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KENWOOD DP−1000

     1985年 定価69,800円



KENWOODのDP-1000は1985年11月に発売されたCDプレーヤーです。上位機種のDP-2000(149,800円)と一部のパーツを共有する兄弟機で、FM fanのダイナミック大賞の部門賞に選ばれています。

ライバル機はSONY CDP-70、DENON DCD-1100、YAMAHA CD-550、Aurex XR-Z40、ALPINE/LUXMAN D-103など。


1985年ごろは年に2回、CDプレーヤーの新製品の発売時期がありました。この年の2月に発売されたmarantz CD-34(59,800円)が大ヒットしたため、秋に発売される各メーカーの普及価格帯のモデルは、大きな影響を受けることになります。

CD-34は最高の内容の物を最低の価格で販売するという、赤字覚悟の「戦略モデル」であり、価格は据え置き型のCDプレーヤーで一番安く、その内容は当時の各社のフラグシップを凌駕するようなものでした。

まず各社が行ったのは価格対策で、YAMAHAとAKAI、Pioneerは価格面で優位に立つために、初めて5万円を切るモデルを投入します。1984年の最も安いモデルが79,800円だったので、1年で3万円以上価格が下がったことになります。またAurex(東芝)は春モデルにMk2という型番をつけて、価格を1万円値下げしてCD-34より安くするなどして対抗しました。

問題はコストを下げる方法で、例えばテクニクスはポータブルプレーヤー「SL-XP7」(49,800円)で開発した技術を、SL-PJ11やSL-P500、SL-P300などの全てのモデルにも投入して、コストダウンをはかるなどの対応をしています。


KENWOODの対抗策は、CD-34と同じミニコンポサイズで同じ価格のDP-770を発売。さらに1万円高い「698」のクラスに、他社の9万円クラスに匹敵する内容を持つDP-1000を投入しました。いわばDP-1000はKENWOODの戦略モデルです。


DP-1000のデザインはフラグシップのDP-2000と同じで、他社の高級機に引けを取らないものです。
同じ価格帯のDENON DCD-1100やYAMAHA CD-550などが、トラック数と時間を切り換えて使う4ケタし表示の小さなディスプレィだったのに対し、DP-1100は時間とトラックやインデックスを、同時に表示できる大型のものを装備していました。

シャーシもDP-2000から受け継いだ頑丈なの構造で、メカやサーボ回路なども共通の部分が多くあります。さすがにコストの関係でオーディオや電源回路は違いますが、価格ほど離れた内容の差にはなっていません。

電源部は別巻線のトランスに、3端子レギュレーターやツェナーシャントレギュレーターを使用した独立電源で回路間の干渉を抑えています。
オーディオ回路のD/Aコンバータは16bitの積分型を搭載。また金属被膜抵抗や銅スチロールコンデンサーなどのパーツを使用して音質向上を図っています。

ピックアップはトレース性能が高い3ビーム方式を採用。メカはインシュレーターによりフローティングされ、外部振動の影響を受けないようにしています。

この頃はプログラムプレイやリピート、メモリーなどの機能も「売り」のひとつで、上級機ほど充実していました。DP-1000はDP-2000の機能をほぼそっくり受け継いでおり、つまり15〜16万円クラスのプレーヤー並みの機能を持っていました。

KENWOODはこの年に9万円クラスのプレーヤーを、発売しませんでしたが、DP-1000はDP-900(104,800円)の後継機であり、もともと9万円クラスの商品として企画されたものの、CD-34の売れ行きを見て値付けをし直したのかもしれません。

高調波歪率やS/N比といったスペックは、一部の9万円クラスのプレーヤーを上回っており、国産機の中では高いコストパフォーマンスを持ちました。それでもまだCD-34の内容には到底及ばないものでした。



(音質について)
中低音重視で野太い音を聴かせてくれます。それに比べて高音は少し控えめ。レンジや音場は広くはありませんが立体感は悪くはありません。普及機ということで音にメリハリを付けていますが、これがなかなか絶妙で音のキレを産み積分DACらしい感じがしません。

デジタルフィルターは搭載していませんが、ダブル・デジタルフィルターのDENON DCD-1500(99,000円)やSONY CDP-303ES(99,800円)と比べても、それほど遜色のない音だと思います。

意外とジャズにあうサウンドでトランペットやサックスも良く、ベースのゴリゴリ感も出てきます。ロックはパワー感が出てOK。ボーカルやクラシックはイケるソフトもありますが、全体的には少し厳しいかもしれません。

長岡鉄男はダイナミックテストの記事で、DP-1000について「荒削りだが生気あふれる再生音」「ある種のソースに対してはDP-2000をも上回るパフォーマンスを見せる」「同社比でも他社比でもCPは高い」などと評しています。



(フロントパネル)
フロントパネル上級機のDP-2000と同じで、インバードスイッチ(位相反転)が無いだけです。従って16曲のランダムプレイやメモリーリピート、リザーブキー、スペースキー、オートポーズ、全曲・メモリーリピートなどの機能もほとんど同じです。
10キーはダイレクト選曲では無く、数字を押してからPLAYボタンを押すタイプ。またCDの読み込み時にはTOTAL時間数が表示されません。(1985年ごろにはよくあったタイプ)



動画の音はビデオカメラの内蔵マイクで録音しているため、音質は良くありません。



(シャーシと内部について)
シャーシは鋼板製で前後のパネルを連結するビーム(はり)が2本あり、これにメカも取り付けられています。さらにこのビームと右側のサイドパネルを結ぶ補強パネルでさらに強度をアップしています。

この構造はDP-2000と同じですが、DP-1000の底板の厚さ1mmなのに対し、DP-2000では3mm厚の鋼板を使用して、さらに剛性や強度を高めています。
コの字型の天板も1mm厚の鋼板で防振材はついていません。脚はインシュレーターではなく樹脂製の小型の脚がついています。

内部は左側がピックアップドライブメカと電源トランス。右側の基板は手前がシステムコントロールやサーボ、信号処理などのデジタル回路。真ん中が電源回路、一番奥がオーディオ回路となっています。


底板 樹脂製の脚



(電源回路)
電源トランス17VAで3巻線のものを使用し、デジタル用電源からオーディオ用電源への干渉を減らしています。
この電源トランスの隣にはELNA製のノイズフィルターがあり、外部から電源にのってやってくるノイズを低減しています。

回路自体は独立10電源構成となっており、そのうちオーディオ回路には3端子レギュレーターで4電源、ツェナーシャントレギュレーターで3電源を割り当て、DACをはじめ各パートに安定した電源供給しています。
電解コンデンサの容量や本数から見ても強力な電源部とはいきませんが、積分DACを十分に機能させるためにうまく作られた電源回路です。

電解コンデンサは15V・4700μFなどELNA製のオーディオグレードが使われています。電源コードは細い並行コードです。

電源トランスと
ノイズフィルター(手前)
電源回路

松下(現パナソニック)製の
3端子レギュレーター
AN7805F
ELNA製のコンデンサ



(デジタル回路 サーボ・信号処理・システムコントロール)
サーボと信号処理回路は集積化によりメインのパーツは3つだけとなっており、いずれもSONY製のパーツです。このSONY製の回路(チップ)はとても優秀で、KENWOOD以外にも多くのメーカーのCDプレーヤーに搭載されています。

サーボ制御を行うチップは「CX20108」で、EFM誤り訂正用が「CX23035」、そして8bitのハイスピードCMOSスタティックRAM「CXK5816M-12L」が使われています。
サーボ回路の調整用ボリュームはメカの隣にあり、トラッキング・ゲイン、フォーカス・ゲイン、フォーカス・バランスなどの5つがあります。

システムコントロール回路ではNEC製のCMOS・4bitマイコン「μPD7516HCW」や三洋製のNMOS・4bitマイコン「LM6416E」などを使用し、多彩なプログラムプレイやディスプレイの表示などをコントロールしています。

信号処理 SONY CX23035
RAM SONY CXK5816M-12L
サーボ制御 SONY CX20108

サーボ回路の
調整用ボリューム
マイコン
NEC μPD7516HCW



(DAC・オーディオ回路)
オーディオ回路のD/AコンバーターはSONY製の16bit積分型DAC「CX20152」で、SONYのフラグシップ機・CDP-552ESDなどでも使われているDACです。

デジタルフィルターは未搭載ですが、ローパスフィルターに、ムラタ製の9次のチェビシェフ・アクティブ型を採用して、高域のノイズを抑えています。

DACから後ろは330Ω以下のローインピーダンス出力回路とし、周波数特性の変化や歪を減少させ、マグネットリレーによるミューティングで、リニアリティも確保しています。

コンデンサはELNA製、オペアンプは「JRC 4560D」、他に誤差1%以内の金属被膜抵抗や、銅スチロールコンデンサーなども使用されています。

オーディオ回路 オーディオ回路

DAC SONY CX20152 茶色の薄いものがムラタ製のLPF。真ん中がJRCのオペアンプ 4560D。ミューティングリレーはOMRON G5A-237P。



(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップ・ドライブメカはDP-2000と同じで、追従性の良い3ビームのピックアップ「MLP-3C」を搭載。

スピンドル側のクランパーにコイルバネは無く偏心吸収機構は付いていませんが、真鍮削り出しのガイドになっています。

ピックアップとスピンドルモーターのマウント部は、インシュレーターでフローティングされ外部からの振動による影響を防いでいます。スライド機構はギヤ式(ウォームギヤ)です。

スピンドルモーターとスレッド(送り)モーター、トレイのローディング用のモーターはいずれも三協精機製です。


(メカのメンテナンス・修理)
KENWOODのこの手のメカでは、チャッキングアームがトレイの開閉メカと一体になって動くため、トレイのローディング用のベルトが少し伸びてしまうと、アームが下りたままとなりトレイが開閉できないというトラブルが発生します。
このベルトはピックアップドライブメカの下にありますが、底板を外すと簡単に交換できます。

ピックアッブのスライド機構のギヤはグリスが劣化して、粘度が高くなっているので、冬場などはトラブルを起こす可能性があります。クリーニングをして再度グリスアップのがオススメ。

ディスクを読みとらない場合で、サーボ回路のボリューム調整でも直らない時は、ピックアップの高さ調整がズレている可能性があります。高さはメカの裏のネジで調整できます。

ピックアップはDP-2000と共通です。


ピックアップとスピンドル トレイ用の
ローディング・ベルト



(出力端子)
出力端子はアナログ固定が1系統のみで、他にサブコード出力端子を搭載しています。
出力端子

(上)KENWOOD DP-1000 (下)KENWOOD DP-2000


KENWOOD DP-1000のスペック

周波数特性 4Hz〜20kHz
高調波歪率 0.0015%
ダイナミックレンジ 95dB以上
S/N比 96dB以上
チャンネル
セバレーション
95dB
消費電力 13W
サイズ 幅440×高さ88×奥行313mm
重量 6.0kg (実測6.0kg)




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