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ONKYO Integra A-819RS

1983年 定価113,000円



ONKYOのIntegra A-819RSは、1983年10月に発売されたプリメインアンプです。

ライバル機はSANSUI AU-D707G Extra、KENWOOD KA-1100、YAMAHA A-950、DENON PMA-960、Technics SU-V8X、NEC A-10など。
1983年の10~12万円クラスアンプの比較


(1980年代初めのアンプのトレンド)
1970年代後半のアンプのトレンドは、DCアンプ化とA級とB級動作のいいとこ取りを狙ったAB級アンプでした。

1980年代に入りAurexはクリーンドライブ、TRIOはΣドライブで、スピーカーで発生する逆起電力による歪を打ち消したり、動的特性を改善するため、スピーカー側の入力端子までNFBをかける方法を開発しました。

AB級アンプでは入力信号に応じて、バイアスを変化させる回路が進化して、Technicsはマイコンによって制御する「コンピュータドライブ ニュークラスAアンプ」を登場させました。

電源部ではNEC A-10がリザーブ電源を搭載。Pioneerは低・高2系統の電源部を持つダイナミック・パワーサプライ。後のバランス電源となるサンスイのグラウンドフローティング回路、そしてTRIOのDLDと強力な電源を搭載するようになっていました。



(Integra A-819RSについて)
A-819RSはA-819GTRの改良型です。おおまかに言うとA-819GTRにターボフィルター回路を取り付けて、新たにインプットセレクタに「CD」を追加したのが、A-819RSです。

カタログの宣伝文句としては前年(1982年)に、発売されたCD(コンパクトディスク)などの、デジタルソースに対応し、スピーカーの逆起電力に対応するスーパーサーボ・インテグラル方式や、電源部にはスーパーターボ方式を採用し、デルタターボ回路とターボフィルターの働きで、動的ダイナミックレンジ拡大した。と書かれていました。


しかし、実際の中身は宣伝文句とは裏腹に、実にオーソドックスな内容のプリメインアンプになっています。

出力段は他社が、バイアス可変式のAB級アンプを採用したのに対して、ONKYOは「リニアスイッチング方式」と呼ばれる、バイアスを固定したB級アンプです。


スーパーサーボ・インテグラル方式は、ONKYO独自のNFB(Negative Feedback)回路です。従来の出力側のプラスとマイナスの両方から、独立したサーボ帰還をかける「W・スーパーサーボ」に加えて、新たに電流増幅段の特性を改善するためにフィードバックをかけています。
これにより、歪やノイズの低減、周波数特性のフラット化、インピーダンスの低下などをはかっています。


電源部のスーパーターボ方式は、従来からあるデルタターボ電源と、新たに搭載されたターボフィルター回路を組み合わせたものです。

デルタターボ電源はダイオードをデルタ状に結線した回路で、平滑コンデンサに効率よく充電を行い、トランスの電圧変動を小さくして、変調雑音を防止するというものです。

ターボフィルター回路はカタログには、ノイズを発生させるトランスと増幅部を、純電気的に分離して動的ダイナミックレンジを20dB拡大すると書かれていますが、そんなだいそれたものではなく、オーディオ機器によく搭載されているノイズフィルター回路です。

1980年代のONKYOのアンプには、次から次へと新しい回路が搭載されましたが、1年~2年で消えていったものも少なくありません。


PHONOイコライザは、MC対応のストレート・ハイゲインイコライザと、パワー部だけの2アンプ構成となっています。

トーン回路は「ダイレクトトーン」と呼ばれる回路です。この回路はトーンアンプを使わず、パッシブ素子のみで構成されているため、音質の劣化が少ない回路となっています。ボリュームにはマルチ摺動子をもつ低歪率アッテネーターが使われています。


弟分のA-817RSとは値段の差はありますが、内部はほとんどが共通です。違うのはコンデンサなどの容量とPHONOイコライザぐらいです。

当時のプリメインアンプのラインアップとしては、A-820RS (175,000円)に次ぐ、上から2番目という存在でしたが、3年後に勃発する「798戦争」の、物量アンプよりも中身は貧弱です。コストとしてはSONY TA-F333ESXYAMAHA AX-900のほうが、1.5倍ぐらいかかっているかもしれません。



(音質について)
ONKYOらしい透明感のある音です。ウォームトーンであまり刺激的なところは出てきません。ただレンジや音場は少し狭く、解像度や細部の再現も物足りなさがあります。

高音は伸びがありますが、解像度のせいかキレがもう少し足りない。低音も出ますが、締まりがやや悪いです。

良くも悪くも「中庸」な音ですが、そのおかげでクラッシック、ジャズ、ロックとオールラウンドに使えるアンプです。

3年後に登場する79,800円の物量機、SONY TA-F333ESXYAMAHA AX-900と比べると、レンジや解像度、音の緻密さやスケール感などで、A-819RSは完敗です。物量の差が音にも出ているような感じがします。



(フロントパネル)
A-819GTRにサイドウッドを大きくして、フロントパネルの下にもウッドが追加されました。これにより高級感はアップしています。

フロントパネルはA-819GTRと共通ですが、新たにCD入力が追加されたため、配置替えが行われています。

インプットセレクタでは「DAD/AUX」が無くなって「CD」が追加されました。AUX入力の場合は「TUNER」ボタンを押してから、メインボリュームの下にあるTUNER/AUX切り替えスイッチを操作します。

TUNER/AUX切り替えスイッチの場所にあった、SOFTNESSスイッチは「SUBSONIC FILER」の場所に移動。これによりSUBSONIC FILERの20Hzと15Hzの切り替えは廃止になりました。

他にはスピーカーの切り替え、ディフィート付トーンコントロール、バランス、PHONOの2系統の切り替え、カートリッジロード、RECセレクタがあります。

MODEスイッチはSTEREOはNOMALとREV、MONOはL、R、MONO(L+R)になつています。




(シャーシ・内部について)
シャーシは鋼板製です。天板はコの字型で、側面にはサイドウッドと厚めの鋼板でできたスタビライザーが取り付けられています。

この天板は薄めの鋼板で上部は通気口がたくさん開いているため、全く強度がなくフニャフニャの状態です。当然、厚めの板を使えば、こんなことにはならないのですが、上部を軽量化するためにこうしたのかもしれません。


内部は左側に電源部、中央にパワー部(出力段)、ヒートシンクをはさんでプリドライバー段。右端にフォノイコライザー回路があります。

フロントパネルの後ろに、プロテクト回路やプリ部の基盤があります。


天板 スタビライザー

インシュレーター



(電源部)
電源トランスは大きな金属ケースに入ったEIトランスです。容量は43.5V・214VA。このトランスは振動吸収用のシートを介して、シャーシに取り付けられています。

平滑コンデンサはニチコン製のネガティブブラック 63V・20000μFが2本。


電源部のスーパーターボ方式は、従来からあるデルタターボ電源と、新たに搭載されたターボフィルター回路を組み合わせたものです。

デルタターボ電源はダイオードをデルタ状に結線した回路で、自動車のターボチャージャーと同様に、プラス側とマイナス側の平滑コンデンサに効率よく充電(チャージ)を行う回路です。
これにより充電時のトランスの電圧変動を小さくして、変調雑音を防止するというものです。

ターボフィルター回路はカタログには、ノイズを発生させるトランスと増幅部を、純電気的に分離して動的ダイナミックレンジを20dB拡大すると書かれていますが、そんなだいそれたものではなく、オーディオ機器によく搭載されているノイズフィルター回路です。

フィルター回路にはコンデンサと抵抗を使ったCR回路と、コイルとコンデンサを使ったLC回路がありますが、ターボフィルターの回路図を見ると、この2つを組み合わせて、いいとこどりを狙ったようにも見えます。
ただあまり効き目が無かったのか、1年で取りやめとなってしまいました。

1980年代のONKYOのアンプには、次から次へと新しい回路が搭載されましたが、1年~2年で消えていったものも少なくありません。

電源トランスと電源回路 ニチコン製20000μF X2

デルタターボ電源 ターボフィルター回路



(パワー部)
出力段は他社が、バイアス可変式のAB級アンプを採用したのに対して、ONKYOは「リニアスイッチング方式」と呼ばれる、バイアスを固定したB級アンプです。

B級アンプはA級よりもトランジスタの飽和領域までの余裕があるため、増幅による出力は大きくなります。また電力消費、発熱も少なくできます。

デメリットはクロスオーバー歪(スイッチング歪)が発生するため、音質が悪化することです。本来のB級アンプではバイアスをかけませんが、実際のオーディオ用アンプでは、小出力時の歪が大きいために、少しバイアスをかけて、動作点をA級寄りに変更しています。

それでもA級やAB級アンプに比べると、トランジスタがリニア(直線)な出力ができる領域から外れるため、リニアリティ補正回路によって、クロスオーバー歪を減少させています。
スイッチング歪みに対しては、スイッチング歪を大幅に低減したHigh fTパワートランジスタの、採用によって対応しています。

回路の構成から見るとYAMAHAがB-5に搭載した、リニアトランスファ回路に近いものかもしれません。


スーパーサーボ・インテグラル方式は、ONKYO独自のNFB(Negative Feedback)回路で、歪やノイズの低減、周波数特性のフラット化、インピーダンスの低下などに効果を発揮します。

出力側のプラスとマイナスの両方から、独立したサーボ帰還をかける「W・スーパーサーボ」を進化させたもので、新たに電流増幅段の特性を改善するために、電流増幅段へ補正回路による正・負帰還をかけています。


スーパーサーボはONKYOのアンプの基幹となる技術でしたが、Aurexのクリーンドライブ、TRIOのΣドライブは、スピーカー側の入力端子まで含めてサーボ帰還をかけようとした回路で、理論的にはNFBとして理想に近い回路でした。

ただし専用の検出用ケーブルが必要になるなど、配線の煩わしさからユーザーには不評な部分もありました。それに対してONKYOは検出用ケーブルが無くても、逆起電力対策を行ったというのをアピールしたかったのかもしれません。


通常、スピーカーで発生した起電力(逆起電力)は、ケーブルを通ってアンプに戻ってきます。アンプの中では電源電圧を揺さぶったり、増幅回路に影響を与えて音質を悪化させるといわれています。

アンプの中ではいろいろな箇所で歪が発生する要因があり、カタログの説明のように、NFBがスピーカーの逆起電力による「時間差ひずみ」だけを狙い撃ちするようなことはできません。

またONKYOのカタログでは、Rチャンネルのスピーカーから再生された音が、空中を伝わってLチャンネルのスピーカーに到達し、その音圧で振動板を揺さぶり、コイルが電流を発生させるとなっていますが、
実際には、アンプからの信号により駆動した振動版が、停止するまでコイルは発電を続けます。



出力段のパワートランジスタは、サンケンの「2SA1170」と「2SC2774」を、使ったプッシュプル(SEPP)となっています。


ヒートシンクはヘリボーンタイプです。軽量・省スペースなため、ONKYOやLUXMANのアンプなどで使用されました。
ヘリボーンはニシン(herring)の骨(bone)という意味で、文字どおり魚の骨に似た形状から呼ばれています。


初段・プリドライバー部 ドライバー段・出力段

出力段のパワートランジスタ
サンケン「2SA1170」と「2SC2774」
ヒートシンク



(プリ部・フォノイコライザー)
トーン回路は「ダイレクトトーン」と呼ばれる回路で、トーンアンプを使わずに、パッシブ素子のみで構成して、音質の劣化を少なくしています。ボリュームにはマルチ摺動子をもつ低歪率アッテネーターが使われています。


CDが発売されたといっても、ユーザーのメインソースはまだレコードという時期。そのためフォノイコライザーはしっかりとした回路になっています。

回路はMC対応のストレート・ハイゲインイコライザと、パワー部の2アンプ構成で、カートリッジロードは、MCが3~10、10~40、100の3段階。MMが47kと100kの2段階です。

フォノイコライザーアンプ メインボリューム




(入出力端子)
入力端子はCD・TUNER・AUXにPHONOが2系統、TAPE(PLAY・REC)が2系統です。他にPRI OUT端子があります。金メッキされているのPHONO端子のみ。

スピーカー端子は2系統。コンセントは3口あります。


リアパネル


ONKYO A-819RSのスペック

定格出力 110W+110W (8Ω)
高調波歪率 0.007% (定格出力時)
0.005% (1/2出力時)
0.003% (PHONO MM)
0.015% (PHONO MC)
混変調ひずみ率 0.004%
周波数特性 AUX他
2Hz~100kHz (+0 -0.3dB)

PHONO
2Hz~20kHz (±0.2dB)
パワーバンド
ウィズス
5Hz~100kHz
S/N比 100dB (CD、TUNER、AUX)
80dB (PHONO MM)
70dB (PHONO MC)
ダンピングファクター 100 (8Ω)
消費電力 205W
サイズ 幅465×高さ158×奥行392mm
重量 15.5kg





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