TOP使っているオーディオカセットデッキTEAC V-7000


TEAC V-7000

      1990年 定価75,000円



TEAC V-7000は1990年7月に発売された3ヘッド・3モーター(パワーローディングを含めると4モーター)のカセットデッキです。

FMファンのダイナミックテストで、カセットデッキ部門の大賞を獲得しています。
長岡鉄男の評価は「防振対策と回転性能の向上が効いて、実に静かできれいな音だ。SN比もよく、NRなしでもCDのコピーは十分に実用になる。強いて欠点を探せば超低域の強烈なパンチには多少のくずれを見せることぐらいか。」と述べています。

ライバル機はA&D GX-Z7100EV、marantz SD-60SE、、Panasonic RS-B965、Pioneer T-858、SONY TC-K333ESL、Victor TD-V731などです。


(V-7000登場前のカセットデッキの状況)
1980年代後半になると、アンプの「798戦争」、スピーカーの「598戦争」、CDプレーヤーの「ハイビット競争」が勃発して、各社ともに物量機を投入します。

これに合わせてSONY、Pioneer、Victor、AKAI(A&D)などは、カセットデッキでも物量機を開発・発売しますが、TEACは従来のモデルの延長線のままでした。


当時は、すでに次世代のカセットテープとなるDAT(Digital Audio Tape)の開発が行われており、発売されればCDプレーヤーと同じように、数年で価格が下がり普及するものと、多くの人が考えていました。

1987年にTEACはESOTERIC DAT/R-1を発売。各社もDATデッキの発売を開始します。しかし著作権問題により、CDからDATへのデジタル録音を認めるかどうかが、アメリカなどとの間で国際問題となっていました。

その一方で、アメリカ国立標準技術研究所が、コピーガードシステムは音質を劣化させると発表したため、ユーザーは買い控えを起こし、売れ行きはにぶいままでした。


1989年、TEACもようやく他社の物量機に対抗するカセットデッキ、V-9000を発売します。この頃の物量機のトレンドは振動対策、回路間の干渉対策、回路のシンプル&ストレート化、電源部の強化などです。

翌年、その弟分として発売されたのがV-7000です。弟分といいながら、V-9000は技術的に未完成な部分が多かったため、V-7000のほうが優れている部分がいくつかあります。


(V-7000について)
V-7000は振動対策に有利なセンターメカを採用。さらにメカの部分をシールドで囲うことにより、トランスからの磁気とデジタル回路からのノイズが、ヘッド部に干渉しないようにしています。

ヘッドはCA(コバルト・アモルファス)ヘッドで、録音と再生ヘッドが独立したコンビネーション型の3ヘッドです。ヘッドのベース部は亜鉛合金のダイキャストベースを採用し、振動を抑えています。消去ヘッドはフェライトヘッドとなつています。

走行系はクローズドループ・デュアルキャプスタンで、左右のピンチローラーの径を変えて、回転による振動周波数をずらして、ワウ・フラッターを低減しています。
キャプスタンのモーターはクォーツPLL制御のDDモーターです。


カセットホルダーはパワーローディングを採用していますが、カセットハーフの振動を抑える「アンチ・スタティック・カセット・スタビライザー」を搭載しています。
さらにホルダー部は鋼板、アーム部をアルミ合金と違う素材を使用することで、メカで発生する振動の係数(周波数)を変えて、振動の減衰と共振を抑えています。

走行系などの強化によりワウフラッターは、0.022%以下となり、V-9000よりも向上しました。周波数特性も低域側が15Hzと、V-9000よりもレンジが広がっています。


ドルビーHX-PROが搭載され、録音時のバイアス量を入力信号の変化に合わせて、自動的に調整することで、高音域の飽和特性を改善し、フラットな周波数特性を得ています。
これとは別にテープの特性に合わせて、バイアスの微調整ができる「バイアスファイン機能」を搭載しています。

ノイズリダクション・システムはドルビーB/Cタイプを搭載しています。テープポジョンはオートセレクターで、ノーマル、ハイ(クローム)、メタルに対応しています。


その他の機能は、再生中の曲から前後15曲をサーチできるCPSシステム、RECミュート、MPXフィルター、オートモニター、タイマースタンバイなどです。リピートやプログラム系の機能はありません。


V-7000の内容はTEACの技術の集大成というよりも、SONYのESシリーズから電源部、A&Dの9100/7100シリーズからシャーシ、VictorのTD-V7xxシリーズから回路の短絡化と、良いところを集めてきて、詰め込んだという方が正しいかと思います。

そのため、上級機のV-9000よりもスペックが向上したり、良いパーツが使われることになり、結果的には成功したデッキだと思います。



(音質について)
メタルテープはレンジが広くて解像度があり、高中音のつながり、バランスともに良いです。音も気負ったところがなく、自然に出てきますし、奥行感もよく出ます。

定価は75,000円という価格ですが、SONYの初期の555ESモデルの音は上まわっています。

弱点をあげるとすれば、ハイポジやノーマルポジションのテープでしょうか、メタルテープに比べると中低音が弱く物足りません。

よく言われるテープの相性かもしれませんが、ノーマルテープだとA&D GX-Z5000の音に負ける場合も出てきます。

もっとも、1990年ごろはメタルテープも安くなっており、オーディオファンの中では、家で聴く音楽にはメタルテープを使うのが普通になってきていたので、メーカーもメタルテープ向けのチューニングをしていた可能性もあります。



(フロントパネル)
センターメカの採用により、フロントパネルのイメージは従来のTEACのモデルとは大きく異なります。
明らかにSONYのESシリーズの影響を受けていますが、スッキリとした、あか抜けたデザインになりました。







(シャーシと内部について)
シャーシは1mm厚の制振鋼板です。天板はコの字型で、ふつうの鋼板ですが、防振塗装とアッパー5ヶ所、サイド8ヶ所のビスで取り付けられています。

内部には回路間の干渉を防ぐためにシールド板があり、これが梁の役目をすることで、シャーシの補強や剛性アップにも機能しています。
特にメカの部分はボックスに近い構造として、ノイズや磁気による干渉を防いでいます。

サイドパネルは、ただのプラスチックと誤解している人もいるようですが、高比重素材を使用した制振サイドパネルです。
材質はたぶん高強度で内部損失があるBMC(バルクモールディングコンパウンド)だと思いまいす。重量は1枚240g。

インシュレーターも高比重素材で、特殊セラミックなどを複合しているとのことです。ダイナミックテストには「磁石がくっつく。」と書いてあったので、試してみると確かにくっつきました。重さは1個53gです。


内部のレイアウトは、左側に電源トランスとシステムコントロール回路。中央部にメカと電源回路、録音回路。右側が再生回路となります。

録音レベルの調整ボリュームとバランスは、入力端子と共にシールドBOXに収められています。


インシュレーター


(電源部) 
電源トランスは別巻線で、FMファンのダイナミックテストによると、コアサイズが70x68x37mmと、上級機のV-9000よりも50%もアップした物を使っているそうです。

メカ・コントロール回路と録音・再生回路を分離した独立電源です。
電解コンデンサは松下電器(現パナソニック)製のオーディオ用「
Pureism」や「AU」が使われています。

他には三菱製のボルテージレギュレータ「M5230LA」などがあります。

電源ケーブルはOFC(無酸素銅)を使用した並行コードで、極性表示が付いています。

電源トランス メカ・デジタル回路用の
電源回路

録音・再生回路用の
電源回路。

電解コンデンサは松下製のオーディオ用「Pureism」などが使われています。
トランジスタは「B1274」と「D1913」。



(システムコントロール・サーボ回路)
システムコントロール用のマイコンはNECの「NEC D75106CW 176」です。

他にはモータードライバーがサンヨー製の「LB1649」と、ローム製の「BA6219」。
サンヨーの「LC7910」、日立製のヘックスインバータ「HD14069UBP」などがあります。

コントロール回路 マイコン
NEC D75106CW 176


(ヘッド・メカ)
メカはボックスに近いシールドで囲まれており、ノイズや磁気による干渉からヘッドを守っています。

ヘッドはのCA(コバルト・アモルファル)録音・再生コンビネーション3ヘッドです。

アモルファスは非結晶構造のため、電磁変換特性にすぐれ、摩耗に対しても強いという特性があります。また渦電流損失が低く高域特性も優れています。

また伝送ロスを抑えるために、内部捲線には純度99.997%のPCOCC(単結晶高純度無酸素銅)が使用されています。

ヘッドの取り付けベースには亜鉛合金ダイキャストを使用して、振動によるヘッド部への影響を抑えています。



走行メカは安定した走行性能を持つ、クローズドループ・デュアルキャプスタンです。
左右のピンチローラーの大きさを変えることで、回転時に発生する周期的変動をキャンセルしています。

キャプスタンはサブミクロン・オーダーの精密なエッチング処理を行い、テープのグリップ力を高めて、テープのスリップを防止しています。

キャプスタンモーターには、水晶発振精度のクォーツPLL DDモーターを搭載。高精度の大型フライホイールにより、慣性質量を増大して安定した回転を実現しています。
リールとメカニズム用がDCモーターです。


(カセッホルダー)
カセッホルダーの開閉はパワーローディングです。ホルダーは1.6mm厚の鋼板製のしっかりとした物で、カセットハーフの振動を抑えるために「アンチ・スタティック・カセット・スタビライザー」が取り付けられています。閉まる際にスタビライザーがカセットハーフを強力に圧着することで、テープの走行に有害な振動を抑えています。

もうひとつの特徴は「トライアングル・カセット・サポート・システム」です。これは3点支持でカセットハーフを確実にホールするもので、わずかな反りがあるカセットハーフにも対応が可能です。

またカセッホルダー自体の振動対策もキチンとしており、上記の1.6mm厚の鋼板に加えて、カセットリッドを特殊耐振素材、メカとの接合部(アーム)は2mm厚のアルミを2重構造とすることで、振動系数の変更と振動の吸収により、メカから伝わる振動を減衰しています。

メカを囲うシールド メカ

ヘッド・キャプスタン・
ピンチローラー
アンチ・スタティック・
カセット・スタビライザー



(録音・再生回路)
アンプ部には音質の劣化につながるカップリングコンデンサを排除した、オールDC(ダイレクトカップリング)構成です。全段モノラルアンプになっており、左右チャンネル間の干渉を防いでいます。

ヘッドアンプ部はFET差動入力のDCアンプとして、低域ノイズの改善と周波数特性の向上をしています。

録音レベルの調整ボリュームとバランスを、入力端子のすぐそばに置くことで、フロントパネルまでの配線の引き延ばしを無くすなど、配線の経路を短くすることで、音質の劣化やノイズ干渉を減らしています。


録音回路にはドルビーHX-PROシステムを搭載しており、録音時のバイアス量を入力信号の変化に合わせて、自動的に調整することで、高音域の飽和特性を改善し、フラットな周波数特性を得ています。ICはNEC製の「μPC1297CA」です。

左右独立のバイアスキャリブレーション機能を搭載しており、内蔵の発振器により、テープに合わせたバイアスの微調整ができます。

ノイズリダクションはドルビーBとCタイプです。ICはSONY製の「SONY CXA1330S」を、録音用と再生用にそれぞれ独立して搭載しています。

電解コンデンサは松下電器(現パナソニック)製のオーディオ用「AU」が使われています。

オペアンプは録音回路に三菱「M5218」、再生回路は三菱「M5220」が使われています。

他には、ロームのアナログスイッチ「BU4066B」、三菱製のテープ・プログラムセレクタ「M51143AL」などのパーツがあります。

録音回路 録音回路

ドルビーHX-PRO用IC
NEC μPC1297CA
ドルビーB・C用IC
SONY CXA1330S

再生回路 録音ボリュームなどが
入ったシールドケース



(入出力端子)
入力端子は2系統(ラインとCDダイレクト)。出力端子は1系統(固定出力)です。

その他にはTEAC製CDプレーヤーとシンクロ・ダビングが可能な、CDシンクロ端子があります。

リアパネル


TEAC V-7000のスペック

周波数特性 15Hz~21kHz ±3dB(メタルテープ)
15Hz~20kHz ±3dB(クロムテープ)
15Hz~18kHz ±3dB(ノーマルテープ)
S/N比 60dB(Dolby オフ)
70dB(Dolby-B)
80dB(Dolby-C)
ワウ・フラッター 0.022%(WRMS)
±0.04%(W.Peak)
消費電力 20W
外形寸法 幅471X高さ149×奥行355mm
重量 9.0kg




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