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DENON DCD-1650RE

   2012年 定価180,000円(税抜)



DENONのDCD-1650REは、2012年10月に発売されたSACDプレイヤーです。後継機はDCD-2500NEと型番が変更になったため、1990年に初代DCD-1650が発売されて以来、続いてきたDCD-1650シリーズの最終モデルとなります。
ただし「DCD-1650」のネームバリューは絶大ですので、後継機の売れ行きが悪ければ、復活となる可能性は十分にあると思います。

前モデルのDCD-1650SE(2009年発売)には、marantz SA-15S2(2008年)、YAMAHA CDS-2000(2007年)、Pioneer PD-D9Mk2(2009年)などのライバル機がありましたが、DCD-1650SEの牙城を崩すことができませんでした。

その結果、DCD-1650REの発売に対して、他社の新商品はmarantz SA-14S1(240,000円)、YAMAHA CD-S2100(250,000円)、Pioneer PD-70(94,000円)と、DCD-1650REと競合しない価格帯に投入されたため、一転してライバル機がいない状況になりました。

海外仕様はDCD-2020AEで、イギリスなどではDCD-SXやDCD-SA11が販売されていないため、DCD-2020AE(DCD-1650RE)がトップモデルでした。ちなみに現在のトップモデルはDCD-2500NEです。→DENON UK


DCD-1650REはDCD-1650SEの改良機です。主な変更点としては、DACがAKM AK4399からTI製のバーブラウン PCM1795になったこと、USB-DACが24bit・192MHzまでのハイレゾに対応したこと。その他にオーディオ回路が強化されています。


DACのバーブラウン PCM1795は32bit・192MHzのDACで、PCMとDSDに対応しています。
内部はマルチレベルのΔΣ(デルタシグマ)変調器とアドバンストDWA、カレントセグメントDACという構成で電流出力。8倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターも内蔵しています。

DENONの説明では、「片側のチャンネルに2つのDACを使用し、差動出力で伝送する。」ということになっていますが、実際に搭載されているPCM1795は1個だけです(下記の写真を参照)。

PCM1795は内部に4個のDACを搭載しているので、確かに片側に2つのDACを使用しているのですが、ΔΣ型DACは内部に4個のDACを持ち2ch分を差動出力するのが基本で、1980年代に開発された松下の1bitDAC「MASH」の時から変わっていません。

普通、こういう書き方の場合は、セパレーションを向上させるために、片側のチャンネルに1チップのDACを搭載するのが普通であり、片側で4個、L・R合わせて8個のDACというのが普通です。
現実にYAMAHAのCD-S2000/CD-S1000では2個のPCM1792/PCM1796を搭載しています。ところがDENONではDCD-SX1がPCM1795を2個搭載しているだけで、他の機種のDACチップは1個だけの搭載です。

さすがにこの書き方はクレームが付いたのか、DCD-1500REでは「4ch DACの出力を左右それぞれに2chずつ使用する差動出力」とトーンダウンし、DCD-SX11やDCD-2500NE、DCD-1600NEでは、何にも触れられなくなっています。


「Advanced AL32 Processing」(通称ALPHAプロセッサー)は、「波形再現技術」といわれるもので、マスターからCDの16bitデータを作る際に、失われた信号を補間して、元の波形を再現するというものです。「Advanced AL32」では、拡張とアップコンバート・サンプリングなどの処理を行って、きめ細かな補間を実現しながら32bitのデータを作り出しています。


「ミニマム・シグナル・パス」は信号経路の引き回しを最小限に抑えるもので、一般的には「シンプル&ストレート」といわれるものです。
ところがDCD-1650REは宣伝文句では、「デジタル信号の経路を短縮している」と言いながら、実際はデジタル基板がメカの下と、オーディオ基板の上の2ヶ所になったために、信号経路はDCD-1650SEよりも大幅に伸びています。つまり真っ赤なウソです。


DENON(D&M)は2002年から、「リップルウッド」「ベインキャピタル」といった、、オーディオは素人で金儲けのことしか考えてない、投資ファンドに買収されていました。
残念ですがDCD-1650REにも、そういう「爪あと」がけっこう見てとれます。詳しくは下記を参照。

2017年になってアメリカのオーディオメーカー「Sound United」に買収され、ようやく「まともな会社」が親会社になりました。古くからのユーザーとして、今後のDENONやmarantzの製品づくりには期待したいです。



(USB DAC機能について)
USB DAC機能は最大24bit/192kHzのハイレゾ音源(PCM)まで再生が可能となり、アシンクロナス転送方式に対応しています。PC側のプレーヤーはWindows Media PlayerとiTunesをサポートしているという説明でしたが、foober2000なども使えます。

問題はOSです。Macの場合は稼働するのが、OS X 10.6.3以降ですが、OS X Yosemiteからは正常に動作しないことが判明しました。しかし、ファームウェアやPC用のドライバーのアップデートは行われていません。

同様の事がmarantz SA-11S3でも発生しており、放置されたままになっています。DCD-1650REやSA-11S3の発売時には、ハイレゾのUSB-DACをかなりアピールしていたのに、これは無責任としか言いようがありません。

Windowsでは、たまに不安定になる時もありますが、Windows10でも動作します。ただしDENONが提供(ダウンロード)しているドライバーはWindows7用のままなので、これをWindows10にインストールすると、DCD-1650REがパソコンと接続できなくなります。
ドライバーをアンインストールすると、Windows10内のドライバーが稼働し接続が可能となります。


(CD-R/CD-RW USBメモリの再生について)
CDとSACD以外にCD-RとCD/RW、USBメモリから音楽ファイルを再生することができます。
CD-RとCD/RWで再生可能なのはMP3とWMA。USBメモリから再生できるのは、MP3とWMA、AAC、WAVの4種類です。


再生可能なビットレートとサンプリング周波数
ファイル ビットレート サンプリング周波数
MP3 32~320kbps 32/44.1/48kHz
WMA
(CD-R、CD/RW)
64~192kbps 32/44.1/48kHz
WMA
(USBメモリ)
64~320kbps 32/44.1/48kHz
AAC
(USBメモリ)
64~192kbps 32/44.1/48kHz
WAV
(USBメモリ)
16bit 32/44.1/48kHz



(DCD-1500REとの関係)
2013年に発売されたDCD-1500REは、開発コストを削減するためにDCD-1650REをベースに作られています。先代のDCD-1650SEとDCD-1500SEが兄弟機だったように、DCD-1650REとDCD-1500REも兄弟機です。

DCD-1500REの電源部はトランスが1つになっていますが、それ以外は一部のパーツが削られていますがほぼ同じです。オーディオ回路もDAC以降はコンデンサの数や容量が違ったり、一部のパーツがありませんが、DCD-1650REとほぼ共通です。

デジタル回路はDCD-1500REのほうが、デジタルアイソレーションを装備したり、USB-DACがDSDの再生に対応したりということで、コストがかかっているハズです。

Advanced AL32 Processingの処理用ICは、DCD-1650REがFPGA、DCD-1500REはDSPを使用しています。
FPGAのほうがコストは安いハズなのですが、なんらかの原因(ノイズが大きい、演算能力の不足?)のために、以前から使っていたDSPに戻した可能性があります。


DCD-1650REのメカの本体やピックアップは、DCD-1500SEと同じなので、DCD-1500REも、たぶんカバーの部分とトレイが違うだけで、本体は同じだと思います。

一番違うのはシャーシ(キャビネット部分)で、ここはかなりの差があり、音質の差にもなっていると思います。



(音質について)

1.SACDの再生

SACDの再生はDCD-1500SEに比べると素晴らしいの一言。
DCD-1500SE(内容的にはDCD-1650SEの廉価版)であった、腰高感はなくなり、どっしりとした音になりました。情報量も多く音場も広がり、2ランクぐらいレベルの上がった音です。

SACDの再生では「ALPHAプロセッサー」がバイパスされるので、インジケーターは点灯しません。ということはデジタルフィルターは、PCM1795のフイルターを使っています。


2.CDの再生

SACDの音に比べてCDの音は、正直に言うと18万円もするのに「こんな物か」という感じ。

DCD-1500SEは硬めのハイスピードサウンドでしたが、DCD-1650REはDACが変わったこともあり、だいぶ柔らかくなり、ゆったりとした印象です。

DCD-1500SEは高音の解像度が高く、ハイハットなどの金属的な質感に特徴がありました。その代わり低音はまるでダメという感じでした。
DCD-1650REは中・低音がメインで、腰の低い落ち着いた音になりました。
ただ高音が弱くなった分、高音の解像度や透明感は悪くなったというイメージが残ります。(オーディオ基板の上にデジタル基板を配置した影響も大きいと思います。)

音場は横方向の音の広がりは良いですが、奥行きはちょっと不足しています。どちらかというと散乱系で、定位はそれほど良くないです。

以前のDENONにあったキレの良さとか、クールなところが無くなったのが残念なところで、音楽の表現力も物足りません。
ネットでは中・低音が厚いという意見が目立ちますが、それは現在のCDプレーヤーの中での評価であり、バブル期や1990年代のCDプレーヤーと比べると、いたって普通のレベルです。

また「ALPHAプロセッサー」の効き方は、明らかに曲によってバラつきがあります。DCD-1500SEでは、こんなことは感じなかったので不思議です。


CDの再生時は「ALPHAプロセッサー」はONの状態ですので、デジタルフィルターはPCM1795の物ではなく、アルファプロセッサ内の適応型デジタルフィルターが使用されています。

このALPHAプロセッサーでは、データを補完する際に負荷の重い演算をしていると、DENONの開発者がインタビューで語っています。

姉妹機となるDCD-1500REでは、ALPHAプロセッサー用のICをFPGAから、演算処理に優れたDSPに変更しています。
2014年に発売されたDA-300USB(57,500円)は、FPGAを使用していますが、DCD-1650REよりも高速なチップに変更しています。
ということは、もしかするとDCD-1650REの、FPGAの演算能力には問題があったのかもしれません。



3.USB-DACの再生

基本的にはCDと同じ傾向の音となります。「ALPHAプロセッサー」はONで、ハイレゾ曲の再生でもONになったままです。ですからデジタルフィルターは「ALPHAプロセッサー」側の物が使われます。

ハイレゾの音をSACDと比べると、解像度が悪く何かもっさりとした感じの音になり、総合的に比べてもSACDより悪いです。

DCD-1650REにはデジタル・アイソレーションが搭載されていないので、パソコンからUSBケーブルを通って入ってくるノイズは、そのままです。これが音質悪化につながっている可能性は多分にあります。
また、上記のようにALPHAプロセッサー側の、問題があるのかもしれません。



4.音質についての総評

DCD-1650REの音をバブル期や、1990年代のCDプレーヤーと比べると、出てくる音は悪くいうと無味乾燥。音楽の演奏や歌唱では「喜び」「悲しみ」「情熱的」などの感情をこめて行われる訳ですが、そういうものの表現力が弱いです。

もっとも価格は2倍ぐらいの差があるとはいえ、CDプレーヤーとしての中味のレベルは、SACDを除けばDCD-1650REよりも、DCD-1650ARのほうがレベルが上です。(DAC、オーディオ回路、電源部などはDCD-1650ARの勝ち。メカやシャーシは互角、デジタル回路はノイズが大きく、音質に悪影響を与えているのでDCD-1650REの負け)

DCD-1650REの音は、アナログ的なところが良い意見もあるようですが、アナログぽい音を求めるならば、DCD-1650GLなどを買って、業者でメンテしてもらったほうがずっと安いです。音楽の表現力という点でも、DCD-1650GLにまったくかなわないです。

という状況ですので、キチンとメンテされた1990年代のCDプレーヤーの9~10万円クラスにも、コロっと負けてしまいます。


ありえそうなこととして、marantzでこの価格帯のCDプレーヤーが無くなった為、そのユーザーを取り込もうとしたり、CD・SACD以外にUSB-DACやハイレゾ再生などと、いろいろな物に対応しようとして、音質的にはDENONらしさが消えて、かえって中途半端に、なってしまったという感じがします。

D&Mは宣伝の中にサウンドマネージャーを登場させて、音について自画自賛させるケースが多いですが、18万円もする32bitのSACDプレーヤーの中古よりも、30年も前の16bitのTDA-1541A搭載機のほうが、中古価格が高いという意味(現在の製品の評価が低い)がわかっていないように思います。



価格.comなどのレビューでは、音質に高い評価が並びますが(業者によるステマが多い?)、それに比べて上記のように中古価格は安い。つまり手放す人が多い割に、買い手が少ないという市場原理です。

DCD-1650REは定価18万円で、2016年まで販売していたにも関わらず、2018年のオークション価格は何と半額以下の6万円~7万円台になっている状況です。同じDENONでも1991年製のDCD-1650GLは年々、値上がりして3万円台まで上がっており、数年で逆転されるかもしれません。

新しいから技術が進歩して音も良くなっているハズだと言うのは、オーディオの世界では通用しないことがよくあります。現実にメカの部分はハイエンドでも、1980~1990年代のCDプレーヤーよりも、大幅にレベルが下がっています。


ウチのように、1980年代・90年代のCDプレーヤーと、新しいプレーヤーを聴き比べるのが「趣味」というのならともかく、ふつう18万円もするCDプレーヤーを買ったものの、自分が期待する音が出てこなければ「大ショック」です。

DCD-1650REは、けっこうアンプとの相性も出ますので、オークションで買う場合でも、中古専門店などで試聴してから購入したほうがよいです。



5.音質の改善について

いろいろと試したところ、新しく設計したというBMC製のインシュレーターは音が良くないです。
インシュレーターの下に大き目の金属製ワッシャー(平座金)や、薄型のインシュレーター(AET VFE4005Hなど)を挟むだけで、音の輪郭がハッキリします。

オーディオボードを下に敷いても音が変わります。ただし値段が高いのと、機器との相性も出るので注意が必要です。

ウチではコーリアンボードをオーディオボードとして使い、インシュレーターの下には、金属製ワッシャー(外径50mm)をかませています。

使っているラックなどにもよると思いますが、天板をはずすと解像度が向上したり、高音の伸びが良くなる場合があります。ウチでもその効果を確認しましたが、ホコリが入るため天板は置くだけ(ネジ止めしない)で使用しています。
これはDCD-1650REのキャビネットは、DCD-1650AEの物の使いまわしで、専用に作られたものではないため、内部の回路とミスマッチが起きているためです。



(ALPHAプロセッサーのOFFについて)
DENONは2014年の「AV Watch」のインタビューで、ALPHAプロセッサはPCMに対して機能するもので、DSDデータの時はバイパスすることと、現在発売しているCDプレーヤーで、ALPHAプロセッサがOFFにできるモデルは一切ないと回答しています。

試しに昔ながらのやり方でやってみると、どうやらサービスモードの画面にはなるのですが、そこから先の設定の変更はできず、ALPHAプロセッサをOFFにはできませんでした。





(フロントパネル)
フロントパネルは前モデルのDCD-1650SE、DCD-1650AEと同じデザインです。外見はディスプレィの周りの窪み部分を黒く塗装したので、ディスプレイが少し大きくなり、トレイが取り込まれたかのようなデザインになっています。

各ボタンは小さいので、けっして操作性はよくありません。リモコンからの操作が前提と言ってしまえばカッコよいですが、そのリモコンの操作性もよくありません。

レイアウトは中央にトレイとディスプレィを配置し、その左側に電源ボタン、SACDのディスクレイヤーの切り替え、ピュアダイレクトスイッチ、。右側にはトレイの開閉、再生/PAUSE、停止、スキップ、SOURCE(ディスクとUSB、S/DPIF端子の切り替え)ボタンとUSBメモリ用の端子があります。








(DCD-1650REのシャーシと内部について)
DCD-1650REのキャビネット(シャーシ)はフロント、サイドパネル、リアパネルの結合して、フレーム構造とし剛性を高めたものです。
底板は3重(1.4mm、1.7mmX2)、天板(1.2mmx2)、側板も2重となっています。

バブルの頃は6万円クラスのCDプレーヤーでも、同様の構造を持っていましたが、現在では20万円近いお金を払わないと手に入らなくなってしまいました。

鋼板を重ねることで重量を稼いでいますが、造りとしては、1990年代のDCD-1650GLやDCD-1650ARのほうが、ガッチリしておりキャビネットの剛性は上かもしれません。

注意しなくてはいけないのは、塗装がとても薄いため簡単に傷が付きます。またフロントパネルのアルミ材も質が悪いようで、少しこすっただけで傷が付くので用心が必要です。


このキャビネットは2世代前のDCD-1650AEの物を、そのまま使用しています。つまりDCD-1650AEの回路に合わせて設計、チューニングされたものです。

DCD-1650REの回路は、DCD-1650AEとは全くの別物です。
試しに天板を外して聴いてみると、こちらのほうが解像度が高く、高音がよく伸びます。簡単に言うと、天板を取り付けると音が「デッド」寄りになってしまいます。

上級機のDCD-SX1や他のメーカーの高級機が、昔から天板にはアルミパネルを採用していることからもわかるとおり、天板はかならずしも重量があれば良いという訳ではありません。


内部のレイアウトはDCD-1650SEと同じで、左側にデジタル/アナログ独立の電源トランスと電源回路。中央にメカとその下にサーボ・信号処理回路。右側の手前がオーディオ用の電源回路。
奥がDACなどがあるオーディオ回路。その上にあるのがシステムコントロール、USBやS/DPIFのインターフェイス回路があるデジタル回路となっています。


1980年代から、多くのCDプレーヤーの中身を見てきましたが、オーディオ回路の上に、ノイズが大量に出るデジタル基板を、そのまま配置している、ピュアオーディオ用のCDプレーヤーは、初期のプレーヤーを除くとほとんどありません。昔の技術者だったら、こんなことは絶対にやらなかったと思います。

USB-DACやハイレゾ対応などのために、デジタル回路のパーツが増えるのは、しょうがないことですが、それに合わせてキャビネットの奥行を増やしたり、メカの下の基板を何枚か重ねるなど再設計すべきでした。

さもなければYAMAHAのCD-S2000/CD-S1000や、SONY SCD-XA5400ESなどのように、デジタル基板とオーディオ基板の間にシールド板を配置して、ノイズの影響を少なくするべきです。

コストをかけないために、DCD-1650AEから使っているキャビネットの利用を前提とすると、オーディオ回路の上しか空きスペースが無かったのでしょうが、それにしてもマイコンがあるデジタル基板を、ムキ出しのまま重ねるなど、まったく芸が無いです。


インシュレーターは剛性と内部損失を兼ね備えたBMC(Bulk Molding Compound)製で、接地面にはフェルトが貼られています。

インシュレーターの表面は鋳鉄に見えるように、梨地の塗装がされているのですが、なんと4年目で塗装が剥がれ始めました。樹脂系素材の場合は塗料との相性が出ますが、使用した塗料はBMCと合っていなかったということになります。
昔のDENONであれば、このような品質管理の単純ミスは起こさなかったハズです。


雑誌の記事では担当者が、新しく開発した物だと自慢していましたが、実際には音の悪いインシュレーターです。
本当に新しく作らなくてはいけないのは、インシュレーターではなく、キャビネット(シャーシ)です。本末転倒もいいところです。


天板 底板(1.7mm厚X2)

底部とインシュレーター インシュレーター

インシュレーターの
塗装のハガレ



(電源回路)
DCD-1650REの電源回路は、ほとんどDCD-1650SEとほぼ同じですが、電解コンデンサの本数や容量が若干、増えているようです。

大きくはオーディオ、デジタル、ディスプレィに分かれた独立電源で、オーディオとデジタル回路用には、さらにセグメント別に系統を分けて給電しています。


下の写真でパーツがいっぱいあるのは、デジタル回路用の電源回路です。
昔と違ってデジタル回路用のICは電圧が違うものが多く、さらに電源を入れる順番(シーケンス)なども細かく定められています。※電源をOFFにする時は逆の順番で電源を落としていきます。

またAdvanced AL32 Processingに使う「FPGA」では、複数の電圧を供給する必要があり、低電圧設計のために許容電圧範囲が狭く、高い電圧精度が求められます。

しかし32bit化された「AL32」の場合、オーケストラの合奏パートとソロパートでは演算量が大きく違うために、音楽の再生時にはFPGAの消費電流が急激に増えたり、減ったりします。
消費電流の変化は電圧にも大きな影響を与えるため、これも防がなくてはなりません。

こういう負荷変動に対して応答を良くするためには、コンデンサを増やす方法がありますが、そうすると今度は電源を入れた時の突入電流(ラッシュ・カレント)が、大きくなる場合があります。

結局、FPGAを1個動かすために、DC/DCコンバータとデカップリングコンデンサ(バルクコンデンサ)を備え、ノイズや突入電流対策を行った電源が必要で、他のICによるトラブルを防ぐために、分散給電方式(オーディオ的に言うと独立電源)が必要ということになります。

こうなるとパーツ(コスト)をかけた電源回路を作らざるを得ません。


もちろん、音質を向上させるためには、オーディオ回路用の電源にコストをかける必要があり、当然それが本質です。
何しろ1990年代にDCD-S10シリーズやDCD-1650シリーズで、それを証明したのがDENON自身なのですから。

しかし現在のオーディオメーカーの懐事情では、18万円のCDプレーヤーでも、デジタル用とオーディオ用の両方に、コストは掛けられないため、オーディオ用の電源部が犠牲になっているのが実情です。



電源トランスはデジタル/メカとオーディオの独立トランス。それぞれ別巻線のトランスです。
この2つのトランスは向きを逆に配置して、お互いの漏洩磁束をキャンセルする方式で、DENONのアンプで昔から使われてきた「L.C.マウント・ツイントランス」と同じです。

トランスを取り付けるベース部分は、非磁性体で内部損失のあるアルミ材を使用することで、振動の吸収と振動係数を変換。メカや回路基板などにトランスの振動が伝わるのを抑えています。

トランスの前にはDCD-1650SEでは無かったノイズフィルターが取り付けられました。これは家庭用電源から侵入するノイズを低減するものですが、DCD-1650REの物は安物でまったくの能力不足。
そこでフェライト製のノイズフィルターを、追加で取り付けたところ音の透明感が増しました。


ACインレットは2Pですが、もちろん普通の3Pの電源ケーブルが使用できます。

付属の電源コードは安物で音が悪いので、ケーブルの交換をしたいところですが、DCD-1650REは電源ケーブルとかなり相性が出ます。

ウチにある6本の電源ケーブルを試しましたが、単純に電力の供給量がどうのという問題ではないようです。
現在、使っているのはPS AUDIOの「xStream Power Cable Prelude XPD」です。

電源トランス・左側がオーディオ。右側がデジタル・メカ用 デジタル・メカ用の
電源回路
オーディオ用電源回路 電解コンデンサ
ELNA製のカスタム品
 50V・3300μF

中央の白いのか元から付いているノイズフィルター(コモンモードフィルター)

両側の黒いのが追加したノイズフィルター(フェライトコア)



(DAC・オーディオ回路)
DCD-1650REのD/Aコンバーターは、TI製の192kHz・32bitDAC「バーブラウン PCM1795」を搭載しています。

PCM1795は24bit・DACのPCM1796を32bit化したモデルで、メーカーの出荷価格は3ドルとPCM1796と変わりません。

いわゆる「セカンドライン」のDACで、グレードは高くありません。ちなみにTIのDACの最高級品は「PCM1794A-Q1」で、1個の価格は13ドルぐらいします。


PCM1795は多くのメーカーで採用され、ハイエンドからエントリーモデルまで幅広く使用されているDACです。

そういう意味では昔のPCM61と同じで、音がプレーンなゆえにメーカーごとのサウンドが作りやすく、ローパスフィルターなどの回路によって、ハイエンドや中級機、エントリー機といった味付がしやすいのかもしれません。
もちろん価格が安くコスパが高いというのも理由だと思います。


PCM1795は1つのチップに2つのDACが搭載されています。2つといっても、片チャンネルは2個のDACがあり、出力を差動合成しているので、L・Rを合わせると4個のDACがあることになります。

正確にいうと最終のカレントセグメントDAC部分は、60以上のセグメントに分かれているので、4個というのも正解ではないのかもしれません。
チップ内には8倍オーバーサンプリングの、デジタルフィルターも搭載しています。


このDACは「Advanced Current Segment方式」(最近はAdvanced Segment方式と呼ばれています)というD/A変換方式を搭載しています。

同じファミリの24bit・DAC「PCM1792」の場合は、デジタルフィルターで24bit化された信号を、上位6bitと下位18bitに分割。
上位6bitはICOBデコーダーで63レベルの信号に変換され、下位18bitのデータが5レベル・3次のΔΣ(デルタシグマ)変調器を通ったデータと合算されます。

これらのデータはアドバンスDWA回路(後ろにあるカレントセグメントの誤差を最適化する回路)を通った後、67個の差動カレントセグメントDACで、D/A変換され電流出力されます。


デジタルフィルターはDCD-1650REでは、「ALPHAプロセッサー」の物を使用しており、いわば自社製です。

デジタルフィルターのロールオフ特性は、音質に大きく影響するため、現在ではDACの特性に合わせた物を、DACに内蔵するのが常識です。

32bitのALPHAプロセッサーでは、元の波形を推測してデータを補完する訳ですが、この際にデジタルフィルターの、オーバーサンプリングを使用しています。
そのためデジタルフィルターとは切り離せなくなりました。DENONの開発者も「Advanced AL32 Processing Plus」を、デジタルフィルターの一種と説明しています。

つまり、DCD-1650REのデジタルフィルターは、ALPHAプロセッサーの演算の仕様に合わせて作られた物であり、DACの特性を考慮したものではありません。したがって相性の問題は、出ても仕方がない状況にあります。


1990年代のDENONのCDプレーヤーは、この電源回路に大量の電解コンデンサを投入し安定した電源を供給して、今でも語り継がれる「中低音の分厚さ」や「美音」を出していました。

ここは音質の「キモ」となるポイントですが、外資に買収された後に発売されたDCD-1650AEでは、価格を値上げしたにも関わらず、この部分をコストカットして、コンデンサの数を大幅に減らしました。

その後のDCD-1650SE、DCD-1650REでは、この部分を強化してきましたが、それでもDCD-1650ARの1/3ぐらいのレベル。まだまだ道は遠いです。


「DACマスタークロックデザイン」は、DACのそばに低ジッターのマスタークロックを配置し、DACと同じクロックをマスターにして、他のデバイスにもクロックを供給するというものです。

DENONは宣伝文句では、さもオリジナルだと言っていますが、実際には1984年のSONYの「ユニリニア・コンバーターシステム」などが最初で、その後は各メーカーによって、現在まで普通に使われている技術です。

また低ジッターのマスタークロックを使うというのも、1bitDACのD/A変換の精度がクロックジッターに影響されるため、1990年代の初めに確立された技術です。
DCD-1650REのクロックは一般品で、たぶん昔のVictor XL-Z505などの方が、高品質のクロックを搭載していると思います。

オーディオ回路の電解コンデンサは、音質に定評のあるELNA製の「SILMIC」が使われおり、スチロールコンデンサなども使用されています。


(オーディオ回路の問題点)
最大の問題点はオーディオ回路の上にデジタル回路があることです。ここにあるシステムをコントロールするマイコンや、Advanced AL32 Processings(通称ALPHAプロセッサー)用のFPGA、USBやS/DPIFのインターフェイス(IC)などからは、大量のノイズが放出されています。

これらのノイズは音楽信号が流れる配線にも混入しますし、空気中に放出されて、放射ノイズとなり(AMラジオを基板に近づけれはすぐわかります)、音質に悪影響を与えてしまいます。

FPGAの近くにアナログ信号(アナログ回路)があると、悪影響を与えることは、AV WatchのDA-10のインタビューの中で、DENONが認めていますので、やはり確信犯でやったということです。


DCD-1650REにはデジタル・アイソレーションが無いため、音楽信号といっしょに配線を伝わって、ノイズがオーディオ回路に入ってきています。

それに加えてD/A変換された後のアナログ信号に、デジタル回路から空気中に放出された放射ノイズが、「飛びつきノイズ」となって侵入して、音質を悪化させます。


DENONも当然それはわかっているからこそ、DCD-SX1やDCD-SX11では、デジタル回路をオーディオ回路から離れたところに設置。さらにDCD-SX1では「飛びつきノイズ」対策として、デジタル回路をシールドで囲って、ノイズを遮断している訳です。


下記の「後継機のDCD-2500NEとの内部比較」を見ればわかりますが、DCD-2500NEの中身はDCD-1650REから、大きく変わった訳ではありません。デジタル回路を除けば、レベルとしてほとんど同じで、音の傾向を変えるためにパーツなどを変更したという感じです。

宣伝文句だとは思いますが、DENONはDCD-2500NEについて、DCD-1650REから各段に音質が向上したとコメントしています。もしこれが本当だとしたら、DCD-1650REではデジタル回路による音質の劣化が、かなり大きいということになるかもしれません。

オーディオ回路 D/Aコンバータ
192kHz・32bit PCM1795

オーディオ回路 ローパスフィルター



(デジタル回路)
デジタル回路は、従来はメカの下に納まっていましたが、DCD-1650REではシステムコントロールやAdvanced AL32 Processingなどの回路を、オーディオ回路の上にある基板に移しているため、2ヶ所に分かれました。

そのため音楽信号はピックアップ→メカの下の基板(信号処理)→オーディオ回路の上の基板(Advanced AL32 Processing)→オーディオ回路と流れており、信号経路はDCD-1650SEよりも大幅に伸びています。つまり「ミニマム・シグナル・パス」ではなくなった訳です。


システムコントロール用のマイコン ルネサス製のM30624FGPGP(16bit)を使用。昔のマイコンと違って、多機能なマイコンで価格も1個2,500円とDACの数倍もします。いちおうノイズ対策機構によりノイズを小さく抑えていますが、それはあくまで、現在の16bitマイコンと比べての話。

AMラジオで調べた限り、1980~1990年代のCDプレーヤーで使われていた、ローノイズ仕様のマイコンと比べると、数倍の放射ノイズが出ている感じです。

Advanced AL32 Processings(通称ALPHAプロセッサー)の処理には、アルテラ製のFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)CycloneⅢ EP3C16F256C8Nが使用されています。

アルテラ(現インテル)のCycloneⅢは、低消費電力、多機能性、低コストをコンセプトに、2007年に発表されたFPGAです。

FPGAは電源にシビアなところもあるせいか、まわりには面実装電解コンデンサが、いくつも取り付けられています。


USBインターフェイスはTENOR TE8022です。MACユーザーがOS Xのバージョンアップで、USB-DAC機能が使えなくなったのは、このチップのメーカーが、対応するドライバーを用意していないのが原因です。ただそういうパーツを選んだD&Mにも当然、責任があります。

S/DPIFのインターフェイスは、TI製のPCM9211が使用されています。


(ALPHAプロセッサー用のICについて)
以前はALPHAプロセッサー用のICには、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)が使用されていました。DCD-1650REでは、ALPHAプロセッサー用のICに、FPGAが使用されています。


FPGAを使用するメリットとしてはコストが安いことと、汎用性が高いことです。コストが安いといってもプログラム開発などを含めた、トータルコストが安いということで、DCD-1650REで使われているCycloneⅢ EP3C16でも、一般人が購入すると1個4,000円ぐらいします。

確かにFPGAをDSPのように、使用することはできるのですが、あくまでもデジタルフィルターのような、演算量が少ない処理に向いているという話です。

それに対しDSPは「次数の大きいデジタルフィルタやFFT、相関演算、データ圧縮伸張などを組み合わせた複雑な処理に向いている」と、テキサス・インスツルメンツの担当者が説明しています。詳しくはEDN


ALPHAプロセッサー(Advanced AL32)で行われる処理は、波形再現アルゴリズムによるデータ補間、16bit信号の32bitへのアップコンバート、サンプリングを行います。
そして適応型デジタルフィルターの部分は、多段構成になっており、オーバーサンプリングとフィルター係数による演算を行います。

曲を再生している間は、絶え間なくデータ(音楽信号)が流れている訳ですので、これらの処理をすべて同時に平行して行う必要があり、演算量も多くなります。

つまりALPHAプロセッサーの機能を処理するには、断然DSPの方が向いているということになります。

それでもFPGAで処理したい場合は、ロジック・エレメントやRAMが大きい高性能なFPGAが必要となりますが、価格は当然高くなります。


上記のように、後に発売されたCDプレーヤーやUSB-DACでは、価格がDCD-1650REよりもずっと安価にも関わらず、DCD-1650REよりも高価で、高速なICに取り換えられています。

利益とコストカットのことしか考えていない親会社が、そういう対応を認めたということは、DCD-1650REに搭載されたICの能力が十分だったのか不安になります。

デジタル回路

マイコン ルネサス
M30624FGPGP
ALPHAプロセッサー用のFPGA
アルテラ EP3C16F256C8N

USBインタフェース
TENOR TE8022
S/DPIFトランシーバ
TI PCM9211

メカの下にあるサーボ・信号処理用のデジタル基板。DCD-1650REの発表会では、DCD-SXと同じ基板という説明がされました。

右上の大きなチップはEtronTechの
EM638165TS(4Mx16bitのDRAM)



(ピックアップ・ドライブメカ)
D&MグループのDENONもマランツも、新しいCDプレーヤーを発売するたびに、メカを新開発とかオリジナルメカなどと宣伝していますが、本当のメカの部分は外部から購入しており、「メカではない」ケースやメカベース(メカを取り付ける土台部分)や、トレイを作り直しているにすぎません。


DCD-1650REのメカの後ろには「FGSA11S3A」という型番のシールが貼られています。海外のパーツショップで調べると、その名のとおりマランツ SA-11S3に使われているメカのアッセンブリー(メカ本体とケース、トレイを組み合わせたもの)と同じ型番でした。
メカ全体ではメカベースの部分や、カバーがSA-11S3と違うようですが、メカ本体とケース部分、トレイは同じ物だと思います。


SA-11S3の宣伝文句ではオリジナル・メカエンジン「SACDM-2」、DCD-1650REでは「S.V.H( Suppress Vibration Hybrid)ローダー」という、それっぽい名前が付けられていますが、メカ本体は東英製のDVD/SACD用トラバースメカ「TDT-2000S/T」で、DENONとマランツでは良く使われているものです。

SA-11S3はマランツのフラグシップで、価格は480,000円もする高級機の訳ですが、メカ本体は中味を見れば一目瞭然。コストをかけていた1980年代後半~90年代の、CDプレーヤーのメカに当てはめると5~6万円クラスのレベルです。

2000年代以降のCDプレーヤーのメカと比べても、marantz SA8400(2003年発売)と同じレベルで、まったく進歩は見られません。

これはDENONやmarantzだけの話だけではありません。ほとんどのオーディオメーカーは自社でメカを作っていないので、ごく一部のメーカーを除いて、他社から買ってくる他はありません。

でもオーディオ不況の中、全メーカーのSACDプレーヤーの販売数量を合わせても、たいした数量ではありません。そのため昔のようなリニアモーターや専用のスピンドルモーターを搭載し、高剛性のメカシャーシにハイブリッド型のフローティングシステムを装備などという、メカは今は作られていません。

例えばハイエンドCDトランスポートのAccuphase DP-900のメカでさえ、外側のカバーはいかにも頑丈そうですが、メカの裏側を見れば一目瞭然。

メカベースとカバーはぶ厚い金属製ですが、メカ本体は安物のスピンドルモーターとスレッドモーター(しかも、ありえないことに同じ物を使用?)。そしてピックアップの移動はギヤ駆動。ピックアップやモーターが取り付けられているメカシャーシは薄い鋼板。
それをダンパーでフローティングするシャーシ部分は樹脂製と、メカ本体は1990年台の6万円クラスと同じレベルです。
こんな安物メカを搭載しているのに、1,188,000円という値付けをする度胸に驚くばかりです。


またメーカーの経営自体も、親会社が投資ファンドなどに変わっているため、良い物を作るというより、コストを下げて利益を上げることが求められています。

各社ともホームページやカタログに、よくメカの写真が載りますが、外側の写真ばかりで内部の写真を載せないないのは、こういう理由だからです。


(メカ本体について)
東英製の「TDT-2000S/T」は、ふつうのDVDプレーヤーなどでも、使えるように設計された汎用のメカです。オーディオ専用のメカではないため、いろいろな弱点があります。

ピックアップやモーターが取り付けられる「メカシャーシ」は、薄い鋼板製で4点支持でフローティングされています。

ピックアップのスライド機構は、無振動のリニアモーターではなく、普通のDCモーターによるラック&ピニオンのギヤ式です。そのためモーターの振動がピックアップに伝わるのは避けられず、読み取り精度の悪化=サーボの頻度の増加=音質の悪化を招いてしまいます。

ディスクを回転させるスピンドルモーターは、いちおう低振動型のブラシレスモーターですが、これも1980年代に使われたBSLモーターや、スピンドル専用の低振動モーターに比べると、レベルはかなり落ちます。スピンドルモーターの振動も、ピックアップに伝わるため、読み取り精度の悪化を招きます。


ピックアップはSANYO SF-HD870で、これも以前からDENONのCDプレーヤーで使われています。

東英製のTDT-2000S/TメカとSANYO SF-HD870の組み合わせは、DCD-1500SE(2010年)とまったく同じですので、メカの本体部分は新開発でも、オリジナルでもないということになります。

SF-HD870はDVDプレーヤー用のピックアップで、amazonでも1,000円ぐらいで販売されていることからわかるように、ピックアップとしては普及品です。

メカ全体 ステンレスカバーを外したメカ
SACDM-2/S.V.H.ローダー

メカの型番 FGSA11S3A メカ本体は東英製のメカ

ピックアップ
SANYO SF-HD870



(トレイについて)
トレイはアルミダイキャスト製ですが、肉厚はたったの1.5mmしかありません。薄いために強度は不足しており、指で押すと少したわんでしまいます。

高級感を出すために、アルミダイキャストを使ったのでしょうが、たぶん東英製のメカの仕様のため、これ以上厚くできなかったのだと思います。

トレイの裏側にはガイド用のスチール製の棒が取り付けられており、トレイを補強する役割も持っています。それでも、たわんでしまうのですからビックリです。

これだけ強度が不足しているとディスクの再生時に、モーターの振動によりトレイも振動してしまい、音質的にはマイナスとなります。

DCD-1500SEのトレイは樹脂製ですが、防振塗装や制振プレートを装着するなど、振動対策がされていました。音質的に見るとDCD-1650REのトレイよりも勝っているかもしれません。

1980年代~90年代に、こんなトレイを付けていたら、間違いなく「嘲笑」の対象になっています。

それでもDCD-1500SEでは、樹脂製トレイの精度が悪かったため、ローディング時に、トレイがガタガタと動きましたが、DCD-1650ではそれが解消されて、静かでスムースなローディングになりました。

アルミダイキャスト製トレイ トレイの裏側


(ケースについて)
メカを覆うケースは時系列からいって、marantz SA-11S-3用に造られた物を、DCD-1650REが流用したというところだと思います。

ケースやクランパーを取り付けるブリッジは、メカ本体の振動を抑え込む役割があり、上記で書いたモーターの振動を抑えるので、ピックアップの読み取り精度の向上につながります。

ケースの「性能」を調べるには、防振ゴムをあちこちに貼って、ヒヤリングをすれば、すぐにわかります。
ケースの性能が悪ければゴムにより振動が抑えられ、解像度の向上など音質が改善されます。ケースの性能が良ければ音は変わらないか、デッドの方向の音になります。


DCD-1650REでは、ケースの上には見栄えを良くするために、ステンレス製の化粧カバーが取り付けられています。まず、この化粧カバーの上に防振ゴムを貼ってみましたが、音の変化はそれほどでもありません。

SA-11S-3はマランツのフラグシップだから、ケースはしっかりしているハズなどと、勝手に想像してしまいましたが、投資ファンドはそんなに「甘く」ありませんでした。

化粧カバーを外して、ケース本体のクランパーの横に防振ゴムを貼ったところ音は激変。一聴でわかるほど解像度が向上しました。つまり、このケースは防振性能が弱いということになります。


DENONのサイトには「読み取り精度を向上させるため、全数スキュー調整(ディスクに対するピックアップの傾きの補正)を行い」と書いてありますが、CDプレーヤーのピックアップのスキュー調整は、1980年代から工場出荷時に普通に行われていることです。

もっとも昔のCDプレーヤーと比べると、上記のように安物の「ヘナチョコ」メカですので、キチンと調整してくれないと、たいへんな事になってしまいます。

中央がクランパー。
その両側の丸い物が今回取り付けた防振ゴム。



(出力端子・リモコン)
リアパネルの出力端子はアナログが固定1系統。デジタルは光と同軸の2系統となっています。

DAC機能用のデジタル入力端子は光と同軸、USB端子はTYPE Bとなっています。その他には将来的な拡張用として、リモートコントロール端子があります。


リモコン(型番 RC-1179)にはアンプを操作するためのボタンもあるため、ボタンの大きさや配置に無理があり、使い勝手はさほど良くありません。

リモコンにはトレイの開閉ボタンはありませんが、本体は開閉のコマンドを認識するので、古いリモコンを使えばトレイを開閉できます。(1987年製DCD-1600と1997年製DCD-1650ARのリモコンで確認)

出力端子

リモコン RC-1179


(後継機のDCD-2500NEとの内部比較)
2016年2月に発売されたDCD-2500NEは、DENONが内部の写真を公開しているので、DCD-1650REと簡単に比較ができます。

メカは新商品が出るたびに新しくなったとか、上級機と同じという宣伝文句がD&Mの定番のパターンです。実際のメカ本体は上級機~下級機まで東英製の同じメカが使われていることが多いです。

DCD-2500NEはどうかというと、取り付けビスの位置やケースの全体や側面の形状、トレイの形状から見る限り、DCD-1650REと同じ物ではないかと思います。詳しくは上記の「メカ」を参照。

電源回路のうち、トランスはDCD-1650REと同じとDENONが説明しています。オーディオ用の電源部はフィルムコンデサが変更されていますが、数が減っています。問題はメカとデジタル用の電源部。
開発担当は自画自賛していましたが、パーツから見るとレギュレーターを1個減らし、さらに電解コンデンサもいくつか減らしているので、DCD-1500REと同程度の回路になっています。

DCD-2500NEではデジタル回路から、USBインターフェイスやS/DPIFの入力がなくなるなど縮小されましたが、回路基板は相変わらずオーディオ回路の上にあります。
ICはマイコンと「Advanced AL32 Processing Plus」用のFPGAがあります。DCD-1500REでDSPに戻した訳ですが、DCD-2500NEではまたFPGAが使われています。

オーディオ回路のD/AコンバータはPCM1795で同じです。DAC周りの定電源回路では電解コンデンサとレギュレータが減っています。その後ろにはI/V変換、ローパスフィルター、差動合成の回路がありますが、ここは電解コンデンサが増えて、逆にフィルムコンデンサが減っています。

よくUSB-DACが無くなったという記事がありますが、DACの部分はCDとUSBと共用なので、無くなったのはUSB用のインターフェイス(接続回路)だけです。


回路の電解コンデンサはDCD-1650REではELNA製の「SILMIC」でしたが、DCD-2500NEでは「DENON SX」という、ELNA製のカスタム品に変わったようです。
カスタム品というとカッコ良いですが、現在のコンデンサなどのカスタム品は、コンビニやスーパーでいう「PB商品」と何ら変わりません。

フロントパネルは変更されていますが、シャーシ(キャビネット)本体はDCD-1650REと寸法や仕様が同じなので、DCD-1650AEから使われている物だと思います。


上:DCD-1500SE 下:DCD-1650RE

DENON DSD-1650REのスペック

周波数特性 2Hz~100kHz(SACD)
2Hz~20kHz(CD)
高調波歪率 0.0008%(SACD)
0.0015%(CD)
ダイナミックレンジ 118dB(SACD)
101dB(CD)
S/N比 121dB(SACD)
120dB(CD)
消費電力 33W
サイズ 幅434×高さ138×奥行335mm
重量 13.7kg





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