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KENWOOD KA-990V

  1985年 定価79,800円

KENWOODのKA-990Vは1985年10月に発売されたプリメインアンプです。

ライバル機はSANSUI AU-D607X Decade、ONKYO Integra A-817RXU、YAMAHA A-750a、DENON PMA-700V、Victor AX-S900、NEC A-700、marantz PM-74D、SONY TA-F333ESXなど。
1985年の798アンプの比較


KA-990Vの外見は前モデルのKA-990SDと、ほとんど変わりませんが、内部は電源部が大幅に強化され、パワー部やプリ部の回路が一新されるなど、フルモデルチェンジに近い内容になっています。

2年前に発売された上級機のKA-1100(118,000円)よりも重量が重く(物量が投入されているということ)、コンデンサーの容量は前年のKA-1100SD(129,000円)を上回るという物だったため、ヒット商品となりました。

この1985年は、KA-1100シリーズの新商品の発売はありませんでした。本来ならばKA-990シリーズと同様に、KA-1100Vが発売されても、おかしくないのですが、次のモデルはKA-1100D(1986年)となっています。
そういう意味では、KA-990Vは戦略機的な意味あいがあったのかもしれません。

そして、KA-990V発売の4ケ月後の1986年2月には、クラスを超越した物量を持つSONY TA-F333ESXが発売され、このクラスのアンプは「798戦争」と言われた、熾烈な物量戦に突入していきます。



(1980年代初めのアンプのトレンド)
1970年代後半のアンプのトレンドは、DCアンプ化とA級とB級動作のいいとこ取りを狙ったAB級アンプでした。

AB級アンプでは入力信号に応じて、バイアスを変化させる回路が進化して、Technicsはマイコンによって制御する「コンピュータドライブ ニュークラスAアンプ」を登場させました。

1980年代に入って各社が力を入れたのは、スピーカーで発生する逆起電力による歪を打ち消したり、動的特性を改善することでした。

TRIOは「Σドライブ」、Aurexの「クリーンドライブ」などのように、スピーカー側の入力端子までNFBをかける方法とったり、ONKYOの「スーパーサーボ・インテグラル」など既存のNFBの改良。サンスイの「スーパーフィードフォワード」のように新しい仕組みの投入も行われました。

電源部も低インピーダンス化やノイズ対策により、リップルやノイズなどの影響を排除するとともに、逆起電力にも効果があるとされていました。

NEC A-10が強力なリザーブ電源を搭載。Pioneerは低・高2系統の電源部を持つダイナミック・パワーサプライ。後のバランス電源となるサンスイのグラウンドフローティング回路、そしてKENWOODも強力な電源を搭載するようになっていました。



(KA-990Vについて)

KA-990Vの特徴は、DLD(ダイナミック・リニアドライブ)サーキットを搭載していることです。
これは出力によって、歪が少ないローパワーアンプと、ハイパワーアンプの2つのアンプを、切り替えて使用するという回路です。

ローパワーの時はA級、ハイパワーの時は、AB級で駆動するというアンプもありますが、これらは2つのアンプを搭載している訳ではなく、バイアスの可変機構を使用して、A級とAB級の領域を行ったり来たりさせているだけです。

DLDサーキットは、実際に2種類のアンプ(パワートランジスタ)を搭載しており、専用のスイッチングICで切り替えを行っています。

NFB(ネガティブフィードバック)は、NFループをスピーカー端子まで掛けることで、コイル、リレー、スイッチなど、音質に影響するパーツ類まで、NFBの対象として、歪やノイズを低減する「ΣドライブtypeB」を搭載しています。

電源回路は大容量トランスと、10,000μFの電解コンデンサ4本を使用した強力な物で、電源に含まれるノイズ成分を、出力段に伝えないためにVIG回路を装備しています。

フォノイコライザーはHi-Gm FETを使用した差動入力と、ICによるイコライザーアンプを採用しています。



KA-990Vは発売時には、このクラスでも最強とも言える物量を誇りましたが、翌年に勃発する「798戦争」の、SONY TA-F333ESXYAMAHA AX-900の物量にはかないません。



(フロントパネル)
フロントパネルはKA-990SDのデザインを踏襲したもので、スイッチの配置の変更が行われています。KA-990SDにあったTONEのON/OFFスイッチが廃止されて、LINE STRAIGHTというスイッチが追加されています。


フロントにも外部入力端子(AUX)があり、スイッチでフロントとリアの入力切り替えが出来ます。




(シャーシ・内部について)
シャーシはフロントパネル(鋼板部分)と、リアパネルを結ぶビーム(厚さ1.6mmの鋼板)によってフレーム化されており、ここにトランスや回路基板が取り付けられています。

ヒートシンクもフロントパネル(鋼板部分)とリアパネルにネジ止めされており、シャーシのビーム(梁)の役目もはたしています。

天板はコの字型の鋼板で厚さは1mm。底板も1mm厚です。どちらも指で叩くとよく鳴ります。


内部は左側に電源部、中央にパワー部(ドライバー段・出力段)、ヒートシンクをはさんで右側にはパワー部の初段とフォノイコライザー回路があります。


内部 底板をはずしたところ

インシュレーター



(電源部)
電源トランスは大型で、コアの積層を増して放熱効果を高め、巻線インピーダンスを低下させています。容量は93V・295VA。

平滑コンデンサはELNA製の「BLACK-NEG」 71V・10000μFが4本。

電圧変動による音質への影響を防ぐために、パワーアンプの電力増幅段以外は安定化電源を採用しています。

VIG(Voltage InterFace Gate)回路は、電源に含まれるノイズ成分を、出力段に伝えないためのフィルター回路です。

アンプ側から見るとインピーダンスが低く、電源側からみるとインピーダンスが高いという仕組みにより、電源からは直流エネルギーだけを通して、電源のリップルやノイズ、歪成分は通り憎いという物です。

ONKYOのアンプに採用された「ターボフィルター回路」と似たコンセプトの回路と言えます。

ちなみにKA-990D、KA-1100Dに搭載されたNew VIG回路では、新たに出力段のカスコードブートストラップ回路を改良して、ノイズやリップルを低減しています。



電源トランス
93V・295VA
ELNA製 BLACK-NEG
71V・10000μF X4

電源回路



(パワー部)
初段はA級動作の差動増幅回路で、FET「μPA68H」を使用した差動入力になっています。

出力段はB級動作のDLDサーキットになっています。

1970年代末からプリメインアンプでは、バイアス可変式のAB級アンプが人気となり、そのカタログではB級アンプは、音が悪いというような宣伝もされました。

ただ実際には、KENWOODのKA-990・KA-1100シリーズ、SONYのTA-F333・TA-F555シリーズ、DENONのPMA-2000シリーズ、ONKYOのA-817、A-819シリーズなど、多くのアンプがB級動作を採用しており、音が良いと評判になったアンプも少なくありません。

※本来のB級アンプではバイアスをかけませんが、実際のオーディオ用アンプでは、小出力時の歪が大きいために、少しバイアスをかけて、動作点をA級寄りに変更しています。


DLD(ダイナミック・リニアドライブ)サーキットは、歪が少ないローパワーアンプと、ハイパワーアンプの2つのアンプを組み合わせた回路です。

ローパワーアンプの受持ちは約50Wまでで、信号の大部分がローパワーアンプで増幅され出力されます。瞬間的な大信号入力時には、専用のICによりハイパワーアンプに切り替えが行われます。

出力50Wのローパワーアンプでも、定格出力150W以上の能力を持つ、強力な電源で駆動するため、電源インピーダンスが低下し、スピーカーの負荷変動(逆起電力)の影響を受けにくい回路となっています。


NFB(ネガティブフィードバック)は、スピーカーへの専用ケーブルが不要の「ΣドライブtypeB」です。NFループをスピーカー端子まで掛けることにより、コイル、リレー、スイッチなど、音質に影響するパーツ類まで、NFループに取り込んでいます。

Σドライブの説明では、スピーカーの逆起電力から発生する歪への対応がメインになって説明されていますが、B級アンプで発生するクロスオーバー歪(スイッチング歪)などの歪などにも対応しています。


出力段はカスコードブートストラップを採用した回路で、DLDの大出力と小出力の切り替えを行っているのが、TRIO/KENWOODの刻印があるTA2030です。

TA2030はDLD専用のスイッチングICで、内部はコンパレータとスイッチング回路で構成されています。

パワートランジスタは、サンケンの「2SA1215」と「2SC2921」がハイパワー用。ローパワー用がサンケンの「2SA1104」と「2SC2579」。どちらの出力もプッシュプルとなっています。

ドライバー段・出力段 DLDスィッチングIC
TA2030

出力段は片チャンネルに、ハイパワー用とローパワー用の計4個のパワートランジスタがあります。

パワートランジスタはサンケン製。
左から「2SA1215」「2SA1104」「2SC2579」「2SC2921」

Aクラス段 ヒートシンク



(プリ部・フォノイコライザー)
トーン回路はトーンアンプ(オペアンプ)を使用したトリオ方式のNF-CR型です。

フォノイコライザーは40msのHi-Gm FETを使用した差動入力と、ICによるイコライザーアンプを採用しています。

フォノイコライザーアンプ プロテクト回路


(入出力端子)
入力端子はCD・TUNER・AUX、PHONO。TAPE/VIDEOのPLAY・RECが3系統という構成です。他にPRI OUT端子があります。金メッキされた端子はありません。

スピーカー端子は2系統。コンセントは3口あります。


ちなみに端子の間に、斜めに取り付けられているパーツは、REC OUT用のサイドスイッチです。

リアパネル


KENWOOD K-990Vのスペック

定格出力 130W+130W (6Ω)
110W+110W (8Ω)
高調波歪率 0.004% (定格出力時)
0.003% (1/2出力時)
0.004% (PHONO)
混変調ひずみ率 0.004%
周波数特性 1Hz〜180kHz (+0 -0.3dB)
CD、TUNER、TAPE、AUX
パワーバンドウィズス 5Hz〜70kHz
S/N比 108dB (CD、TUNER、TAPE、AUX)
88dB (PHONO MM)
70dB (PHONO MC)
ダンピングファクター 1000 (50Hz)
消費電力 265W
サイズ 幅440×高さ158×奥行420mm
重量 13.9kg











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