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YAMAHA CDX-590 |
1996年 定価38,000円 |
YAMAHAのCDX-590は、1996年に発売されたエントリークラスのCDプレイヤーです。 ライバル機はCEC CD2100、DENON DCD-790、KENWOOD DP-5060、marantz CD-63、ONKYO C-702、SUNSUI CD-α305、Pioneer PD-UK3、TEAC CD-3、Technics SL-PG460など。 CDX-590はCDX-580(1994年発売)を、マイナーチェンジしたもので、生産はフランスの工場で行われました。ただし内部のパーツは、ほとんどが日本製です。 当時はバブルの終焉とともに急激な円高が進み、1990年4月に1ドル159円だったのが、1995年4月には1ドル81円の円高(ドル安)となりました。 日本のCDプレーヤーは音が良いということで、世界中を席捲しており、ヨーロッパは重要なマーケットです。日本またはアジアからヨーロッパに輸出する場合は、ドル建てで行われるため、円高は利益に大きく影響します。 特に利益額の低いエントリーモデルは、現地で生産したほうが、円高の影響が少なく、利益が出るということになったのだと思います。もちろん関税や物流費が安くなるというメリットもあります。 また円高が進んだため、日本で販売する場合でも、ヨーロッパから「逆輸入」したほうが、コストが安いということになったようです。そのため価格はCDX-580に比べて、1,980円値下げになりました。 同じ時期にはTechnicsも一部のモデルを、ドイツの工場に生産を移管し、日本にCDプレーヤーを逆輸入しています。 (CDX-590について) DACはYAMAHAオリジナルI-PDM(Independent Pulse Density Modulation)を搭載しています。 I-PDMは1bit・DACで、パルス密度(頻度)を比較して、アナログ波形に変換するPDM(パルス密度変調・Pulse Density Modulation)を改良した方式です。マルチビットのDACで、問題となっていたゼロクロス歪みが、発生しないという特徴があります。 DACのICの中にはデジタルフィルターと、PRO-BITの回路も収められています。 PRO-BIT(Precise Reproduction of Original Bit)は、Pioneerの「レガートリンク」や、DENONの「ALPHAプロセッサ」と同じ波形再現技術と呼ばれるものです。 前モデルのCDX-580から採用されたものですが、CDX-580ではDSP(Digital Signal Processor)で、波形の再現処理で行うことから、「DSP方式」という名前が付けられていました。 1990年代にはレコーディングスタジオの機材も進歩しており、20bitのPCM録音やマスタリングが行われました。 これに対してCDは16bitですので、物理的に4bit分の情報が入らなくなります。そこで考えだされたのが、CDプレーヤー側でその入らなかった分の情報を付け加えて、信号を補正して出力するという技術です。 また、この技術では20bitから16bitデータにする際の、再量子化による誤差や、アナログ音源から16bitデータにする際の量子化誤差を補正する効果も生みだします。 一般的な波形再現技術では、CDの16bit信号の波形を使用して、CDになる前のデータを演算で推測する手法を用いますが、波形の曲線の変化率などを、人が決めてプログラムするため、必ずしも正確な波形になる訳ではありません。 YAMAHAのPRO-BITでは、約2万パターンの20bitの録音データを、メモリに記憶させて、これとCDの16bitデータを照合し補正するため、単純に推測するのよりも、正確な波形の再現が可能となります。 サーボ回路にはデジタルサーボを採用。電源部は低インピーダンスのLiD電源となっています。 カセットテープやMDへの、ダビングに便利なテーププログラム機能や、オートスペース機能、YAMAHAのカセットデッキとのシンクロREC機能(リモコンから操作)を搭載しています。 (音質について) 基本的にはCDX-580と同じ音です。高音こそYAMAHAらしさが感じられれますが、中低音はかなり物足りないです。解像度の悪さ、レンジの狭さ、平面的で軽い音など、典型的なエントリークラスの音です。 PRO-BITを搭載しているのに、レンジが狭いのかと思う人がいるかもしれませんが、同じPRO-BITを搭載しているCDX-993と比べると、CDX-590では本当にPRO-BITの効果が出ているのかと疑問になります。 そういう意味では、CDプレーヤーとしての基礎的な部分(メカ、シャーシ、電源、オーディオ回路など)が、しっかりしていないと、波形再現の効果がちゃんと出ないのかもしれません。 でも、もしかすると「素」のCDX-590の音はもっと悪くて、PRO-BITで、ここまで改善されているのかもしれません。 ちなみに、サービスモードに入ってもPRO-BITをOFFにすることはできません。 |
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(フロントパネル) | |||||||||||||||
CDX-580のデザインをそのまま使っています。上部は平面で中央から下部にかけて、緩やかな「R」がついた独特のデザインです。 フロントパネルにある操作ボタンは必要最小限です。プログラムなどはリモコンがないと設定できませんし、ディスプレィの時間表示の切り替えもリモコンしかできません。 |
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(シャーシと内部について) | |||||||||||||||
シャーシもCDX-580と同じ物です。 薄い鋼板でできており、どこを叩いても良く鳴ります。また軽量化のためでしょうか底や側面には、たくさんの穴があけられています。もちろんこれはシャーシの強度が下がり防振対策にはマイナスです。 バブル期のCDプレーヤーと違い、全く防振対策はされていません。インシュレーターも中空のプラスチック製です。 内部のCDX-580とCDX-590の違いは、デジタル光端子の増設など。 大型のジャンパー線の設置で配線パターンが変更され、一部のコンデンサの配置が変更になっていますが、たぶん生産効率を上げるための処置かと思います。回路図はCDX-580と同じです。 CDX-580の生産は、フランス工場と1991年設立のマレーシア工場(ヤマハ・エレクトロニクス・マニュファクチュアリング・マレーシア)で行われ、日本にはマレーシア製が輸入され販売されました。 CDX-590はフランス製のものが日本に輸入されましたが、フランス工場は2003年11月に閉鎖となり、生産はマレーシア工場に集約されました。 |
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(電源回路) | |||||||||||||||
電源回路はCDX-580と同じなのですが、新たにLiD(Low-impedance Drivability)電源と、名付けられました。 LiD電源というは、AX-900など1980年代のアンプに搭載されていた、強力かつ低インピーダンスの電源部の名前です。 それを、このCDX-590のチープな電源に付けるなど、まさに「おこがましい」です。 電源回路はシンプルです。いちおうデジタル回路、メカ、ディスプレィ、DAC、オーディオ回路に分けて給電していますが、電源の容量や回路間の干渉対策などは、とても十分とは言えません。 CDX-590のDACにはDSPが内蔵されているため、トラッキングレギュレータの三菱 M5290Pを使用して、DSPへの電源のON/OFFの管理をしています。 トランスと基板の間にフェライトコアによるノイズ・フィルターが設置されています。 回路内のコンデンサはELNAやマルコンの標準品を使用。 電源コードは極性表示付の平行コードです。 |
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(デジタル回路 サーボ・信号処理回路) | |||||||||||||||
メカのモーターやピックアップを、制御するデジタルサーボ回路や、CDから読み取った信号の誤り訂正などの信号処理回路は、松下(現パナソニック)製のシグナルプロセッサ「MN662720RB」に収められています。 ※ロットによって同じ機能を持つ「MN66271RA」を使用。 「MN662720RB」の中には、これらに加えて、8倍オーバーサンプリングのデジタルフイルターにMASH(1bit・DAC)、さらに差動合成用のオペアンプや、デジタル出力回路まで内蔵しています。 価格が安くて多機能というのが「売り物」のICですが、DACの音は良くありませんでした。 CDX-590ではYAMAHA独自のI-PDM・DACを使用しているため、このICの信号処理とサーボ回路、デジタル出力回路などしか使っていません。 他にはディスクの反射光量をチェックし、光量が下がったり上がったりするとディスクに汚れや異常があったと判断して、PLLをホールドしたりミュートをかける、松下製のサーボ用ヘッドアンプ「AN8803SB」や、ピックアップのアクチュエーターなどを駆動するサンヨー製の4チャンネル・ブリッジドライバー「LA6536」などがあります。 |
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(DAC・オーデイオ回路) | |||||||||||||||
1bitD/AコンバータのI-PDM・DAC「YAC514-F」は、デジタルフィルターと4つのDACを内蔵しており、さらにPRO-BITと呼ばれる波形再生の回路も搭載しています。 DACの後ろの回路は、差動合成にローパスフィルター、ミューティングという回路構成になっています。 オペアンプはJRC製でバッファ用?に「2068DD」、差動合成とローパスフィルターに「5532DD」が使われています。オーディオ回路にはMUSEなどのコンデンサが使われています。 へッドフォン用のオペアンプはROHMの「BA15218」です。 |
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(ピックアップ・ドライブメカ) | |||||||||||||||
ピックアップやメカもCDX-580と同じです。 ピックアップにはSONY製のKSS-210Aを使用。スライドはギヤ式です。 このピックアップやスピンドルモーターは、薄いプレート(メカシャーシ)に取り付けられており、それをスプリングを使ってフローティングして、外部からの振動を吸収しています。 メカのユニットはプラスチックの足で、底板に取り付けられています。 (メカのメンテナンス・修理) CDX-590はデジタルサーボのため、サーボ調整用のボリュームはありません。音とびが発生した場合は、ピックアップのレーザー出力のボリュームを調整すると回復する場合があります。 トレイ開閉用のゴムベルトの交換は、プーリーがフロントパネルに半分隠れており、さらにカバーも付いているので、フロントパネルを取り外して行います。 |
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(出力端子・リモコン) | |||||||||||||||
出力端子はアナログ(可変)が1系統。フロントパネルのヘッドフォンボリュームまたはリモコンで可変出力を調整できます。デジタルは同軸と光の2系統です。 リモコンは今までとは違い、しゃもじ型になりました。型番はCDX V198990。 |
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リアパネル |
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周波数特性 | 2Hz~20kHz±0.5dB |
ディエンファシス偏差 | ±0.5dB |
高調波歪率 | 0.0025% |
ダイナミックレンジ | 98dB |
S/N比 | 115dB |
消費電力 | 10W |
サイズ | 幅435×高さ96.3×奥行272mm |
重量 | 3.8kg |
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