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VICTOR DD-5

     1980年 定価59,800円


Victor DD-5は1980年11月に発売された、メタル対応でダイレクトドライブの「DDシリーズ」のカセットデッキです。

59,800円の価格帯というと当時の売れ筋で激戦地帯。ライバル機も多くAIWA AD-F700R、AKAI GX-F25、Aurex PC-X45AD、DENON DR-F1、DIATONE DT-6、Lo-D D-E70M、marantz SD50、ONKYO TA-650、OPTONICA RT-D5、Pioneer CT-570、SANSUI SC-D55、SONY TC-FX6、TEAC V-9、Technics RS-M250、TRIO KX-70、YAMAHA K-8など。

カタログを見ると高性能で高音質をうたう高級機に目が行きますが、懐具合で実際に買うのは中級機というのは今も昔も同じです。

Victorは1978年のKD-A5以降、この価格帯でのリーディングカンパニーでしたが、メーカーにとっても、量販モデルは売上を稼ぐためには重要な商品。当然、ライバルメーカーも黙っている訳ではなく、新技術・新機能を搭載した新商品を次々に発売していました。

そこで再度、ライバルメーカーに大きなアドバンテージを付けるために、発売したのがDD-5とも言えます。

KD-A5の時はメタルテープへの対応とロジックメカが他社との差別化になりましたが、DD-5では「音の濁りを無くすために、回転系の精度を上げてワウフラッターを向上させる」ということで、上級機と同じ「パルスサーボDDモーター」を搭載し、他社のフラグシップ機を凌ぐ、ワウ・フラッター 0.021%を達成しました。
※テープデッキのワウフラッターは、JIS規格も定められている重要なスペックで、当時はユーザーがデッキを購入する際のポイントにもなっていました。


Victorがこのワウフラッターを達成するために利用したのは、高い評価を得ていたレコードプレーヤーの技術です。

モーターは「コッキング」と呼ばれるモーターの回転ムラを、解消するためにコアレスとし、さらに振動を発生させないために4相8極のブラシレス・スロットレスのモーターとなっています。

これに全周積分型で204極102パルスのFG(周波数発電機)を、取り付けて高い精度で回転数を検出し、サーボ回路で制御して正確な回転を生み出しています。

メカはフルロジックコントロールの2モーターメカで、キャプスタンのフライホイールには複合材を使用して、変調ノイズを抑えています。


ヘッドは上級機の3ヘッドとは違い録再ヘッドですが、新たに開発されたニューSAヘッドです。従来のSAヘッド6層ラミネートのパーマロイコアを使用していますが、積層コアは薄いほど音質が良いとされおり、ニューSAヘッドは倍の12枚の積層コアを使用しています。

この1980年にはPioneerが「リボンセンダストヘッド」。TDKは「アモルファスヘッド」(コバルトアモルファス)を開発しており、SONYもレーザーアモルファスヘッドの開発を公表していたので、ニューSAヘッドはこれらのヘッドへの対抗策だったと思われます。

消去ヘッドは有名なカタログの紹介サイトでは、SAヘッドとなっていますが、実際に使われているのは、ダブルギャップ・フェライトヘッドです。


ノイズリダクションシステムは、ビクター独自の「ANRS」と「SuperANRS」を搭載しています。「ANRS」は録音時に音楽信号の高域を持ち上げて録音し、それを再生時に元に戻してフラットにすることで、テープのヒスノイズのレベルだけを低げてS/N比を改善するものです。
「ANRS」はドルビーBタイプと互換性がありますが、「SuperANRS」はドルビーとの互換性はありません。

その他にはレックミュートやオートリピートができるメモリーオートリワインド。留守録用のタイマースタンバイ機構、リモートコントロール端子(リモコンは別売)などを備えています。



(音質について)
音はメリハリ重視で元気の良いサウンドです。他社のこのクラスのモデルにも言えることですが、当時は洋楽ブームだったので、ロックやダンスミュージックに寄せた音づくりになっています。

※よく80年代の洋楽ブームと呼ばれますが、実際には1977年のイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」や、ビージーズの「サタデー・ナイト・フィーバー」によって、洋楽ファンがどっと増えていますので、そこでブームに突入していたといえます。

全体の解像度やレンジ、高音の伸びなどはDD-7に比べてかなり劣ります。サウンドがズンドコ指向のせいか、ワウフラッター0.021%の恩恵はあまり感じられません。

スペックだけみると「コスパ最強」(昔の言い方だとハイC/P)ですが、音質のほうはなかなかそう行きません。



 (DD-7の修理・メンテナンス)
DD-7、DD-5で多いトラブルが、再生、録音、早送り、巻き戻しボタンを押しても、すぐに停止するという症状です。原因はリールとカウンターを結ぶゴムベルトの伸びや断裂で、KD-Aシリーズでもよく起こるトラブルです。

DDシリーズはメカの駆動にゴムベルトは使用していないので、この部分の心配は少ないのです。カウンターの部分には回転検知センサーがあり、カウンターの回転が止まると、テープの再生・録音や早送り、巻き戻しによるテープの終了したと判断して、メカをオートストップさせています。
そのためゴムベルトが伸びたり、切れたりしているとカウンターが回らないために、センサーが作動してマイコンがメカをストップさせます。

解決方法はこの部分のゴムベルトを交換してやることで、これによりほとんどは解消するようです。

ビクターのカセットデッキに使われているゴムベルトは丈夫なものが多いですが、まだ大丈夫なものでも、今後のことを考えればポリメイトなどの保護剤を塗布したほうが良いと思います。


もうひとつは、外部出力・ヘッドホン用のスライドボリュームのトラブルで、ガリが発生したり、片方のチャンネルの音が出なかったり小さいなどのトラブルです。
症状が軽いものはボリューム本体に、接点復活剤を内部に吹きかけて、ボリュームを何度かスライドさせてやると回復しますが、それでもダメなものはボリュームを分解しての修理・クリーニングや交換が必要となります。

またメンテナンスとして是非やっておきたいのは、アジマスの調整と基板上の半固定抵抗(調整ボリューム)のクリーニングなどがあります。

カウンターのゴムベルトとセンサー ライン出力・ヘッドホン出力
兼用のスライドボリューム


(フロントパネル)
フロントパネルのデザインは左側にレベルメーター、右側にカセットホルダーという部分は変わりませんが、見た目は以前と大きく変わりました。

当時のカセットデッキのはやりで全高を抑えてスリム化し、スイッチ類をプッシュボタンにして、パネルのフラット化が進められています。またVUメーターが無くなり反応速度が速いFLのレベルメーターが採用されました。


ディスプレィのFLレベルメーターは、18セグメントで1セグメントは20ドットの表示となっており、ピークホールド機能(最大2秒間)が付いています。
その横にはANRS・スーパーANRS、メタルポジションのインジケータがあります。


レイアウトは一番左側に電源スイッチとタイマースタンバイスイッチ。OUTPUTのスライドボリュームは外部出力とヘットホンの兼用。そしてヘッドホンとマイク端子。

その隣にはラインインの切り替えスイッチ、ANRS・スーパーANRSのON/OFFスイッチ。テープセレクタはメタル、クローム(VX)、ノーマル(SF)の3段で、オートセレクタではなく手動による切り替えです。そして録音レベルのボリュームがあります。

カセットホルダーの右側には、回転式のテープカウンター、リセットボタン、メモリーオートリワインドのスイッチ。その下には再生・録音・早送り・巻き戻し、RECミュート、カセットホルダーの開閉ボタンなどがあります。




(シャーシと内部について)
基本的には上級機と同じで、キチンとしたシャーシにより剛性を高めています。違うのはフロントパネルで、DD-7以上が鋼板とアルミによる2重構造なのに対し、DD-5は樹脂とアルミの組み合わせになっています。

左側のサイドビームはふつうのコの字型ですが、右側のサイドビームは上面が広げられて、その上にメカやトランスが固定されています。トランスの部分は円形のプレスが入っていますが、トランスが大きいための処置で、プレスによる強度の向上も兼ねています。

フロントパネルのデザインは似ていますが、キャビネットのサイズはDD-7の幅450X高さ110×奥行380mmに対し、DD-5は幅420X高さ110×奥行290mmとだいぶ小さいです。

内部は左側に録音回路、再生回路、電源回路があるメイン基盤。右側にはメカ、サーボ回路、電源トランスがあります。


底板をはずした内部


(電源部) 
電源トランスはこのクラスとしては大型で、容量は26V・20.5VAです。

電源回路も簡略化されており、トランスの別巻線をそのまま活かして、ディスプレィ専用電源とメカ・回路用電源に分けています。

使われている電解コンデンサは東信製で、水色は「TS」、赤色は「LT」です。電源コードは細い並行コードです。

電源トランス 電源回路


(システムコントロール・ディスプレィ)
録音、再生、巻き戻しなどのロジックコントロールの回路は、メカの後ろにある制御回路基板にあります。ICは三菱のテープデッキ用システムコントローラ「M54886P」です。

ディスプレィの後ろにある基板はFLメーターの表示用とヘッドホンアンプの基板です。FLメーター用には、松下製の18点ピークホールド付デュアル蛍光表示管駆動回路「AN6870N」が使用されています。
またヘッドフォンアンプとメーターアンプには、NEC製のオペアンプ「μPC358C」を使っています。

もしFLメーターのレベルが大きすぎる、小さすぎる、左右がズレている場合は、このメーター基板の半固定抵抗で調整できます。再生時におかしい場合は、ここと再生基板にある出力用の半固定抵抗で調整します。

FL表示用の基板


(ヘッド)
録再ヘッドは新たに開発されたニューSAヘッドです。従来のSAヘッド6層ラミネートのパーマロイコアを使用していますが、ニューSAヘッドは倍の12枚の積層コアを使用しています。

消去ヘッドはダブルギャップ・フェライトヘッドです。

ヘッドのアジマスの調整はカセットホルダーの、前面パネルをはずして行います。

ヘッド・キャプスタン・
ピンチローラー
SA録再ヘッド(右)と
2ギャプフェライト消去ヘッド(左)


(メカ・サーボ回路)
メカは上級機と同じもので、金属製で堅牢なメカシャーシです。メカの駆動はソレノイド(アクチュエータ)を2個使用しておいます。

キャプスタン用のモーターはDD(ダイレクトドライブ)モーターで、これも上級機と同じ4相8極のブラシレス・スロットレス・コアレスのモーターです。当時のカセットデッキとしては、間違いなく最高級のモーターです。リール用はDCモーターです。

キャプスタンにはサーボ用のマグネットが取り付けられており、それをホール素子で磁気を読み取ります。ホール素子では磁気をパルスデータに変換し、モーターの回転状況を検知します。
この当時、マグネットの数が多いほど正確に検出できるということで、204極のマグネットが取り付けられています。

またキャプスタンには、回転を安定させるためのフライホイールが取り付けられていますが、ガタ(遊び部分)による振動も問題となります。そのため振動を抑える複合材を使用して、振動が起因となる変調ノイズを抑えています。

カセットホルダーの開閉はパンタグラフ式ですが、ゴムパッドを押し付けてソフトイジェクトするようになっています。このためゴムが摩耗するとロケットオープンになってしまいます。


メカの後ろにはサーボ回路の基板があります。DD-7以上はクォーツPLL・FGサーボ回路ですが、DD-5は普通の電子制御FGサーボとなります。

上記のようにホール素子でパルスデータ化された回転情報を、サンプルホールド回路によるF/Vコンバータで電圧に変換します。これを基準周波数と比較し、もしズレがあれしば直ちに補正します。

PLL回路がないのでサーボロックできませんが、それでもDD-7と同じワウフラッター0.021%ですので、いかにモーターが優秀であるかわかります。

また温度上昇によるトルクむらの防止のため、ダブル差動コントロール回路を使ったオートバランス回路により、駆動力を一定に保っています。



メカ メカ

サーボとロジックメカの制御基板。


(録音・再生回路)
録音・再生回路はDD-7に比べると、パーツがかなり少なく簡略化されています。

ノイズリダクションシステムは「ANRS」(Automatic Noise Reduction System)と、スーパーANRSを搭載しています。DD7ではANRS用のIC「AN7362N」を、録音回路と再生回路に左右独立で合計4個搭載していましたが、DD-5では録音回路と再生回路で兼用しているため、2個となっています。

ANRSが登場したのは1972年で、基本的な仕組みはドルビーBタイプと同じです。録音時に音楽信号の高域を持ち上げて録音し、それを再生時に元に戻してフラットにすることで、テープのヒスノイズのレベルだけを低げてS/N比を改善するものてす。
スーパーANRSはANRSの改良型で、高域のクリッピング・レベルを高める機能を追加して、周波数特性や歪率も改善しています。

ヘッドアンプ、録音回路、ANRS回路、マイク回路などアンプ部はオールDC構成になっています。これによりカップリングコンデンサを減らして、ノイズや歪などを減少させています。

ヘッドアンプとマイクアンプはディスクリート構成。再生回路の半固定抵抗は出力レベルとイコセイザーの2つがあり、それぞれ調整が可能です。

電解コンデンサは東信製です。

録音・再生回路 ANRS用IC AN7362N


(入出力端子)
入出力端子はラインイン、ラインアウト(可変出力)が各1系統です。その他にリモートコントロール端子があります。

リモコンは別売で、ワイヤードリモコン R-50(7,000円)とワイヤレスリモコンユニット RM-606です。

リアパネル


1980年に発売されていたカセットテープ
TDK AD(2代目)
マイルスのCMと「つき抜ける高音の冴え」というキャチフレーズで有名だった「AD」の2代目で、1979年〜1981年まで販売されました。

超微粒子磁性材「ニュー・リニアフェリック」を採用して、全帯域にわたる大幅な低ノイズ化と、高域特性を向上させています。

価格はC-60が550円。C-90が850円など。


maxell UD(2代目)
2代目の「UD」は1979年〜1981年まで販売されました。

分散・配向性に優れ、粒度分布も良い新磁性体「New ピュア・クリスタル ガンマ酸化鉄」を採用。従来のUDと比べて出力は約1.5dBの向上、ダイナミックレンジは約2dBアップしています。高精度カセットハーフを採用。

価格はC-60が550円。C-90が850円など。



Victor DD-5のスペック

周波数特性 -20VU録音
30Hz〜16kHz(±3dB)メタルテープ
30Hz〜16kHz(±3dB)クロムテープ
S/N比 60dB(ANRS オフ・メタルテープ)
ANRS ONで10dB改善
ワウ・フラッター 0.021%(WRMS)
歪率 0.5%
消費電力 26W
外形寸法 幅420X高さ110×奥行290mm
重量 5.9kg












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