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FiiO Q1 MarkII

2018年 オープン価格





FiiO Q1 MarkIIは、2018年2月に発売された、ハイレゾ対応のUSB-DAC付きポタアン(ポータブルヘッドホンアンプ)です。正式な型番はFQ1222。

発売当初は売り切れするショップが続出した人気モデルです。
オープン価格ですが、実売価格は15,000円ぐらい。


メーカーのFiiO(フィーオ)は2007年創業の中国のオーディオメーカーです。DAP(デジタルオーディオプレーヤー)やポタアンなどのポータブルオーディオ機器が主力で、「ポタアンブーム」の火付け役となりました。

しかし、2014年に世界初の完全ワイヤレスイヤホンが発売されると状況が一変。有線接続が基本のポタアンは徐々に活躍の場が減っていきます。

またポタアンはスマホの音が悪かったり、バッテリーの持ちが悪いために流行った部分もあったのですが、スマホの音が向上しバッテリーも大容量となっために、利用しない人が増えました。


オーディオメーカーとは不思議なところで、そのジャンルの製品がオワコンになりそうになると、高性能で低価格な商品を発売します。

1980年代前半 レコードプレーヤー・・・1982年にCDプレーヤー発売
1980年代後半 カセットデッキ・・・1987年にDATデッキ発売
1990年代 CDプレーヤー・・・1996年にDVD、1999年にSACD発売


FiiO Q1 Mark IIもAKMの32ビットDACを搭載し、PCMは384kHz/32bit、DSDは11.2MHzのネイティブ再生に対応。2.5mm 4極バランス出力を装備と、スペック的には2万円以上のUSB-DACに、ヘッドホンアンプとバッテリーが付いて、1万5000円とコスパの高いモデルです。


DACは旭化成エレクトロニクス (AKM) の32bit/768kHzのAK4452を搭載しています。

AK4452は2015年に登場したデルタ・シグマ型のDACで、「VELVET SOUND」アーキテクチャを採用。歪を低減するローディステーションテクノロジーやノイズを抑えるOSRDテクノロジを搭載しています。


クロック発振器は44.1kHzと 48kHzの2個搭載。音源のサンプリング周波数に合わせて切り替えることで、安定した精度のクロックを供給しています。


ヘッドフォンアンプの回路は、宣伝文句ではX7 Mark IIのAM3Aアンプモジュールと同じとなっていますが、AM3Aの出力は272mW(16Ω)です。
それに対してQ1 Mark IIの出力は112mW(16Ω)なので、同じではないと思います。何しろAM3Aの実売価格は16,000円とQ1 Mark IIよりも高いです。


ヘッドホンの低音を調整するBass Boost機能と、出力レベルを調整するGain切替機能が搭載されています。
Gain切替があるといっても、ヘッドホンの対応インピーダンスは16~100Ω。バランスヘッドホンは16~150Ωまでなので、注意が必要です。

電子ボリュームを採用しており、ギャングエラーは発生しません。


USBコントローラはXMOS XUF208を搭載。アナログ入出力端子は3.5mmステレオミニジャックです。端子は1つしかありませんが、信号によって自動的に切り替わります。


バッテリーの容量は1,800mAhで、充電時間は4時間。付属のケーブルを使用すればパソコンのUSBポートから充電できます。

ACアダプターはDC5V・2Aが推奨されていますが、microUSBケーブルが付いているACアダプターで2Aの物は少ないので注意が必要です。

連続再生時間は、アナログ入力のヘッドホンアンプとして使用した時は約20時間。USB-DACとヘッドホンアンプを使用した時は約10時間です。

Bluetoothは搭載されていません。そのためワイヤレスイヤホン・ワイヤレスヘッドホン、Bluetooth搭載のアンプやスピーカーとワイヤレスで接続はできません。

サイズは幅59mm x 奥行99mm x 高さ12.5mmで重量は約100gです。



(FiiO Q1 MarkIIの問題点)
2.5mmバランス出力端子を装備していますが、商品の説明には「バランス回路」という言葉が1つもありません。

内部を見るとAK4452は差動出力ですが、後ろの差動合成のオペアンプが1つしかありません。この時点でバランス回路では無くなります。いわゆるシングルエンドです。

左右の信号はローパスフィルターを通るまでGNDが共通で、ヘッドホン回路に入ったところで、オペアンプを使用してバランス回路に直しています。

この回路ではDAPなどでよく採用される、DACから出力までのフルバランス回路に比べると、かなり音質が低下します。



もうひとつの問題は3.5mmのヘッドホン端子の出力が低いことです。

ヘッドホン端子の出力はライン出力(可変出力)と共用になっており、Bass BoostをONにすると、ライン出力にもBass Boostがかかります。※あってはならないことです。
違いはたぶん出力インピーダンスだけ変えてあるだけだと思います。

ライン出力と共用にしたため出力を抑えてあり、Fiio E17の出力が290mW (16Ω)、 220mW (32Ω)なのに対して、Q1 Mark IIの出力は16Ωで112mW、32Ωで75mWと1/3程度しかありません。

これでは駆動力という点では普通のイヤホンはまだしも、マルチドライバーのイヤホンやヘッドホンの使用には厳しいかもしれません。

ちなみに2.5mmバランス出力は16Ωで240mW、32Ωで220mWで、E17と同程度の出力があります。

ちゃんと設計すれば3.5mmのシングルエンド出力も、バランス出力と同じレベルに出来ますが、コストを減らすために共用にしたのだと思います。つまり音質は二の次にしている訳です。






(付属品)
付属品は
Lightning to micro USBショートケーブル(MFi認証)
USB A to micro Bロングデータケーブル
3.5 mmL字型オーディオケーブル
シリコンバンド(2サイズ)
シリコンパッド
キャリングポーチ

iPhoneと接続するためのUSBケーブル(長さは12cm)は付属していますが、Android用のUSBケーブル (OTG)はありません。
別売のFiioの純正ケーブルでは、CL06(USB Type C - Micro USB)、ML06(Micro USB - Micro USB)があります。

スマホのイヤホン端子と接続する3.5 mmL字型オーディオケーブルは長さが10cmぐらいしかありません。

USB-DACとして利用する場合は、アンプやアクティブスピーカーなど、相手側の機器の端子に合わせたケーブルが必要となります。

Fiio CL06での接続



(USB ドライバー)
Windows用の最新のドライバーはFiioのサイトからダウンロードできます。



(音質について)
単純に言うとスペックは素晴らしいのですが、音はその数字には全くついてきません。

透明感と解像度が悪いです。高音の出方はまずまずですが、低音はそれほど出ません。締まりが悪くドローンとしています。バスブーストをONにしても、イヤホンによってはまだ弱く、「軽い低音」しか出ないです。

レンジが狭く音が平面的で痩せていています。ハイレゾ音源を聴いても滑らかさはなく、情報量も少ないです。


バランス接続を目当てに買った人もいると思いますが、圧倒的に良くなるという訳ではなく、音源によっては通常の3.5mm出力と変わらないものもあります。
(バランス出力は付いているが、オーディオ回路はシングルエンドのため)


もっとも、ポタアンという商品の性格上、何と比較するかによって評価は変わると思います。

スマホへの直差しでイヤホンを聴いている人から見れば、Q1 Mark IIを接続することで音が良くなった。音が大きくできるなどのメリットを実感できると思います。


他のポタアンと比べると駆動力が不足しています。これはボリュームをかなり回さないと、音が大きくならないことからも解ります。

一番簡単なのはヘッドホンを繋いでみることで、ヘッドホンアンプと言いながら、イヤホンを鳴らすぐらいのパワーしかありません。(上記のように出力を抑えているため)

駆動力が無いということは、イヤホンやヘッドホンの振動版を、ちゃんと鳴らせないということで、キチンとした音質が出ないということになります。


据え置き型のヘッドホンアンプに比べると、音の差は歴然で、FX-AUDIO- DAC-X4J(3,210円)にも負けます。Q1 Mark IIは音にスピード感が出ません。また音のキレの無さを実感します。


同じポタアンのFiio E17と比べて音に余裕が無く、E17で「ガツン」と来るところは、「カツン」ぐらい。ボーカルで声が伸びるところも伸びきらないなど、パワー不足を感じます。


DAPのONKYO DP-S1と比べると、同じバッテリー駆動ですが、明らかにイヤホンやヘッドホンの駆動力はDP-S1が上。音質もDP-S1が2ランクぐらい上です。


期待して買ったのですが、音は物足りないというのが印象です。
後継機のQ3が2020年10月に発売されましたが、Q1 Mark IIが終売となって1年もたたないうちに、中古価格が5,000円台に突入するとは思ってもみませんでした。
ポータブルオーディオは、バッテリーの寿命の問題があるとはいえ、値下がりが早いです。






(内部について)
ポタアン(ポータブルヘッドホンアンプ)という名前が付いていますが、内部の基板を見ると、ヘッホンアンプの部分は全体の1/4ぐらいで、残りはUSB-DACの回路です。

サイズが小さいため基板にはビッシリとパーツが並んでいます。


Q1 MK2のDACはAKM AK4452です。電圧出力なのでI/V変換回路はありません。DACの後ろには差動合成、ローパスフィルター、ライン出力回路があります。

差動合成用のはオペアンプは、TI製のOPA2322が1つです。つまりバランス回路では無いということになります。

ローパスフィルターはオペアンプは、TI製のオペアンブ OPA1662が1つです。その後ろにはライン出力用のアンプICがあります。このICで3.5mmのステレオミニとラインの両方の出力をしています。

3.5mmのステレオミニジャックにイヤホンをつないでも、同時にライン出力からも音が出ています。またライン出力もボリュームに連動する可変出力になっています。


ヘッドホン回路のオペアンプにはTI製の「OPA926」が2個使われています。このオペアンプの役目は、シングルエンドから差動回路に変換する(バランス回路にする)ことです。オペアンプの後ろには出力用のアンプICがあります。


USBのインターフェイスはXMOS XUF208が使用されています。PCMは32bit/768kHz 、DSD512(22MHz)をサポートしていますが、DACのAKM AK4452はDSD256(11MHz)までしか対応していません。

スイッチの制御などには、TI の 16 ビットマイコン (MCU) MSP430が使われています。



USB-DACではノイズが音質に影響を与えます。Q1 Mark IIの中にあるXMOSやMCUは内部で高速なスイッチング動作をするため、ノイズが発生します。

これらのノイズは電磁波であり、言い換えれば電波です。それが放射ノイズとなってオーディオ回路(アナログ回路)に侵入します。

Q1 Mark IIはサイズが小さいため、オーディオ回路とXMOSやMCUの距離が近いので、影響は少なくありません。

さらにUSBケーブルを伝わってパソコンのノイズも入ってきます。このノイズも、いろいろな経路でオーディオ回路に入りこみ、音質を悪化させます。


回路には当然、パスコンが配置されていますが、これらのノイズはバスコンだけでは取り切れません。

と言っても、これはQ1 Mark Iだけの問題ではなく、ポタアンやDAP、デスクトップ・オーディオに共通する問題です。



(電源回路について)
USB-DACは、いくら音質の良いDACを搭載していても、DACに安定した電気を送ることが重要で、この回路が不十分だと音質が劣化します。またヘッドホン回路も同じで、良い音を出すには電源回路がポイントになります。

Q1 Mark IIはDACやヘッドホンアンプをキチンと動かすための、電源回路が十分ではなく、
AKMのDACなどが実力を発揮できていません。


DACやオーディオ回路は大きな音や楽器がたくさん演奏されると、電流の消費量が増えます。でも音楽はそんなことは、おかまいなしで音が大きくなったり、小さくなったりします。楽器も合奏のパートもあれば、ソロのパートもあります。

USB-DACとヘッドホンアンプの回路では、これに合わせて、電流が増えたり減ったりを繰り返します。

音楽の旋律によっては急に増える場合もあり、その場合は電流が不足するので、ふつうは電解コンデンサから電気を流して補います。
ところがQ1 Mark IIには電解コンデンサがありません。

電流が不足すると電圧が下がるため、DACは正確なD/A変換が出来なくなります。音が途切れることはありませんが音質は悪化します。

またハイレゾ対応といっても、DSDなどの大きいファイルを再生した時、つまりデータ量が大きく、DACなどの消費電流が増えた場合のことまでは考慮されていません。


Q1 Mark IIではレギュレータなどを使用して、ICや回路ごとに電源を独立させることで、ある回路で電源が不安定になっても、他の回路に影響が及ばないようにしています。

実はこういう電源を安定化させる回路を装備すると、結果として電力消費が多くなります。
その一方でポタアンはバッテリーを長持ちさせる必要があります。

つまりポタアンでは音質を取るかバッテリーの時間を取るかの選択が発生します。もし両立する場合は大きなバッテリーを搭載する必要があります。そうなるとサイズが大きくなり、重くなり、価格も高くなります。

簡単に言うとQ1 Mark Iの回路は音質を犠牲にして、バッテリーを長持ちさせる設計になっています。



(AK4452について)
は2015年5月に登場したデルタ・シグマ型のDACで、正式な型番は「AK4452VN」です。

AK4452はマルチビットのデルタ・シグマ型DACです。

AKMの新世代オーディオデバイスに与えられる「VELVET SOUND」ブランドのDACです。
VELVET SOUNDは、サウンドフィロフィーを「原音重視」とし、 技術や性能を高めながら感性に響く音を求めていくというものです。


AKM独自のローディストーション (低歪み)・テクノロジーにより、S/N比は115dB、THD+N(全高調波歪み率+雑音)は-107dBを実現しています。

OSRD(Over Sampling Ratio Doubler)テクノロジーにより、帯域外ノイズを大幅に低減しています。

デジタルフィルターの切り替え機能を搭載しており、シャープロールオフ、スローロールオフなど5つモードを切り替えできます。


DACの中で信号はデジタルアッテネ―タ(DATT・SoftMUTE)を通り、PCMはデジタルフィルターを経て、DSDはDSDフィルターを通り、デルタ・シグマモジュレータに入ります。

デジタルフィルターは、32ビット・8倍オーバーサンプリングのFIRフィルターです。

デルタ・シグマモジュレータは3次のノイズシェイパーを搭載しているようです。

アナログ変換部(ローパスフィルター)はSCF(スィッチド・キャパシタ・フィルタ)です。アナログ変換と同時にシェービングノイズなどの除去も行っています。

出力は電圧型の差動出力です。




オーディオ回路 デジタル回路

DAC
AKM AK4452
USBコントローラ
XMOS XUF208

16 ビットマイコン (MCU)
TI MSP430
ヘッドホンアンプ用のオペアンブ
TI OPA926

ローパスフィルター用の
オペアンブ
TI OPA1662
出力用のアンプIC


FiiO Q1 MarkIIのスペック

入力データ
(USB)
(PCM)
16bit~32bit
44.1kHz~768kHz

(DSDネイティブ)
DSD64~DSD256
周波数特性 ライン出力
 6 Hz~80 kHz

ヘッドホン出力
 5 Hz~55 kHz
S/N比 ライン出力
 110dB

ヘッドホン出力
 109dB
全高調波歪率
+ノイズ
ライン出力
 0.003%以下

ヘッドホン出力
 0.003%以下
チャンネル
セパレーション
ライン出力
 90dB

ヘッドホン出力
 79dB
ヘッドホン
インピーダンス
ヘッドホン
 16~100Ω

バランスヘッドホン
 16~150Ω
ヘッドホン出力 ヘッドホン
112mW(16Ω)
75mW(32Ω)
11mW(300Ω)

バランスヘッドホン
240mW(16Ω)
220mW(32Ω)
45mW(300Ω)
バッテリー 1800mAh
充電時間 4時間
連続再生時間 10時間
ACアダプタ 推奨 DC5V/2A
端子はUSB micro B
サイズ 幅99×高さ12.5×奥行99mm
重量 101g





ヘッドホンアンプ
USB DAC
デジタルアンプ
DAP
イヤホン
ヘッドホン
オーディオケーブル
PCオーディオTOP
オーディオTOP





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