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YAMAHA AX-900 |
1986年 定価79,800円 |
YAMAHAのAX-900は、1986年10月に発売されたプリメインアンプです。SONYのTA-F333ESXの登場により、勃発したアンプの「798戦争」に、対応するために強力な物量を投入したプリメインアンプでした。 TA-F333ESXの登場以前の、このクラスのプリメインアンプのイニシアチブは、KENWOODのが握っていました。 YAMAHAをはじめメーカー各社は、たぶんKENWOOD KA-990Vあたりに対抗する内容やスペックで、次期アンプの開発を進めてたと思いますが、TA-F333ESXの内容と爆発的な売れ行きを見て、計画の変更を余儀なくされたのではないかと思います。→1986年の798アンプの比較 AX-900の内容もTA-F333ESXをかなり意識しています。強力な電源を搭載するなどしてTA-F333ESXを上回る出力を得たり、その一方で3バンド・トーンコントロールなど機能面でも差別化をはかったりしています。 翌年の1987年はYAMAHA創業100周年であり、AX-900も継続販売されることから「TA-F333ESXキラー」を目指したのかもしれません。しかしながら、セールス面ではTA-F333ESXや後継機のESXⅡに全く歯がたちませんでした。 要となる電源部はTA-F333ESXのS.T.D電源に対抗して、LiD(Low-impedance Drivability)電源を採用。TA-F333ESXよりもはるかに強力な350VA(333ESXは189VA)の電源トランスとTA-F333ESXを上回る大容量のコンデンサを搭載していました。 SONYの「スーパーレガートリニア」への対抗としては、パワー段で発生するクロスオーバー歪などを排除するため、入力信号に応じたリニアな増幅ができるALA(Absolute Linear Amplification)回路を採用しています。 コントロール部では最新のYAMAHAのアンプA-S700にも、装備されているコンティニュアス(連続可変)ラウドネスを搭載。またBass・Mid・Trebleの3バンドトーンコントロールも備えています。 その他にもトーンバイパス、CDダイレクト、ハイフィルター、などトーン関係の機能は重装備です。この辺りはオーソドックスなTA-F333ESXとの差別化が行われています。 イコライザーアンプは、ローノイズ・トランジスターを使用したリアルタイム・フォノイコライザーを搭載しています。 (音質について) 音にもTA-F333ESXの影響が見られ、従来のYAMAHAのアンプと違いパワフルさが信条。繊細さなどを求めてはいけません。でも他社のCDプレーヤーをつないでも、ピアノの音は「ヤマハビューティ」ぽくなるなど、YAMAHAらしいところは残っています。 それでもライバルのTA-F333ESXと比べると低音は負けてしまいますし、低・中・高音のバランス加減の良さも、TA-F333ESXのインパクトのある音の前では、逆に中途半端な感じになってしまいます。 「798戦争」に投入されただけあって、普通に聞く分には十分なレベルにまとめてられていますし、良いアンプだと思うのですが、何故かTA-F333ESXの前では影が薄くなってしまう印象です。 |
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(フロントパネル) | |||||||||||||||
AX-900のデザインは上部にプッシュボタンの入力セレクタ、下部にトーンコントロールやRECセレクタなどの7つのツマミを並べたもので、従来のYAMAHAの流麗なデザインと違い、無骨で力強い感じです。 |
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(シャーシ・内部について) | |||||||||||||||
シャーシはすべて鋼板製で、ほとんど防振対策はありません。トランスと巨大なケミコン(電解コンデンサ)が左手前にあるので、手で持つとわかりますが重量が変にかたよっています。 底板のインシュレーター(樹脂製)もフロントヘビーに対応したのか、四隅ではなく前がかりな配置になっています。 内部はトランスやパワー部が狭いスペースに押し込められているのとは対照的に、右側のシールドケースの中には小さなフォノ・イコライザー基板とセレクタスイッチがあるだけでほとんど空っぽです。プリ部はフロントパネルの後ろにあり、パネルによってトランスやパワー部からシールドされています。 右側のフォノ回路を収めたシールドボックスは、塗装が弱かったのか、サビが出てきている個体が多いです。 |
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(電源部) | |||||||||||||||
電源部は「コストは度外視」というくらいお金がかかっています。ここだけを見ると、現在の50万円クラスのプリメインアンプをも、凌駕してしまうような内容です。 LiD(Low-impedance Drivability)電源と名付けられプリ用、パワー用に分かれた独立電源となっています。内部配線には極太OFCケーブルやバスバー(ブスバー)を使用し、低インピーダンス化をはかり再生能力の向上をはかっています。 「GTトランス」と名付けられた電源トランスは、EIコアを磁気シールドカバーで覆ってあり、さらに内部に硅砂とポリブタジエン樹脂を充填し、音質に悪影響となる振動やリーケージフラックスを抑えています。重量はトランスだけで7.5kgあります。 このような構造のトランスは、現在では高級アンプの一部にしか採用されておらず、DENONのプリメインアンプ PMA-SX1のトランスも、同じコンセプトで作られています。 ※AX-900の定格出力は、PMA-SX1(50W+50W)の3倍もあるので、容量はAX-900のほうがはるかに上です。またバブル期のトランスはしっかりした物が多く、時価に直すとAX-900のトランスのコストのほうが、PMA-SX1よりも高いかもしれません。 平滑コンデンサは、SONYなど他社はもう少し小容量のものを4本使用していましたが、YAMAHAは「Digital Ready」と書かれたニチコン製・ネガティブ・ブラック(オーディオ用高級品)の71V・22,000μF(直径63mm)が2本。 巨大で大容量にも関わらず、ハイスピードかつ低インピーダンスという強力なコンデンサです。時価に直せばPMA-SX1のカスタムコンデンサは、こいつの半分の値段もしないでしょう。 電源ケーブルはOFC導体を使った品川電線製のGTコードで、直径7mmのキャブタイヤです。現在のアンプの付属コードは取り替えられることを前提にした安物が多いですが、これはしっかりとしたケーブルです。 |
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(パワー部) | |||||||||||||||
パワー部の回路は新しく開発されたALA(Absolute Linear Amplification)回路で、入力信号と出力信号をリアルタイムにチェック、比較して両方の信号がリニアになるように働きます。 出力段でのクロスオーバー歪みやスイッチング歪みが理論上発生せず、スピーカーからの逆起電力も吸収できるというものでした。 |
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(プリ部) | |||||||||||||||
メインボリュームは物量モデルといっても、貧弱(安物)です。このクラスでも90年代に入ると良いパーツが使われていきます。 フォノイコライザーは「リアルタイム・フォノイコライザー」というカッコ良い名前がついています。この時期の「798」アンプがすごいのは、いくらでも手抜きが出来るフォノイコライザーでも、そこそこしっかり作っていること。 特にAX-900の回路はパーツも多く、しかも電源部や他の回路から干渉を受けないように、シールドケースに収められています。オペアンプは三菱製のM5220を使用。 フォノイコライザーは1990年代に入るとCDが普及したため、10万円クラスのアンプでも簡素な回路が多くなります。 |
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(入出力端子) | |||||||||||||||
リアパネルの入出力端子で金メッキになっているのはCDだけです。他はPHONO、TUNRER、AUXにTAPEは2系統、DATが1系統あります。 またプリアウトとメインイン端子も装備しています。 |
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定格出力 | 150W+150W (6Ω) 130W+130W (8Ω) |
パワーバンド | 10Hz~50kHz (65W 8Ω) |
ダンピングファクター | 150以上 (1kHz 8Ω) |
周波数特性 | 20Hz~20kHz +0 -0.5dB |
高調波歪率 | 0.005% (MC) 0.003% (MM) 0.003% (CD・TUNER・TAPE・AUX) |
混変調歪率 | 0.002% (130W 8Ω) 0.003% (1W 8Ω) |
S/N比 | 70dB (MC) 86dB (MM) 105dB (CD・TUNER・TAPE・AUX) |
チャンネル セパレーション |
70dB以上 |
消費電力 | 260W |
サイズ | 幅435×高さ165×奥行416mm |
重量 | 17.5kg |
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