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KENWOOD DP−8020 1989年 定価80,000円

KENWOODのDP-8020は1989年10月に発売されたCDプレイヤーで、DP-8010(1988年・79,800円)の後継機です。

ライバル機はSONY CDP-X55ES、DENON DCD-1630/G、YAMAHA CDX-1030、SANSUI CD-α717D Extra、marantz CD-80など。
1989年の8〜9万円クラスのCDプレーヤーの比較

KENWOODは、1986年から始まったCDプレーヤーのハイビット競争(DACのbit数を増やす)には、どちらかというと無関心で、DACのビット数はあくまでもバーブラウンなど専門メーカーにお任せで、ひたすらシャーシーやメカの防振対策や電源対策などを一生懸命行っていました。

しかしハイビット化へのユーザーの関心は高いと見て(※1)、バーブラウンの最新の18bitDACである「PCM1801」に、独自の2bitDACを付け足して、20bitDAC機として発売したのが、DP-8020やDP-7020(55,000円)などです。


1989年当時、まだCDプレーヤー用の20bitDACは無く、マルチビットDACでは18bitDACがメインでした。この18bitDACをハイビット化するために、Victor、Technics、YAMAHAなどが採用していたのが、ディスクリートDACという方法です。

これはDAC本体とは別に、オペアンプなどを使用してディスクリート構成の、2bit〜4bitのDACを作って付け足す方法で、設計・製作が簡単でコストも安いというものでした。

こうして出来たDACは、スペック上では確かに20bitや22bitでの変換が可能ですが、オペアンプのDACは本体の18bitDACより変換精度が劣り、温度変動にも弱いという問題がありました。そこでKENWOODは2bit分を変換するDACを、オリジナルのハイブリッドICとして開発し、これらの問題を解決しています。

またDACで発生するゼロクロス歪みや2SBの歪みを解消するため、変換誤差を補正する回路「リアルステップ・フルビットD/Aコンバーター」を搭載して歪みを減少させています。

さらにD/A変換前にジッターを取り除く「NEW DPAC(デジタルパルス・アクシスコントロール)」と、D/A変換後にジッターを取り除く「DDTBC(デュアルデジタルタイムベースコレクター)」により、微分直線性を改善し微小レベルの再生能力を高めています。

シャーシーやメカの振動対策には、外部からの振動に加えて内部で発生する振動にも対応する「NEWマルチ・インシュレーション・システム」を搭載しています。

しかし時代の流れは早く、同時期に発売されたライバル機のうちSONY、YAMAHA、SANSUIは1bitDACを搭載しており、DP-8020は雑誌からの評価は高かったものの、セールス的には成功とはいえませんでした。そのため後継機は作られず、1983年のDP-1100から引き継がれてきたシリーズはDP-8020で幕を降ろすことになります。


※1 当時のハイビット競争は現在の「ハイレゾ」信仰とまったく同じ状況です。オーディオの世界は「歴史はくり返す」というのが本当の話で、過去には1982年のCDの発売時や、1999年のSACD発売時にも同じことが起きています。
いずれもメーカーやアホな評論家が話を作りだし、無知なメディアがそれに乗っかるという形で生み出されています。



(音質について)
18bit+2bitの20bitDACですが解像度はとても良く、透明感も十分にあり定位も良く音場も広いです。高音のツヤは少なめで、中低音は締まっています。ただ低音は小型スピーカーでは問題無いものの、フロアタイプのスピーカーのようにキチンと低音が出るものでは、ややドローンとした感じがあります。

解像度・透明感・音場では現在の24bitや32bitDACの搭載機を上回る部分もあります。そういう意味では「現代的」なサウンドです。その代わり80年代・90年代の特徴である「線の太さ」「腰の強さ」というところはやや希薄です。ジャンルとしてはクラシックやジャズ向き。

だいたいカタログに書いてある宣伝文句は当てにならないものも多いですが、DP-8020はメーカーの言うとおり、小レベルの再生能力が本当に高く、天板を外して聴くとより実感できます。
他のCDプレーヤーでは再生できない音も聴こえて、オーディオ的には申し分ないのですが、音楽を聴くとなるとバランスが悪くなるなどいろいろと問題が出てきます。
そこでKENWOODがとった方法は、重い天板によりプレーヤー全体をダンプし、音を少しデッドな方向に振ることでフラットな音造りをしています。

再生能力という点から見れば良く出来たプレーヤーで、機械的には「高性能」と言っても良いかもしれません。後はアンプやスピーカーとの組み合わせによって、その能力をどこまで引き出せるかという感じで、価格以上の音も出ますがハードルもあるというプレーヤーです。





(フロントパネル)
デザインはDP-8010から一新されて、センタートレイとなりました。フロントパネルには10キーやプログラム用のボタンは無く、最低限の操作ボタンだけで現在のCDプレーヤーと変わりません。
プログラムはリモコンから行うことになります。その他にはディスプレィのON/OFFボタンがあります。



動画の音はビデオカメラの内蔵マイクで録音しているため、音質は良くありません。


(内部について)
シャーシは前後のパネルをつなぐビームが4本があり、メカや基板などはこのビームに取付られています。
底板は1.8mmの1枚板の鋼板ですが、メカの下はアクセスパネル用の大きな開口部があります。底板より天板のほうがしっかりとしており、1mm厚の制振鋼板を2枚重ねた構造になっています。
インシュレーターはサスペンション方式ではなく、特殊弾性樹脂を使った普通のタイプとなっています。
実測重量はカタログ値よりも重い10.3kg。

内部はいわゆるセンターメカ(センターレイアウトメカニズム)となっています。ピックアップ・ドライブメカとケースに入った電源トランスと電源回路が中央にあり、左側がサーボなどのデジタル系の回路。右側はオーディオ回路の基板ですが手前側に一部デジタル回路があります。基板はPCBインシュレーターによりフローティングされています。

このレイアウトはDP-7020も同じで、メカニズムの重心とCDプレーヤー全体の重心を一致させることにより、外部振動に強くなるというものです。センターメカはDP-7040、DP-7050と引き継がれますが、何故かDP-7060になると元の左側にメカ、右側に基板というレイアウトに戻してしまいます。そしてまたDP-7090でセンターメカが復活します。

デジタル回路とオーディオ回路はDP-7020と共通で、DP-8020はシャーシーの奥行があるので、出力端子の部分が別基板となっています。
言いかえればDP-8020とDP-7020の主な違いはシャーシーにメカとフロントパネルぐらいで、DP-7020はDP-8020と同じ回路を使うことで開発コストを抑えるとともに、競争の厳しい5万円クラスで優位に立とうとしたのかもしれません。


天板 底板


(電源回路)
電源回路は樹脂製のケースの中とデジタルとオーディオ用の基板に分かれてあります。電源トランスは別巻線で、回路としてはデジタルが4系統、オーディオ側も4系統の独立電源回路となっています。

トランスの上に逆さまに取り付けられている基板にフィルターコンデンサなどがあり、ELNA製の10V・2200μFが4本、25V・1000μFが2本が使われています。
電源コードは直径6mmのキャブタイヤコードです。

電源トランスと電源回路 ELNA 10V・2200μF

オーディオ基板の電源回路 デジタル基板の電源回路


(デジタル回路 サーボ・信号処理・システムコントロール)
サーボの制御回路は「スーパー・オプティマム・サーボコントロール」という名前がついていますが、以前のDP-1100SG、DP-8010、DP-X9010などと同様にKENWOODが作っているのはドライバーの部分だけで、肝心のサーボ制御を行っているのはSONY製のチップ「CXA1244S」です。
つまりカタログに書かれているサーボゲインの調整やゲインの切換、キズやホコリへの対応やトレースの安定性などもSONYのチップがコントロールしており、いわばSONY製のサーボ回路です。

また信号処理回路のチップもSONY製でRFアンプ「CXA1081S」、EFM復調・エラー訂正など信号処理用「CXD1165Q」が使われています。この「CXD1165Q」はオーディオ回路側の基板の先頭部に設置されています。
デジタル回路 サーボ制御 SONY CXA1244S

RFアンプ SONY CXA1081 信号処理 SONY CXD1165Q


(オーディオ回路)
D/Aコンバータはバーブラウンの18bitDAC「PCM1701P」です。KENWOODはこれにMSBと2SBの歪みを専用回路で補正して、直線性を高め歪みを減らした「リアルステップ・フルビットD/Aコンバーター」としています。

PCM1701Pはカレントセグメント(アナログ電流セグメント)方式のDACです。カレントセグメントは後に登場するPCM1702やPCM1704にも搭載され、現在のPCM1796ファミリーにもその発展形が搭載されています。

この方式はMSB〜LSBのバイナリーに合わせて、重みづけされたカレントセグメント(トランジスタとエミッタ抵抗で構成)でスイッチングし、それを組み合わせてアナログ出力にしています。この方法によりDACに入ってくる18bitのデータ(CDの16bitをデジタルフィルターで18bitに拡張)を、加工要素を入れずにストレートにD/A変換することが可能となりました。

残りの2bit分のDACが入っているのが「KAG01」というハイブリッドICです。ハイブリッドICといっても実はいくつかのICをまとめてモジュラー化したもので、時間軸の調整を行いジッター成分を取り除く「NEW DPAC(デジタルパルス・アクシスコントロール)」も入っています。

この「PCM1701P」と「KAG01」はシールドケースの中にあります。シールドケースといっても上部や横が開いており、前にあるデジタル回路(信号処理)からの輻射ノイズだけを、遮断するためのものかもしれません。

デジタルフィルタは20bit・8倍オーバーサンプリングのNPC「SM5813AP」。オペアンプはI/V変換やローパスフィルターにJRC 5532が使われています。下級機のDP-7020は回路は同じですがオペアンプはJRC 4580と4565となっており、DP-8020とは音色を変えているようです。
電解コンデンサはELNAのオーディオ用が使われています。

オーディオ回路 シールドケース

DAC バーブラウン PCM1701P ハイブリッドIC KAG01

デジタルフィルター NPC SM5813AP オペアンプ JRC 5532


(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップ・ドライブメカはDP-8010やDP-X9010と同じものです。
防振構造は1.6mmの鋼板製のメカベースをシャーシ本体からインシュレーターでフローティングし、さらにピックアップやスピンドルが取り付けられている「メカシャーシー」を、コイルスプリングと弾性ゴムによるハイブリッドインシュレーターでフローティングしています。

このメカシャーシーとピックアップのマウントにはダイキャストを使用しており、とてもしっかりとしたものとなっています。
ピックアップは新たにSONY製の「KSS-152A」を採用。スライド機構はリニアモーターで高速アクセスが可能です。

トレイのローディングはワイヤーを使用した仕組みですが、ワイヤー自体は伸びや切れる心配はあまりないものの、モーターからワイヤーへの動力の伝達にはゴムベルトが使用されているので、これが劣化するとトレイの開閉ができなくなります。


(メカのメンテナンス・修理)
トレイ開閉用のゴムベルトはメカの裏側にありますが、底板を外してやればメカの裏側にアクセスできます。(底板中央のアクセスパネルだけを外すのより簡単に交換できます。)
使われているベルトは2本。どちらもサイズ同じで、直径は約3.5cm、太さは約1.8mmの角ベルトです。

ピックアップ・ドライブメカ ピックアップ・ドライブメカ

メカの裏側
ダイキャスト製のメカシャーシー
ピックアップ SONY KSS-152A

トレイ開閉用のゴムベルト


(出力端子・リモコン)
リアパネルのアナログ出力はFIXED(固定)、VARIABLE(可変)の2系統。デジタル出力端子は同軸が廃止され光学の1系統だけになっています。他にはシンクロ端子があります。専用リモコンはRC-P8020。
出力端子の下には輸送時にピックアップを固定するためのネジを取り付けるネジ穴があります。

出力端子と輸送用ネジ

上:DP-8020(1989年) 下:DP-8010(1988年)



DP-8020のスペック

周波数特性 2Hz〜20kHz
高調波歪率 0.0013%以下
ダイナミックレンジ 100dB以上
S/N比 113dB以上
チャンネルセパレーション 110dB以上
消費電力 20W
サイズ 幅440×高さ132×奥行381mm
重量 10.1kg (実測重量 10.3kg)















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