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Audinst HUD-mx1

2010年 オープン価格





Audinst HUD-mx1は、2009年12月に発売されたヘッドホンアンプ付のハイレゾ対応のUSB-DACです。オープン価格ですが、発売時の直販価格は22,800円でした。

メーカーのAudinst(オーディンスト)は、2009年に創業した韓国のオーディオメーカーで、USB-DACとヘッドホンアンプを販売しています。

HUD-mx1はその音質が話題となり、一時期は生産が間に合わず、売り切れとなる店が続出した人気商品です。


日本でのハイレゾ音源の配信は、2005年8月から「e-onkyo music store」でスタートしました。それ以前にもノルウェーの「2L」などが配信を始めており、ハイレゾ音源の入手は可能でしたが、2009年の時点ではソフトの数が多いとは言えませんでした。
それでもハイレゾへの期待値は、今よりもずっと大きかったと思います。


HUD-mx1に搭載されているDACはWolfson製の24bit/192kHzDAC「WM8740」です。もともとフラグシップ用に開発されたDACで、ピュアオーディオ用のCDプレーヤーでは、高音質のDACとして高い評価を得ていました。

差動合成用のオペアンプはLME49860を使用。ソケットを使用しているので、ユーザー側で交換が可能です。


USBコントローラ(インターフェイス)は、PCM 24bit/96kHzまでサポート。S/PDIF(光・同軸)の入力端子はありませんが、DDC機能によりデジタルデータをUSBからS/PDIFに変換して光出力ができます。

DACやUSBコントローラの動作にはクロックが必要ですが、温度による周波数偏差が少ない、TCXO(温度補償型水晶発振器)を搭載しており、クロックジッターの発生を抑えています。


HUD-mx1は単体のヘッドホンアンプとしても使用できます。USB-DACと別々に2台買うよりもコスパが良く、1台で済むのでスペースも小さくて済みます。またUSB-DACとヘッドホンアンプの間のケーブルも不要です。

オペアンプを使った回路で、フィルムコンデンサなども良い部品を使っています。レベルもオーディオテクニカ AT-HA2(7,700円)よりも良い回路です。

ヘッドホンアンプはデフォルトで、32~300Ωのヘッドホンに対応しており、内部のジャンパピンを変更することで、300~600Ωの高インピーダンスのヘッドホンに対応できます。→取扱説明書

ヘッドホンからスピーカーへの切り替え時には、ミューティング回路(保護回路)が作動し、スピーカーの損傷を防いでいます。


電源はUSBバスパワーと外部電源(ACアダプタ)が使用可能です。電源部にも保護回路が装備されていますが、無電源USBハブや一部のノートPC、低消費電力のパソコンと接続する場合は、USBバスパワーではなく、ACアダプタの使用を推奨しています。

入出力端子はフロントパネルには標準とミニのヘッドホン端子。リアパネルはUSB タイプB端子とデジタル出力(S/PDIF 光)と、アナログRCA出力端子があります。


付属品はUSB ケーブル (1.5m A to Bタイプ)、RCA ケーブル(1.5m)、電源アダプター (DC 15V/1A)、 ゴム足 (本体固定用)です。



(Windows用ドライバー)
発売がやや古いので、対応OSはWindows XP / 2000 / 2003 / Vista / 7, Mac OS Xになっていますが、Windows10の標準ドライバーでも動作します。

またプレーヤーアプリによっては通常のドライバー(DIRECT SOUND)と、WASAPIの音質がかなり違う場合もあるので、音を確認しながら選択を行ったほうが良いです。



(外部電源とUSBケーブルについて)
USBバスパワーでも動作しますが、DACの「WM8740」はもともとピュアオーディオ用に開発されたDACですので、安定した電源を得られることを前提に設計されています。
現実にバスパワーと外部電源で音を比較すると、外部電源のほうがハッキリと音質が向上します。

またUSBケーブルをノイズ対策がされたオーディオ用に交換するとかなり音が向上します。



(音質について)
音は柔らかめのサウンドですが、透明感と解像度があり細い部分も再現できます。低音が弱いのと音場が少し狭いのが弱点という感じです。

DACのWolfson「WM8740」を搭載しているCDプレーヤー、ONKYO C-777も所有していますが、HUD-mx1はWM8740の良いところを、うまく引き出していると思います。

音質や機能を合わせてもRATOC RAL-24192UT1(72,000円)に、肉薄しているというか、上回る部分もあり、コスパが高いUSB-DACであることは間違いありません。


最近のDACは32bit/768kHzのPCM、DSD512(DSD 22.4MHz)に対応と、スペックだけはすごいのですが、パーツ代や人件費の上昇のため、中味(回路)の手抜きをしている製品も多くあります。

HUD-mx1はキチンとした回路作りがされており、良いパーツを使っているので、Topping E30S.M.S.L M100MK2よりも音が良いです。

これらは確かにAKMやESSのDACを搭載していますが、回路の出来が悪く24bit/192kHzのPCMやDSD 5.6MHzなどのハイレゾを再生しても、滑らかさなどハイレゾらしさがありません。
それに対してHUD-mx1のハイレゾは24bit/96kHzまでですが、音が滑らかで情報量の多く、緻密な音が再生されます。



USB-DACの音は良いのですが、問題はヘッドホンの音です。柔らかさはどこに消えたのか「ドンシャリ系」の音です。

HUD-mx1の特徴である透明感や解像度は落ちています。その分を何とかしようとしたのか、高音域を少し持ち上げてあるので、曲によってシャリシャリした音になります。低音は締まりが悪く、ボワついた感じがします。

定位はピタりとは決まりません。レンジも音場も狭いです。


HUD-mx1の本来の姿はUSB-DACなので、ヘッドホン回路は全体の1/5ぐらいのスペースしかありません。回路を見ると少ないスペースながらも、頑張っているように見えるのですが、音はそれについてきません。

ヘッドホンやイヤホンは、けっこう相性が出ます。相性が悪いとUSB-DACの音とは全く違う音になります。ヘッドホンアンプではよく起こる問題です。

32~300Ωのヘッドホンに対応していると言われると、この範囲内なら何でもOKと思いがちですが、ヘッドホンのインピーダンスは、あくまでも代表値で、実際は周波数によって変化するので、当てにならない部分もあります。
そのため実際にはヘッドホンとインピーダンスを合わせるのは簡単ではありません。

とういう事がわかっていても、期待した音が出てこなければ、どうにもならないのですが。








(内部のパーツについて)
USB-DACとしては、とてもパーツ数が多いです。価格がHUD-mx1の2倍以上のDACでも、パーツ数はHUD-mx1の1/3というDACはいくつもあります。

基板が小さいため表面実装のパーツが多く、音質面では不利になるところもありますが、回路にはキッチリとパーツを投入しており、手を抜いている感じはありません。


特に電源回路はレギュレーターや電解コンデンサを多く使って、電源を独立させることで、DACやオーディオ回路が、音質悪化の原因となる他の回路からのノイズや電圧変動などの干渉を防いでいます。
電解コンデンサは意図的にリードタイプを使用しています。これは音質的な判断によってだと思います。


ただ回路のレイアウトは、入力回路のすぐ後ろに、RCA端子の近くにあるハズのDACがあったり、そのRCA端子の手前には電源回路があるなど独特です。
当然、多層基板を使用している訳ですが、これでは配線長(引き回し)は長くなってしまいます。


DACのWolfson「WM8740」は24bit/192kHzのDACです。ピュアオーデイオのCDプレーヤーでも使われるなど、音質の評価も高いDACです。

直線位相ハーフバンドのデジタルフィルターと、2つのΔΣ(デルタシグマ)変調器、そしてローパスフィルター(D/A変換用)が内蔵されており、完全差動出力(電圧)となっています。

デジタルフィルターには補間機能があり、16bit信号を24bitに拡張(アップコンバート)しています。


差動合成用のオペアンプはナショナルセミコンダクターの「LME49860」です。ソケットを使用しているので、ユーザー側で交換が可能です。
HUD-mx1で使用可能なオペアンプはステレオ(Dual Type)のDIP方式で、駆動電圧は±12V以上となります。

ローパスフィルター/ライン出力用のオペアンプは、バーブラウンの「OPA2134」。ヘッドホン出力用はAnalog Devicesの「AD8397」が使われています。


USBコントローラ(インターフェイス)にはTENOR「TE7022」が使われています。USBインターフェイスICは、音質に影響するノイズの発生源となるので、HUD-mx1ではノイズ対策をしているようです。


他のパーツは電解コンデンサにはSAMYOUNGやルビコン、OSコンなどを使用。フィルムコンデンサはWIMA「MKS4」など。レギュレータはKEC「KIA278R12PI」など。DC-DCコンバータはTI「MC33063」です。


DAC Wolfson
「WM8740」
オペアンプ
 「LME49860」

USBコントローラ
TENOR「TE7022」
フィルムコンデンサ
WIMA「MKS4」

ヘッドホンアンプ回路 オペアンプ
 「AD8397」


Audinst HUD-mx1のスペック


入力データ 16bit/24bit
44.1kHz/48kHz/88.2kHz/96kHz
S/N比 117dB(DAC)
ヘッドホン
インピーダンス
16~600Ω
ヘッドホン出力 800mW
電源(ACアダプタ) DC12~15V/0.5~1A
センタープラス
サイズ 幅100×高さ29×奥行105mm
重量 244g





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