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DENON DCD-1650RE

   2012年 定価180,000円(税抜)


DENONのDCD-1650REは、2012年10月に発売されたSACDプレイヤーです。後継機はDCD-2500NEと型番が変更になったため、1990年に初代DCD-1650が発売されて以来、続いてきたDCD-1650シリーズの最終モデルとなります。
ただし「DCD-1650」のネームバリューは絶大ですので、後継機の売れ行きが悪ければ、復活となる可能性は十分にあると思います。

前モデルのDCD-1650SE(2009年発売)には、marantz SA-15S2(2008年)、YAMAHA CDS-2000(2007年)、Pioneer PD-D9Mk2(2009年)などのライバル機がありましたが、DCD-1650SEの牙城を崩すことができませんでした。

その結果、DCD-1650REの発売に対して、他社の新商品はmarantz SA-14S1(240,000円)、YAMAHA CD-S2100(250,000円)、Pioneer PD-70(94,000円)と、DCD-1650REと競合しない価格帯に投入されたため、一転してライバル機がいない状況になりました。

海外仕様はDCD-2020AEで、イギリスなどではDCD-SXやDCD-SA11が販売されていないため、DCD-2020AE(DCD-1650RE)がトップモデルでした。ちなみに現在のトップモデルはDCD-2500NEです。→DENON UK


DCD-1650REはDCD-1650SEの改良機です。主な変更点としては、DACがAKM AK4399からTI製のバーブラウン PCM1795になったこと、USB-DACが24bit・192MHzまでのハイレゾに対応したこと。その他にオーディオ回路が強化されています。


DACのバーブラウン PCM1795は32bit・192MHzのDACで、PCMとDSDに対応しています。
内部はマルチレベルのΔΣ(デルタシグマ)変調器とアドバンストDWA、カレントセグメントDACという構成で電流出力。8倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターも内蔵しています。

DENONの説明では、「片側のチャンネルに2つのDACを使用し、差動出力で伝送する。」ということになっていますが、実際に搭載されているPCM1795は1個だけです(下記の写真を参照)。
PCM1795は内部に4個のDACを搭載しているので、確かに片側に2つのDACを使用しているのですが、ΔΣ型DACは内部に4個のDACを持ち2ch分を差動出力するのが基本で、1980年代に開発された松下の1bitDAC「MASH」の時から変わっていません。

普通、こういう書き方の場合は、セパレーションを向上させるために、片側のチャンネルに1チップのDACを搭載するのが普通であり、片側で4個、L・R合わせて8個のDACというのが普通です。
現実にYAMAHAのCD-S2000/CD-S1000では2個のPCM1792/PCM1796を搭載しています。ところがDENONではDCD-SX1がPCM1795を2個搭載しているだけで、他の機種のDACチップは1個だけの搭載です。

さすがにこの書き方はクレームが付いたのか、DCD-1500REでは「4ch DACの出力を左右それぞれに2chずつ使用する差動出力」とトーンダウンし、DCD-SX11やDCD-2500NE、DCD-1600NEでは、何にも触れられなくなっています。


「Advanced AL32 Processing」(通称ALPHAプロセッサー)は、「波形再現技術」といわれるもので、マスターからCDの16bitデータを作る際に、失われた信号を補間して、元の波形を再現するというものです。「Advanced AL32」では、拡張とアップコンバート・サンプリングなどの処理を行って、きめ細かな補間を実現しながら32bitのデータを作り出しています。


「ミニマム・シグナル・パス」は信号経路の引き回しを最小限に抑えるもので、一般的には「シンプル&ストレート」といわれるものです。
ところがDCD-1650REは宣伝文句では、「デジタル信号の経路を短縮している」と言いながら、実際はデジタル基板がメカの下と、オーディオ基板の上の2ヶ所になったために、信号経路はDCD-1650SEよりも大幅に伸びています。つまり真っ赤なウソです。


(USB DAC機能について)
USB DAC機能は最大24bit/192kHzのハイレゾ音源(PCM)まで再生が可能となり、アシンクロナス転送方式に対応しています。PC側のプレーヤーはWindows Media PlayerとiTunesをサポートしているという説明でしたが、foober2000なども使えます。

問題はOSです。Macの場合は稼働するのが、OS X 10.6.3以降ですが、OS X Yosemiteからは正常に動作しないことが判明しました。しかし、ファームウェアやPC用のドライバーのアップデートは行われていません。

同様の事がmarantz SA-11S3でも発生しており、放置されたままになっています。DCD-1650REやSA-11S3の発売時には、ハイレゾのUSB-DACをかなりアピールしていたのに、これは無責任としか言いようがありません。

Windowsでは、たまに不安定になる時もありますが、Windows10でも動作します。ただしDENONが提供(ダウンロード)しているドライバーはWindows7用のままなので、これをWindows10にインストールすると、DCD-1650REがパソコンと接続できなくなります。
ドライバーをアンインストールすると、Windows10内のドライバーが稼働し接続が可能となります。


(CD-R/CD-RW USBメモリの再生について)
CDとSACD以外にCD-RとCD/RW、USBメモリから音楽ファイルを再生することができます。再生できるファイルはCD-RとCD/RWの2種類。USBメモリはMP3とWMA、AAC、WAVの4種類です。

再生可能なビットレートとサンプリング周波数
ファイル ビットレート サンプリング周波数
MP3 32〜320kbps 32/44.1/48kHz
WMA
(CD-R、CD/RW)
64〜192kbps 32/44.1/48kHz
WMA
(USBメモリ)
64〜320kbps 32/44.1/48kHz
AAC 64〜192kbps 32/44.1/48kHz
WAV 16 32/44.1/48kHz


(DCD-1500REとの関係)
2013年に発売されたDCD-1500REは、開発コストを削減するためにDCD-1650REをベースに作られています。先代のDCD-1650SEとDCD-1500SEが兄弟機だったように、DCD-1650REとDCD-1500REも兄弟機です。

DCD-1500REの電源部はトランスが1つになっていますが、それ以外は一部のパーツが削られていますがほぼ同じです。オーディオ回路もDAC以降はコンデンサの数や容量が違ったり、一部のパーツがありませんが、DCD-1650REとほぼ共通です。

デジタル回路はDCD-1500REのほうが、デジタルアイソレーションを装備したり、USB-DACがDSDの再生に対応したりということで、コストがかかっているハズです。Advanced AL32 Processingの処理はDCD-1650REがFPGA、DCD-1500REはDSPを使用しています。

DCD-1650REのメカの本体やピックアップは、DCD-1500SEと同じなので、DCD-1500REも、たぶんカバーの部分とトレイが違うだけで、本体は同じだと思います。

一番違うのはシャーシ(キャビネット部分)で、ここはかなりの差があり、音質の差にもなっていると思います。



(音質について)

1.SACDの再生
SACDの再生は素晴らしいです。DCD-1500SE(内容的にはDCD-1650SEの廉価版)であった、腰高感はなくなり、どっしりとした音になりました。情報量も多く音場も広がり、2ランクぐらいレベルの上がった音です。

SACDの再生では「アルファプロセッサ」がバイパスされるので、インジケーターは点灯しません。ということはデジタルフィルターは、PCM1795のフイルターを使っている可能性があります。


2.CDの再生
SACDの音に比べてCDの音は、正直に言うと18万円もするのに「こんな物か」という感じ。

DCD-1500SEは硬めのハイスピードサウンドでしたが、DCD-1650REはDACが変わったこともあり、だいぶ柔らかくなり、ゆったりとした印象です。

DCD-1500SEは高音の解像度が高く、ハイハットなどの金属的な質感に特徴がありました。その代わり低音はまるでダメという感じでした。
DCD-1650REは中・低音がメインで、腰の低い落ち着いた音になりました。ただ高音が弱くなった分、高音の解像度や透明感は悪くなったというイメージが残ります。(オーディオ基板の上にデジタル基板を配置した影響もあると思います。)

音場は横方向の音の広がりは良いですが、奥行きはちょっと不足しています。どちらかというと散乱系で、定位はそれほど良くないです。

DENONらしいキレの良さとか、クールなところが無くなったのが残念なところで、音楽の表現力も物足りません。
ネットでは中・低音が厚いという意見が目立ちますが、それは現在のCDプレーヤーの中の評価であり、バブル期や1990年代のCDプレーヤーと比べると、いたって普通のレベルです。

CDの再生時は「アルファプロセッサ」はONの状態ですので、デジタルフィルターはPCM1795の物ではなく、アルファプロセッサ内の適応型デジタルフィルターが使用されます。
このアルファプロセッサの効き方も、DCD-1500SEと比べると、しっくりしていないように感じます。


3.USB-DACの再生
基本的にはCDと同じ傾向の音となります。「アルファプロセッサ」はONで、ハイレゾ曲の再生でもONになったままです。ですからデジタルフィルターは「アルファプロセッサ」側の物です。

ハイレゾの音をSACDと比べると、解像度が悪く何かもっさりとした感じの音になり、総合的に比べてもSACDより悪いです。



DCD-1650REの音をバブル期や1990年代のCDプレーヤーと比べると、出てくる音は悪くいうと無味乾燥。音楽の演奏や歌唱では「喜び」「悲しみ」「情熱的」などの感情をこめて行われる訳ですが、そういうものの表現力が弱いです。

結局のところCD、SACD以外にUSB-DAC、ハイレゾ再生など、メディアの多様化に加えて、現在の曲で多く使われる打ち込み曲独特のエフェクトなど、それらすべてに対応しようとして、かえって音質としては中途半端に、なってしまったという感じです。

D&Mは宣伝の中にサウンドマネージャーを登場させて、音について自画自賛させるケースが多いですが、18万円もするDCD-1650REの2年落ちの中古よりも、30年近く前のTDA-1541A搭載機のほうが、中古価格が高いという意味(現在の製品の評価が低い)がわかっていないように思います。


価格.comなどのレビューでは、音質に高い評価が並びますが(業者によるステマが多い?)、それに比べて上記のように中古価格は安い。つまり手放す人が多い割に買い手が少ないという市場原理です。
定価18万円で、2年前の2016年まで販売していたにも関わらず、オークション価格は何と半額以下の6万円〜7万円台になっている状況です。同じDENONでも1991年製のDCD-1650GLは年々、値上がりして3万円台半ばまで上がっており、数年で逆転されるかもしれません。

新しいから技術が進歩して音も良くなっているハズだと言うのは、オーディオの世界では通用しないことがよくあります。
DCD-1650REは、けっこうアンプとの相性も出ますので、オークションで買う場合でも、中古専門店などで試聴してから購入したほうが良いです。


(アルファプロセッサーのOFFについて)
DENONは2014年の「AV Watch」のインタビューで、ALPHAプロセッサはPCMに対して機能するもので、DSDデータの時はバイパスすることと、現在発売しているCDプレーヤーで、ALPHAプロセッサがOFFにできるモデルは一切ないと回答しています。

試しに昔ながらのやり方でやってみると、どうやらサービスモードの画面にはなるのですが、そこから先の設定の変更はできませんでした。



(フロントパネル)
フロントパネルは前モデルのDCD-1650SE、DCD-1650AEと同じデザインです。外見はディスプレィの周りの窪み部分を黒く塗装したので、ディスプレイが少し大きくなり、トレイが取り込まれたかのようなデザインになっています。

各ボタンは小さいので、けっして操作性はよくありません。リモコンからの操作が前提と言ってしまえばカッコよいですが、そのリモコンの操作性もよくありません。

レイアウトは中央にトレイとディスプレィを配置し、その左側に電源ボタン、SACDのディスクレイヤーの切り替え、ピュアダイレクトスイッチ、。右側にはトレイの開閉、再生/PAUSE、停止、スキップ、SOURCE(ディスクとUSB、S/DPIF端子の切り替え)ボタンとUSBメモリ用の端子があります。




(DCD-1650REのシャーシと内部について)
DCD-1650REのシャーシはフロント、サイドパネル、リアパネルの結合によりフレーム構造を造る強固なもので、底板は3重(1.4mm、1.7mmX2)、天板(1.2mmx2)、側板も2重となっています。

バブルの頃は6万円クラスのCDプレーヤーでも、同様の構造を持っていましたが、現在では20万円近いお金を払わないと手に入らなくなってしまいました。
ただ塗装がとても薄いため簡単に傷が付くので注意が必要です。

インシュレーターは剛性と内部損失を兼ね備えたBMC(Bulk Molding Compound)製で、接地面にはフェルトが貼られています。

内部のレイアウトはDCD-1650SEと同じで、左側にデジタル/アナログ独立の電源トランスと電源回路。中央にメカとその下にサーボ・信号処理回路。右側の手前がオーディオ用の電源回路。奥がDACなどがあるオーディオ回路。その上にあるのがシステムコントロール、USBやS/DPIFのインターフェイス回路があるデジタル回路となっています。


1980年代から、多くのCDプレーヤーの中身を見てきましたが、オーディオ回路の上に、ノイズが大量に出るデジタル基板を配置している、ピュアオーディオ用のCDプレーヤーは、初期のプレーヤーを除くとほとんどありません。昔の技術者だったら、こんなことは絶対にやらなかったと思います。

USB-DACやハイレゾ対応などのために、デジタル回路のパーツが増えるのは、しょうがないことですが、それに合わせてキャビネットの奥行を増やしたり、メカの下の基板を何枚か重ねるなど再設計すべきでした。

結局、コストをかけないために、DCD-1650AEから使っているキャビネットの利用を前提としたため、オーディオ回路の上しか空きスペースが無かったということだと思います。

YAMAHAのCD-S2000/CD-S1000はオーディオ回路の下にデジタル回路があるので、ウチもやっちゃえ!なんてことになったのかもしれません。ただYAMAHAはマイコンのある基板の上下左右をシールド板で覆ってノイズの漏れを少なくしていますが、DENONはムキ出しの基板を重ねているだけで、まったく芸が無いです。




天板 底板(1.7mm厚X2)

底部とインシュレーター インシュレーター


(電源回路)
DCD-1650REの電源回路は、ほとんどDCD-1650SEとほぼ同じですが、電解コンデンサの本数や容量が若干、増えているようです。

大きくはオーディオ、デジタル、メカに分かれた独立電源で、オーディオとデジタル回路用にはさらにセグメント別に系統を分けて給電しています。

電源トランスはデジタル/メカとオーディオの独立トランス。それぞれ別巻線のトランスです。この2つのトランスを逆向きに配置して、お互いの漏洩磁束をキャンセルする方式で、DENONのアンプで昔から使われてきた「L.C.マウント・ツイントランス」と同じです。

トランスを取り付けるベース部分は、非磁性体で内部損失のあるアルミ材を使用することで、振動の吸収と振動係数を変換。メカや回路基板などにトランスの振動が伝わるのを抑えています。

トランスの前にはDCD-1650SEでは無かったノイズフィルターが取り付けられました。これは家庭用電源から侵入するノイズを低減するものですが、DCD-1650REの物は安物でまったくの能力不足。そこでフェライト製のノイズフィルターを、追加で取り付けたところ音の透明感が増しました。

ACインレットは2Pですが、もちろん普通の3Pの電源ケーブルが使用できます。付属の電源コードは、安物で音が悪いのでケーブルの交換がオススメです。

電源トランス・左側がオーディオ
右側がデジタル・メカ用
デジタル・メカ用の電源回路
オーディオ用電源回路 電解コンデンサ ELNA製の
カスタム品 50V・3300μF


(オーディオ回路)
オーディオ回路のD/Aコンバーターは、TI製の192kHz・32bitDAC「バーブラウン PCM1795」です。

このDACは1つのチップに2つのDACが搭載されています。2つといっても片チャンネルは2個のDACの出力を差動合成しているので、L・Rを合わせると構成的には4個のDACがあることになります。ただし最終のカレントセグメントDAC部分は67のセグメントに分かれているので、4個ではなく67個が正解なのかもしれません。
チップ内には8倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターも搭載しています。


このDACは「Advanced Current Segment方式」(最近はAdvanced Segment方式と呼ばれています)というD/A変換方式を搭載しています。

デジタルフィルターで24bit化された信号を、上位6bitと下位18bitに分割。上位6bitはICOBデコーダーで63レベルの信号に変換され、下位18bitのデータが5レベル・3次のΔΣ(デルタシグマ)変調器を通ったデータと合算されます。

これらのデータはアドバンスDWA回路(後ろにあるカレントセグメントの誤差を最適化する回路)を通った後、67個の差動カレントセグメントDACでD/A変換され電流出力されます。


もうひとつのポイントは音質の「キモ」となるD/A変換やI/V変換、ライン出力に安定した電源を供給する電源部が強化されていることです。1990年代のDCD-1650は、この電源回路に大量の電解コンデンサを投入し安定した電源を供給して、今でも語り継がれる「中低音の分厚さ」や美音を出していました。

ところが外資に買収された後に発売されたDCD-1650AEでは、定価は値上がりしているにも関わらず、この部分をコストカットしてコンデンサの数を大幅に減らしました。その後のDCD-1650SE、DCD-1650REでは、この部分が強化されてきました。


「DACマスタークロックデザイン」は、DACのそばに低ジッターのマスタークロックを配置し、DACと同じクロックをマスターにして、他のデバイスにもクロックを供給するというものです。

DENONは宣伝文句では、さもオリジナルだと言っていますが、実際には1984年のSONYの「ユニリニア・コンバーターシステム」などが最初で、その後は各メーカーによって現在まで普通に使われている技術です。

また低ジッターのマスタークロックを使うというのも、1bitDACのD/A変換の精度がクロックジッターに影響されるため、1990年代の初めに確立された技術です。
DCD-1650REのクロックは一般品で、たぶん昔のVictor XL-Z505の方が、高品質のクロックを搭載していると思います。

オーディオ回路の電解コンデンサは、音質に定評のあるELNA製の「SILMIC」が使われおり、スチロールコンデンサなども使用されています。


問題点はオーディオ回路の上にデジタル回路があること。システムをコントロールするマイコンやALPHAプロセッサーのFPGA、USBやS/DPIFのインターフェイス回路にあるチップから大量のノイズが放出されていることです。

DENONやmarantzの一部の機種ではデジタルアイソレーションを設置して、ノイズを遮断していますが、空気中に放出される輻射ノイズも多く(AMラジオを基板に近づけれはすぐわかります)、これが「飛びつきノイズ」となってオーディオ回路に侵入するのはどうしても避けられません。

オーディオ回路 D/Aコンバータ
192kHz・32bit PCM1795

オーディオ回路 LPF+差動合成


(デジタル回路)
デジタル回路は、従来はメカの下に納まっていましたが、DCD-1650REではシステムコントロールやAdvanced AL32 Processingなどの回路を、オーディオ回路の上にある基板に移しているため、2ヶ所に分かれました。

そのため音楽信号はピックアップ→メカの下の基板(信号処理)→オーディオ回路の上の基板(Advanced AL32 Processing)→オーディオ回路と流れており、信号経路はDCD-1650SEよりも大幅に伸びています。つまり「ミニマム・シグナル・パス」ではなくなった訳です。


システムコントロール用のマイコン ルネサス製のM30624FGPGP(16bit)を使用。昔のマイコンと違って、多機能なマイコンで価格も1個2,500円とDACの数倍もします。いちおうノイズ対策機構により不要輻射ノイズを小さく抑えていますが、それはあくまで、現在の16bitマイコンと比べての話。
AMラジオで調べた限り、1980〜1990年代のCDプレーヤーで使われていた、ローノイズ仕様のマイコンと比べると、数倍の輻射ノイズが出ている感じです。

Advanced AL32 Processings(通称ALPHAプロセッサー)の処理には、インテル製のFPGA EP3C16F256C8Nが使用されています。以前はALPHAプロセッサーにはDSP(デジタルシグナルプロセッサ)が使用されていましたが、FPGAはコストが安く汎用性が高いというメリットがあります。
ところが、2013年に発売されたDCD-1500REでは、FPGAをやめて、またDSPに戻しています。もしかするとFPGAのノイズが大きかったのが原因かもしれません。

USBインターフェイスはTENOR TE8022です。MACユーザーがOS Xのバージョンアップで、USB-DAC機能が使えなくなったのは、このチップのメーカーが対応するドライバーを用意していないのが原因です。ただそういうパーツを選んだD&Mにも当然、責任があります。

S/DPIFのインターフェイスはTI製のPCM9211が使用されています。

デジタル回路

マイコン ルネサス
M30624FGPGP
ALPHAプロセッサー用のFPGA
インテル EP3C16F256C8N

USBインタフェース
TENOR TE8022
S/DPIFトランシーバ
TI PCM9211

メカの下にあるサーボ・信号処理用のデジタル基板。DCD-1650REの発表会では、DCD-SXと同じ基板という説明がされました。

右上の大きなチップはEtronTechの
EM638165TS(4Mx16bitのDRAM)


(ピックアップ・ドライブメカ)
D&MグループのDENONもマランツも、新しいCDプレーヤーを発売するたびに、メカを新開発とかオリジナルメカなどと宣伝していますが、本当のメカの部分は外部から購入しており、「メカではない」ケースやメカベース(メカを取り付ける土台部分)やトレイを作り直しているにすぎません。

DCD-1650のメカユニットの後ろには「FGSA11S3A」という型番のシールが貼られています。海外のパーツショップで調べると、その名のとおりマランツ SA-11S3に使われているユニットと同じ型番でした。メカ全体ではメカベースの部分や、カバーがSA-11S3と違うようですが、ユニット(メカ本体とケース部分、トレイ)は同じだと思います。

SA-11S3の宣伝文句ではオリジナル・メカエンジン「SACDM-2」、DCD-1650REでは「S.V.H( Suppress Vibration Hybrid)ローダー」という、それっぽい名前が付けられていますが、メカ本体は東英製のDVD/SACD用トラバースメカ「TDT-2000S/T」で、DENONとマランツでは良く使われているものです。

SA-11S3はマランツのフラグシップで、価格は480,000円もする高級機の訳ですが、メカ本体は中味を見れば一目瞭然。コストをかけていた1980年代終わり〜90年代初めの、CDプレーヤーのメカに当てはめると5〜6万円クラスのレベルです。

ピックアップやモーターが取り付けられる「メカシャーシ」は薄い鋼板製で4点支持でフローティングされています。ピックアップのスライド機構は高速・高精度のリニアモーターではなく、DCモーターによるラック&ピニオンのギヤ式。
スピンドルモーターはいちおう低振動型のブラシレスモーターですが、1980年代に使われたBSLモーターや、スピンドル専用の低振動モーターと比べるとレベルはかなり落ちます。

これはDENONやマランツだけの話だけではありません。各社ともホームページやカタログに、よくメカの写真が載りますが、外側の写真ばかりで内部の写真を載せないないのは、こういう理由だからです。

ピックアップはSANYO SF-HD870で、これも以前からDENONのCDプレーヤーで使われています。東英製のメカとSANYO SF-HD870の組み合わせは、DCD-1500SE(2010年)とまったく同じですので、メカ本体は新開発でもオリジナルでもないということになります。トレイはアルミダイキャスト製です。

DENONのサイトには「読み取り精度を向上させるため、全数スキュー調整(傾き補正)を行い」と書いてありますが、CDプレーヤーのピックアップのスキュー調整は、1980年代から工場出荷時に普通に行われていることです。
もっとも昔のCDプレーヤーと比べると、安物の「ヘナチョコ」メカですので、キチンと調整してくれないと、たいへんな事になってしまいます。


S.V.H.ローダーの上には見栄えを良くするために、ステンレス製のカバーが取り付けられています。ただこのカバーはディスククランパーと干渉しないように、真ん中の部分は盛り上がっています。

そこで、このカバーに振動防止の効果があるのかどうか、防振ゴムをあちこちに貼ってみて、音の違いを確認してみました。答えからいうと、ステンレスパネルを取って、S.V.H.ローダーの上に直接防振ゴムを、取り付けた方が音が良くなりました。

いちおうステンレスパネルの端っこには、黒い角柱のゴムパーツがあり、天板を取り付けると、ステンレスパネルを抑えつけるようにはなっていますが、あんまり効果がないようです。

メカ全体 ステンレスカバーを外したメカ
SACDM-2/S.V.H.ローダー

メカの型番 FGSA11S3A メカ本体は東英製のメカ

ピックアップ SANYO SF-HD870 アルミダイキャスト製のトレイ


(出力端子・リモコン)
リアパネルの出力端子はアナログが固定1系統。デジタルは光と同軸の2系統となっています。

DAC機能用のデジタル入力端子は光と同軸、USB端子はTYPE Bとなっています。その他には将来的な拡張用として、リモートコントロール端子があります。


リモコン(型番 RC-1179)にはアンプを操作するためのボタンもあるため、ボタンの大きさや配置に無理があり、使い勝手はさほど良くありません。

リモコンにはトレイの開閉ボタンはありませんが、本体は開閉のコマンドを認識するので、古いリモコンを使えばトレイを開閉できます。(1987年製DCD-1600と1997年製DCD-1650ARのリモコンで確認)

出力端子

リモコン RC-1179


(後継機のDCD-2500NEとの内部比較)
2016年2月に発売されたDCD-2500NEは、DENONが内部の写真を公開しているので、DCD-1600REと簡単に比較ができます。

メカは新商品が出るたびに新しくなったとか、上級機と同じという宣伝文句がD&Mの定番のパターンです。実際のメカ本体は上級機〜下級機まで東英製の同じメカが使われていることが多いです。DCD-2500NEはどうかというと、取り付けビスの位置やケースの側面の形状、トレイの形状から見る限り、DCD-1600REと同じ物ではないかと思います。詳しくは上記を参照。

電源回路のうち、トランスはDCD-1650REと同じとDENONが説明しています。オーディオ用の電源部はフィルムコンデサが変更されていますが、数が減っています。問題はメカとデジタル用の電源部。開発担当は自画自賛していましたが、パーツから見るとレギュレーターを1個減らし、さらに電解コンデンサもいくつか減らしているので、DCD-1500REと同程度の回路になっています。

DCD-2500NEではUSBやS/DPIFの入力がなくなりましたが、相変わらずオーディオ回路の上にデジタル回路基板があります。チップはマイコンと「Advanced AL32 Processing Plus」用のIC(FPGAかDSP)が見えます。

オーディオ回路のD/AコンバータはPCM1795で同じです。DAC周りの定電源回路では電解コンデンサとレギュレータが減っています。その後ろにはI/V変換、ローパスフィルター、差動合成の回路がありますが、ここは電解コンデンサが増えて、逆にフィルムコンデンサが減っています。
この電解コンデンサはDCD-1650REではELNA製の「SILMIC」でしたが、DCD-2500NEでは「DENON SX」というELNA製のカスタム品に変わったようです。

シャーシ(キャビネット)はDCD-1650REと寸法や仕様が同じなので、DCD-1650AEから使われている物です。


上:DCD-1500SE 下:DCD-1650RE

DENON DSD-1650REのスペック

周波数特性 2Hz〜100kHz(SACD)
2Hz〜20kHz(CD)
高調波歪率 0.0008%(SACD)
0.0015%(CD)
ダイナミックレンジ 118dB(SACD)
101dB(CD)
S/N比 121dB(SACD)
120dB(CD)
消費電力 33W
サイズ 幅434×高さ138×奥行335mm
重量 13.7kg















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