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DENON DCD−1515AL

     1994年 定価66,000円


DENONのDCD-1515ALは、1994年9月に発売されたCDプレイヤーです。型番は若くなっていますが、DCD-1550(1992年)の後継機になります。

ライバル機はSONY CDP-XA3ES(60,000円)、Pioneer PD-T04/PD-UK5(60,000円/58,000円)、KENWOOD DP-7060(60,000円)、Technics SL-PS860(54,800円)などです。
1994〜95年の「6万円クラス」CDプレーヤーの比較


1980年代のDENONは、SONYやYAMAHA、Technics、Victorといった大メーカーが、大量に広告や宣伝をしていたために、その影に隠れがちでしたが、DCD-3500やDCD-1610、DCD-1630などの質の高い製品を開発していました。

1990年代となりバブルがはじけると、ほとんどのメーカーがCDプレーヤーのラインアップを整理・縮小し、新製品の発売を減らして行きます。そんな中、DENONは毎年のように新製品を発表して、存在感を高めていきました。


DCD-1515ALの目玉は「ALPHAプロセッサー」です。まだ高級機のDCD-S1やDA-S1(D/Aコンバーター)にしか、搭載されていなかったALPHAプロセッサーを、普及機に初めて搭載したもので、いわば「戦略機」ともいえるプレーヤーでした。

そんなDENONのもくろみは成功し、DCD-1515ALは納品待ちが出るくらいのヒット商品となりました。翌年にはサイドウッド付きのゴールドバージョン・DCD-1515ALGが発売されています。

ALPHAプロセッサーというのは、当時使われていた呼び方で、正確にはALPHAプロセッシング(Adaptive Line Pattern Harmonized Algorithm Processing)といいます。

いわゆる「波形再現技術」といわれるもので、デジタル録音やCDの16bitデータを作る際に失われた信号を補い、原音に近いアナログ波形を再現するというものです。

その仕組みは、CDに記録された16bitデータを元に、波形の変化率を検出して、失われた信号を解析します。それを複数の補正パターンと照合して、下位の4bitデータを演算して生成します。

そして上位の16bitに加算・合成して20bitのデータにしています。これにより元のアナログ波形に近いデータを再現しています。

ALPHAプロセッサーで再現された信号は、8倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターを通り、DENON独自のラムダS.L.C(ラムダ・スーパー・リニア・コンバーター)で、ゼロクロス歪みを低減させてアナログ信号に変換しています。

他にはCD再生のピッチ(速度)を0.1%刻みで±12%まで変化できるD.P.C.(デジタル・ピッチ・コマンダー)も装備されています。(リモコンからのみ操作可)


このDCD-1515ALは日本製と中国製があります。一時は納品待ちがでるくらい売れた商品なので、その時に中国製が入ってきているのかもしれません。ちなみにDENONは1990年代には、韓国でもCDプレーヤーを製造していました。



(音質について)
音質はというとフラット系で、高音や低音がでしゃばりすぎるということはありません。それでも「ALPHAプロセッサー」の効果でしょうか、高音の伸びなどは感じることができます。音像はしっかりしていますが音場はやや平面的。

いろいろなジャンルの音楽に使えるオールラウンド志向ですが、やっぱり良いのはジャズ。クラシックがメインとか、ロックが中心という人には、いろいろと物足りなさが出てくると思います。

おしむらくは、このクラスのCDプレーヤーとしては、シャーシ性能が低い(398並み)ことで、音質的にはだいぶ損をしていると思います。シャーシやメカの強度が高ければ、もう少し解像度や透明感も向上し、繊細さや音の厚みなども出たのかもしれません。

もっともこの「15」シリーズは1985年の初代DCD-1500、DCD-1510、DCD-1530、DCD-1515AL、DCD-1500SEと、その時のフラグシップにも使われる最新のデバイス(DACやALPHAプロセッサー)を、量販価格のモデルに載せるのが「売り」で、いわば伝統となっています。



(フロントパネル)
前モデルのDCD-1550のデザインを、簡略化したような感じで、少し安っぽいデザインになりました。

DCD-1550ではシーリングパネルの中に、10キーなどのボタンを収めていましたが、DCD-1515ALでは廃止されました。またアルミトップやサイドウッドなども廃止となっています。(後に発売されたDCD-1515ALGでサイドウッドは復活)

本体にある操作ボタンは「PLAY」「STOP」「PAUSE」の他は、スキップボタンや10キーなど必要最小限で、現在のCDプレーヤーと同じです。プログラムなどの操作はリモコンから行います。

ヘッドフォンのボリュームは電動ボリュームです。



動画の音はビデオカメラの内蔵マイクで録音しているため、音質は良くありません。



(シャーシと内部について)
シャーシは鋼板製で底板のみ2重に張り合わせています。逆に天板やリアパネルにはペラペラの板が使われており、叩くとよく鳴ります。

また天板とサイドパネル・リアパネルとの接合も悪く(ネジはサイド4本、リアは1本)、シャーシ全体としての強度も十分とはいえません。実測重量は6.7kg。

このような状況ですので、翌年発売のDCD-1515ALGに取り付けられたサイドウッドは、かなり音質改善に役立っているかもしれません。

インシュレーターは中空のプラスチック製です。

内部のレイアウトは左側にピックアップ・ドライブメカ、右側に電源・サーボ・オーディオなどの回路が載ったメイン基板と、オーソドックスな構成です。それにしても基板の上はジャンパー線だらけです。


上が日本製
下が中国製の製造表示
インシュレーター



(電源回路)
電源回路のトランスは別巻線タイプのものが1つ。問題なのは取付方法で、近くで見ると金具を介してシャーシに固定されているかのように見えますが、実は基板に固定されているため、トランスの振動がダイレクトに基板に伝わってしまいます。

基板の振動は音質の悪化にもつながるものですが、当然それはDENONの開発者たちも解っていることで、コストのかかるALPHAプロセッサー搭載の引き換えに、コストダウンを図ったものと思います。

電源回路は独立電源です。たぶんALPHAプロセッサー用に、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)を使っているようなので、三菱製のトラッキングレギュレータ「M5290P」が使用されています。

電解コンデンサはELNAのシルミックなどが使用されています。

電源回路 ELNA シルミック
50V・1000μF

三菱製の
トラッキングレギュレータ
M5290P



(デジタル回路)
サーボ回路や信号処理などのデジタル回路はというと、基板の表側はジャンパー線だらけです。裏側には4つのICがあります。

ALPHAプロセッサーとLAMBDA(ラムダ)プロセッサー、8倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターが、収められたDENONのマークがついた「SM5845AF」。

曲の選択やキー操作など、システムコントロール用マイコンは、たぶん「DENON 262 2111 100」。

SONYのデジタルサーボ内蔵の、デジタル信号処理LSI「CDX2515Q」。

ピックアップのアクチュエーターを動かす、ROHMの4チャンネル・BTLドライバー「BA6392」などがあります。


「SM5845AF」にはDENONのマークが付いていますが、製品番号はNPCのコード体系であり、NPCで製造している可能性が高いと思います。内部は処理の内容からすると、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)だと思います。

ALPHAプロセッサー・
デジタルフィルター
DENON SM5845AF
システムコントロール用
のマイコン?
DENON 262 2111 100

信号処理・サーボ回路
SONY CDX2515Q
4チャンネル・BTLドライバー
ローム BA6392FP



(DAC・オーディオ回路)
D/Aコンバータは当時1bit・DACが大勢を占める中で、DENONはマルチビットDACにこだわり、CDプレーヤーに搭載していました。

DACはバーブラウンの「PCM61P」を左右独立で使用した、リアル20bitのラムダS.L.C(ラムダ・スーパー・リニア・コンバーター)です。

※ラムダS.L.CとALPHAプロセッサーは下記参照。


D/AコンバータのPCM61Pは18bit・DACです。有名な16bit・DACの「PCM56P」とピン互換(ピンコンパチブル)になっており、それの置き換えを狙って開発されたものです。

18bit・DACを20bit・DACとして動かす方法は、足りない2bit分をオペアンプなどを使った簡易なDACで、アナログ変換して合成する「コンビネーションDAC」という方法がありますが、DCD-1515ALにはそういう回路は見当たりません。

たぶん、ラムダプロセッサのシフト機能を使って、フローティング処理を行い、20bit・DACとして動作させていると思います。

DENONのリアル20bit※は当初、18bitまたは16bitのDACと残り2〜4bitのD/A変換をするために、別のDACを取り付けた「コンビネーションDAC」に名付けられましたが、その後PCM1702などの20bitDACを搭載した場合でも、リアル20bitと呼んでいるので、方式や回路など特別な意味は無さそうです。


オーディオ回路の電解コンデンサは、DACなどへの電流を安定させるために、シルミック 50V・100μF を12本も投入しています。

外資の傘下となった後のDENONでは、DCD-1650SEでもこんなに電解コンデンサを使っていません。スチロールコンデンサも大型です。

オペアンプはTI製のNE5532Pと、NEC製のC4570Cを使用。また可変出力用に松下(現パナソニック)製の、電子ボリュームコントローラーMN6632も使われています。


(ラムダS.L.Cについて)
マルチビットDACの弱点といわれていた、ゼロクロス歪(クロスオーバー歪みやスイッチング歪みとも呼ばれます)を解消する仕組みで、ラムダプロセッサとDAC、そしてS.L.C.(スーパーリニアコンバータ)を組み合わせたシステムになっています。

LAMBDA(ラムダ)は、LADDER-FORM MULTIPLE BIAS D/Aの略です。


CDの中に入っている音楽信号は、「0」「1」のデジタル信号になっていますが、D/A変換の際にプラスとマイナスが、交互に繰り返す交流の波形に戻さないといけません。

当時のマルチビットDACでは、D/A変換で信号がプラスとマイナスの間にあるゼロレベルとクロスする際に、歪が大きくなる欠点がありました。これがゼロクロス歪と呼ばれるものです。


DCD-1650のように4つのDACを搭載している場合、まずラムダプロセッサがチャンネルごとに、信号をプラス側とマイナス側の二つの信号に分けます。(全部で4つの信号)

その信号にテジタルパイアスをかけて、シフト(ビットの位置を移動)させます。信号は分割と移動により、ゼロレベルをクロスしない状態になります。

これをLチャンネルのプラス用、Rチャンネルのマイナス用というように、1つの信号をひとつのDACでD/A変換を行います。音質に悪影響を与えるゼロクロス歪は発生しません。

変換が終わった信号は、プラス側とマイナス側を合成して、ふつうのアナログ信号に戻ります。


しかしDCD-1515ALは、片チャンネルに1個のDACで、合計2個しかありません。そのため4DACのラムダS.L.C.に比べると、手を抜いた動きをしています。

ラムダプロセッサに入る信号は、手前のALPHAプロセッサーで20bitになっています。ただし信号のレベル(ダイナミックレンジ)からいうと、いつも20bitの信号になっている訳ではありません。

信号が低いレベル時は、DACに余裕があるため、4DACと同じようにデータを分けて、ゼロクロスが起きないようにシフト(ビットの位置を移動)を大きくします。

レベルが大きい時は、18bitの上限までの余裕が少ないので、シフトを小さくします。この時、信号はゼロレベルを横切るために、ゼロクロス歪みが発生しますが、そこで以前のように、スーパーリニアコンバータを作動して、MSB補正を行って除去します。

信号のレベルがMAXに近い時(最大レベルの約99.6%以上)は、ラムダプロセッサは、シフトをやめますので、DACはそのままD/A変換。ゼロクロス歪みは、スーパーリニアコンバータで除去します。


2DAC用のラムダS.L.C.を搭載したDCD-1530のカタログでは、宣伝上18bit・DACを「20bit・DAC」に見せたいのと、「ゼロクロス歪がない」と言いたいために、何ともチグハグな説明になっています。

さすがにそれは問題になったのか、DCD-1515ALのカタログでは「歪みを抑え、高S/N比を実現」と、かなりトーンダウンした表現になりました。


(ALPHAプロセッサーについて)
ALPHAプロセッサーは「波形再現技術」といわれるもので、もともとはデジタル録音の際に発生する量子化誤差(量子化歪み)の、低減を目的に開発されたものです。
詳しくは銘機探訪「DP-S1 & DA-S1」。ちなみにYAMAHAのPRO-BITも、量子化誤差の補正のために開発されたものです。


アナログ信号はなめらかな曲線による波形で出来ていますが、これをA/Dコンバータでデジタル信号に変換すると、階段状の信号になります。この曲線と階段部分の差が量子化誤差(量子化歪み)となります。

これは仕組み上、必ず発生するものですが、オーディオ機器の宣伝文では、この量子化誤差を「失われた信号」といった、刺激的な言葉に変えて購買意欲をあおることに使われています。


デジタル信号は、階段が細かい(数が多い)ほど曲線に近づくので、32bit、24bitなど分解能が高いほうが、元のアナログ信号に近くなります。
ただ実際には同じ32bitのA/Dコンバータでも、変換精度にはピンキリの差があるので、16bitのA/Dコンバータよりも、音が悪い製品もあります。

仕組みは、CDに記録された16bit(階段)のデータから、波形の変化率を検出して解析。元の信号の波形パターンを推測します。それを複数の補正パターンと照合して、補完データを作成。元のアナログ信号に近い波形を再現します。

波形再現技術は同時期に、PioneerやYAMAHAでも開発されていますが、基本的な仕組みは似ていて、波形の解析や推測、補正の方法などが各社のノウハウとなります。

またALPHAプロセッサーは、デジタルフィルターと連動しており、入力信号の解析により、フィルター周波数のパターンを、自動的に変更する世界初の適応型デジタルフィルター(Automatic Low Pass filter Harmonic Adjustment)を搭載しています。

ALPHAプロセッサーの技術は、DENONからは1993年に「ALPHAプロセッサー」や「デジタルフィルター」という名称では無く「DA変換装置」として特許出願されています。→特開平7−143007

その他のALPHAプロセッサーに関連する特許は、「DA変換装置」や「ビット長拡張装置」という名前で出願されています。
特開平6−338797
 特開平8−274647
 特開平7−22946
 特開平9−46179

オーディオ回路 DAC バーブラウンPCM61P

12本のシルミック
50V・100μFと
巨大なスチロールコンデンサ
オペアンプ NE5532P

(リアル20Bit・DACについて)
リアル18bitDACや、リアル20bitDACというのは、1987年ごろにCDP-557ESDなどに搭載された正式な18bit駆動のDAC(PCM64P)と、YAMAHAやテクニクスが行っていた16bitDAC(PCM56P)を、フローティング処理で18bit動作させるものとを、区別するために生まれた言葉です。

正式な18bit、20bit駆動のDACには頭に「リアル」(本当の)を付けて、「リアル18bitDAC」「リアル20bitDAC」と呼ぶように用語が作られ当時のCD用語辞典にも掲載されました。

ところがDENONは、1988年に発売されたDCD-3500で、18bitDAC(PCM64P搭載)にも関わらず、リアル20bitD/Aコンバータという名前をつけます。

その後テクニクスもSL-P999で、16bitDAC(PCM56P)を使ったコンビネーションDACにリアル20bit、SL-P777では1bitのMASHを搭載しているにも関わらず、リアル18bitDAC搭載と宣伝するなど「悪用」が行われ、なし崩しとなってしまいます。



(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップ・ドライブメカは、振動の影響を受けないように、4つのスプリングを使ったサスペンションで、シャーシからフローティング(浮かす)されています。

メカベースは樹脂製で、その下にはシャーシの補強をするため、いかにも後付けという感じの鋼板がビス止めされています。

ディスクを抑えるクランパーを支えるブリッジは、樹脂製ですが大型で肉厚があります。

ピックアップはSONY製の「KSS-240A」で、スライド機構はギヤ式(ラック&ピニオン)です。


(メカのメンテナンス・修理)
トレイ開閉用のゴムベルト(約3cm)は、作業はしずらいですがトレイを開けば隙間から交換できます。

DCD-1515ALはデジタルサーボのため、基板には調整用のボリュームはありません。

ピックアップのKSS-240Aには調整用のボリュームが3つあり、右からレーザー出力、フォーカス・バイアス、EFバランスとなっています。


ピックアップ
SONY KSS-240A
補強板

メカの裏側 トレイ開閉用のゴムベルト




(出力端子・リモコン)
リアパネルの出力端子は金メッキされていません。アナログは固定と可変の2系統。デジタルも光と同軸の2系統となっています。

専用リモコンの型番はRC-251。

出力端子 リモコン RC-251

上:DCD-1515AL(1994年)
下:DCD-1500SE(2010年)


DENON DCD-1515ALのスペック

周波数特性 2Hz〜20kHz
高調波歪率 0.0025%
ダイナミックレンジ 100dB
S/N比 112dB
チャンネル
セパレーション
105dB
消費電力 13W
サイズ 幅434×高さ115×奥行288mm
重量 6.3kg (実測重量 6.7kg)















DENON・デノン DCD-1515AL B級オーディオ・ファン