TOP使っているオーディオアンプAU-α707XR


SANSUI AU-α707XR

     1993年 定価170,000円



サンスイのAU-α707XRは、1983年10月に発売されたプリメインアンプです。

1980年代の後半から経営難となっていたサンスイですが、1990年代に入ると新たなスポンサーやアカイホールディングスとの資本提携がなされました。製品面ではCDプレーヤーは新商品の投入が、めっきりと少なくなりますが、主力のプリメインアンプは精力的に開発が行われていました。

1993年は6月にエントリークラスのAU-α117K(25,000円)、AU-α317K(44.000円)を発売。9月にAU-α607XR(89,800円)、AU-α907XR(278,000円)を発売。そして10月にAU-α707XRが発売されました。上記以外にはAU-α507R(64,800円・1992年発売)とAU-X1111MOS Vintage(362,000円・1988年発売)などがラインナップされていました。→サンスイのアンプの年表


AU-α607、AU-α707、AU-α907はサンスイの看板商品で、「Xバランス・アンプ」や「ダイアモンド差動回路」というサンスイの代名詞となるような回路を搭載していたプリメインアンプです。

707シリーズは「607」と「907」シリーズの間に位置しており、受賞や評価となると長男の「907」か、末っ子の「607」にスポットが当たってしまう損な役回りでしたが、内容はとても充実しています。

AU-α707XRは物量的には両者の中間、音の傾向はどちらかというと907XRに近いという感じです。


サンスイはAU-D607X・707X・907X以降、独自の「Xバランス・アンプ」を採用してきましたが、AU-α607XR・AU-α707XR・AU-α907XRにはさらに進化した「Hyper α-Xバランス回路」を搭載しています。

Xバランス・アンプは全段で音楽信号の伝送・増幅が同時に行え、増幅回路とアース回路を分離させることで効率が高く、歪みが少なくスピーカーの逆起電力の影響を受けにくい方式です。

Hyper α-Xバランス回路では、内部で発生する動的ノイズを抑えるためのもので、パワーアンプとプリアンプの初段に、高CMRR(コモン・モード・リジェクション・レシオ)型定電流回路を導入し、素子の非対称が原因のDCオフセットによる電流のばらつきを抑えています。これによりスペックには現れないものの音質に影響する動特性を改善しています。

バランス出力は+側と-側にそれぞれ専用のアンプを置き、計4つのアンプによスピーカーをドライブするプッシュプル方式をとなっています。
パワー段には優れた高周波特性を持つNM-LAPT(ノンマグネティック・リニアアンプリケーション・パワートランジスタ)を採用。

全段をDCアンプ構成としており、位相反転無しで-側の出力が取り出せる「NEWダイアモンド差動回路」を採用しています。初段のFETをカスケード接続として、インピーダンスの異なる外部機器との、接続の際にも安定度を高めています。



(音質について)
音はウォームトーンでワイドレンジ。高音はキャラクタを感じますが、よく伸びます。低音も不足はありません。

ジャンルでいうとクラシック、ジャズ向き。この2つのカテゴリーでは音の粒だちや音場など素晴らしい音を聴かせてくれます。ただボーカルやロックとなるとソースによって、かなり向き・不向きがハッキリします。やはりクラシック、ジャズの音にシビアになれば、これは当然の結果だと思います。


現在のアンプの回路はD級を除くと、1990年代とほとんど変わりません。というか1990年代で熟成されたとも言えます。
1990年代の9万円クラスのアンプが、現在は定価で18万円ぐらいに値上がりしていることを考えると、このアンプが現在発売されれば、30万クラスというところでしょうか。

サンスイという会社で見れば経営難で厳しい時代でしたが、アンプの技術としては成熟した時期でした。そのためキチンとメンテされていれば、現在発売されているアンプと比べても、全く遜色の無い音だと思います。









(内部について)
内部のレイトアウトはトランスや電解コンデンサを中央部に置き、パワートランジスタやヒートシンク、信号系などのパワーユニットを左右対称に配置した「強化ツイン・モノラル・コンストラクション」というもの。

これによって電源系と信号系の振動を抑え、最適な重量バランスを実現するというものです。


振動対策は「アイソレーテッド・メカニカル・フィードバック」と名付けられています。

マスターボリュームとシャーシの間や、パワートランジスタとヒートシンクの間などに、純銅製の制振アイソレーションパーツを設置することで、振動係数を変更し振動の伝達を低減させています。

また振動吸収能力の高いテフロンシートを、インシュレーターと底板の間に装着。放熱器やボンネットとシャーシの間にも、テフロンテープを貼り振動を低減しています。




底面から見た回路や基板 楕円インシュレーター



(電源部)
電源部は「NEW α-Xバランス電源」と、名付けられた独自のバランス電源で、アースが分離・独立したクローズドループ構成となっています。

SANSUIのバランス電源は、1983年の「グラウンド・フローティング回路」を進化させたもので、1984年の「Xバランス・アンプ」のキーテクノロジーとして開発され、1998年まで使われていきます。


バランス電源は電源回路のアースを分離・独立させることで、入力や出力回路などへの干渉を排除しています。

従来のトランスのセンタータップを使う電源は、コストや効率が良い半面、ここを流れる汚れた電流が、スピーカーに流れ音質に影響を与えていました。
バランス電源ではセンタータップを使用しないため、リップルやアンバランス電流が、スピーカーには流れません。

電源部はクローズドループにとなっているため、音楽信号に対して、アンプへの供給電流やスピーカーからの逆起電力といった影響が無くなり、音質に影響するIHM歪も発生しません。

電源回路はパワー段と電圧増幅段とを独立させて、相互干渉を防いでいます。


また現在の家庭用電源は、冷蔵庫やエアコンのインバータや、パソコンやACアダプタなどにより、大量のノイズが載っていますが、AU-α707XRの電源はバランス構成のため、ノイズ成分がキャンセルされるというメリットもあります。



電源トランスはシールドケース入りで、現在でも「サンスイトランス」を生産・販売している橋本電気製。

平滑コンデンサは、85V・5600μFのニチコン 楕円形状スーパーゴールド・サプライと、日立 ピュア・フォーカスが1本ずつ。

コンデンサの容量は他社よりも少ないですが、アンプのハイスピード化のために充放電スピードを重視したコンデンサを搭載しているためです。

ちなみにサンスイのアンプのカタログにはスルーレイト(応答時間)と、ライズタイム(立ち上がり時間)が必ず記載されていました。

電源コードは平型キャブタイヤであまり太いものではありません。


トランス ブロックコンデンサ

電源回路



(パワー部・プリ部)
サンスイ独自の「Xバランスアンプ」の改良型、
Hyper α-Xバランス回路を搭載しています。

現在では、バランスアンプはプリメインアンプや、ヘッドホンアンプなど多くの機種に搭載されていますが、これらに多くの影響を与えたのが「Xバランスアンプ」です。


Xバランスアンプでは、回路のアースが分離・独立しているため、電源部からのリップルやノイズの影響を受けません。またバランス構成のため、外来ノイズや同相歪をキャンセルするなど、音質への影響を排除しています。


出力段は2組のダーリントン出力段と差動プッシュプル増幅段によるバランス構成(4アンプ構成)です。

+側と-側がそれぞれ専用のアンプを持ち、両側からスピーカーをドライブするため、スピーカーからの逆起電力によるIHM(Interface Hum Modulation)の発生を防いでいます。

またNFBも出力段の2つのアンプに対して、ホット側出力からコールド側入力へ、コールド側出力からホット側入力へと、NFBをクロスさせる反転(インバート)型のバランス・フィードバックを掛けて、歪や特性を改善しています。


初段からドライバー段には、NEWダイアモンド差動回路を搭載しています。NEWダイアモンド差動回路は、一般的なバランスアンプのように、反転アンプを必要しません。

初段の差動アンプは2入力・2出力を持ち、信号はそのままプリドライバー段のダイアモンド差動回路へバランス伝送されます。

このダイアモンド差動回路は2組4つの出力(バランスダブルエンド出力)を使って、出力段をバランス・プッシュプルドライブします。


AU-α707XRでは、新たにパワーアンプとプリアンプの初段に、高CMRR型定電流回路を採用しています。

従来のモデルでも、差動バランス入力構成の回路により、高い同相成分除去比(CMRR:コモン・モード・リジェクション・レシオ)を持ち、同相ノイズや歪のキャンセルに効果を発揮しました。
新しい定電流回路の採用により、CMRRは理論値で140dBの改善効果があるそうです。

また素子の非対称が原因のDCオフセットで発生する、電流のばらつきを抑え、動的ノイズを減少させています。


NEWダイアモンド差動回路の初段のFETはカスケード接続。入力から出力までの全段がDCアンプ構成となっています。


出力段には、オーディオ用バイポーラ・トランジスタであるNM-LAPT(ノンマグネティック・リニアアンプリケーション・パワートランジスタ)が使われています。
NM-LAPTは高域特性を、MOS FETなみに向上させたバイポーラトランジスタで、サンスイ特別仕様として非磁性化されています。

電解コンデンサはシルミックが多数使用されています。


ボリュームには6連ディテントボリュームが採用されています。

パワーアンプ部の回路 PHONOイコライザー基板

スピーカー端子
プロテクト回路



(入出力端子)
入出力端子はPHONO・CD・TUNER・LINE。TAPEとDAT兼用(PLAY・REC)が2系統。パワーアンプ・ダイクトはアンバランス(RCA)が2系統、バランスが1系統。他にグライコなどとの接続に使用するPROCESSOR(入・出)があります。

スピーカー端子は2系統、コンセントが3口あります。
入出力端子 スピーカー端子

上:CD-α607(1998年) 下:AU-α707XR(1993年)

SANSUI AU-α707XRのスペック

実効出力 160W+160W (6Ω)
130W+130W (8Ω)
ダイナミックパワー 210W+210W (6Ω)
高調波歪率 0.005%以下 (6Ω)
0.003%以下 (8Ω)
混変調ひずみ率 0.003%以下 (8Ω)
ダンピングファクター 150 (8Ω)
スルーレイト 200V/μsec
ライズタイム 0.5μsec
周波数特性 DC~300kHz (+0 -0.3dB)
パワー部S/N比 120dB以上
プリ部S/N比 110dB以上(CD、TUNER、AUX)
88dB (PHONO MM)
70dB (PHONO MC)
チャンネル
セパレーション
85dB以上(CD、TUNER、AUX)
65dB (PHONO MM)
50dB (PHONO MC)
消費電力 330W
サイズ 幅466×高さ162×奥行452mm
重量 23.0kg





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