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1988年 CDプレーヤー 59,800円クラスの比較




59800円のCDプレーヤーは1986年ごろからメーカー間の競争が激しくなりますが、1988年には各社が物量を投入したため大激戦となります。「598」というラインはエントリーモデルの3万円台から2ランク上の機種で、当時としては中級機ということになります。スピーカーもやはり「598」が激戦でしたので、ユーザーにとっては買いやすかった値段ではなかったかと思います。

まさにバブルの全盛期だったことと、国内だけでなく海外もCDの普及期に入り、日本のオーディオ製品は安くて音が良いと評判だったために、CDプレーヤーはバンバン売れていました。当時、海外でも多くのメーカーがCDプレーヤーの生産を始めていましたが、価格・性能で日本のメーカーに太刀打ちできるのは事実上、フィリップスのみで日本のCDプレーヤーが世界を席巻していました。

このため部品や製造コストも下がり、各メーカーともに「598」にも物量を投入しました。DACのbit数を競う「ハイビット競争」は、598クラスでも18bitのDACや8倍オーバーサンプリンクのデジタルフィルターが当たり前となり、DENONは他社を一気に引き離すべく20bitの搭載機を発売しました。この競争の中、Technicsはこのクラスで初の1bitDAC「MASH」搭載機を18bitDACとして宣伝します。※
シャーシやメカの防振対策も強化され、2年前の16万円クラスを上回るモデルも登場します。この頃は重量=防振能力と考えても良い時代です。(音質など総合的な部分では1986年の15〜16万円クラス、89,800円クラスにはかないません。)

それ以外にもKENWOODのスプリング方式のサスペンション、ONKYOの光駆動DAC、Pioneerのハニカムシャーシなど各社を代表するオリジナル技術も投入されていました。

王者SONYのCDP-228ESDはCDP-227ESDに比べると大幅に物量を投入しましたが、他のメーカーはそれを上回る物量を投入してきたため、翌1989年にはESの「22」シリーズを廃止。「33」シリーズを89,800円から59,800円へと一挙に値下げして対抗します。そのいっぽうで時代はいよいよ1bitDACを搭載したプレーヤーによる戦いへと移っていきます。

当時は80年代の洋楽ブームの真っ只中。CDの売上もロックが圧倒的に多かった訳で、台数を売りたいメーカーとしてはこれは無視できません。かといって「598」は当時の中級機ですから、クラシックやジャズを聴く人にも対応しなくてはならない。ということで一部の機種を除いてクラシックもジャズ、ロックも聴ける「オールラウンド」に対応した音造りがされています。



※当時はDACのビット数もユーザーの購入時の大きな選択基準となっていました。このためTechnicsはSL-P777の発売に当たって1bitDACであることをカタログには書かず「4DACリニア18bitシステム」としました。オーディオ雑誌や評論家へのプレスリリースでも隠していたようで、当時の雑誌を見ると18bitDACを搭載していると書いた雑誌も見られます。

確かにSL-P777に搭載された1bitDAC「MASH」は、1チップに4つのDACを内蔵し18bit相当の分解能を持っていたので、あながち間違いでは無いのですが、内容は18bitDACと全く違うものなのでユーザーに「ウソ」をついたことにはかわりません。他にもカタログでは積んでもいないチップを「4DACコントロールLSI」搭載と書いたり、普通の回路や機構にたいそうな名前をつけて新開発に見せかけるようなど、悪質な宣伝文句が多いです。(上級機のSL-P999のカタログも同じ)

松下(現パナソニック)のカタログは確かにこのような宣伝文句が多かったのですが、この1988年は競争が激しかったせいか例年になく誇大な書き方で悪辣とも言えます。さすがにクレームも多かったのか翌年発売のSL-PS70などからは、他社並みのトーンに落ち着きました。

※PioneerPD-717のみ62000円

SONY
CDP-228ESD
KENWOOD
DP-7010
Technics
SL-P777
Victor
XL-Z521
D/Aコンバータ 18bit
バーブラウン
PCM58P X2
18bit
バーブラウン
PCM58P X2
1bit MASH
松下電器
MN6741
18bit
16bit・バーブラウン
PCM56P X2
+ 2bitのディスクリートのDAC X2
デジタルフィルター 45bit・8倍
オーバ−サンプリング
18bit・8倍
オーバ−サンプリング
18bit・4倍
オーバ−サンプリング
18bit・8倍
オーバ−サンプリング
高音質化回路 デジタルシンク DPAC
リアルステップ・フルビットD/Aコンバーター
classAA方式
デジタル
アイソレーション
光伝送
シャーシ 底板は1mmの鋼板1枚。天板は1mmと0.8mmの2重 TNRC
底板は樹脂と鋼板の2重構造
トリプルシャーシ
底板は鋼板3.2mmを使った3重構造
インシュレーター ダブルコイル・サスペンション 樹脂 樹脂
メカベース Gベース 鋼板 樹脂 樹脂
ピックアップ KSS-151A TOPH7855 SOAD70A OPTIMA-4
スライド機構 リニアモーター ギヤ リニアモーター ギヤ
電源トランス EIトランス X1 EIトランス X1 EIトランス X1 EIトランス X1
出力端子 アナログ固定・可変
デジタル光・同軸
アナログ固定・可変
デジタル光・同軸
アナログ固定
デジタル光
アナログ固定・可変
デジタル光・同軸
周波数特性 2Hz〜20kHz 4Hz〜20kHz 2Hz〜20kHz 2Hz〜20kHz
高調波歪率 0.0025%以下 0.0025%以下 0.003%以下 0.0035%
S/N比 110dB以上 108dB以上 112dB以上 106dB
ダイナミックレンジ 100dB以上 97dB以上 98dB以上 98dB
チャンネル
セパレーション
105dB以上 106dB以上 100dB以上
サイズ W430×H115×
D340mm
W440×H111×
D311mm
W430×H126.5×
D338mm
W435×H118×
D300mm
重量 6.2kg 5.9kg 6kg 8.5kg


Pioneer
PD-717
ONKYO
C-701XD
YAMAHA
CDX-620
DENON
DCD-1510
D/Aコンバータ 18bit
アナログ・デバイセズ
AD1860N-J X2
18bit
ONKYO
8D-3170-1
(光駆動デュアルDAC)
18bit
バーブラウン
PCM58P X2
20bit
16bit バーブラウン
PCM54HP X2
+ ICの4bitDAC
デジタルフィルター 18bit・8倍
オーバ−サンプリング
18bit・4倍
オーバ−サンプリング
18bit・8倍
オーバ−サンプリング
20bit・8倍
オーバ−サンプリング
高音質化回路 スーパーリニアコンバーター
デジタル
アイソレーション
光伝送
シャーシ ハニカムシャーシ ダブルシャーシ
底板は特殊制振材と鋼板による4重構造
鋼板2枚を使った2重底
インシュレーター 樹脂・ハニカム 樹脂 GPレッグ 樹脂・鋼板
メカベース FRPメカベース 鋼板 鋼板 鋼板
ピックアップ PWY1011 DLBA2Z001A TAOHS-JP3 KSS-150A
スライド機構 リニアモーター リニアモーター ギヤ ギヤ
電源トランス EIトランス X1 EIトランス X1 EIトランス X1 EIトランス X1
出力端子 アナログ1系統
デジタル光・同軸
アナログ固定・可変
デジタル光・同軸
アナログ1系統
デジタル光・同軸
アナログ固定・可変
デジタル光・同軸
周波数特性 4Hz〜20kHz 2Hz〜20kHz 2Hz〜20kHz 2Hz〜20kHz
高調波歪率 0.003%以下 0.003% 0.003%以下 0.003%
S/N比 106dB以上 100dB 106dB 106dB
ダイナミックレンジ 96dB以上 96dB 100dB以上 97dB
チャンネル
セパレーション
100dB以上 96dB以上 103dB
サイズ W420×H123×
D315mm
W435×H131×
D365mm
W435×H112×
D357mm
W435×H133×
D320mm
重量 6.0kg 8kg 6.2kg 7kg
1988年の89800円モデル


上:KENWOOD DP-7010 下:Technics SL-P777

上:Victor XL-Z521 下:Pioneer PD-717




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