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ONKYO Integra T-455NII

     1975年 定価69,800円


ONKYO Integra T-455NIIは、1975年に発売されたクリスタルロックド方式を搭載したバリコンチューナーです。

当時のONKYOはというと「サン・トリ・パイ」の下のオーディオメーカーというイメージで、国内では有名なヒット商品はありませんでしたが、アメリカではレシーバーのメーカーとして有名だったとのことです。

とはいうものの商品開発や新技術に積極的な企業で、1970年代の終わりからアンプには毎年のように新しい回路を投入。CDプレーヤーでは有名な光伝送システムを開発。スピーカーではD-77により「598戦争」を引き起こし、D-200により小型スピーカーブームの先鞭を付けました。そしてチューナーは、このクリスタルロックド方式ということになります。


「クリスタルロックド」というのはクォーツPLL(Phase Locked Loop・位相同期)回路のことです。レコードプレーヤーでは1975年ごろから、「クォーツロック」という名称で登場し始めますが、基本的には同じ回路です。

チューナーにクリスタルロックが使われたのは、ONKYOのIntegra T-411(1974年・200,000円)が初めてで、オーディオ製品としては目新しい回路でした。

ただPLL回路は1930年代には、スーパーヘテロダイン受信機に搭載されていました。チューナーもスーパーヘテロダイン受信機ですから、そういう意味では古い技術です。

クリスタル(クォーツ・水晶振動子)は発振回路の基準となる周波数を生み出す水晶振動子です。このクリスタルを使った発振回路も無線機の世界では古くから使われていました。
また1950年代には、短波放送を受信できるラジオ用に、日本短波放送を聴くためのNSBクリスタル(クリスター)が発売されていました。


Integra T-455NIIはこの「クリスタルロックド」回路を、IF(Intermediate Frequency・中間周波数)である10.7MHzを作る局部発振回路に使用しています。※

クォーツ(水晶振動子)の精度は、±0.001%以下とLC発振と比べてケタ違いに精度が高く、温度上昇などによる周波数安定度も高いのが特徴です。これにより局部発振回路の周波数偏移を0.005%以内に押さえています。

仕組みはまずクォーツ(水晶振動子)を使った発振器で、正確な10.7MHzの基準周波数を作り、局部発振回路ではFMの受信周波数から10.7MHzを引いた周波数を作ります。それをミキサーで受信周波数から引き算することで、受信した電波信号を10.7MHzの中間周波数に変換します。

高い周波数のままでは増幅や安定が難しいですが、ここで低い周波数に変換することで、いわゆるIF段でのフィルタリングや増幅が十分に行えるようになり、音質も向上します。

さらにここからはPLL回路を使い、IF段から中間周波数の信号を取り出して、位相比較器でクォーツの基準周波数10.7MHzと比較。受信中にドリフトで周波数がズレた場合はローパスフィルターで差分の電流を発生させます。それをまた局部発振回路に戻します。
局部発振回路は電圧制御発振器(VCO)を兼ねているので、ズレを補正した周波数を流すことができるため、中間周波数は常に一定となります。

これによりFM放送を受信中に同調ズレが起きても、選局ダイアルを回してバリコンを動かさなくても、安定した受信が可能となります。


フロントエンドには4連バリコンを搭載し、初段とミキサーには低雑音デュアルゲートMOS型FETを採用して高い感度と優れた妨害排除特性を得ています。

IF回路の帯域は音質優先の「Normal」と、受信性能が向上する「Narrow」を選択できます。また位相特性に優れ、温度や湿度ドリフトの少ない2ブロック・12極のリニアフェーズ型フィルターを採用しています。
検波は広帯域レシオ検波で、回路の設計には高性能の微分利得直視装置を使用して解析し、広帯域にわたりリニア特性を得ています。

MPX部には安定度の高いPLL回路内蔵の ICを採用しています。

その他には、外部アンテナのセッティングに利用するマルチパス試聴スイッチを搭載。面白いのは、当時日本で導入が検討されていた、FMドルビー放送に対応するドルビーデコーダーの接続端子や、FM4ch放送に対応した4ch検波出力端子を装備しています。


選局してチューニングダイヤルから手を離すと、チューンド・インジケーターが点灯します。この時に「ピコ」という音がしますが、これは故障ではなくリレーの音です。たぶん同調や離調時に発生する直流成分による微小なポップノイズを、リレーによってミューティングしているのではないかと思います。


※1970年代の終わりからブームとなる、クォーツPLL・シンセサイザーチューナーでは、クォーツ(クリスタル)を使用した基準周波数(5kHz〜100KHz)を作り出し、PLL回路内にプログラマブルカウンタ(可変分周器)を入れて同調回路を構成しています。
PLLシンセサイザーチューナーもT-455NIIも、PLL回路は同調ズレを防止するために使われていますが、PLLシンセサイザーチューナーはミキサーの前に、T-455NIIはミキサーの後に設置されています。



(受信について)
現在はケーブルテレビからFM放送を聴いていますが、受信能力は必要にして十分だと思います。


(音質について)
解像度や音のキレ、レンジなどではTRIO KT-8000には勝てません。このチューナーの持ち味は音の「柔らかさ」と、その音に合った「ルックス」です。KT-8000の音もウォームトーンですが、またそれとは趣が違うという感じの音です。

クラシック向きの音ですが、楽器の解像度や左右のセパレーションを重視する人には不向き。オーケストラよりも室内楽のほうが良いです。後は女性ボーカルなど。

とはいうもののチューナーのソースはFM放送だけ。しかも今はクラシックを流すのはNHKぐらいしかないですし、その中でも室内楽はたまにしかやらないというのが現実の話。

このままではT-455NIIの出番がなくなってしまいますが、機械物(バリコン)はたまに使ってやらないと、本番の時に力が発揮できないので、聴き疲れのしない音というメリットを活かし、クラシック以外にもBGMがわりに朝から晩まで鳴らしたりしています。

このチューナーが作られた頃は、各メーカーが自社の「サウンド」を持っており、製品にもポリシーと個性を与えていた時代。Integra T-455NIIにもそういうものが、キチンと反映されていると思いますし、このあたりが1970年代のアナログオーディオの面白さだと思います。



(フロントパネル)
integraのプリメインアンプ「MKIIシリーズ」に準じたクラシカルなデザインで、ダイアルやスイッチなど1960年代のチューナーの雰囲気を持っています。

上部にはシグナルメーターとチューニングメーター。そして横には「LOCKED」「TUNED」「STEREO」のインジケーターランプがあります。その下は透過照明のチューニングスケールとチューニングつまみがあります。

選局時はチューニングダイアルを回し、同調範囲(たぶん同調点の±50kHz)に入ると、まずロックド・インジケーター(赤)が点灯し、ロック機能が稼働します。
チューニングダイヤルから手を離すと、最適同調点をロックして、チューンド・インジケーター(緑)が点灯し選局が完了します。このチューンド・インジケーターの点灯する時には「ピコ」という音がしますが、これは故障ではなくリレーの音です。

別の放送局を選局する場合は、チューニングダイアルに手を触れると、ロック機構が解除され再びマニュアルチューニングの状態となります。

この表示方式はT-455NII以降、クリスタルロックとサーボロックを搭載したバリコンチューナーに使用されていきます。

操作系は左が電源スイッチ、可変出力用のボリューム(クリック付)、「NORMAL」と「NARROW」のIFバンド切替スイッチ、ミューティングスイッチ、ステレオノイズフィルター、FMモード(STEREO・MONO)、ドルビーステレオアダプター出力のOFF/ON、FM/AMのバンド切り替スイッチがあります。

シグナルとチューニングメーター

   


(キャビネットと内部について)
シャーシは鋼板製で、コの字型の天板はサイドウッドと一体型で、上部には革風のシートが張られています。

内部は手前に大きなメイン基板があり、左から電源回路、IF・検波回路、MPX回路、フロントエンドがあります。その後ろには電源トランス、PLL回路、バリコンがあります。

基板は湿度によるドリフトを避けるために、テトロンエポキシ樹脂基材が使用されています。



(電源回路)
電源トランスは大きめのトランスで、回路部分への干渉を防ぐために金属製のカバーに覆われています。電源回路は独立電源で、検波以降のAF部には±2電源方式という、誤差電圧を検出して負帰還をかけた定電圧電源回路を採用しています。

電解コンデンサはELNAの「EL」や日立コンデンサ(現 日立エーアイシー)の「QL」などが使われています。電源コードは細い平行コードです。

回路保護用のヒューズは30mmで、100V・1Aが1本、6.3V・3Aが1本です。

電源トランス 電源回路


(フロントエンド)
初段とミキサー部にはローノイズのデュアルゲートMOS型FETが使用されています。バリコンはメーカーがいうところの超精密4連バリコンを採用。

AM用のICは、日立製のAMラジオレシーバー「HA1151 5G4」が使われています。

バリコン フロントエンド


(クリスタルロックド回路)
いわゆるクォーツPLL回路です。クォーツ振動子を使った発振回路とPLL回路だけではなく、チューニングダイアル用のタッチセンサーの回路もあります。この回路の裏のリアパネルにはセンサーの感度の切り替えスイッチがあります。

クリスタルロック回路 水晶振動子


(FM復調 IF・検波回路)
IF帯域は「Normal」と「Narrow」の切換えが可能で、Normalでは選択度が50dBと低くなりますが、歪率は0.1%以下、セパレーション50dB以上と音質を優先。Narrowは音質よりも受信優先で選択度は85db。歪率は0.4%以下、セパレーションは40dBとなります。

IFアンプは東芝製のTA7061AP。フィルターは位相特性が優れ温度・湿度ドリフトの少ない2ブロック12極リニアフェーズ型フィルターを使用しています。

検波回路はウルトラリニアディテクタ(広帯域レシオ検波)です。

IF回路 IFアンプ 東芝 TA7061AP

リニアフェーズ型フィルター ウルトラリニアディテクタ検波器


(ステレオ復調 MPX回路)
この回路のメインとなるのは、日立製のFMステレオデモジュレーター「HA1156W」です。このICにもPLL回路が内蔵されており、安定したステレオ復調を実現しています。

MPX回路 ステレオデモジュレーター「HA1156W」


(アンテナ端子・出力端子)
アンテナ端子はFM用が75ΩのF型端子とネジ端子。それに300Ωのアンテナ端子。AM用はフェライトバーアンテナと外部アンテナ端子があります。

出力端子は固定出力と可変出力に加えて、TAPE RECと書かれたDIN端子を装備しています。この頃のテープデッキはDIN端子を装備しているものが多く、DIN端子用のケーブルも販売されていました。

その他にはFM4ch放送用のMPX端子を兼ねたマルチパス出力端子や、FMドルビー放送に対応するドルビーデコーダーの接続端子があります。

 
 AM用フェライトバーアンテナ


ONKYO Integra T-455NIIのスペック

FM 受信周波数 76MHz〜90MHz
周波数特性 20Hz〜15kHz +0 -0.5dB
実用感度 1.7μV(IHF)
SN比50dB感度 3.0μV
実効選択度
(400kHz)
Normal 50dB、Narrow 85dB
歪率
(400kHz)
MONO 0.08%(Normal)
0.2%(Narrow)
STEREO 0.1%(Normal)
0.4%(Narrow)
S/N比 77dB
ステレオ
セパレーション
1kHz 50dB(Normal)
40dB(Narrow)
100〜
10kHz
40dB(Normal)
35dB(Narrow)
イメージ妨害比 100dB
IF妨害比 110dB
スプリアス妨害比 110dB
AM抑圧比 Normal 57dB、Narrow 53dB
キャリアリーク -70dB
キャプチャーレシオ Normal 1.0dB、Narrow 2.0dB
AM 受信周波数 535kHz〜1605kHz
実用感度 200μV/m
歪率(400kHz) 0.5%
S/N比 60dB
イメージ妨害比 50dB
IF妨害比 35dB
消費電力 21W
サイズ 幅467mm×高さ161mm×奥行383mm
重量 9.0kg












ONKYO Integra T-455NII B級オーディオファン