に置けるアンプ)です。

「デジアン」の心臓部はデジタルアンプICです。このICはアナログのオーディオ信号を、いったんデジタル信号に変換してから増幅を行いますが、いくつかの問題点もあります。

ほとんどのデジタルアンプICは、三角波とオーディオ信号を比較して、A/D変換をしてPWMのデジタル信号を作りだしています。

この方式は仕組みが簡単でコストも安く作れます。ただし三角波の精度が悪いと、正確なPWMが得られず、増幅された後の音が原音から変ってしまいます。さらに相互変調歪などの音質を悪化させる歪みやノイズの発生が多いのも問題です。

また増幅に使用するパワーMOS-FETでは、スイッチング・タイミングの差によりノイズが発生させます。このノイズは後ろのローパスフィルターで除去しますが、パーツの良し悪しでかなり音質に差が出てしまいます。

デジタルアンプのICの多くは、もともとオーディオ専用ではなく、テレビやパソコンなどの音声出力に使われる「汎用品」が多く、低コストが優先されて、アナログからデジタルへの変換精度(PWMの精度)や、歪みやノイズを抑えるニーズなどが、求められていないという部分もあります。


TP21のデジタルアンプICは、Tripath(トライパス)社のTA2021Bです。
このICは音質が良いことで有名なIC「TA2020」と同じ、独自のDPP(DIGITAL POWER PROCESSING)技術を搭載しています。

DPPは音質に配慮した技術で、AB級アンプのオーディオ特性とD級アンプの電力効率を持ち、歪みやノイズを抑えるためフィードバック回路を使用しています。

TA2021Bにはその他に、スタンバイやミュート機能、過電流や過熱、ポップ抑制などの保護回路も搭載されています。

デジタルIC以外のパーツには、音質の良い日本製などのオーディオ用パーツを多用しています。日本製のパーツは中国製のパーツに比べて、高音質ですが値段も高いため、Lepyなどのデジタルアンプに比べると、価格が高い原因になっていると思います。

スピーカー用の出力25WX2(4Ω)。ヘッドホン用の専用アンプを搭載しているので、単体のDAC、USB-DACと組み合わせて、ヘッドホンやイヤホンで聴くことができます。


外部電源のDC IN端子は12V~14Vのセンタープラスとなっており、 付属品のACアダプターは14V・4Aです。



(音質について)
よくデジタルアンプの音を「無味・無臭」とかと言う人がいますが、それはちょっと違うと思います。

単純に同じ曲を使って、何台かのデジタルアンプを聴き比べて見れば、すぐにわかることですが、みんな音が違います。
高音だけとか、ある楽器だけを聴き比べてもけっこう違います。つまり違うということは、「無味」でも、「無臭」でも無い訳です。

TP21の音はピュアオーディオ用のアンプの中級機と比べてしまうと、レンジの狭さや音のキレ、馬力の無さなど、いろいろな物足りないところが出てきます。でもそこは実売7,000円程度のアンプなので、当然とも言えます。

それでも同じサイズのデジタルアンプと比べると、なかなか良い音を出してくれます。S.M.S.L SA-36APROLepai LP-2020A+よりも、解像度が高くレンジも広く音にキレがあります。TOOPING TP10 MARK2と比べると、音がやわらかく余裕もあるので、音楽の表現はTP21のほうが1枚上手という感じです。


この手のデジタルアンプはACアダプタで、音が変わります。これはデジタルアンプICの特性上、アンプに電力を供給するACアダプタの電源回路の能力やノイズが、音質に大きく影響するためです。(ピュアオーディオ用のアンプも全く同じです。)

TP21ではACアダプタの供給力は当てにならないことを前提とし、スペースやコストの許せる範囲ではありますが、デジタルアンプICへの電源の供給を安定させるために、内部の電解コンデンサを強化しています。このあたりが音質の「キモ」になっていると思います。

付属のACアダプターは14V・4Aですが、音質はあまり良くないので、他社製の12VのACアダプタを使っています。

電源のON/OFF時にポップノイズはありません。



(フロントパネルとリアパネル)
フロントパネルには厚めのアルミ材を使用しています。厚さは何と8mmでピュアオーディオの中級モデルの2倍ぐらいあります。まあフロントパネルが8mmあったからといって、音質が良くなる訳ではなく、肝心なのはやはり中身の回路やパーツの良し悪しです。

デザインはシンプルで、ボリュームのツマミとミニプラグのヘッドホンジャックがあるだけです。

リアパネルのRCA端子は金メッキがされたしっかりとしたものです。それに引き換えスピーカー端子は安物です。スピーカーケーブルを通す穴が小さいので、細いケーブルしか使えません。また端子の間隔が狭いので取り付け作業がやりにくいです。実質的にはバナナプラグ専用と考えたほうがよいと思います。

DCインは12V~14Vに対応。付属のACアダプタは14V・4Aでセンタープラスです。その右側には電源スイッチがあります。

フロントパネル リアパネル





(ケースや内部について)
ケース本体はアルミ製で2分割のBOX構造。基板はスライドさせて差し込み、フロントとリアパネルを使って固定する方式です。

ケースは強度の向上と振動防止のために天板と底板にリブが入っています。底面には小さなゴム足が付いています。

同じアルミケースといってもLepai LP-2020A+よりも肉厚があるので重量はかなり重いです。

BOX形のケース本体 ケースの底面


(内部について)
TP21は、同じTOPPINGのTP-10やTP-20よりもケースが大きいので、基板も大きくパーツが整然とならんでいます。

中国製のデジタルアンプですが、内部は安価な中国製パーツではなく、日本をはじめとしたオーディオ用のパーツが使われています。


デジタルアンプICの隣にあるのは入力カップリングコンデンサで、EVOX CMK メタライズド・フィルムコンデンサ。これはロットによってメーカーが違うようです。DCオフセット調整用の半固定ボリュームは、BAOTER 3296です。ボリュームはアルプス電気製。

ローパスフィルターの抵抗はKOA製、インダクタは東光製です。

デジタルアンブIC(TA2021B)にはヒートシンク(放熱板)が取り付けられています。最近のデジタルアンブICは、25WぐらいならばヒートシンクがなくてもOKというものが増えていますが、他のICと違って大きな電流を発生させますし、高速なスチッチング動作を行うので、安定動作のためには重要なアイテムとなります。



(電源部について)
TP21の特徴のひとつが強力な電源部です。現在の小型デジタルアンプでは、音質対策として大容量の平滑コンデンサの搭載は、当たり前になっていますが、このTP21などがその先駆けとなっています。

この頃はデジタルアンプは電力効率が良いということで、電源部を軽視するメーカーもありました。※現在のToppingはUSB-DACなどで電源部を軽視しています。

まだハイレゾ音源が普及していない時代ですが、





大容量の平滑コンデンサとバルクコンデンサの組み合わせたのは、まさに「先見の明」と言えます。

ハイレゾ音源の再生時には、データ量が大きくなるので、デジタルアンプICのTA2021Bも内部のデータの処理量が増えて、消費電力が大きくなります。

また再生する音楽の楽器の数やダイナミックレンジにより、急に消費電力が高くなることもあります。

この際に電源部に余裕が無いと、アナログからデジタルへの変換精度にも影響が出ますし、


電源量の安定化


電源部の平滑コンデンサのうちパープルの物は、ELNA製ですが「Pioneer」の刻印があるので、もともとはPioneer用のカスタム品だと思います。容量は16V・3000μF X2本。



TA2021Bの後ろにあるバルクコンデンサは、ニチコンのオーディオグレードのFineGold 220μF・25Vが4本。



メイン基板


(ボリューム・ヘッドホン回路)
音質への影響が大きいボリュームはアルプス電気製です。

ヘッドホン回路にあるICは16ピン。型番は書いてありませんが、ヘッドホンアンプ用のICだと思います。ただ出力が140mW(32Ω)と少ないのが気になります。

表面実装用のパーツを使えば生産コストを抑えられますが、音質面を考慮してリード付きのパーツを採用しています。

アルプス電気製の
ボリューム
ヘッドホン回路


(パワー部)
回路の主役はデジタルアンプICのTriPath「TA2021B」です。

TA2021は2002年の「International CES」で、トライパス社が発表したチップで、有名な「TA2020-020」と同じく、独自のDPP(DIGITAL POWER PROCESSING)技術を搭載しており、AB級アンプのオーディオ特性とD級アンプの電力効率を持っています。
トライパス社ではClass-D(D級アンプ)と区別するために「Class-T」と呼んでいます。

またスタンバイやミュート機能、過電流や過熱、ポップ抑制などの保護回路が搭載されています。

チップはTA2020-020に比べて、だいぶ小さなパッケージとなっていますが、10W出力時では高調波歪率が0.035%、S/N比が99dB(25W出力)、チャンネルセパレーション99dB(4Ω)と、TA2020-020にほぼ匹敵するスペックを持っています。

内部の回路構成もTA2020-020と同じで、パッケージが違うためピンの配列は違いますが、入出力はほぼ同じです。電源効率は13.5W・8Ωで88%となっています。


TA2021BやTA2020-020に使われているDPP(DIGITAL POWER PROCESSING)は、普通のデジタルアンプICとは違うユニークな技術です。

普通のデジタルアンプICはアナログ信号と、三角波をコンパレータ(比較器)に入れて、PWM(Pulse Width Modulation・パルス幅変調)を行って、MOS-FETなどを使ったスイッチング回路で増幅します。

TA2021BやTA2020-020では、上記のようなPWMを使用せずに、ΔΣ(デルタシグマ)変調とノイズシェイピング技術を使用。さらにA級アンプとAB級アンプの利点を組み合わせた、アナログ的なアプローチを行っています。

内部には適応信号処理プロセッサ、デジタル変換、ミュート制御、過負荷・障害検出、予測処理、認定ロジックなどの回路があり、それにスイッチング回路による増幅部が搭載されています。

入力信号を変調する際には、適応型と予測型の独自のアルゴリズムを使用しています。これにより周波数が変化する、複雑なデジタル波形を作り出しています。
さらに出力トランジスタを、従来のデジタルアンプICよりも3倍ぐらい高速動作させています。また高度なフィードバック回路を備えて(このあたりがアナログ的なアプローチか?)、音質を向上させているそうです。

これらの技術の組み合わせにより、PWMを使用したデジタルアンプICの音質的な弱点になるグランドバウンス、デッドタイム歪み、発振器からの残留エネルギー、相互変調歪、そして放射ノイズを抑えています。


デジタルアンプICの後ろにはローパスフィルターがあり、ここでアナログ波形に復調すると同時に、高域のノイズ成分をカットしてスピーカーに出力します。

デジタルアンプのローパスフィルターはCDプレーヤーのものと違い、大きな電力を伝送するためコイル(インダクタ)とコンデンサを使用したLC形が使われるのが普通です。TP21のインダクタは東光のデジタルアンプ用が使われています。

放熱器の下にあるのが
TA2021B
ローパスフィルター

ローパスフィルターと
SONGLE製の12Vパワーリレー
デカップリングコンデンサ
16V・3000μF X2本

付属のACアダプタ
14V/4A


TOPPING TP21のスペック


定格出力 25W+25W(4Ω)
周波数特性 20Hz~20kHz(±1.1dB)
高調波歪率 0.025%(スピーカー)
0.03%(ヘッドホン)
ダイナミックレンジ 103dB
スピーカーインピーダンス 4Ω~8Ω
ヘッドホンインピーダンス 16Ω~300Ω
ヘッドホン出力 140mW(32Ω)
電源(ACアダプタ) DC 12V-14V 4A
センタープラス
サイズ 幅113×高さ45×奥行171mm
重量 560g





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ヘッドホンアンプ
DAP
イヤホン
ヘッドホン
オーディオケーブル
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