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Technics ST-S7

     1979年 定価59,800円


Technics ST-S4は1979年11月に発売されたクォーツ・シンセサイザーチューナーで、ST-S5(1979年7月発売・44,800円)の上級機となるモデルです。
当時はまだシンセサイザーチューナーの機種が少なく、ライバル機はAurex ST-550、OTTO FMT-T600、SONY ST-J60など。


テクニクスは1979年に、いわば1980年代を見据えた新世代の製品を続々と投入します。ジャケットサイズのレコードプレーヤーのSL-10や、ニュークラスA方式のプリメインアンプ SU-V10、SU-V8、SU-V6。そしてハニカム平面スピーカー SB-10、SB-7、SB-3。そしてチューナーは超薄型のシンセサイザーチューナーのST-S5とST-S7を発売しました。

中でもSL-10のデザインは衝撃的で、販売でも大ヒットとなります。そして2匹目のどじょうを狙って、各メーカーからジャケットサイズのレコードプレーヤーが続々と登場しました。
チューナーのST-S5とST-S7の薄型のデザインも新鮮で、シンセサイザーチューナーの未来的なイメージとあわせて人気となります。ライバルメーカーには衝撃的だっようで、翌1980年には多くの薄型シンセサイザーチューナーが発売されました。


当時、メーカーがシンセサイザーチューナーを売り込むために使った、バリコンチューナーのデメリットとシンセサイザーチューナーのメリットをまとめると以下のようになります。

(バリコンチューナーのデメリット)
バリコンチューナーでは、VFO(可変周波数発振器)にバリコンを使用しているため、発振周波数の精度や悪く、周波数ドリフトを起こすなど安定性にも問題がありました。また機械的な駆動箇所が多く、振動などによる同調ズレや経年による故障の心配もある。

(シンセサイザーチューナーのメリット)
シンセサイザチューナーは、バリキャップ(可変容量ダイオード)に流す電圧を変化することで、周波数を変動させており、さらにPLL回路により安定性も高くなっています。また機械的な部分が無いため、故障の心配も少ない。

確かに機械的にみるとシンセサイザーチューナーは優れた部分がありますが、受信性能や音質では、まだバリコンチューナーにかないませんでした。


(Technics ST-S7について)
ST-S7のフロントエンドはバリコン4連相当で、バックツーバック型のハイQバリキャップを採用し、隣接局のイメージ妨害排除能力を向上させています。RF段には4極MOS-FETを使用しています。

クォーツPLLシンセサイザは、スワローイン・カウンタ方式(パルス・スワローのことです)で、基準周波数を可聴帯域外の25kHzに設定することで、残留ノイズの音楽信号への影響をなくしています。特徴的なのはAM放送の受信時も、PLL回路が働いてクォーツロックされます。

IF部は群遅延特性の平坦なセラミックフィルタを3個を使用して、高選択度と低歪率を得ています。検波以降の回路をDC化しています。ただIF帯域の切替機能はありません。

MPX部はピークサンプリングホールド方式(仕組みはTRIOのサンプリングホールド方式と同じ)を採用し、チャンネルセパレーションを向上させています。

パイロット信号のキャンセル回路は、オートアジャスタを装備してリークキャリアの変動を防いでいます。他にはジッター歪除去回路を搭載しています。

FMとAMの各8局をランダムプリセットできます。メモリーのバックアップには、単3乾電池X3本を使用しています(メモリの補償期間は3ヶ月)。

タイマー機能を内蔵しており、指定した時間にFM/AMの受信や、ACアウトレットに接続したデッキやアンプの電源ONが可能となっており、ST-S7とデッキを組み合わせれば留守録が可能です。
時間のセットは毎日動作(1日2回)と、単発動作(1日1回)をセットすることができます。ただし日付のセットはできないため、あくまでも簡易なタイマー機能です。



ST-S7は回路的には目新しい部分はありません。ある意味、手堅い設計といえると思いますし、性能面でも音質面でも優れた部分はありません。

でも、この薄さと一直線に並んだボタンのデザインは、新鮮で未来的でした。それにナショナル(松下電器)の宣伝力により、既存の回路に新しい「回路名」を付けたり独自と謳うことで、新世代のチューナーというイメージを確立したことが、ST-S7やST-S5の成功につながったのだと思います。

Technicsは翌1980年にST-S4(1980年11月発売・ST-S5の後継機)、ST-S6(1981年2月発売・ST-S7の後継機)、ST-S8(1980年11月発売)などを投入し、チューナーのラインアップはシンセサイザーチューナーがメインとなり、バリコンチューナーはビギナーモデルだけとなります。



(受信について)
現在はケーブルテレビからFM放送を聴いていますが、受信能力は良いです。


(音質について)
ST-S7の音は解像度は不足しており、細かい部分の音は出てきません。レンジが狭いので音が平面的です。高音の伸びが無くて、全体的にキレがありません。

当時はシンセサイザーチューナーの音質は、まだバリコンチューナーにかなわないと言われていました。実際にバリコンチューナーのKT-8000KT-1000と聴き比べても、音は良くありません。



(フロントパネル)
先に発売されたST-S5のデザインを踏襲したもので、薄型のスタイリッシュなデザインで、当時としては「未来」を感じさせるデザインでした。

ディスプレィはシンプルで、FM・AMのバンドと周波数の表示。そしてFMのSTEREOインジケーターがあるだけです。中ほどにはクォーツロック・インジケータがあり、受信が安定してPLLがクォーツロックされると点灯します。

ボタンの配置は一直線に並んでいます。サイズも小さいので、けっして使い勝手は良くありません。

一番左にプログラムモードのスイッチ。プログラムといっても簡易なタイマーセットの機能です。
その隣りはクロックコールで、FMやAM放送を聴いている際に、このボタンを押すと約5秒間、現在の時刻が表示されます。そしてRECレベルとFMのSTEREO・MONOの切替スイッチ。
ディスプレィの右側にはメモリー、チューニング、8個のプリセットメモリー、FM・AMのバンド切り替えがあります。

一番右側にあるボタンは電源スイッチですが、電源をOFFにしてもコンセントが刺さっている間は、通電しておりタイマーの時計が表示されます。

周波数表示

   
 時計表示   プリセットボタン


(キャビネットと内部について)
キャビネットは薄い鋼板製です。高さは53mmですがこれは脚を含めた高さで本体は43mmしかありません。

内部は左側に電源トランス。中央部は手前からディスプレィの表示回路。電源回路とIF回路。MPX回路。そして一番奥にフロントエンド。右側にはシンセサイザー回路とAMチューナーがあります。

ST-S7のカタログでは「テクニクス独自」という言葉が並びますが、実際にはIFやMPX、PLLシンセサイザーなど、主要な回路にはNEC製のICが使用されており、辛口にいえば外見はTechnics、中味はNEC製といえます。



(電源回路)
本体の高さがないということで、電源トランスは小さいです。電解コンデンサは松下(現パナソニック)製です。ヒューズは30mmで1Aです。

電源トランス 電源回路

プリセットメモリーのバックアップ用の単3乾電池。3本が必要でメモリーの補償期間は3ヶ月。


(システムコントロール) 
操作ボタンによる動作のコントールをするのは、NEC製のチューニングシステムIC「μPD1704C」で、タイマーやPLLシンセサイザー回路の一部としても機能します。

FLデイスプレィの表示は周波数や時刻だけの簡単なものですが、回路は集積化されていないため、マイコンの2進数をを10進数に直す、デシマルデコーダー、三菱「M74LS42P」、数字を表示するための7セグメントデコーダ、ナショナルセミコンダンクタの「DM74LS74N」。FLディスプレィ用のドライバー用ICの東芝「TC5067BP」などがあります。

三菱 M74LS42P 東芝 TC5067BP


(フロントエンド・PLLシンセサイザー)
ST-S7のフロントエンドは、FM4連バリコン相当でバックツーバック型のハイQバリキャップを使用しています。RF部は4極MOS FETを使用しています。

PLLシンセサイザー部は、PLL回路(位相同期回路)に分周器を組み合わせた回路で、ST-S4では同調スピードが速い、スワローインカウンタ方式(いわゆるパルススワロー方式)を採用しています。

まず水晶発振子(クォーツ)の周波数を元に、分周器で基準周波数を作り出します。この基準周波数をオーディオ帯域外の25kHzに設定することで、残留ノイズによる音楽信号への影響を防いでいます。

ユーザーが聴きたい放送局を選局するとマイコンを通じて、データとしてプログラマブル可変分周器(プログラマブルカウンタとも呼ばれる)に入力された後に分周数となります。基準周波数は位相比較器を経てループフィルター(ローパスフィルター)で、直流電圧となり、バリキャップを使ったVCO(電圧制御発振器)で、基準周波数を分周倍した周波数となりミキサーに送られます。

このVCOで作られた周波数は安定化させるために、再度PLL回路にフィードバックされて、プログラマブル可変分周器に入り、分周数で割って周波数が計算されます。これを位相比較器で基準周波数と比較し、周波数がズレていれば誤差信号が出力され、またループフィルターを通って、VCOで周波数の上げ下げが行われ、正しい周波数となります。※

しかし当時のプログラマブル可変分周器では、高い周波数を得ようとすると動作に時間がかかるという問題がありました。そこでスワローインカウンタ方式では、カウンターと1/16、1/17の2つの分周比を持つ、プリスケーラ(前置分周器)を設置し、これを高速動作させることで、プログラマブル可変分周器の負担を少なくし、2つを合わせた分周器全体として高速な動作を可能にしています。

PLLのコントロールを行うのはNEC製のチューニングシステムIC「μPD1704C」。このICにはマイコンが内蔵されており、音質に悪い影響を与える電磁ノイズが放出されるため、シールド板が取り付けられています。プリスケーラ(前置分周器)はNEC製の「PB553C」です。
AMチューナー用のICは松下製の「AN217P」です。このICにはAMの高周波増幅、混合、発振とFM/AMの中間波増幅(IFアンプ)などの回路が内蔵されており、現在でも市販されています。


※回路的にはPLLのループを一周することで、周波数が安定するように思えますが、実際にはパーツの特性などにより、何回かループしないと基準周波数と一致(いわゆるクォーツロック)しません。そのため音が出始めてから、少したって「クォーツロック・インジケータ 」が点灯します。

フロントエンド フロントエンド(AM用の回路)

   
 
PLL回路・μPD1704C プリスケーラ NEC μPB553C(左)


(FM復調 IF・検波回路)
IF段にセラミックフィルタが3個われています。検波部は広帯域で安定度に優れたクワドラチュア検波です。

使われているチップは、IFアンプはNEC製の「μPC577H」。FM用の検波器がNEC製の「μPC1167C」です。

IF回路 FM用検波器 NEC μPC1167C


(ステレオ復調 MPX回路)
MPX部は「ピークサンプリングホールド方式」という名前になっていますが、ふつうのサンプリングホールド方式です。

サンプリングホールド方式はスイッチング信号に立ち上がりの早いパルス波形を使用して、そのピークだけを正確にサンプリング(抽出)します。抽出したピーク値をホールド(維持)回路に渡して、絶えず正確なスイッチング信号を流し続けるようになっています。これにより、チャンネルセパレーションを高めています。

パイロット信号のキャンセル回路は、フィルターを使ったキャンセル方式ではなく、MPXの入力側に波形整形したマイナスの19kHz信号を注入することで、パイロット信号のみを除去しています。
この回路にはキャンセルレベルのオートアジャスタを装備しており、必要なキャンセル量とキャンセルレベルの差であるリークキャリアの変動を防いでいます。

またステレオ復調の際には、高域のオーディオ信号がパイロット信号によって揺られることで、ジッター歪が発生します。これを防ぐためにジッター歪除去回路を搭載しています。これは急峻な特性を持つ、LCバンドパスフィルタを使ってジッター歪を取り除くもので、高域再生をクリアにしています。

使われているICは、MPXデコーダーがNEC製の「μPC1161C」。パイロット信号のキャンセル用が松下製の「AN6552」。ピークサンプリングホールド用がNECの「μPD4066C」です。

MPX回路 MPXデコーダー NEC μPC1161C


(アンテナ端子・出力端子)
FMアンテナ端子は75ΩのF型コネクタのみで、FMウイングアンテナの接続用に、ノーマルと同調型の切り替えスイッチがあります。AM用はバーアンテナと外部アンテナ端子があります。

出力端子は固定出力とマルチパス出力端子を備えています。その他に電源スイッチ・タイマー機能連動のACアウトレット端子(500W)があります。

 
 AM用バーアンテナ


Technics ST-S7のスペック

FM 受信周波数 76.1MHz〜89.9MHz
周波数特性 5Hz〜18kHz +0.2-0.5dB
実用感度 1.2μV(IHF)、12.8dBf(新IHF)
SN比50dB感度
MONO 2.2μV(IHF)
18.1dBf(新IHF)
STEREO 22μV(IHF)
38.1dBf(新IHF)
全高調波歪率
MONO 0.06%
STEREO 0.08%
実効選択度 75dB
S/N比 MONO 80dB
ステレオ
セパレーション
60dB(1kHz、20Hz)
40dB(10kHz)
イメージ妨害比 95dB
IF妨害比 105dB
スプリアス妨害比 95dB
AM抑圧比 55dB
リークキャリア -70dB
キャプチャーレシオ 1.0dB
AM 受信周波数 522kHz〜1611kHz
実用感度 30μV
選択度 55dB
イメージ妨害比 50dB
IF妨害比 45dB
消費電力 8W
サイズ 幅430×高さ53×奥行310mm
重量 4.1kg












Technics ST-S7 B級オーディオファン