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Fostex GX100

   2009年 定価 49,800円(1本)



Fostex・フォステクス GX100は、バスレフ方式のブックシェルフ型・2ウェイスピーカーです。

ライバルモデルとしては、B&W CM1(ペア 121,800円)やB&W 686(ペア 75,600円)、QUAD 11L2(ペア 118,000円)、ELAC BS182(オープンプライス)、DENON SC-CX101(ペア 73,500円)など。


GX100は高伝搬速度(いわゆるハイスピード)を、コンセプトに開発されたスピーカーです。トゥイーターはマグネシウム合金、ウーファーにはアルミニウム合金という、金属製の振動板を使用したスピーカーで、金属振動板の弱点ともいえる分割振動(共振)を、抑えるという方向ではなく、分散させるという発想で影響を少なくしています。

トゥイーターはマグネシウム合金のリッジドームトゥイーターです。マグネシウムの特徴は、アルミニウムに比べて2/3、チタンの1/3と比重が実用金属中で最も軽く、比強度(強度/比重)や比剛性(剛性/密度)も、アルミニウムや鉄などよりも優れています。また振動吸収性も実用金属中では最大と言われています。

さらに放熱性に優れており、温度や時間が変化しても寸法変化が少ないなど、振動板としては理想的な素材です。マグネシウム合金は純マグネシウムよりも、特性は少し劣りますが、マグネシウムの弱点である腐食しやすさを改善した素材です。

ウーファーのサイズは10cmで、HP(双曲放物面・hyperbolic paraboloid)の形状に、加工したアルミ合金製で、軽量かつ高剛性の性質を持ち高伝搬速度のユニットです。

背面にはMIDコントローラー(昔ふうに言えばアッテネーター)があり、1.6kHz~6kHzの帯域を+1dB~-2dBまで調整が出来ます。

ネットワークは空芯コイルとフィルムコンデンサーを使った回路で、フィルムコンデンサーは銅・銀合金の同芯撚り線をリード線に使った高音質のタイプとなっています。また内部配線にも銅・銀合金同芯撚り線を使用。入力端子はよくある真鍮の削りだしではなく、「銅削りだし」の金メッキターミナルとなっています。

キャビネットは楠とユーカリを交互に貼り合わせた、高強度で振動減衰の自然な響きを持つCE合板を使用。裏板はMDFとなっています。外側はメープルの天然突き板を使用し、ダークブラウン、ワインレッド、ハニーイエローの3種類の塗装(カラー)がありました。


(年表)
2009年2月 GX100発売。価格は49,800円(1本・税込)

2010年3月 GX100(GB)を、200台(100ペア・1本57,800円)限定発売。全光沢仕上げの特別カラー「グロッシーブラック」を採用。

2011年3月 特別仕様モデルGX100(PB・ピアノブラック)を限定発売(250ペア・142,380円)。トゥイーターを上位機種で使われている、純度99.9%の純マグネシウム・リッジドーム・トゥイーターに変更。

2012年3月 GX100MAを発売。GX100の後継機で、内容はGX100(PB)とほぼ同じですが、価格は55,000円(1本・税抜き)と安くなっています。

2013年5月 GX100 Limitedを発売。GX100MAのスペシャルバージョンで、純マグネシウム高剛性HR形状振動板ウーファーを搭載。価格は100,000円(1本・税抜)。

2016年7月 GX100 Basicを発売。価格は55,000円(1本・税抜き)。新設計のキャビネット。CE合板製だかフロントやリアパネルの形状が変更され、奥行が少し伸びる。

2017年4月 GX100 BJを発売。価格は69,000円(1本・税抜き)。2018年12月に76,000円(1本・税抜き)に値上げ。
日本国内生産。キャビネットの材質はCE合板という言葉が消えて、音響用の積層合板になる。GX100 Basicとサイズは同じだが重量は0.3㎏軽くなった。

2018年10月 「GX100 BJ-TL」発売。価格は164,000円(ペア・税抜き)。GX100BJのレザー調バッフル仕様。直販サイトでの限定販売。


ちなみにGX100の上位機種となる、GX102(1台・78,750円)とGX103(1台・131,250円)は、FostexのサイトではG2000(1台・600,000円)の、技術を用いて開発したとなっていますが、平成21年度のフォスター電機の有価証券報告書には、GX100の要素技術を継承して開発したと書かれています。

有価証券報告書は株主向けの経営資料であり、販売用の都合のよい宣伝文句はありませんので、説明のとおりGX100をベースにして、GX102とGX103が開発されたということになります。





(GX100の音質について)

Fostex GX100は一言でいうと「高音質」というよりも「高性能」のスピーカーです。

音はハイスピードで高解像度。新しい録音のジャズを聴くと、ハイハットの音が空気を切り裂いて、突き刺さってくるような感じです。
音数も多く細かい部分は、価格が倍以上のTANNOY EYRIS 3よりも良く聞こえるくらい。立ち上がりが早く、音のキレも良いです。

高音は良くでます。低音はその人のオーディオ機器による「低音体験」により、感じ方が違う訳ですが、やはりフロア型スピーカーや20cmクラスのブックシェルフにはかないません。でもこのクラスとしは必要にして十分だと思います。サウンドとしては硬めのサウンドです。

このようにGX100はオーディオ的な特性はたいへん優れているのですが、問題は音楽を聴いた時の表現力。その音はもう少し抑えめで出して欲しいというものも、容赦なく出てきてしまいますので、音楽上のバランスはあまり良くありません。
またヨーロッパのスピーカーの音が好きな人には、演奏のニュアンスよりも楽器のニュアンスが先に出る、音楽をゆったりと聴けない、聴き疲れがするなど、たぶん合わない音だと思います。

まあ簡単に言えばGX100は好き嫌いの出る音ですが、FOSTEXのポリシーというかメッセージを強く感じとれる音でもあります。ハマった人にはこのうえない音かもしれません。
アンプとの相性も出る音ですので中古で購入する場合でも、できれば試聴したほうがよいかと思います。

GX100を使う時のポイントとしては能率が82dBと低いため、ある程度アンプのパワー(ボリュームの位置としては10時ぐらい)を上げないと、キチンとした音が出てきません。そういう意味では夜に大きな音を出せないような場所には不向きです。
サランネットを付けると、別のスピーカーじゃないのかというぐらい音質が低下するので、ネットを付けて使いたいという人にも不向きです。


(MIDコントローラとセッティングについて)
FOSTEXのサイトにあるGX100の説明には、「コントローラーを流れる信号はツィーターには流れないので、音質劣化は殆どありません。」などと書いてありますが、GX100のクロスオーバー周波数は2kHzで設定されています。そしてコントローラーは1.6kHz~6kHzの帯域を調整できるとなっており、話のつじつまが合いません。

実際はどうかというとコントローラをマイナスにすると、明らかにトゥイーターも減衰します。つまりコントローラーを流れる信号はトゥイーターに流れているということ。
効果を簡単に言うとマイナス側にすると音はマイルドになり、プラス側にするとシャープな音になります。

GX100はサイズ的には、ミニコンポのアンプといっしょに、棚の上などにポン置きできますが、スピーカーの能力としてはいろいろと神経質なところがあり、キチンとしたセッティングが必要なタイプです。
ただオーディオが売れない現在、商売としてはそんなことを言っていられない。ということで、セッティングの知識や経験の無い人でも音のバランスが整えられるように、今時珍しいMIDコントローラー(アッテネーター)の装備となったのだと思います。

もちろんスピーカーを置くポジションや、スピーカー台やインシュレーターなど、スピーカーケーブルを含めて、キチンとしたセッティングをしたほうが良い音で聴けますし、ハイスピード・高解像度の特徴を存分に引き出せます。


ウチのようにオーディオ機器を、いろいろと取っ替えながら楽しむ人には、GX100のような音も一方の尺度として必要ですし、何よりも古いアンプやCDプレーヤーなどのチェックにも使えます。

例えば20年前のSANSUI AU-α707XRSONY TA-FA5ESで、このスピーカーを鳴らすと、スピードも解像度も現在の17~18万のアンプと、全く遜色がないことがわかります。(現在のアンプよりも1990年代のアンプのほうが、はるかに中味にコストをかけているので、当然の結果ともいえます)









(2cm リッジドームトゥイーター)

マグネシウム合金を
リッジ(稜線)を持つドーム形状に成形した振動板です。

このリッジにより、ピストンモーションの領域を越えて発生する、分割振動による共振を分散させて、高伝搬速度を実現させています。

スピーカーの宣伝文句では、よく「分割振動を抑えた」という表現が登場しますが、現実には抑えることは不可能です。

ダイアトーンの資料によると、ドーム型スピーカーは、実際には80kHzを越える再生能力があるものの、分割振動による共振は40kHzを越えたところがピークとなります。このためカタログに表示される再生帯域の上限は、40~50kHzが多くなっているようです。

トゥイーターの防護ネットはマグネット式なので、取り外しができます。



(10cmアルミニウム合金ウーファー)

振動板はアルミニウム合金で、フォステクス独自のHP(Hyperbolic Paraboloidal・双曲放物面)構造を、円周方向に回転を加えた形状に加工したものです。

この形状のメリットとしては、内部応力として剪弾力のみ働き、曲げ応力が働かないので軽量にも関わらず高剛性となります。

金属製の振動板の弱点は、内部損失の少ないことですが、この形状は分割振動による共振を分散する効果もあります。

エッジはゴム製のUDRタンジェンシャル・エッジです。
振動板と同様に円周方向に回転を加えた形状で、
逆共振を抑える効果があるというものです。



リヤ・バスレフポート

バスレフポートはトゥイーター・ユニットの後ろにあります。
口径は3.2cmですがダクトの内部には、厚みが2mmぐらいあるフェルト材が貼られています。ポート長は7.2cm。


キャビネット
フロントバッフル、天板、底板、側板は楠とユーカリを交互に貼り合わせたCE合板。裏板はMDFとなっています。
その上からメープルの天然突き板が貼られています。このカラーはワインレッド。サランネットはマグネット式です。

小さいスピーカーですが、手で持つとズッシリとしています。ただ塗装はあまり厚くないので、移動の際には注意が必要です。

MIDコントローラー
クロスオーバー周波数は2kHzですが、1.6kHz~6kHzの帯域を、+1dB~-2dBの範囲で調整できます。

入力端子
銅削りだしのターミナルで、金メッキがされています。


Fostex GX100のスペック

トゥイーター 2cm マグネシウム合金
リッジドーム
ウーファー 10cm アルミニウム合金
出力音圧レベル 82d8
周波数特性 55Hz~45kHz
クロスオーバー周波数 2kHz
最大許容入力 100W
インピーダンス
サイズ 幅160×高さ262×奥行225mm
重量 5.6kg





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