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Marantz SA8400 2003年 定価90,000円(税抜)


MarantzのSA8400は2003年9月に発売されたSACDプレイヤーです。

外見は前年に発売されたマルチ・チャンネル対応のSA8260とほぼ同じですが、SA8400は2チャンネル専用のSACDプレーヤーで、内部のドライブメカやオーディオ回路などが大きく異なります。

D/Aコンバータは、マランツをはじめ多くのCDプレーヤーで採用されたシーラスロジック製の「CS4397」を搭載。 オーディオ回路には回路高速化技術「Absolute SA Technology」を、採用したマランツ独自のHDAM(高速電圧増幅回路)を採用しています。

電源部はデジタルとアナログ用を別巻線とした電源トランスなどを使用して、独立電源回路としデジタル回路からのオーディオ回路へのノイズの侵入を抑えています。またカスタム仕様の電解コンデンサなど、音質にも配慮した設計となっています。

ドライブメカは新開発のもので、スライド機構はギヤ式ですがディスクのアクセスは早いです。またCDの読み込みもSACDプレーヤーとしては早いです。

このメカの下には、デジタルサーボやDSD用などの信号を処理するデジタル回路を配置し、チップなどから出る輻射ノイズをシールドするとともに、オーディオ回路から離してデジタルノイズの影響を少なくしています。


SACD、音楽CDの他にCD-R・CD-RWも再生できますが、MP3やWMAなどのファイルには対応していません。CD-DAのみの再生となります。

SACD/CDの切り換えは本体でもリモコンでも可能。SACDの広い再生帯域に対応していないアンプ用に、超高域信号を減衰するフィルターが搭載されています。


2005年に発売されたSA7001(定価63,000円)の内部は、メカや回路などがSA8400とほとんど同じで、一部の部品などの見直しを行ってコストダウンをした旨が、発売時にマランツからプレスリリースされました。またその上級機SA8001(定価94,500円)の内部も、SA8400とほとんど同じで、電源トランスがEIからトロイダルに変わっただけのように見えます。




(音質について)

1.CDの音
音は中音域重視ですが高音も良く伸びます。素直でまとまりのあるサウンドです。解像度、音場ともに良いですし、高音が少しキツいという問題はスピーカーのセッティングで十分に解消できます。
2010年製のDENON DCD-1500SEと比べても何ら遜色はありませんし、一部上回るところもあります。確かにDENONのサウンドと比べれば、柔らかく感じるかもしれませんが、これはこれで十分に良い音です。
マランツというとクラシックというイメージの人もいるかもしれませんが、ジャズやボーカルもOKですし、ロックもそこそこの音を聴かせます。

2.SACDの音
レンジがグンと広がるのが実感できます。解像度、音場ともにレベルアップ。SACDの再生でDCD-1500SEと比べると、SA8400のほうがレンジが広く音も立体的。何よりも表現力ではSA8400が断然良いです。DCD-1500SEの旭化成のDACは設計が新しく、32bitで測定数値は良いのですが、実際の音となるとシーラス・ロジックにはかなわないのかもしれません。


(トラブルについて)
SA8400のトラブルで多いのがディスクの読み込みエラーです。ただ後期のロットでは対策がされているかと思います。ウチのSA8400も読み込みエラーが出始めたので、内部の様子を確認しながら、いろいろなディスクでテストをしてみました。その結果症状は

(1) ディスプレィに「no disk」や「can't play」と表示されて、ディスクを認識・再生しない。
(2) ディスクを認識して再生するが、プレーヤーがブーンと音をたてて振動する。

(2)はスピンドルモーターが異常回転(高速回転)を起こして、激しく振動しているためで、手で触るとCDプレーヤー全体が振動してしていることがわかります。このような振動はCDプレーヤーには大敵で、モーターが壊れるだけでなく、精密部品であるピックアップの故障の原因にもなりますし、基板がハンダ割れを起こし断線の原因にもなるので注意が必要です。


原因はどうやらピックアップの寿命とは関係なしに、レーザーの出力が不安定になっているようです。デジタルサーボ回路はレーザーの出力に連動して、ディスクの回転やトラッキングなど自動的にいろいろな調整を行っています。キチンと調整を行うためには、レーザーの出力が弱過ぎても、強過ぎてもダメで、それによってディスクを回転させるスピンドルモーターが、異常回転(高速回転)を起こすこともあります。

マランツが修理の際に、デジタルサーボのファームウェア(モーターやピックアップをコントロールするためのソフトウェア)を書き直しているので、デジタルサーボのチップのファームウェアに、設定ミスかバグがあったのではないかと思います。
自動車でいえば車載コンピューターのトラブルで、運転中にエンジンの回転数が勝手に上がってしまうようなもので、いわば「リコール」ものですが、そこは家電品。結局ユーザー負担の修理ということになっています。


マランツはSA8400以外の機種も含めて、音質対策のためにデジタルサーボのサーボ量を制限していたという話があります。そうだとするとディスクに偏芯やソリがある場合、他社のプレーヤーより読める率が少なくなります。またSACDのハイブリットやCD-Rも同じように他社より読めない物が多くなるかもしれません。
サーボ量を多くして効きを良くすれば読み込みできるディスクは増えるのですが、デジタルノイズやレンズを上下させるアクチュエータの低周波ノイズが多くなり音質は悪くなります。でも反対に効きを悪くすると読めないディスクが増えユーザーからクレームがきます。いわばサーボ回路はメーカーにとって「痛し痒し」の存在で、経験とノウハウが必要であり現在でも技術開発が続けられています。

ただマランツはメカとサーボに関しては、2001年までフィリップスにお任せだったので、ノウハウが無いのも確かで、この時期のSA-14、SA-17、SA8260、そしてこのSA8400と、ネットでは多くの読み込み関係のトラブルが報告されています。



(フロントパネル)
デザインはSA-17S1のフロントパネルをリファインしたもので、ラウンドフォルムから一転しオーソドックスな1枚パネルになっています。

大きな丸いボタンは「プレイ」「ポーズ」「ストップ」のボタンで、トレイの開閉ボタンが小さいのが少し使いづらいです。「トラック」と「サーチ」ボタンは兼用で1回押すと次や前の曲に移動、長押しするとサーチとなります。プログラム系はリモコンのみで操作が可能です。

トレイの上には青のイルミネーションランプがあります。
ディスプレィ イルミネーション

動画の音はビデオカメラの内蔵マイクで録音しているため、音質は良くありません。


(内部について)
シャーシは2重底。天板は1枚物で防振材は貼ってありません。放熱対策のために底板と天板、リアパネルにスリットが空けられています。特に天板のスリットは基板の上にあるため、基板にホコリがたまり音質劣化の原因となります。できれば定期的なメンテナンスが必要です。
インシュレーターは中空のプラスチック製で、ちょっとお粗末なものです。

2003年当時、CDプレーヤーはセンターメカが主流でしたが、SA8400はという左側にメカとトランス、右側にメイン基板という1980年代から続くレイアウトとなっています。このメイン基板は右側がオーディオ回路で、左側が電源回路という特異な配置になっています。

デジタル回路はメカの下にあります。SACDプレーヤーのデジタル回路は、一般のCDプレーヤーよりもデジタルノイズの発生が多いため、ノイズの発生源となるチップをメカの下に配置することで、電磁波となってもれるノイズを少なくし、オーディオ回路から距離をとることで影響を少なくしています。


インシュレーター


(電源回路)
電源トランスはバンドー製でケースに収められています。捲線はOFC(無酸素銅)を使っており、デジタル用、オーディオ用、ディスプレィ用の系統別に別巻線として、デジタル回路やディスプレィで発生したノイズが、電源回路を伝わって戻り、オーディオ回路に侵入するのを抑えています。

トランスの手前には、フェライトコアによる電源用のノイズフィルターが装備されています。 1980〜90年代年代と違って現在は家庭内にパソコン、携帯電話の充電器、FAX、冷蔵庫、電子レンジ、エアコン、ガス漏れ検知機、各種電源アダプターと、ノイズの発生源がたくさんあります。

これらのノイズは100Vの電灯線を通って、オーディオ機器にも侵入してくるため、いまやノイズフィルターは必須アイテムとなります。

メイン基板の電源回路は特徴的な回路となっています。デジタル回路、ディスプレィ、DAC、カレントアンプ用に、それぞれ電源を供給する独立電源となっていて、これが基板の左側に整然と並んでおり、ちゃんとそれぞれの回路の一番近くになるように配置されています。

これはオーディオ回路のHDAM(高速電圧増幅回路)とともに、電源供給のスピード化をはかり、回路全体の高速化「Absolute SA Technology」を目指したものだと思います。
平滑用の電解コンデンサは、ELNA製のオーディオ用カスタム品で、25V・3300μFが2本。

電源コードは着脱式です。
電源トランス 電源用のノイズフィルター

電源回路 コンデンサ

デジタル用電源回路


(デジタル回路 サーボ・信号処理・システムコントロール回路)
デジタルサーボ・信号処理・システムコントロール回路など、いわゆるデジタル回路の基板はメカの下にあります。基板の上面がデジタルサーボと信号処理回路で、下面は主にシステム・コントロールの回路となっています。

これらの回路は1990年代には、集積化が進み3個ぐらいのチップで済むようになりましたが、最近は多機能化により高性能なマイコンを使ったり、チップ数が増えたりして、盛大にデジタルノイズを放出する回路となっています。

デジタルサーボと信号処理の回路は、SONY製のチップがメインで、CXD1885Q(デジタルサーボ)、CXD1881AR(サーボ信号処理)、CXD2753R(DSDデコーダー)などのチップが使われています。

システムコントロールの回路は、marantzのネームが入ったルネサス製マイコンの「MZ0614」がメイン。他にはアルテラ製のCPLD「EPM3128ATC100-10」や、ESMT製の16MB EDO DRAM「M11L16161SA」。Hynix製の16bitシンクロナスDRAM「 HY57V161610DTC」などがあります。
システム・コントロール回路 マイコン MZ0614


(オーディオ回路)
オーディオ回路はメイン基板の一番右側に配置され、左側にあるデジタル回路から、一番遠くなるように設計されています。

回路はフロントパネル側からD/Aコンバーター、ローパスフィルター、HDAM、カレントアンプ、ミューティング回路と整然と配置されています。

マランツのオーディオ回路は、HDMIを除いてもパーツが多いのが特徴です。この部分は必ずしもパーツの多い少ないで、音の優劣が決まる訳ではありませんが、キチンと作り込みされた回路であることは間違いありません。

D/Aコンバーターはシーラスロジック製の24bit/192kHz・DAC「CS4397」(SuperDAC)です。優れたクロック・ジッタ耐性を持ち、素子の精度の影響を排除する2次のダイナミック・エレメント・マッチングにより、D/A変換の精度を維持しながら歪みを低減しています。これらの機能によりダイナミックレンジ120dBなどのすぐれた特性を確保しています。

DACの内部では、まずデジタル補間フィルターが、デジタルフィルターとして作動しながら、CDの16bit信号を24bit信号へと拡張します。
次にマルチビットのΔΣ(デルタシグマ)変調器、ダイナミック・エレメント・マッチング(DEM)を経て、SCF(スイッチトキャパシタフィルタ)を使用してD/A変換しています。
デジタルフィルターからSCFまで回路は左右独立の構成で、DEMからの出力も完全差動出力としており、1チップでデュアルDACの差動出力を実現しています。

HDAM(Hyper Dynamic Amp.Module)は、高速電圧アンプモジュールのことで、従来のオペアンプに変わるものです。以前のHDAM回路にはノイズ遮断用の金属製のカバーが取り付けられていましたが、ヒアリングの結果、音質的にはカバー無しのほうが良いということで、SA8400では取り付けられていませんでした。でも何故か輸出モデルにはカバーが取り付けられています。

オーディオ回路 DAC シーラスロジック CS4397

左:カレントアンプ 右:HDAM ヘッドフォン回路


(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップ・ドライブメカは新開発のメカです。といっても1990年代の5〜6万円クラスのCDプレーヤーのものと同等か、それ以下のレベルの物となります。

ピックアップはSACD用の650nmと、CD用の780nmの2波長のレーザーに対応した日立製のHOP-1200Rを使用。ピックアップのスライド機構はギヤ式(ラック&ピニオン)で、スライド機構としては一番安あがりな方式です。

バブル期には中級機以上は精密な調整ができるリニアモーターが搭載され、ラック&ピニオン方式はエントリーモデルなど安い機種でしか使われていませんでした。しかし現在ではメーカーのコストカットなどの方針で、50万円以上のモデルでもラック&ピニオン方式が使われています。

トレイは薄く強度的にはちょっと頼りないですが、防振効果のある塗料が塗られ後部には銅メッキされた制振プレートが装着されています。形状はDENONの「S.V.Hローダ」と同じです。トレイの開閉機構もバブル期のCDプレーヤーと比べると簡素な物です。


このメカはSA8400の発売時には、自社の新開発メカだと宣伝していましたが、マランツはつい2001年まで、メカは親会社のフィリップスに面倒を見てもらっていた訳で、開発するにしてもノウハウはありません。内部を見ればわかりますが、これは事実上DENONが開発したメカです。

外資の傘下となった以後のマランツは、ともかくメカに関しては嘘が多いです。SA8260のメカも自社開発と言いながら、実際はSONY製の「KHM-230AAA」というアッシーを使用していました。

※マランツはCDプレーヤーの新製品を出すたびにドライブメカが新しくなり、性能が向上したように宣伝してきましたが、SA-11S3の発売時にSA8400、SA-15S1、SA-13S1、SA-11S1、SA-11S2、SA-7S1はD&M製(DENONとmarantzが共同で開発・使用)の第4世代のメカであることを認めました。→記事
でもSA8260のメカはまだ自社製だと言い張っています。海外のサイトなどで写真付きでバラされていることをご存知ないようです。

ピックアップ ピックアップの裏側にはレーザーの出力調整用のボリュームがあります。左側がCD用の780nmのレーザーのボリューム。右側がSACD用の650nmのレーザーのボリューム。

トレイ トレイの開閉機構


(出力端子・リモコン)
リアパネルの出力端子はアナログが固定1系統。デジタルは光と同軸の2系統となっています。他にはリモートコントロール用端子があります。

アナログ端子の隣にはSACD用のフィルタースイッチがあります。このフィルタースイッチはSACDに非対応のアンプ用に、SACDの超高域信号を減衰するフィルター(ローパスフィルター)を作動させるためのスイッチで、「STAN-DARD」でフィルターが「ON」となります。取扱説明書ではフィルターを「ON」にして使用することが推奨されています。

SACDは規格上では100kHzという高い周波数も再生できますが、SACDやハイレゾ音源で使われているDSD(Direct Stream Digital)は、「MASH」など1bit・DACで使われていたΔΣ変調を名前を変えたものであり、実際にはこの超高域信号帯に「ノイズシェーピング」によって、量子化雑音が寄せ集められることになります。
この雑音は可聴帯域外にあるため人間はノイズとして聞き取れませんが、アンプの回路に干渉して音質を劣化させたり、スピーカーのスーパーツィーターを破損させる恐れがあるため、ローパスフィルターで超高域信号をカットしている訳です。

SA8400と同じ回路を使用しているSA7001やSA8001では、フィルタースイッチが廃止されましたが、フィルター回路は、そのまま残っているので常時「ON」の状態になっているはずです。
また現在発売されている多くのSACDプレーヤーでも、フィルター回路によって50kHz以上の周波数をカットしています。

リモコンは小型で操作ボタンは小さいですが、意外なほど操作はしやすいです。
出力端子 ピンジャックは真鍮削り出し

フィルタースイッチ リモコン RC-8400SA


スペック

周波数特性 2Hz〜50kHz(SACD)
2Hz〜20kHz(CD)
高調波歪率 0.0009%(SACD)
0.002%(CD)
ダイナミックレンジ 114dB(SACD)
100dB(CD)
消費電力 20W
サイズ 幅440×高さ113×奥行335mm
重量 7.5kg












Marantz・マランツ SA8400 B級オーディオファン