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Technics
SL-P3


1984年
定価129,800円

テクニクスのSL-P3はSL-P8(1983年・150,000円)の後継機として1984年11月に発売された
CDプレーヤーで、Technicsにとっては第3世代にあたるCDプレーヤーです。輸出も行われ海外ではSL-P3から可変出力端子をはずしたSL-P2も販売されました。

ライバル機はSONY CDP-302ES(118,000円)、KENWOOD DP-900(104,800円)、NEC CD-607(109,800円)/609(125,000円)、Victor XL-V500(138,000円)など。

テクニクスは1号機のSL-P10から、かなり回路の集積化(LSI・IC化)に取り組んでいましたが、第2世代のSL-P8、SL-P7ではそれをさらに進めていました。
CDプレーヤーのコストダウンには回路の集積化は必須となる技術でした。これによりSL-P7は11万円と当時としては戦略モデル的なプライスを付け、発売前から各地で発表会を開催して大がかりな宣伝を行いました。ところがYAMAHAはさらに集積化を進めたCD-X1を発表。初めて10万円を切る99,800円という価格で売り出しました。

いわばテクニクスはYAMAHAに赤恥をかかされた訳ですが、当時のCDプレーヤーはオーディオという枠を越えれば、最新鋭・最先端のデジタル家電であり、「音」とは別の意味でもメーカーの技術力が問われる製品でした。

SL-P3は回路の集積化を大幅に進め、メイン基板はSL-P8の1/3ぐらいのサイズとなっています。またこの集積化は回路の安定化にも貢献しています。

D/Aコンバータは各社のフラグシップにも搭載された、バーブラウンの「PCM-53JP-V」を採用。デジタルフィルターは未搭載です。

ピックアップは3ビーム・アスティグマ方式のFFピックアップで、CCFレンズによりフォーカス時のレーザー光の収差を低減しています。ピックアップはダイキャスト製のベースに固定。メカはスプリングによりシャーシからフローティングされて、振動に対応しています。

サーボ回路は独自の「AMDサーボ」を搭載して、安定したディスクの読み取りを実現しています。信号処理の誤り訂正回路には「テクニクス・スーパーデコーディング・アルゴリズム」を採用しています。

機能面ではプロ用機でSL-P50で開発された、自動的に指定曲の実音声開始位置にスタンバイするオートキュー機構を搭載しています。



(フロントパネル)
フロントパネルの最大の特徴はディスプレィの下に2列で並んだ29個の操作ボタン。この頃はプログラム機能の充実も大きなユーザーニーズで、そのために操作ボタンが多くなったために考え出されたデザインだと思います。ヘッドフォン端子の隣にはスライド式のヘッドフォンボリュームとタイマープレイの切替ボタンがあります。

トレイの上には再生中のCDを見ることができるクリスタルウィンド(覗き窓)があります。このウィンドはプリズムのような仕組みになっており、正面から見ても中で回転するCDを見ることができます。また緑色の照明もついています。
ボディカラーは日本での発売はガンメタリックだけでしたが、海外仕様にはシルバーモデルもありました。

クリスタルウィンド


(シャーシと内部について)
シャーシは鋼板製(厚さ1.2mm)で特に防振対策はされていません。天板も鋼板製(厚さ1mm)でこちらにも防振材などは付いていないので、叩けば良く鳴ります。脚はインシュレーターではなくゴム脚です。重量は実測5.3kg。

内部は左側にピックアップ・ドライブメカと電源トランス。右側には電源・サーボ・オーディオ・システムコントロールなどの回路が一枚の基板の上に載っています。このメイン基板は回路の集積化により、SL-P8の1/3ぐらいのサイズとなっています。

一番右側にあるのが可変出力用の基板で、独立させてあるのは可変出力が無いSL-P2やSL-PJ2とメイン基板を共用させるためだと思います。

底板


(電源回路)
電源トランスはデジタルとオーディオの別巻線。簡易ではありますが独立電源となっているようです。
トランスと電源回路 レギュレーター 松下製 AN7805


(サーボ回路・信号処理回路)
集積化が進んだとはいえサーボ回路と信号処理回路が基板の約半分を占めています。サーボ回路は「AMDサーボ」と名付けられたもので、メイン基板の他にメカの下にも基板があり、ここにトラッキングサーボ用の「AN7678S」、フォーカスサーボ用の「AN7677S」、トラッキング・フォーカスエラー用の「AN6554S」といったチップがあります。またサーボ回路の調整用のボリュームもメカの下にあります。※1

デジタル回路とオーディオ回路の間にはLSIモジュールという小さな基板があり、「MN6614」「MN6615」「MN6616」の3つのチップでCIRC復調や誤り訂正などの信号処理を行っています。システムコントロール用のマイコンは「MN15844PCV」。

誤り訂正の方法はCIRC(Cross Interleave Reed-Solomon Code・クロスインターリーブ・リードソロモンコード)を使用することが、「コンパクトディスク」の規格(レッドブック)でキチンと決められており、それに従ってディスク側の信号はエンコードされ記録されています。そのためCDプレーヤー側では決められたCIRCのアルゴリズムに従ってデコード処理をしないと訂正が出来ません。

コンパクトディスクの規格を作ったSONYはこれに「ソニースーパーストラテジー」という名前をつけましたが、SONYへの対抗心を持つテクニクスは「テクニクス・スーパーデコーディング・アルゴリズム」という、独自の名前をつけ「データ補完確率1/9000万時間という数値を実現」と宣伝していました。

※1 基板にはパーツナンバーしか印字されていませんが割り当ては以下の通りです。
VR101・・・フォーカスゲイン、VR102・・・フォーカスバランス、VR103・・・フォーカスオフセット、VR104・・・トラッキングゲイン、VR105・・・トラッキングバランス、VR106・・・トラッキングオフセット。
サーボ・信号処理
システムコントロール回路
信号処理用のLSIモジュール

メカの下のサーボ回路 松下製 AN7678S


(オーディオ回路)
D/Aコンバータは自社開発のDACをやめて、高速でリニアリティの良いバーブラウンの「PCM-53JP-V」を採用しています。

PCM-53JP-Vは基準抵抗となるニクロム系薄膜素子を、レーザーで精密にトリミングしており、高い精度を実現しています。その結果、温度変化での安定性が高く、 非直線歪みが±0.002%以下という性能を持っていました。

DACの後ろにはD/A変換時に発生するグリッチ歪をとるために、NEC製の「μPD4053BC」を使用したデグリッチ回路があります。
ローパスフィルターはデジタルフィルターが無いため11次のチェビシェフ型で、それをモジュラー化したTDK製の「AL-016-52」を組み込んでいます。ラインアンプのオペアンプはナショナル・セミコンダクター製の「LM833N」です。

可変出力用の基板には電子ボリュームコントローラの「MN6632A」とオペアンプ、ミューティングリレーがあり、電源を切ってもボリューム位置を保持させるためのバックアップ用の電池などがあります。
オーディオ回路 DAC バーブラウン PCM-53JP-V(下)

モジュラー化されたローパスフィルター 可変出力用の基板


(ピックアップ・ドライブメカ)
ドライブメカはSL-P8のメカを少し改良したようで、下級機のSL-PJ1やSL-PJ2と共通のようです。ディスクのクランプはチャッキングアーム式。ピックアップとスピンドルモーターのユニットは、スプリングでフローティングしています。

ピックアップは3ビームのFF(Fine Focus)ピックアップ「SRLP007N01A」。CCFレンズシステムでフォーカス時のレーザー光の収差を低減。コイルへの通電リードを廃した独自のアクチュエータ支持方式「FF4サスペンション」によって、正確なフォーカシングを実現しています。
ピックアップのスライド機構はウォームギヤ。スピンドルモーターにはBSLモーターを使用しています。

テクニクスは翌1985年に、1ビーム方式の「FF-1」ピックアップを開発し、以後1990年代まで使い続けていきます。
ピックアップ・ドライブメカ ピックアップ・ドライブメカ

FFピックアップ メカの裏側


(出力端子)
出力端子はアナログ出力のみで固定と可変が各1系統となっています。他にサブコード端子があります。
出力端子


スペック

周波数特性 2Hz〜20kHz ±0.5dB
高調波歪率 0.003%
ダイナミックレンジ 96dB以上
S/N比 96dB以上
チャンネルセパレーション 100dB以上
消費電力 26W
サイズ 幅430×高さ82×奥行334mm
重量 5.5kg













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