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ONKYO Integra T-435

     1983年 定価48,000円



ONKYO Integra T-435は、1983年10月に発売されたシンセサイザー・チューナーです。

当時のONKYOは低価格モデルには、シンセサイザー・チューナーを投入していましたが、中級機・高級機はバリコンチューナーというラインアップでした。

その路線を変更したのが、T-435とT-437(69,800円)で、Integra T-427RとT-429Rの後継機として発売されました。

ライバル機としては、DENON TU-950、Pioneer F-120、F-50T、SONY ST-V7、Technics ST-G5、TRIO KT-770、Victor T-G90、YAMAHA T-950など。


この頃、Pioneerののシンセサイザー・チューナーには「D.D.デコーダー」、TRIOでは「DLLD」などの新しい回路が投入されていましたが、ONKYOにはそういう回路がなく、 T-435はT-427Rに搭載されていたFM帰還方式や、RF部のブーストON/OFF回路などを踏襲しています。

いわばバリコンをバリキャップに代えて、ディスプレィを取り付けたというような構成です。


フロンドエンドは4連相当。RF部にFMブーストのON/OFF機能を搭載しています。
ブーストOFFは、強電界地域や近距離の放送局用で、妨害排除特性の向上にスポットを当てたモードです。ブーストONは受信電波の弱い放送局用で、RFブースターが作動して、シングル同調により高感度が得られます。

T-435はIF段にも「Wide」と「Narrow」の、帯域幅の切換機能があるので、ブーストのON/OFFと組合わせにより、受信状況に応じた動作を選べます。


IF・検波部にはFM帰還方式が搭載されています。これはアンプで使われるNFB(ネガティブ・フィードバック)を使用した回路で、歪率の低下と高いセパレーションを実現しています。

またIF段にはリニアフェーズフィルタ、検波器には広帯域リニア・ディテクターを搭載しており、20Hz〜53kHzにわたってフラットという特性を得ています。

MPX部には安定度の高いICを搭載。PLL回路に19kHzと38kHzパイロットキャンセラーを搭載しています。

電源部には、ONKYOのアンプで使われていたスーパーターボ方式を採用。電源部で発生する変調雑音やAC電源から、侵入するノイズを低減しています。

メモリーはFMとAM12局をランダムプリセット可能です。その他には5局まで受信可能なタイマースタンバイ機能。オートチューニングシステムやオートマチック・ノイズリダクションを搭載しています。



(受信について)
現在はケーブルテレビからFM放送を聴いていますが、受信能力は必要にして十分だと思います。


(音質について)
本機の特徴であるFMブーストのON/OFFと、IFバンドのWide/Narrowの組み合わせによる音質の変化ですが、FMブーストはカタログ値を見ればわかるとおり、「ON」の状態で普通の感度です。残念ながらFMブーストのON/OFFでは、あまり音質の違いは感じられませんでした。

音質自体はやわらかめでクラシックに向いています。ただPioneer F-120、TRIO KT-1100、KENWOOD KT-880Fなどと比べると、解像度が弱く音のキレがありません。また細かい音の再現性も負けてしまいます。

Integra T-435の回路は、他社の上記のモデルと比べると1〜2世代前の回路ですし、使用しているパーツのレベルも落ちるので、これは仕方ないところです。
またスペックを見てもイメージ妨害比やIF妨害比、スプリアス妨害比などは、1975年のバリコンチューナーIntegra T-455NIIよりも低いなど、まだまだ発展途上の段階にあるようです。



(フロントパネル)
フロントパネルは同社のintegraのプリメインアンプに合わせたというよりも、CDプレーヤーに合わせたようなデザインです。カラーはブラックとシルバーの2色で発売されていました。

おおまかにいうと左側はディスプレィで、操作ボタンは電源スイッチ以外は右側にまとめられています。いろいろな機能が付いていますが、使う頻度が高いボタンは大きいので使い勝手は良いです。(左利きの人には使いずらいかもしれません。)
デイスプレィ内のレベル表示やインジケーターなどもやわかりやすいです。

プリセットメモリのボタンは6個ですが、SHIFTキーによる切り替えでFM/AM12局までランダムプリセットできます。局の周波数と同時にIFバンドもメモリーが可能です(FMブーストは不可)。また別売のタイマーと連動して、留守録用に5局までセットできます。

シグナルメーター

   


(キャビネットと内部について)
天板と底板は薄い鋼板製ですが、フロント・リヤ・サイドパネルともにコの字型に加工されており、強固なフレーム構造になっています。さらに横方向はビーム(梁)によって補強されています。


内部には基板が2枚あり、デジタル回路と受信・復調回路を分けることで、デジタル回路で発生するデジタルノイズが、オーディオ系回路に影響するのを低減させています。

受信・復調回路の基板は上級機のT-437と共通のため、パターン印刷はあるものの実装されていないパーツも多いです。デジタル回路の基板はT-437とは別設計となっています。


手前の基板はデジタル基板で、システムコントロール、PLL、ディスプレィの表示回路があります。奥の基板は左から電源回路、MPX回路、IF・検波回路、フロントエンドとなっています。



(電源回路)
電源トランスはこのクラスのシンセサイザーチューナーとしては、少し大きめのトランスが搭載されています。容量は25V・10.5VA。振動対策として強固なフレーム構造の「角」にあたるリアパネルに取り付けられています。

電源回路はプリメインのIntegra A-819RS、パワーアンプのM-506RSなどに搭載されたスーパーターボ方式を採用しています。これは、デルタターボ回路とターボフィルターにより、電源トランスで発生する変調雑音とAC電源から侵入するノイズを低減しています。

電解コンデンサは日本ケミコンの「SM」や、ニチコンの「SE」などが使われています。電源コードは細い平行コードです。

電源トランス 電源回路


(システムコントロール)
操作ボタンによる動作のコントールをするのは、NEC製の「μPD1704C 025」です。このICはPLLのカウンターやコントロール、プリセットメモリーの管理も行うことができ、マイコン内蔵型のチューニングシステムICとなっています。

他には東芝製のフリップフロップ「TC4013BP」や、NECのNANDゲート「D4011BC」、日立のデシマルデコーダー「HD74LS42P」が使われています。

システムコントロール回路 NEC μPD1704C 025


(フロントエンド・PLLシンセサイザー)
FMのフロントエンドは4連相当。ツインバリキャップとMOS FETで構成されています。

特徴的なのはブースト用のRFアンプをON/OFFできること。ブーストONではMOS FETを使ったRFブースターが作動し、シングル同調となり高い感度が得られます。

ブーストのOFFではトリプルチューン(同調)の後に、RFブースターを通さずMOS FETのミキサーに入力されます。また局部発振器の信号も、MOS FETバッファを通してミキサーへ入力します。これにより入力信号が強い時でも、ダイナミックレンジの拡大が可能となります。


ブースト機能について、メーカーは単純に強電界地域や近距離の放送局には「OFF」、弱電界地域や遠距離の放送局には「ON」で使用と説明しています。

でも実際には東京の23区のような強電界地域でも、屋外アンテナを送信所(当時は東京タワー)の方向に向けると、高い建物などの影響により、かえってノイズ(マルチパス)が大きくなる場合もあるので、送信所の方向から少しずらしている場合などもありました。また建物の影響によって受信感度が著しく落ちている場合もあります。

ですので、強電界地域だから一概にブースト「OFF」とは言えません。受信状況を確認しながらブーストのON、OFFの設定をしてやる必要があります。

また室内アンテナの場合は利得が低いので、ブーストONで使用ということになるかと思います。


ちなみに現在はNHK-FM(東京)とJ-WAVEは東京スカイツリー(墨田区)から送信、TOKYO FMとInterFM、放送大学は東京タワー(港区)から送信されていますので、港区から墨田区にかけての世帯は、局によってアンテナの方向が180度違うという現象も起きています。

さらに東京スカイツリーに移転した局は、アンテナ位置が高くなったもののスピルオーバー対策で、送信出力を10kwから7kwに落とされています。それでもJ-WAVEではスカイツリーに移転後、港区南西部などで受信障害地域が発生し、2015年に六本木ヒルズ森タワーに中継局を開設するなどしています。


シンセサイザー部のPLLのコントロールを行うICはNEC製の「μPD1704C 25」。プリスケーラ(前置分周器)はNEC製の「PB553AC」です。

AM受信用のICは、サンヨー製のAMチューナーシステムIC「LA1245」が使われています。

フロントエンド AM部


(FM復調 IF・検波回路)
IF帯域は「Wide」(FM帰還)と「Narrow」の切換えが可能です。

FM帰還方式の仕組みは検波器から取り出した信号を、FMサーボ回路を通して局部発振器にフィードバック(帰還)。局部発振器ではこれを超低歪変調回路で、局発信号を変調します。それをミキサーで入力信号とミックスしてIF信号を取り出しています。

これにより局発変調回路の歪を下げることが可能となり、IFスペクトラム信号帯が圧縮されることにより、IF回路の帯域幅を拡大したのと同じ効果が得られます。
これによりIF信号をリニアに増幅できるため、MPX部のステレオ復調での位相ズレが抑えられ、セパレーションが向上するというものです。
IF段にはリニアフェーズ型フィルターを搭載しています。

検波器は「広帯域リニア・ディテクター」という名前になっていますが、実際に使われているIC・サンヨー製の「LA1235」のデータシートを見ると、クアドラチュア検波になっています。

ICは他にNEC製のIFアンプ「μPC555H」と「μPC1163H」(差動アンプ)や、NANDゲート「D4011BC」があります。

IF回路 IFシステム サンヨー LA1235


(ステレオ復調 MPX回路)
この回路のメインとなるのは、NEC製のFMステレオデモジュレーター「uPC1223C」です。PLL回路が内蔵されており、安定したステレオ復調を実現しています。

MPX回路 MPX IC
ステレオデモジュレーター
NEC uPC1223C


(アンテナ端子・出力端子)
アンテナ端子はFM用が75ΩのF型端子と、ネジ式のアンテナ端子があります。300Ωのフィーダー線用の端子はありません。AM用はループアンテナとアンテナ端子(平衡)です。

出力端子は固定出力が1系統です。他にACアウトレットが1個あります。


AM用ループアンテナ


ONKYO Integra T-435のスペック

FM 受信周波数 76MHz〜90MHz
周波数特性 20Hz〜15kHz +0.2 -0.8dB
実用感度 0.95μV/10.8dBf(Boost ON)
4μV/23.3dBf(Boost OFF)
SN比50dB感度 2μV/17.3dBf
実効選択度
(400kHz)
Wide 45dB、Narrow 85dB
歪率
(400kHz)
MONO Wide 0.009%
Narrow 0.15%
STEREO Wide 0.02%
Narrow 0.4%
S/N比 MONO 86dB、STEREO 80dB
ステレオ
セパレーション
1kHz Wide 60dB
Narrow 45dB
100〜
10kHz
Wide 47dB
Narrow 40dB
イメージ妨害比 90dB
IF妨害比 100dB
スプリアス妨害比 100dB
AM抑圧比 Wide 62dB、Narrow 50dB
キャリアリーク -65dB
キャプチャーレシオ Wide 1.0dB、Narrow 2.0dB
AM 受信周波数 535kHz〜1605kHz
実用感度 200μV/m
選択度 35dB
歪率 0.3%
S/N比 50dB
イメージ妨害比 40dB
IF妨害比 57dB
消費電力 17W
サイズ 幅435mm×高さ77mm×奥行373mm
重量 4.4kg




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