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ONKYO C-777

     2005年 定価70,000円



ONKYOのC-777は、2005年11月に発売されたCDプレイヤーです。海外仕様は「DX7555」でブラックモデルもありました。アメリカでの価格は699ドルです。

当時はCDプレーヤーやユニバーサルプレーヤーの、エントリーモデルでも、SACDの再生可能機が増えていた時期で、中級機でCD専用というのは異例の存在でした。


ONKYO独自のノイズを低減する「VLSC」を搭載し、上級機のC-1VLと同じくWolfson製のDAC「WM8740」と、高精度のスーパー・プリシジョンクロック(周波数偏差±1.5PPM)を搭載しています。

C-777が特徴的なのは±40ステップのクロック周波数の微調整や、位相の切換えが可能なことで、さらにデジタルフィルターのモード(スローロールオフとシャープロールオフ)も切り換えできるので、アンプやスピーカーに合わせた設定もできます。


市販されているクロックジェネレーターには、周波数偏差が±0.00005PPMなどというもありますが、一般のCDプレーヤーに搭載されているクロックは±50PPM、ハイエンドでも±25~30PPMです。

内蔵クロックに力を入れていたエソテリックのSACDプレーヤー K-05(55万円)でも、クロックは±3PPMですので、C-777の±1.5PPMというのは、クラスを無視した掟破りの「アイテム」といえるかもしれません。

とはいってもCDプレーヤーの音質は、クロックの精度だけで決まるものではありません。DACやオーディオ回路、シャーシー(インシュレーター含む)、メカ部分の鋼性の方が重要ですし、サーボ回路の性能や電源回路の能力も大きく影響します。

MP3ファイル(48kHZ・320kbpsまで)の再生に対応しており、メディアは音楽CDの他にCD-R、CD-RW、CD-Extraが可能です。デジタル入力端子やUSB端子はないので、DAC代わりに利用することはできません。


(音質について)
9万円のSACDプレーヤーから、SACDの再生機能をとれば7万円ぐらいということで、価格をつけたのでしょうか。

どちらにしても7万円のCD専用プレーヤーというのは、ニッチを狙ったような製品ですが音はキッチリとしています。

ONKYOらしいWolfsonのWM8740の解像度とVLSCによる透明感をいかした音です。全体としては柔らかめのサウンド。
高音は独特の艶がありソースによってはちょっとキツくなることも。中音はハリがあり、ボーカルもほどよく前に出てきます。低音は引き締まっています。

ジャンルはクラシック向きでジャズもOK。ロックがメインの人にはちょっと向かないと思います。マランツやDENONのサウンドとは明らかに違いますし、もちろんSONYでもYAMAHAとも違う、ONKYOのサウンドという感じがします。


DENON DCD-1500SEmarantz SA8400と比べても、遜色はない音です。低音はC-777のほうが良くでます。その上のクラスのYAMAHA CD-S1000と比べても一部上回る部分もあります。

最近のSACDプレーヤーは、DSDを処理するチップなどのノイズがかなり大きく、音質にも影響を与えているので、CD専用のメリットは十分発揮していると思います。



反面、チューニングがキチンとされすぎていて、いろいろと神経質なところもあります。そのためにクロックの調整や、デジタルフィルターの切り換えなどがついているとも言えなくもないのですが。

どちらにしても、ただアンプとつないで音を楽しみたいという人には、向かないかもしれません。ある程度、スピーカーなどのセッティングやケーブルの交換ができるような人であれば、C-777のフィルターの切替やクロック調整を使ってシステム全体のセッティング、チューニングを楽しめると思います。

C-1VLの弟分のハズが、何故かC-1VLよりも「マニアック」に仕上がってしまったというプレーヤーです。最近のオーディオ雑誌では、やたら値段の高い物や海外製品のことを「趣味性」が高いというように言っていますが、本当の意味での趣味性があるCDプレーヤーだと思います。

ところで福田雅光がC-777のレビューで「10万円以上の音質」と評していたが、当時10万円のプレーヤーはC-1VLしかなかったと思いますが、C-1VLより音が良いということでしょうか?






(フロントパネル)
フロントパネルはVictorのXL-V1-Nのように、真ん中がくびれたデザイン。上級機のC-1VLは高さが低くスリムな感じでしたが、C-777はEIトランスを搭載しているために、普通の高さになっています。操作ボタンはすべて丸い形状で統一されています。

ディスプレィの表示は必要最小限でシンプルすぎて物足りないくらいです。ディスプレイの表示切り替えボタンは本体とリモコンに有りますが、ディマー(明るさ・消灯)はリモコンのみで操作できます。またメモリーやリピート、ランダム再生などもリモコンからの操作となります。

クロック周波数、位相、デジタルフィルター(スローロールオフとシャープロールオフ)の切り換え、デジタル出力のON/OFFを行うには、リモコンのSETUPボタンを押すか、本体のストップボタンを長押しします。

フィルター切替の表示 クロック調整の表示

動画の音はビデオカメラの内蔵マイクで録音しているため、音質は良くありません。



(シャーシと内部について)
シャーシは鋼板製でC-1VLのようなアルミパネルはありませんが、C-777の方がC-1VLより2kg以上も重くなっているため、重量による制振効果は上です。またインシュレーターは、真鍮の削り出しと少しコストがかかっています。

試しにシャーシのあちこちやメカまわりに防振ゴムを貼り付けてみましたが、ほとんどの場所で音がデッド方向になります。バブル時代のCDプレーヤーと比べると、頼りないシャーシですが、このシャーシありきでキチンとチューニングをしたことが、うかがえます。

内部は左側にはメインのトランスと小さなトランスが載った電源回路があります。メイン基板は1枚の大きなもので、左側がデジタル系の回路、右側がオーディオ系の回路となっています。

素人目には電源、デジタル、オーディオの各基板を独立させた方が干渉が少ないのではと、思いますが、大量のノイズを発生するマイコンはオーディオ回路から離してトランスのそばに配置するなど、かなりノイズ対策を意識した設計がされています。

音楽信号は最短経路にするかわりに、サーボ制御やシステムコントロールなど、デジタルノイズが混入する信号は逆に遠回りさせてオーディオ回路から離す工夫がされています。

デジタル回路(デジタルサーボやシステムコントロールなど)のパーツは、基板の裏側に装着されているので、基板の表側にあるのは一部の電解コンデンサのみです。そのため基板はスカスカのように見えてしまいます。

オーディオ回路はしっかりとパーツが投入されており、そのパーツ数はDCD-1500SEよりも多くて、特に電源を安定供給するための電解コンデンサは数が多いです。


真鍮削り出しインシュレーター


(電源回路)
電源トランスはEIトランスで、デジタル、メカとオーディオに分けた別巻線になっており、各回路のノイズの干渉を低減しています。

EIトランスはトロイダルトランスより、リーケージフラックス(磁束)が多いなどのデメリットもありますが、力強い音が出せるともいわれています。この他に電源スタンバイ用の小さなトランスがあります。

オーディオ用の電源回路には、ELNA製のTONEREX 25V・22000μFのコンデンサが2本あり、大容量のコンデンサを使って電源を安定させています。TONEREXは複合電解紙やリード線に無酸素銅線を使用した低歪設計のオーディオ用コンデンサです。

電源コードは2Pのインレット。付属の電源ケーブルはよくある普通のコードなので、市販の良い電源ケーブルに付け替えると音は格段に良くなります。

内部の電源コードには、フェライト製のノイズフィルターが装着されています。これは外部からのデジタルノイズの減衰にも、効果があるだけでなく、CDプレーヤーから外へ出て行くデジタルノイズにも効果があります。

よく電源関係の話でノイズフィルターがついていると、音が悪くなるという人がいますが、カタログに書いていないだけで1980年代・90年代のCDプレーヤーにも、ノイズフィルターが内蔵されたプレーヤーがたくさんあります。

それだけ昔から家庭用の電源が汚れている訳なのですが、今はパソコンや携帯電話の充電器などによって、さらに汚れているということになります。

EIトランス スタンバイ用の電源回路

オーディオ用の電源回路 ノイズフィルター


(サーボ回路・システムコントロール回路)
デジタルサーボやシステムコントロール用の回路は基板の裏側にあり、表面実装用のパーツがたくさん使われています。

システムコントロール用のマイコンはNEC製の16bitのものが2つあります。オーディオ回路から離した電源トランスの近くにあり、マイコンからの放射ノイズがオーディオ回路へに与える影響を少なくしています。しかも、このNEC製のマイコンはYAMAHA CD-S2000/1000などで使われているルネサス製のマイコンより、放射ノイズが格段に少なくオーディオ機器に向いています。

デジタルサーボは定評のあるSONY製です。サーボ制御と信号処理を行うチップは「CXD3014」で、MP3のデコードなども合わせて行う、シグナルプロセッサだと思います。

サーボのコントロール信号をモーターやピックアップのアクチュエーターに伝えるために、ROHM製の4チャンネルBTLドライバー「BA5947FP」が使われています。

SONY CDX3014 NECのマイコン
μPD78F4225GC


(DAC・オーディオ回路)
D/Aコンバーターは24bit・192kHzのWolfson・ウォルフソン「WM8740」を搭載しています。

WM8740は当時、WolfsonのフラグシップとなるDACです。

このWM8740の内蔵デジタルフィルターには補間機能があり、CDの16bit信号を24bitに拡張しています。それをΔΣ(デルタシグマ)変調しています。ローパスフィルター(D/A変換用)が内蔵されており、電圧出力となっています。

1つのチップに4個のDACを内蔵しており、L側(+ ポジティブ)と(- ネガティブ)の2出力、R側(+ ポジティブ)と(- ネガティブ)2出力の差動出力を行います。

C-1VLは、WM8740を左右独立で2個搭載していますが、「デュアル・デファレンシャルモード」を使うことで、片側4出力(+が2出力と-が2出力)による差動回路になっていると思われます。

WM8740のデジタルフィルターは、直線位相ハーフバンドのデジタルフィルターで、スローロールオフとシャープロールオフの切り換えが可能です。また位相反転機能も内蔵しています。


DACから出力された信号は差動合成回路を通り、その後にONKYOのCDプレーヤーの標準装備だった特許技術の「VLSC」回路で処理されます。

従来のノイズ対策はというと、光伝送やK2インターフェースなどデジタルフィルターと組み合わせて、D/A変換前のデジタル回路で行うことが多かったのですが、VLSCはD/A変換後にローパスフィルターといっしょになってノイズを除去するのが特徴です。

VLSCの仕組みは実に簡単で、低次のローパスフィルターと同じくらいの部品点数でコストもかけずにできます。ONKYOの説明ではVLSCにベクトル信号発生器があるように書かれていますが、実際にはそのような物は無く、オペアンプと抵抗、コンデンサなどで構成されており、いわゆる昔からあるアクティブ型のローパスフィルターです。

特許の出願内容も高周波成分(ここにノイズが含まれます)の、減衰率の高い「低域通過フィルター(ローパスフィルター)」となっています。回路と全く関係のない名前をつけたり、それを後付けでそれらしい説明をするのはオーディオ業界の「悪いクセ」です。
VLSCの特許 →VLSCの改良に関する特許

VLSCは差分演算回路と電圧電流変換回路、ローパスフィルターから構成されています。D/A変換後の信号を元に差分演算回路(オペアンプ)で、入力信号から出力信号(フィードバックされたもの)を減算して差分信号を生成します。

これをローパスフィルターを通して電圧電流変換回路(こちらもメインはオペアンプ)で電流に変換し、やはりローパスフィルターを通った元の入力信号と合算してオーディオ信号として出力します。また周波数帯域の減衰や位相レベルの変化も起こらないように工夫されています。

VLSCで使われているオペアンプはTI製のNE5532AP。オーディオ回路で使われているコンデンサは、オーディオ用のELNA製のTONEREXやSILMICⅡなどです。


※WolfsonではΔΣ(デルタシグマ)変調のことを、構造からΣΔ(シグマデルタ)変調と読んでいます。ちなみにWolfsonは2014年にシーラス・ロジックに買収されました。


オーディオ回路 D/Aコンバーター
Wolfson WM8740

スーパー・プリシジョンクロック VLSC回路



(スーパー・プリシジョンクロック)
WM8740のようなΔΣ(デルタシグマ)型のDACは、マスタークロックに依存した動作を行うために、クロックの安定性が重要となります。

C-777でクロックを供給するのが、低ジッターで調整機能付きの周波数偏差±1.5PPMというスーパー・プリシジョンクロックです。

WM8740とスーパー・プリシジョンクロックは、上級機のC-1VLにも搭載されていますが、C-1VLではデジタルフィルターの切替やクロックの調整機能は使えなくしてあります。

C-777ではそれを「どうぞお使いください」とユーザーに開放している訳です。ただしクロック調整を使いこなすのは難しいです。

また、回路自体はクォーツとインバータを組み合わせた単純な物ではなく、きちんとしたディスクリート構成となっており、低ジッター化のために、ノイズ対策もしているようです。


クロックで重要なのがクロックジッターの問題です。

クロックジッターについては、オーディオ雑誌を中心に、たくさんの間違った解説がされてきています。

クロックジッターは時間軸の誤差特性を表すものですが、「タイムインターバル・ジッター」「ハーフピリオド・ジッター」「ピリオド・ジッター」などがあります。

DACの変換精度は、波形(矩形波)の立ち上がりのタイミングで決定されるため、この中ではピリオド・ジッター(周期ジッター)の影響が大きくなります。

このため、以前は単純に周波数精度が高い=音が良いと多くの人が考えていましたが、実際にはクォーツやルビジウムを使用した、マスタークロックからは、本来発振すべき周波数以外にも周波数が出ています。
(発振器のメーカーは公表していますが、オーディオメーカーは口をつぐんでいます。)

オーディオ機器の中で発生する、いろいろなノイズが発振回路に干渉して、位相ノイズが発生します。クロックの位相ノイズは、DACの中でも位相ノイズを作り出し、音質悪化の一因となります。


※DENONが位相雑音を削減したクロック発振器を開発・搭載したり、ハイエンド用の単品クロックジェネレーターで、増幅器や電源を強化して、ノイズの低下をはすっているのは、このためです。

スーパー・プリシジョンクロック



(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップ・ドライブメカでは上級機のC-1VLが、ブリッジ・タイプのクランパーだったのに対し、C-777ではアルミパネルを使用したトップカバータイプとなっています。

トップカバータイプの方がメカブロックの全体の強度が向上し振動対策には有効ですし、またピックアップやギヤにホコリがつきにいというメリットもあります。メカベースは樹脂製ですが割としっかりとしたものが使われています。

ピックアップはSONY製のKSS-213CLで、ピックアップのスライドはラック&ピニオンのギヤ式です。対応メディアが多いとはいえ、TOC(ローディング時の読み込み)、曲のアクセスともに遅いです。

トレイはメーカーの説明では「精密トレイ」と書かれていますが、これはメーカーの宣伝文句。普通の樹脂製のトレイで、補強用の金属棒が取り付けられていますが、トレイ自体が薄く指で押すと簡単にたわんでしまいます。

ピックアップ・ドライブメカ ピックアップ・ドライブメカ

トレイ トレイの裏側


(出力端子)
アナログ出力は固定1系統です。カタログには書いてありませんが、キチンと切削痕があるので真鍮削り出しです。

デジタル出力端子は光2と同軸1の3系統。他にはオンキョー製品との連動させるためのRI端子があります。

専用リモコンの型番はRC-625C。

出力端子

リモコン RC-625C

ONKYO C-777のスペック

周波数特性 2Hz~20kHz
高調波歪率 0.0027%
ダイナミック
レンジ
100dB
S/N比 111dB
消費電力 16W
サイズ 幅435×高さ111×奥行405mm
重量 8.9kg





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